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48 【秋道視点】

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千代様に話を持ちかけられたときすぐにでも断ることが出来なかったのは私の中にもどかしい想いがあったという証拠だろう。

私自身、いつかはゆきにこの気持ちを伝えようとしていた。でも自分が動き出す前にあの三人で出かける日が来てしまったんだ。

二人きりになりたいと時継様がおっしゃった時は焦って気が気ではなかった。なんとかして引き止めたい、そう強く思ったがやはり時継様には逆らえなかった。

その時まで時継様がどのようにゆきの事を想っていたか全て知っていたわけではない。だが特別扱いしている事は明らかだった。

嫌な予感がしながら二人の後を邪魔にならないようにと静かについて行った。物陰に隠れながら歩いている内に自分は何をしているのかと無力感に襲われた。本当は二人並んで歩いてなど欲しくないのに・・・。

だからこそ時継様がゆきを抱きしめた瞬間、愕然として膝から崩れ落ちた・・・恐れていた事が現実に起きてしまった。

時継様に仕えて何年経つだろうか・・・いつも穏やかで強く優しく、他人の為に動いて生きてきたお方。周囲の信頼も厚くいずれはこの街を統治するお方になるに違いないと思っていた。周りが見えている方だからこそ、たとえ想いがあろうともその想いが明るみに出てくることはないだろう・・・そうたかをくくっていた所もあったかもしれない。

まさか・・・ゆきに想いを伝えるなんて。そしてゆきも時継様を想っていて二人抱き合う光景を目にする事になるなんて。

もし私が時継様より先にゆきに言葉にして伝えられていたら、違った未来があったんだろうか?あの日から夜はそればかり考えてしまいなかなか寝付けなくなっていた。

『一芝居?千代様、一体私にどうしろというのですか?』

『ここには何人か野武士を連れて来ておる。無論そなたと戦わせた所でこちらに勝ち目は無いだろう。だが・・・それはわらわと秋道だから分かる事。殴られたふりをすればゆきは分かるまい。』

『私にわざと負けたふりをしろと?』

『ゆきには目隠しをするから最初だけ上手く騙せればそなたが戦ってくれたと勘違いするだろう。』

『ですが、そうだとして私達はこれから何処へ?』 

『わらわの実家じゃ。普段は誰も近づかない、今は使われていない離れがある。そこでしばらくゆきと二人で暮らせばいい。』

『ふ、二人でですか?千代様はどうされるのです?』

『わらわは頃合いを見て体調が良くなった事にして屋敷に戻るつもりだ。そして・・・予定通り時継様と祝言をあげる。』

『祝言を・・・ですか?』

『そなたの言いたい事はわかっておる。だがたとえ今時継様の気持ちがわらわから離れてしまっていてもこれから必ずまた振り向いて貰えるように努力する。それにゆきがいなくなったとなれば周りの目もある、時継様も祝言をあげざるおえないだろう。なにぶん時間が無いのだ、秋道。どうか、手を貸してくれないか。そなたはゆきとの未来の為に。わらわは時継様との未来の為に。』
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