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58 【秋道視点】
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家を出てからどれくらい経ったろう。
たしかこの辺に・・・あ、あった!
主となる成分が入っている薬草を見つけた私はそれを採って懐に入れた。かなり走ったので流石に足が痛かったがこうしている間にも身体に毒は周ってしまう。出来るだけ急がねば。
その後他の薬草も採りながら足を止める事なくなんとか汗だくで屋敷まで辿り着いた。
『帰ってたぞ!』
ゆきが心配そうに駆け寄ってきた。
『薬草は?』
『なんとか見つかった!あれから具合はどうだ?』
『冷やしてはいたけどずっと高熱が下がらないです。あと紫の斑点がみるみる身体中に広がってきていて・・・とりあえず今は眠っています。』
遠目に見る野武士はかなり顔色が悪く見えた。
『そうか・・・まずいな。急いで薬を作ろう!』
子供の頃村長に習った解毒薬の作り方を必死になって思い出した。分量を間違えば効能が弱くなってしまう。慎重にすり潰さねば・・・。
『よし、これでいいだろう。身体を起こしてくれ。』
そう伝え他の野武士達は心配そうに身体を起こし支え始めた。
『眠っていた所悪いが解毒薬だ。味は不味いがよく効く。頑張って飲み干すのだ。』
『あ、ああ・・・。』
苦しそうな顔でゆっくり、少しずつ薬を飲み始めた野武士をゆきも含めそこにいる全員で応援した。
『よし、全部飲んだな。あとは薬が効くのを待とう。ゆっくり休め。熱が下がってくるまでは引き続き手ぬぐいで身体を冷やそう!』
『わかりました!』
それからちゃんと効いてくれる事を願いながらゆきと二人野武士を見守る事になった。
『秋道さんも疲れたでしょう。お風呂入って休んでもいいですよ?』
『いや、大丈夫だ。少なくとも熱が下がるのを見届けるまでは・・・。』
まあ野武士も心配だが一方ではゆきと二人でいたかったという事情もある。
『そうですか・・・秋道さんは本当に凄いですよね。強いし、こうやって薬草の知識もあるし、みんなから頼られてなんでも出来るじゃないですか。』
『別にそんな事はないが・・・。』
ゆきに褒められた私はたぶん謙遜しながら顔が崩れていたんじゃないだろうか。素直に嬉しかった。
『それに引き替え私なんて・・・なんの役にも立たなくて。この世界に来てからは特にいつも誰かに助けてもらってばかり。こんなになんにも出来ない自分なんて・・・時継様のそばにはいていいわけ無いですよね・・・。』
『・・・・・。』
ゆきから時継様の名前を聞いて本音を言えばショックだった。だがゆきの中に少しでも迷いがあるのであればこれはチャンスかもしれない。そうだ、山道を走りながらずっと考えていたではないか。私は真っ直ぐにゆきを見つめやっとの思いで言葉を発した。
『好きだ。』
『・・・・・え?』
ゆきはかなり驚いたようで目を丸くしていた。
『私は・・・ゆきが好きだ。いつか言おうとしていたんだが・・・まさか時継様に先を越されるとはな。』
ゆきに想いを伝えるという事はずっと仕えてきた時継様に対しての裏切りににも似た行為だ。やっと言えたとはいえ一方でその想いに苦笑いした。
『ゆき、そんな事思わなくてもよい。知らない場所に来たのなら色々わからなくて当然だろう。それについてはこれから覚えていけばいいじゃないか。少なくとも私や時継様はゆきの笑顔に毎回救われているぞ。』
たしかこの辺に・・・あ、あった!
主となる成分が入っている薬草を見つけた私はそれを採って懐に入れた。かなり走ったので流石に足が痛かったがこうしている間にも身体に毒は周ってしまう。出来るだけ急がねば。
その後他の薬草も採りながら足を止める事なくなんとか汗だくで屋敷まで辿り着いた。
『帰ってたぞ!』
ゆきが心配そうに駆け寄ってきた。
『薬草は?』
『なんとか見つかった!あれから具合はどうだ?』
『冷やしてはいたけどずっと高熱が下がらないです。あと紫の斑点がみるみる身体中に広がってきていて・・・とりあえず今は眠っています。』
遠目に見る野武士はかなり顔色が悪く見えた。
『そうか・・・まずいな。急いで薬を作ろう!』
子供の頃村長に習った解毒薬の作り方を必死になって思い出した。分量を間違えば効能が弱くなってしまう。慎重にすり潰さねば・・・。
『よし、これでいいだろう。身体を起こしてくれ。』
そう伝え他の野武士達は心配そうに身体を起こし支え始めた。
『眠っていた所悪いが解毒薬だ。味は不味いがよく効く。頑張って飲み干すのだ。』
『あ、ああ・・・。』
苦しそうな顔でゆっくり、少しずつ薬を飲み始めた野武士をゆきも含めそこにいる全員で応援した。
『よし、全部飲んだな。あとは薬が効くのを待とう。ゆっくり休め。熱が下がってくるまでは引き続き手ぬぐいで身体を冷やそう!』
『わかりました!』
それからちゃんと効いてくれる事を願いながらゆきと二人野武士を見守る事になった。
『秋道さんも疲れたでしょう。お風呂入って休んでもいいですよ?』
『いや、大丈夫だ。少なくとも熱が下がるのを見届けるまでは・・・。』
まあ野武士も心配だが一方ではゆきと二人でいたかったという事情もある。
『そうですか・・・秋道さんは本当に凄いですよね。強いし、こうやって薬草の知識もあるし、みんなから頼られてなんでも出来るじゃないですか。』
『別にそんな事はないが・・・。』
ゆきに褒められた私はたぶん謙遜しながら顔が崩れていたんじゃないだろうか。素直に嬉しかった。
『それに引き替え私なんて・・・なんの役にも立たなくて。この世界に来てからは特にいつも誰かに助けてもらってばかり。こんなになんにも出来ない自分なんて・・・時継様のそばにはいていいわけ無いですよね・・・。』
『・・・・・。』
ゆきから時継様の名前を聞いて本音を言えばショックだった。だがゆきの中に少しでも迷いがあるのであればこれはチャンスかもしれない。そうだ、山道を走りながらずっと考えていたではないか。私は真っ直ぐにゆきを見つめやっとの思いで言葉を発した。
『好きだ。』
『・・・・・え?』
ゆきはかなり驚いたようで目を丸くしていた。
『私は・・・ゆきが好きだ。いつか言おうとしていたんだが・・・まさか時継様に先を越されるとはな。』
ゆきに想いを伝えるという事はずっと仕えてきた時継様に対しての裏切りににも似た行為だ。やっと言えたとはいえ一方でその想いに苦笑いした。
『ゆき、そんな事思わなくてもよい。知らない場所に来たのなら色々わからなくて当然だろう。それについてはこれから覚えていけばいいじゃないか。少なくとも私や時継様はゆきの笑顔に毎回救われているぞ。』
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