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「・・・行き・・・ます。」

ミキが意を結したようにゆっくりとこちらを向いた。

「・・・そう・・・嬉しいな。」

嬉しいの意味だって色々あるよね。ミキは断るかなあとも思ったんだけど。でももう自分で選んだ訳だからボクは躊躇しないよ?

「じゃあ、行こうか。」

お会計をして店を出ると辺りはすっかり暗くなっていた。季節外れの生暖かい風はボクの心の中と上手くシンクロする。

「家まで山道だから、慣れてないと気持ち悪くなっちゃうかもね。出来るだけ安全運転で行くから安心してね。」

「・・・はい。」

緊張しているんだろう、ミキはあからさまに口数が少なくなった。黙っているわけにもいかないからボクは当たり障りない話を延々と続け逆に気持ち悪くなるかと思ったよ。

途中で事故が起きたあの場所も通り抜けた。

父さん、母さん、姉さん・・・ボクが人を殺しているところを三人が見てるとしたら一体どう思っているんだろうね?

まあもう誰にも止められないから、ボクはそのまま突き進むよ。

そうして満月の神々しい光に照らされる中、ボクとミキは家に辿り着いた。

「すごいおうちですね・・・。」

「・・・そう?母の趣味だったみたいで・・・。」

何回繰り返し聞いたかわからない感想を聞き流したあと、ボクはミキを家の中へ招待した。

「何か飲むかい?コーヒー・・・そうか、もう夜だし、あんまりカフェイン摂るのも良くないよね。」

ミキはリビングで部屋の中をキョロキョロ見回していた。ボクはキッチンに行きティーセットを持ってテーブルの上に置いた。

「あ、私やります!」

「いいよ、気にしないで。ミキは今日お客様なんだから、ゆっくりくつろいで。」

「すみません・・・ありがとうございます。」

・・・なんで謝るんだ?とボクは思ったよ。

日本人ってさ、変なところですみませんって使う時ない?本当はそう思ってなくても言わない?意味ないじゃん。意味不明。

まあ、いいか。

丁寧に淹れた紅茶が注がれるこのティーカップはね、実は姉さんが最後に口にしたティーカップでもあるんだよ?どう、光栄でしょ?

しばらく紅茶を飲みながらこの建物の事を話した。

ミキ、ボクはこれから君にうんと優しくするからね!なんてったってこれから命を戴くんだから!これは君の命が持っている権利が最後に僕に課すささやかな義務さ!

「ミキ、先にちゃんと伝えないとと思って・・・君に出会えて本当に良かった・・・好きだよ。ボクと正式に付き合って欲しい。」

そしてミキはボクに言う。

「あの・・・こんな私でよければ、宜しくお願いします。」

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