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37 【時継視点】
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いざゆきに想いを伝えるとなるとそわそわせずにはいられなかった。嫌われている事はないと思うがだからと言って男性として見てくれるかどうかは別の話だ。それに、私には千代の存在がある事をゆきは間近で見てきている。
正直に話した時、引かれないだろうか・・・嫌われたくないという想いが気持ちを揺らがせる。
一本道を歩いている時ゆきの家族について聞いた。なんてことだ、ゆきにも家族がいなかったなんて・・・。
私の母上は私が幼い頃から病気がちで床にふせている事が多い方だった。よく咳をしていた姿が目に浮かぶ。幼い私が近くにいるのを見つけるととても優しい目でこっちへおいでと呼びかけ、いつも抱きしめてくれた。そしてある時静かに永遠の眠りについた。後で聞いたことだがそうやって抱きしめてくれた日々の時はもうかなり具合が悪かったらしい。それでも私の中の母上の思い出す姿は優しく笑顔を向ける姿だった。
そして父上。母が亡き後も私が寂しくないよう忙しい中でもしっかり寄り添ってくれた。いつか父上の大きい背中を追い越せるような男になりたい、そう思っていた。
ある時父上は友人宅に出かけている時忍びに遭遇し揉み合いの末に刺され、亡くなってしまった。突然の出来事で父上の亡骸を見て茫然とした記憶が今でも頭から離れない。
(困っている人がいたら助けてあげられる、優しい人間になりなさい)
父上にも母上にもそう何度も言い聞かされてきた。
ゆき・・・私は1人になってとても寂しい想いもしたが周りには屋敷の人間がいて沢山励ましてもらい、助けてもらってなんとか普通の日常を取り戻せたのだ。
向こうの世界でも1人でひたむきに生きてきたはずなのに、更にいきなり知らない世界へ来て過ごす事になってしまいそう考えるとさぞ心細かったであろう。小さな身体でそんな事を感じさせずに明るく日々を過ごしてきたゆきに対しての想いはより一層強くなった。そして思ったのだ。
家族がいないなら、私と家族になって欲しい。ゆきと家族になりたいと。
シロツメクサの首飾りを私にかけてくれるゆきを私はとても愛おしい目で見つめていた。
『前も時継様にと作ったことあったんですよ!でもその時はちょっと思いがけずダメになっちゃって・・・やっと渡せましたね!』
抑えていた想いが堪えきれず私はゆきを抱きしめた。
『え・・・。』
抱きしめたゆきの身体はとても温かかった。
『ゆき、こんなに細く小さい身体で今までよく頑張って一生懸命生きてきたな。』
正直に話した時、引かれないだろうか・・・嫌われたくないという想いが気持ちを揺らがせる。
一本道を歩いている時ゆきの家族について聞いた。なんてことだ、ゆきにも家族がいなかったなんて・・・。
私の母上は私が幼い頃から病気がちで床にふせている事が多い方だった。よく咳をしていた姿が目に浮かぶ。幼い私が近くにいるのを見つけるととても優しい目でこっちへおいでと呼びかけ、いつも抱きしめてくれた。そしてある時静かに永遠の眠りについた。後で聞いたことだがそうやって抱きしめてくれた日々の時はもうかなり具合が悪かったらしい。それでも私の中の母上の思い出す姿は優しく笑顔を向ける姿だった。
そして父上。母が亡き後も私が寂しくないよう忙しい中でもしっかり寄り添ってくれた。いつか父上の大きい背中を追い越せるような男になりたい、そう思っていた。
ある時父上は友人宅に出かけている時忍びに遭遇し揉み合いの末に刺され、亡くなってしまった。突然の出来事で父上の亡骸を見て茫然とした記憶が今でも頭から離れない。
(困っている人がいたら助けてあげられる、優しい人間になりなさい)
父上にも母上にもそう何度も言い聞かされてきた。
ゆき・・・私は1人になってとても寂しい想いもしたが周りには屋敷の人間がいて沢山励ましてもらい、助けてもらってなんとか普通の日常を取り戻せたのだ。
向こうの世界でも1人でひたむきに生きてきたはずなのに、更にいきなり知らない世界へ来て過ごす事になってしまいそう考えるとさぞ心細かったであろう。小さな身体でそんな事を感じさせずに明るく日々を過ごしてきたゆきに対しての想いはより一層強くなった。そして思ったのだ。
家族がいないなら、私と家族になって欲しい。ゆきと家族になりたいと。
シロツメクサの首飾りを私にかけてくれるゆきを私はとても愛おしい目で見つめていた。
『前も時継様にと作ったことあったんですよ!でもその時はちょっと思いがけずダメになっちゃって・・・やっと渡せましたね!』
抑えていた想いが堪えきれず私はゆきを抱きしめた。
『え・・・。』
抱きしめたゆきの身体はとても温かかった。
『ゆき、こんなに細く小さい身体で今までよく頑張って一生懸命生きてきたな。』
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