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56 【千代視点】

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『・・・という訳で今高熱を出し床にふせております。秋道殿はそれを助ける為に一時的に外に出て行ってる状態です。』

『・・・そうか。まあよい。好きにさせとけ。その状態ではゆきも逃げまい。』

まったく・・・あの野武士は使えんな。前回も秋道にゆきの場所がバレてしまったし、今度は高熱で自らが倒れるとは・・・回復したらもうあいつには何も頼まん。金だけ渡して何処かへ消えてもらおう。

わらわはゆきと秋道が暮らす場所からほど近い実家へと帰ってきていた。

『千代・・・体調はどうだ?』

『父上・・・ええ、特に問題はありません。』

『本当に大丈夫なのですか?いきなり帰ってきたので何かあったんではないかと心配ですわ。』

『母上・・・祝言を挙げたらいよいよ霧島家の人間、そう簡単には帰って来れないでしょう。もちろん向こうの生活には満足しております。ですが時継様の妻になるその前に父上や母上とのひとときを楽しむのもいいかと思いまして。』

『おお、そうかそうか!確かに霧島家に嫁げば色々忙しくなる事もあるだろう。こうして気にかけてくれて私は嬉しいぞ!』

『そうね。千代は本当に優しい子に育ってくれて・・・私の自慢の娘だわ。しばしの間かもしれないけどこの家でゆっくり養生しなさい。後で三人で久しぶりに散歩でも行きましょう!』

父上と母上に真実なんて言えるわけがない。小さい頃から時継様に憧れる私の想いを理解し応援してくれていた。許嫁に決まった時は家族三人で飛び跳ねて喜んだものだ。

時継様と夫婦になる事は私の夢、悲願だ。それと同時に父上、母上の悲願でもある。

叶えなければ。あんな女の存在で夢破れてなるものか。

しかし・・・思ったとおりにならないのがあの女の怖さでもある。このままいって万が一にでも祝言を邪魔されるような事があってはまずい。

大丈夫だとは思うが秋道が寝返る可能性だってゼロでは無いのだ。

一度そう考えるとゆきに対しての処遇がまだ不十分なような気がしてならずわらわはもうひと手間加える事にした。 

確かあの屋敷にも牢屋があったな・・・秋道には申し訳ないがゆきとは二人きりなのだあとで謝れば許してくれるだろう。

わらわはゆきと秋道の二人をその牢屋に閉じ込めるように指示した。

そもそもお前にとって時継様との関係性は牢屋から始まったんだったな・・・面白い、それならばその想い牢屋の中で終わらせてやろうではないか!

『ふんっ・・・これでそなたも終わりじゃ・・・あの場所で祝言が終わるその時までボーっと過ごしていればいい。ざまあみろ!わらわの大切な時継様を取ろうとするからこうなるのだ!』

そう言うとスッキリしてわらわは一人部屋で高笑いした。
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