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草むらを書き分けて山道を登り、息を切らしながら夢中で山小屋へと向かった。改めて自分の足で歩くとあの時随分遠くまで連れられてきていたんだと強く実感した。

秋道さんこの道を私を持ちながら下りてくれたんだよね・・・。率先して前を歩いてくれる秋道さんの背中を必死に追いながら申し訳ない気持ちになった。

『見えてきたぞ!』

『やっと・・・着いた。』

まさかまたここに来る事になるとは。大きく深呼吸して自分を落ち着かせる。

『ここで待機しているから何かあったら呼ぶのだぞ。』

秋道さんにコクリとうなずいてから私はゆっくりと引き戸を動かした。

・・・千代。

後向きだった彼女がゆっくりとこちらを振り返った。屋敷では見たことがない冷たい視線を向けられしばらく二人無言の時間が続いた。

『そなたは・・・一体何者なのだ?本当はどこからここにやってきたのだ?』

『わ、私は』

『違う世界からやってきたなどという奇妙な話、誰も信じる事わけなかろう。そんな事、あるわけがない。それでも時継様が寛容にそなたを受け入れる姿を見せたので今まで深く追求してこなかったのだ。今更隠す事などないし嫌ならこの事は誰にも言わないと約束しよう。わらわはただ真実が知りたいのだ、正直に言いなさい。』

真実・・・か。

すぐに言葉が出てこなかった。千代が言っていることは疑問として当然の事だと思うけど、違う世界から来たという事が私にとっての真実なのだ。

でも、それを証明する事は私には出来ない。

『黙ってないでなんとかいったらどうだ!』

『信じてもらえない事はわかってる。私自身だって未だに全てを受け入れられてるわけじゃないし。でも、本当なの。本当にこことは全然違う世界から来たの。』

『わらわをおちょくっているのか!』

『違う、そういうんじゃなくて、本当にそれが事実であり真実なの!』

『・・・・・。』

それからまたしばらく沈黙が続いた。

『話を変えよう。昨日いきなり時継様が・・・そなたを好きになったと・・・なってしまったとわらわに言ってきた。そもそも時継様とそなたは屋敷でしか会わないはず。そんなに仲睦まじくしている様子はあの抱き合っていた忌々しい夜以外見かけないようだったが?まさかあれだけでそなたに恋をしたわけではあるまい、これについてはどう説明する?』 

『そ、それは・・・』

『どのようにしてたぶらかしたのだ?怖い女じゃ、あらかた時継様の優しさにつけ込んで変な薬でも飲ませたか、不可解な術でも使ったのだろう。でなければ時継様が急にあんな事を言い出すはずがないのだから!』
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