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52 【時継視点】
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屋敷の鯉が泳いでいるのを見ながら考えを張り巡らせていた。
千代が居なくなってからすぐにゆきも居なくなった。そして同時に秋道も・・・千代がいなくなったのは自分が千代を傷つけてしまったせいだがゆきと秋道には一体何があったんだろうか?
頭の中にゆきが言っていた落とし穴の話がよぎった。
まさか・・・二人共落とし穴に落ちた可能性は無いだろうか?ゆきと風に吹き飛ばされたあの日を思い出す。確かに屋敷にある地蔵には不思議な力があるのかもしれない。だがこの地蔵は私が生まれる前からこの屋敷にあったし、これまで妙な話は聞いた事が無かった。
もし秋道と二人その落とし穴というのに落ちたとなれば二人はゆきの世界に行ってしまったというのか?確か落とし穴というのは度々現れるようなものではないはず・・・いずれにせよすぐに帰って来ないという事は何かよからぬ事に巻き込まれているという事だろう。
秋道の事だだからきっと何かゆきの異変に気付いたに違いない。二人が一緒であれば何かあっても秋道がゆきの事を守ってくれているとは思うが・・・。
『時継様、午後からは千代様との祝言の打ち合わせが入っております。』
『打ち合わせ・・・だが千代が』
『千代様はご実家に戻られているようです。体調がすぐれないので少しご実家で療養してから屋敷に戻るとのこと、先程遣いの者から伝達がありました。』
『そうか、千代は実家に・・・私の事は何か言って無かったか?』
『いえ、特には。千代様のご両親も千代様本人も祝言当日を大変楽しみにされているそうです。万全の体調でご参加されるためにも大事をとってご実家で休まれるそうです。』
千代は周りには何も言って無いようだな・・・しかしこの状態で祝言を挙げるわけにはいくまい。
『千代との祝言は中止にしようと思っている。』
『と、時継様、何をいきなり!どうされたのです!もう祝言に向けて色々動き出しておりまする。みなその日を心待ちにしておるのですぞ!』
『しかし』
『しかしも何も、これで千代様との祝言を中止にしたらどうなるとお思いですか?時継様一人で決めた事が噂で流れるような事があればこれまで積み上げてきた評判は地に堕ち霧島家の繁栄も望めなくなってしまいますぞ!それに・・・こんな事を直接伝えるのは無礼だと承知の上で申し上げますが・・・時継様はもう随分前からお一人の身体ではございません。私達仕えている者全員の人生を背負って生きておられるのです!どうか、どうか一時の気の迷いで祝言を取りやめるなどとはおっしゃらないでください!』
必死に頭を下げる家来を見て心が痛んだ。そうだ、そんな事は分かりきっていた事じゃないか。父上と母上亡き後この霧島家の地位を保つ為若いながらに必死になって生きてきた。その中で励まし支え続けてくれた屋敷の皆は家族同然だ。路頭に迷わせる訳にはいかない。そう、分かってはいる、分かってはいるんだ。
しかしそれをもってしても私の頭にはどうしてもゆきの存在が、彼女の笑顔が浮かんでしまう。
一体どうすれば・・・とにかくゆきと秋道が今どこにいるのか分かればいいのだが・・・。
千代が居なくなってからすぐにゆきも居なくなった。そして同時に秋道も・・・千代がいなくなったのは自分が千代を傷つけてしまったせいだがゆきと秋道には一体何があったんだろうか?
頭の中にゆきが言っていた落とし穴の話がよぎった。
まさか・・・二人共落とし穴に落ちた可能性は無いだろうか?ゆきと風に吹き飛ばされたあの日を思い出す。確かに屋敷にある地蔵には不思議な力があるのかもしれない。だがこの地蔵は私が生まれる前からこの屋敷にあったし、これまで妙な話は聞いた事が無かった。
もし秋道と二人その落とし穴というのに落ちたとなれば二人はゆきの世界に行ってしまったというのか?確か落とし穴というのは度々現れるようなものではないはず・・・いずれにせよすぐに帰って来ないという事は何かよからぬ事に巻き込まれているという事だろう。
秋道の事だだからきっと何かゆきの異変に気付いたに違いない。二人が一緒であれば何かあっても秋道がゆきの事を守ってくれているとは思うが・・・。
『時継様、午後からは千代様との祝言の打ち合わせが入っております。』
『打ち合わせ・・・だが千代が』
『千代様はご実家に戻られているようです。体調がすぐれないので少しご実家で療養してから屋敷に戻るとのこと、先程遣いの者から伝達がありました。』
『そうか、千代は実家に・・・私の事は何か言って無かったか?』
『いえ、特には。千代様のご両親も千代様本人も祝言当日を大変楽しみにされているそうです。万全の体調でご参加されるためにも大事をとってご実家で休まれるそうです。』
千代は周りには何も言って無いようだな・・・しかしこの状態で祝言を挙げるわけにはいくまい。
『千代との祝言は中止にしようと思っている。』
『と、時継様、何をいきなり!どうされたのです!もう祝言に向けて色々動き出しておりまする。みなその日を心待ちにしておるのですぞ!』
『しかし』
『しかしも何も、これで千代様との祝言を中止にしたらどうなるとお思いですか?時継様一人で決めた事が噂で流れるような事があればこれまで積み上げてきた評判は地に堕ち霧島家の繁栄も望めなくなってしまいますぞ!それに・・・こんな事を直接伝えるのは無礼だと承知の上で申し上げますが・・・時継様はもう随分前からお一人の身体ではございません。私達仕えている者全員の人生を背負って生きておられるのです!どうか、どうか一時の気の迷いで祝言を取りやめるなどとはおっしゃらないでください!』
必死に頭を下げる家来を見て心が痛んだ。そうだ、そんな事は分かりきっていた事じゃないか。父上と母上亡き後この霧島家の地位を保つ為若いながらに必死になって生きてきた。その中で励まし支え続けてくれた屋敷の皆は家族同然だ。路頭に迷わせる訳にはいかない。そう、分かってはいる、分かってはいるんだ。
しかしそれをもってしても私の頭にはどうしてもゆきの存在が、彼女の笑顔が浮かんでしまう。
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