からふる〜名前に色が入っている殺人鬼達の殺人回想録〜

望月ナナコ

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カーテンの隙間から光が差しこみ眩しくて目が覚めた。小鳥のさえずりが聞こえてくる。

・・・ああ、夢か。

・・・随分、懐かしい夢だったな。

窓を開け、気持ちいい太陽の光と爽やかな風を浴びながら夢の続きをゆっくりと思い出し始めた。

◇◇◇

ボクはね、本当の事を言うとあの時最初から勘づいてはいたんだよ。

ブレーキに細工をしたのはきっと姉さんだって事。

イコール、父さんと母さんを殺したのは、姉さんだって事。ついでに部長もね。父さんと母さんは骨になっちゃったし、真実は闇の中だけど、たぶん姉さんはボクが起きたときには倒れている芝居をしていたんだ。車の中で失神している二人は薬とか証拠が残りにくいもので殺したんじゃないかな。ボク、姉さんの前でなんとかして後部座席見ようと頑張ってたし、その時気付かなかっただけで何か麻酔みたいなものを姉さんに打たれたんだと思う。打たれた痛さは何も感じなかったけど身体中怪我して感覚が麻痺していたのかも。だってあんなタイミングで都合良く眠くなって倒れるなんて絶対変だもん。

どうやって隠蔽したのかは謎だけどうちにはお金なら沢山あるし、上手くやったんだろうね。

最初は飲み込むのに時間がかかったよ。父さんや母さんの事は普通に好きだったしね。

まあ、でもいいじゃない。ボクはね、子供の頃からずっといい子でいなきゃって思って生きてきたんだよ。だから、勉強だって習い事だって必死にこなして来た。どちらもたいして好きでもないのに・・・でも、頑張れば頑張る程父さんと母さんは喜んでくれた。褒められるのが嬉しかった。それに・・・姉さんに離されるのが・・・すごく怖かったんだよね。自分がダメな子供の烙印を押されてしまうかのようですごく、すごく怖かった。

ボクの姉さんはね、とにかく超がつく美人でまるでお人形さんみたいな人だった。ボクだって世間一般では割といい顔してるんだよ?モテるし。でも、ボクなんか全然比じゃないくらいとても綺麗な作品だった。勉強もスポーツも頑張って褒めてもらっているボクなんかよりも更に出来て、非の打ち所がない完璧な、自慢の姉さんだった。

ボクは姉さんがなんでも出来すぎるから置いていかれるのが怖いと思った事はあったけど、邪魔だとか嫌いだとかは感じた事は無いよ。それどころか・・・大好きだった・・・愛していたんだ。

だからそんな完璧な姉さんが父さんと母さんを殺害するという世間一般では完全アウトな事をしてしまったと知ってかなり興奮したもんさ。ああ・・・こんな完璧な姉さんにも・・・欠点があったのかってね。それにその真実を知っているのも世界で姉さんとボクだけだった。だから一生をかけてこの秘密を姉さんと共にお互い骨になるまで持ち続けよう。本気でそう思っていたよ。

でも、残念な事に風向きが変わったのは姉さんが父さんの会社を継いで経営し始めてからだった。

姉さんはね、自分が頭が良すぎて完璧すぎるが故に父さんや母さんの経営方針の粗が見えすぎちゃったみたい。

当時から色々思っていた事はあったんじゃないかな。でも親だし、自分の会社じゃないし、弟は大学卒業して次期社長を目指し始めるしで自分が思う通りにはいかなかったんだよね。

今思えば一言言ってくれればよかったのにね。ボクはただ引かれたレールの上にいただけで社長になんて別になりたくなかったのに。姉さんがなりたいというのなら喜んで譲ったのに。

すれ違いなんてよく言うけど、家族だからって全てを理解しあえる訳じゃないよね。

そして面白いものでボクはそのすれ違いというもののおかげで家族全員を失う事になっちゃったんだ。
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