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『初めてゆきが屋敷に現れたときはとても怪しい人物だと疑った目で見ていた。あの時は怒鳴ってしまって申し訳なかった・・・でも時が経ってそなたが怪しい人物などではなく普通のか弱い女性だと知った。もしかしたらもうその頃から少しずつ気になる存在になっていたのかもしれん。』

秋道さんが今までしてくれた事が次々に頭に浮かんできた。落とし穴に落ちて目が覚めた時、一番最初に声を掛けてくれたのは秋道さんだった。嫌々ながらも私を街に連れて行ってお団子を食べさせてくれた。神社にも連れていってくれたし、泥棒からも守ってくれた。

『ゆきが時継様の事を好きだという事は知っておる・・・だが、私は諦めきれんのだ。時継様は確かに完璧なお方、ゆきが惹かれるのもわかる。しかしこの世界を何も知らないゆきが千代様を差し置いて時継様と結ばれるというのはかなり難しい事なのではないか?事実、時継様は立場もあり想いはあれども今までなかなかゆきを助けに動けなかった。でも私は違う。わからないのであれば側にずっといて教えてやれる。危ない目には絶対合わせないし、もしそのような時もすぐに助けてあげられるだろう。』

『秋道さん・・・。』

攫われた時にシロツメクサを見つけて山を登り山小屋まで助けに来てくれたのも秋道さんだった。記憶は無いけど高熱の私を抱き抱えてあの長い山道を下りて屋敷に連れて帰ってくれた。たぶん目を覚ますまでずっと側にいてくれた。

『ゆきがどこから来たかなんて今の私には関係ない。そんなのはとるにたらないことだ。これからだってゆきに何が起こるかわからないが何かあってもそれは全て受け入れよう。だから・・・時継様と一緒になるのだけはどうか考えなおしてくれないか。二人がすんなり結ばれることは周りの環境からまず考えられないし、わざわざ困難な道へゆきには進んで欲しくない。ゆきにも時継様にも苦しんで欲しくないし・・・いや、逃げずに正直に言おう。二人が結ばれる姿など苦しすぎて私には見れない・・・。時継様とではなく、私と一緒になってくれないか。』

私が時継様と出掛けたいと言った時どんな想いだったんだろう・・・時継様と一緒になりたいと願う私の姿を今までどんな気持ちで見ていたんだろう。

秋道さんの今までの行動や私への態度、想いが繋がった時自然と涙が溢れた。

私が気付かなかっただけで、きっといつも見守ってくれてたんだよね。この世界に来ていつも一番近くにいてくれたのは秋道さんだった。これから秋道さんの隣にいる事を選んだら私をとても大切にしてくれるだろう。沢山の人がすぐに祝福してくれるかもしれない。

・・・・・。

・・・でも、そうだとしても。
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