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『千代、落ち着きなさい!』

『わらわは落ち着いておりまする!ゆきとやら、とにかく、時継様から離れなさい!』

そう言って私に取っ組みかかろうとする千代を時継様はしっかり防御してくれる。離れたいのはやまやまなのだが離れるとバランスを崩してしまうし一人では屋敷に帰れそうにないのだ。

『辞めなさい、千代!まったく、昨日からそなたの態度は目に余るものがあるぞ!しばらく部屋で反省してなさい!』

『そ、そんな、時継様・・・。』

千代は瞬時に悲痛な顔になり何か言いたげな様子だった。

『いいから、千代を屋敷へ連れていきなさい!』

『はっ!』

そうこうしている内に取り巻きのお侍さん達に千代は連れて行かれてしまった。

『・・・よし、すまなかったな。さあ、参ろうか。』

千代には少し悪い気もしたがこの謎を解明しないと私はいつまで経ってもこの時代から離れることが出来ないのだ。深呼吸し気を取り直してまた歩き始めた。

『・・・ここだ。』

赤い橋を渡ってからしばらく歩いたお屋敷の隅っこの方にそのお地蔵さんは祀られていた。

!?

『私の世界のお地蔵さんと・・・そっくりです。』

忘れもしない。コンビニの横にいたお地蔵さんと瓜二つのお地蔵さんがそこには祀られていた。

『そうか!しかし、ここに落とし穴のようなものは・・・見受けられないな。』

時継様と一緒にお地蔵さんの周りを見渡したり、触ってみたりしたけど特に何も変化は起きなかった。手掛かりが少しでも見つかったのは嬉しいけどここからどうしたら元に戻れるというのか。

『とりあえず、一旦屋敷に戻ろうか?』

『そう、ですね・・・。』

『そんなに落ち込む事は無いさ。きっといつか、答えは見つかる。』

あからさまに落ち込んでいる私に対してどこまでも優しい時継様。しかし、時にその優しさは間違った方向に暴走する。

『そうか!』

そう言うと何かを閃いたように私の方を見て近づいて来る。

『な、何ですか・・・?』

『ゆき、そなたにわざわざここまで歩いてもらわなくても最初から私がそなたをおぶってここに連れて来ればよかったな。』

サラッと名前を呼ばれたのが気になったけど相手は時継様なのでもはやそこには何も言うまい。

でも。

『い、いやそれはありがたいですが・・・でも、おぶっていただかなくても私は歩いて戻れますので!』

『ん?そうか?では手を離すから一人で戻るんだぞ?』

『え、それは・・・。』

それはちょっと厳しいな。

時継様はそれが分かっているはずだ。それなのに・・・なんて意地悪な事を。

『あ・・・それとも昨日のように抱っこにするか?』

一緒に歩いて戻るという選択肢はいつのまにか消えてしまったようだ。私はいとも簡単にヒョイと持ち上げられ時継様はゆっくりと歩き始める。

ああ・・・私には分かる。

刺すような視線を感じ遠くを見るとお侍さん達に引き止められて暴れている千代が目に入った。

『デジャブ・・・。』

『ん?デジャブとは何の事だ?』

『いえ、何でもありません。』


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