からふる〜名前に色が入っている殺人鬼達の殺人回想録〜

望月ナナコ

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父さんと母さん亡き後、まだ何も出来ないボクが社長になる訳にもいかず、姉さんが社長に就任した。そして社長になれた事が余程嬉しかったのかそれからの姉さんは今まで感じた事が無いくらい幸せそうに見えた。

「姉さん・・・。」

「ああ、サトル?どうしたの?」

チラッとこっちを向いた姉さんの視線はすぐにパソコンに戻った。

「ちょっと・・・最近さすがに働き過ぎなんじゃない?」

「心配してくれているのね、ありがとう。でも、大丈夫よ。これが終わったら今日はもう帰って寝るわ。」

気付いてあげられなかっただけで姉さんは姉さんなりに我慢していた事が沢山あったんだろうね。父さんと母さんがいなくなった今、全てが自分の思い通りに出来るんだもん。

でも姉さんはさ、拓かれた自分の未来に集中しすぎて大事な事を忘れていたよね。うーん・・・まあ忘れていたというよりはその発想まで辿り着かなかったってとこかな?

だって、父さんと母さんがいなくなった今、自由を手にしたのは姉さんだけじゃくボクも同じだったんだから。

楽しそうに仕事に勤しむ姉さんを見てボクはふと思ってしまったんだ。

仕事なんかの何が楽しいんだ。ボクはね、せっかく父さんも母さんもいなくなって姉弟二人になったんだから、もっとボクに構って欲しかったんだ。仕事なんてしてないで落ち込んでるフリをしているボクをひたすら優しく慰めて欲しかった。大丈夫、私がついているから・・・そう言って抱きしめて欲しかった。姉さんにはボクしか、ボクには姉さんしかいない・・・そうだろ?

それなのに・・・退院してからの姉さんときたら会社を再建するのに夢中になって毎日が仕事仕事仕事仕事。姉さんが父さんと母さんを殺してまでやりたかったのって・・・これ?

こんな事の為に父さんと母さんは死んじゃったの???

姉さんに不満を持つようになってからも数ヶ月間はなんとか我慢していたんだ。だってそうでしょ?愛する姉さんの為だもん、やりたい事をやらせてあげないと。

だけど数ヶ月経ったある日、状況は一辺した。

姉さんが新入社員の男性ととても仲良さそうに談笑している所をたまたま見ちゃったんだ。

えっ、何?

何?

何なの? 

ボクは混乱した。

姉さんはさ、もう、ボクの、ボクだけの姉さんでなきゃダメだよね?

一生抱えていくような秘密をボクに持たせてるんだから、他の男なんか見ちゃダメだよね?これって重罪じゃない?

そして悩んだ末にボクは一つの答えにたどり着いたんだ。

あ、あー・・・。

・・・・・・。

そう・・・そう、なのかな?

人を殺しちゃうと汚れてしまうものなのかもしれない。

だから・・・今ボクの前にいる姉さんは、もうボクの知っている完璧で汚れの無い姉さんではなくなっちゃったって事なのかな?

なんだ・・・そっか。

そんな姉さんなら・・・もう、いらないかな。僕の中をギリギリで繋いでいた何かがプツリと切れた瞬間だった。

じゃあ。

じゃあもう、ボクの好きにしていいよね。



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