からふる〜名前に色が入っている殺人鬼達の殺人回想録〜

望月ナナコ

文字の大きさ
上 下
3 / 28

2 【ミキ視点】

しおりを挟む
「ミキ、駅前のビルで今度婚活パーティーがあるんだって。週末休みでしょ、いい機会だから参加してみたら?」

お母さんから婚活パーティーという言葉を聞いた時正直最初はかなり抵抗があった。絶対結婚したいとか強い気持ちがあるわけじゃないし、こんな中途半端な私が参加しても真面目に活動している方に失礼なんじゃないかと思えた。

「婚活パーティーなんてまだ私には早いんじゃないかな?」

「何言ってんの、今の仕事、本当は辞めたいんでしょ?働くの自体ミキには向いてないのかもね。」

そう言ってお母さんは深くため息をついた。

「せっかく大学まで出してあげたのに・・・まあ、いいわ。新しい仕事探す気が無いならせめて結婚相手でも探しに行ってくれば?」

シングルマザーで私を一生懸命に育ててくれたお母さん。パワフルなお母さんの性格は受け継ぐ事なく私はどちらかというと引っ込み事案な性格だ。自分の考えは主張出来ないし、周りに流されやすい。それでも隣にハキハキしたお母さんがいてくれるお陰で今まで危ない目にあった事はなかった。

「結婚って・・・。」

23歳の私には正直まだ自分の結婚生活なんて夢のまた夢で全然想像がつかなかった。

新卒で入社した会社では理想と現実のギャップに苦しむ事になり、今もどんよりとした気持ちで日々勤務している。

でも正社員で雇って貰えたし、職場は実家からも近い。たまに上司に指導を受ける事もあるけどそんなのはよくある事だよね。それ以外の人はみんな優しいし。でも、なんだかなあ・・・やりがいとか楽しいとか今の生活には皆無過ぎてため息をつきながら毎日がしんどいままなんとなく過ごしていた。

「仕事がダメなら永久就職して専業主婦を目指せばいいじゃない!生き方はひとつじゃないんだし、お金持ちの男性でも捕まえて来なよ!」

閉塞感を感じる毎日にはうんざりだけどだからってどう動いたらいいかすぐには思いつかなかった。

「いつかは孫の顔を見るのが私の夢なのよ。いつも言ってるじゃない。」

「はいはい、わかってるよ。」

高校時代に別れた以来、私にはずっと彼氏はいない。その高校時代に一年程付き合った先輩も先輩が卒業して大学に進学してから急に連絡が途絶えたんだよね。

卒業間近には一人暮らし始めるから遠いけど落ち着いたら遊びにおいで!なんて言ってくれていたのに。パタリと連絡が来なくなったのは彼自身に何かあったからなのか、それとも私との関係はただヤリたかっただけだったのか・・・真実はわからないままだ。頻繁に連絡すればよかったのに、新生活で色々と忙しいだろうと気を遣ってしまいなかなか自分からは連絡しなかった。そして待てども待てども彼から連絡が来る事はなかった。しばらく時が経ちやっと決意して連絡した頃には先輩に繋がることはなく、そのまま自然消滅になってしまった。

「今の生活で新しい出会いなんか期待出来ないでしょう。物は試しっていうし、つまらなかったらすぐに帰ってくればいいじゃない。」

お母さんの言う事は正に図星で今の私は職場と自宅の往復の生活を送っていた。私はプライベートは完全なインドア派で家にいる事が好きなため今のまま生きていたら一生新しい出会いは期待出来ないだろう。

「・・・わかったよ。とりあえず行ってみるね。」

こうして嬉しそうなお母さんを尻目に私は自分の奥にある小さな勇気をかき集めて婚活パーティーに参加する事にしたんだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

逢魔ヶ刻の迷い子3

naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。 夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。 「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」 陽介の何気ないメッセージから始まった異変。 深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして—— 「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。 彼は、次元の違う同じ場所にいる。 現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。 六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。 七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。 恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。 「境界が開かれた時、もう戻れない——。」

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

すべて実話

さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。 友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。 長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*

実体験したオカルト話する

鳳月 眠人
ホラー
夏なのでちょっとしたオカルト話。 どれも、脚色なしの実話です。 ※期間限定再公開

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...