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『つ、冷たっ・・・。』

『ふんっ!』

千代は一旦気が済んだのか瓶を畳に投げ捨てるとそのまま何処かに行ってしまった。

そっか、あと1ヶ月で時継様と千代は結婚してしまうのか・・・。分かっていた事だけど改めて言葉にされるとなんだか心がザワザワした。

『あ、あの・・・。』

一部始終を見ていたのか振り向くとお手伝いさんが申し訳なさそうにこちらを見ていた。

『す、すみません、時継様がゆき様とお話がしたいとおっしゃっております。』

水をかけられて髪も着物もビショビショの状態だし、すぐに来られるのはまずいな。何より時継様に会う気持ちの準備がまだ出来ていない。

『えっと、ちょっと熱で汗をかきすぎて気持ち悪いのでお風呂に入ってからお会いしたいのですが・・・。』

『かしこまりました。では時継様にもそうお伝え致します。』

そう言ってお手伝いさんにお風呂を沸かしてもらい急いで湯船に入る。

あー・・・。

思ってたより色々な所を打ってしまっていたんだなぁ。裸になると所々傷だらけでお湯に浸かる瞬間は擦りむいた箇所が少ししみた。

時継様・・・今は会いたいような、会いたくないような。

でも、あと少しで結婚してしまうとしてもそれまでちょっとでも二人で楽しい思い出を作れたりしないだろうか。そんなのはさすがに贅沢かなぁ。千代にも宣戦布告されていつまた何されるかわからないし・・・それにしても考えてみれば時継様にはいつも優しくしてもらってばかり。私は時継様自身の事を何も知らないのだ。

もう少し時継様といろいろお話してみたいなぁとは思うけど屋敷内だといろんな人の目もあるしやっぱり難しいよね。何かいいきっかけがあればいいんたけど、二人きりで街に出掛ける事がどうにか出来ないものだろうか?

でも、そもそも時継様の周りには何をするにも必ず誰か取り巻きがいる状態でましてや外となると二人きりはかなり難しそうだ。

うーん・・・って何考えているんだ。そもそも時継様が私となんて外に出たいと思うはずがないじゃないか。いつも優しいからなんとなくワガママ言ったら聞いてくれるんじゃないかって思ってたけど、これじゃ飛んだ自惚れだよね。

いろいろ考えてお風呂に長居してしまった私はすっかりのぼせてしまい、そのせいで想定よりかなり時継様を待たせることになってしまった。

お水をもらい、少し落ち着いてから身なりを整える。

『ゆき、入って大丈夫か?』

『あ、すみません、私の方からお伺いしようと思ってたのに!大丈夫です、どうぞお入りください!』

そう言って数日ぶりに時継様とお会いする事が出来た。
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