【完結】ブラック企業で働く私が落ちた落とし穴の先はイケメン御曹司が住むお屋敷へと繋がっていました。

望月ナナコ

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泥棒を無事に引き渡し、私達は屋敷へと戻った。

『なんか、充実した一日でしたね。』

『まあ・・・無事に帰ってこれたのだ、ちゃんとお役目は果たした。』

そうか、秋道さんにとって今日一日は命令に従ってくれただけだもんね・・・そう思うとなんだか少し寂しい気がした。

『今日は疲れただろう、ゆっくり休め。』

そう笑顔で言うとあっさりと去っていってしまった。

平和だと思っていたけど泥棒とか出るんだな・・・それにしても今日は秋道さんに助けられてばかりだった。

そんな事を考えながら遠くなる秋道さんの背中を見ているとふいに後ろから声をかけられた。

『ゆき、帰ったのか。』

『時継様・・・はい、無事に戻りました。』

『秋道は粗相などなかったか?』

『そんな、粗相だなんて!今日は秋道さんがいてくれて本当によかったです。』

『そうか、では仲良くなれたのだな。よかったじゃないか。』

仲良く?ま、まあ最初の第一印象最悪の時から比べれば今日一日でだいぶ距離は縮まったかなとは思うけど。

『今日はどのようにして過ごしたんだ?』

時継様に聞かれたので今日一日、秋道さんと一緒にお団子を食べた事、神社でお参りをした事、その帰りに泥棒に遭遇して秋道さんが捕まえてくれた事を素直に話した。

『ほう・・・秋道はお手柄じゃないか。それで、何か元に戻る手がかりは掴めたのか?』

『いえ、今日は・・・特に何も・・・。』

『そうか。まあとにかく無事に帰ってきてくれて安心した。疲れただろうから今日はゆっくり休みなさい。』

時継様、心配してくれてたのかな?

時継様にも秋道さんにもゆっくり休めと言われたので私はゆっくりと湯船に浸かり身体を休める事にした。

お風呂は毎晩お手伝いさんが薪に火を焚べてあったかく沸かしてくれている。ありがたや・・・と私は拝みながら湯船へと入っていく。

街灯が無い分夜はとても綺麗な星空が見れる。今までなかなか屋敷から出られなかった中でお風呂に入りながらそれを見るのが楽しみの一つになっていた。

今日も綺麗だな・・・ん?そうやって外を眺めていると庭の奥の方に青い光がかすかに見えた。

青い、光!?

見間違うはずがない。電気が無い時代にあんな色のついた光、そうそう出るはずがないだろう。そしてその光っている場所は赤い橋の奥、正にお地蔵さんがある付近だった。

もう、なんで今なのよ!

私は風呂釜から出ると急いでパーカーとスウェットズボンに着替えた。着物で寝て朝起きるとはだけているのが嫌だったので結局こっちの世界に来てもパーカーとスウェットズボンは寝巻き要員になっていた。

スニーカーを履いて外に出る。参ったな、あそこに行くまでが暗すぎる。

『すみません、ちょっと出かけたくて。提灯ありましたよね?今使いたいんですが・・・。』

お手伝いさんに無理を言って提灯を出してもらい私はお地蔵さんへと走りだした。

途中誰かに後ろから呼ばれてる気がしたけど振り向いている余裕は無い。いつあの青い光が消えてしまうかわからないのだ。

私は夢中になって走った。
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