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57贈り物
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カトリーヌからの申し出で彼女が乗っていた馬車を使って、すぐに帰ることになった。
「エマさん、遠慮なさらないで。こんなこともあろうかと、昨夜のうちに領地に使いを出しました。
もうすぐ迎えが来ますので」
「でも…」
(そんな大げさにしなくても…)
「エマ、乗るんだ。また賊が襲ってくるかも知れない。
カトリーヌ嬢、先ほどルイス王子が話した通り小隊の護衛はここまでだ。
王都までエマを護衛させる」
と言うジークヴァルトにカトリーヌは「もちろんですわ」と応じる。
一般市民に紛れればエマ一人くらい乗り合い馬車で帰れるのに…と思ったが口を挟む余地などなかった。
ついでに昨日の服の汚れがカトリーヌも気になっていたらしく、帰り支度をするエマの部屋まで手持ちの服を持ち込み幾つか勧めてくれた。
カトリーヌとはすっかり打ち解けて名残惜しいひと時を過ごした。
「エマさんとこうしてお話が出来るとは思ってなかったから嬉しいわ」
「私こそ、この度は本当にありがとうございました。
私もお話ができて嬉しかったです」
「でも、エマさんと宰相補佐様を見ていたらもう少し王都にいたかったかも。
あの方のあんな姿っ。ふふふ」
「抱きしめたり手を握ったり撫ぜたり、貴族女性なら男性からのああいった労りを当たり前に受けられるでしょうけど、私は慣れなくて」
いきなり距離感がおかしくなった扱いはエマには恥ずかしいものでしかなかった。
「あの方もやっぱり女性の扱いに慣れてらっしゃるのですね。
あんなに労り上手だと、確かに女性方に人気があるのが分かります」
「ごほぉっ!」
(いまご令嬢らしからぬ音が聞こえたような?)
服を畳んでいた顔を上げるとカトリーヌが咳き込んでいた。
「カトリーヌ様?大丈夫ですか?」
「し、失礼。なんでもないの。(エマさんって、鈍感!?)
そうね、(いままで失恋した多くの女性のために宰相補佐様のフォローはいたしませんわよっ!)あの方に憧れている女性は多いわね」
「やっぱり~、あははは」
「うふふふふ」
結局、勧めてもらったドレスは胸とか腰のサイズを見てエマが痛々しい愛想笑いを返すと、カトリーヌも何も言わずそっと引っ込めた。
カトリーヌには「また来シーズンに王都で会いましょう。織物の新作を持っていくわ」と言って見送ってもらい、ジークヴァルトには背を押されるように急かされて馬車に乗せられ、村長たちへの挨拶もそこそこにたった二泊の目まぐるしいエマの里帰りは終わったのだった。
✳︎
貴族の旅行用馬車は素晴らしい速さと乗り心地だった。スプリングもよくてガタガタしない。
そして、その車内をエマが独り占めしている。
馬車の左右を騎馬で並走しているのが、この国の世継ぎの王子にして次期国王のルイス王子と公爵家嫡男にして次期宰相のジークヴァルト。
十人の護衛小隊と数人の従者たちは、三分の二が馬車の前後を走り、残りが先触れとして出ている。
どれほどの特別扱いを受けているか否が応でも分かる。
誰も見ていない車内だけど恐縮で隅っこにこじんまりと小さくなっているエマ。
薄いカーテンを通して飛ぶように過ぎ去っていく景色の中に、沿道に避けていた人たちが馬車を覗くように首を伸ばして見送るのが見える。
「どんなすごい人が乗ってるんだろう、とか思ってるんだろうなあ。
こんなことならやっぱり一人で帰ればよかった」
帰りは二泊の予定らしい。
夕暮れ時、一泊目のホテル前に到着し馬車の扉が開かれた。
(ものすごく疲れた…体力よりも気疲れが…)
「エマ、手を」
「よっこらしょ」と、腰を浮かせたところに扉の外からジークヴァルトが手を差しだした。
黒一色の軍服は、ジークヴァルトの美しい蒼銀の髪がことのほか映えて見える。
覗き込みたい衝動に駆られるほどに美しいアイスブルーの瞳がエマをじっと見上げている。
「あ、ありがとう、ございます」
差し出された手に右手を重ねると、ぐっと握り返された。
(大きくて力強い手……、てっ、なんで指絡めるんですか!?)
「エマ、疲れてないか?」
手に気を取られていたので、慌ててジークヴァルトを見ると心配げにエマを覗き込こんできた。
(っ?!顔!近っかー!!)
「だぃっ、大丈夫、です!」
(びっくりしたっ!こういうのホント慣れないからやめてー!)
ジークヴァルトの想いからは明後日の方向に勘違いして焦ったり驚いたりするエマに、どうした?とジークヴァルトが小首を傾げた。
すると肩から流れた銀の髪が引き締まった顔の輪郭を縁取る。
そして、ころころ変わるエマの様子がおかしかったのか、怜悧な目元が、僅かに下げられた眉尻とともにふわっと緩んだ。
(ホントにどうしちゃったんですかー!?)
激しく混乱するうちに馬車を降ろされたエマ。
赤い絨毯から視線を上げると、メイド姿のホテル従業員たちがずらっと並び全員がこちらを見ていた。
護衛を引き連れた貴族がやって来たのだから、ホテルとしてはこれくらいの出迎えは当然なのだろう。
さらに到着したのは二人の美丈夫な貴族青年と凛々しい護衛たち。
彼女たちの期待が最高潮に高まったところに馬車からおりてきたのがカトリーヌならみんな納得したはずだ。
だが、丁寧に降ろされたのは見るからに平民の娘。
エマにはみんなの顔が「なんだ?コイツ」って言っているようにしか見えなかった。
長身な美形貴族青年に親しげに手を繋がれ、周りを護衛で固められたエマは降り注ぐ容赦ない視線の矢にグサグサと射抜かれながら彼女達の間を歩かされるという拷問にあったのだった。
✳︎
湯浴み用の湯をたっぷり用意してもらい、只今ゆっくり入浴中。
「はあ~気持ちいい。こーゆー特別扱いは大歓迎~」
このホテルはもちろん貴族用だ。
五階建ての一番上の階をフロアごと貸し切ってあるらしい。先触れに出ていた人たちが手配したのだろう。有能だ。
一室をもらったエマには、専属のメイドとして年配の女性とエマより年下の女の子がついた。
あんなにたくさん出迎えたメイドたちは多分ほぼあっちに流れているんだろうなぁ、と想像する。
とにかく、エマとしてはたっぷりの湯のお風呂に浸かれたので何も不満はない。
気疲れに追い打ちをかけられた先程の拷問で気力が風前の灯火となったが、お陰でなんとか消えずにすんだ。
入浴後、ジークヴァルトから夕食のお誘いがあったが、疲れを理由に丁重に断り軽食を取って早々に寝た。
(収穫の手伝いから始まっていろいろあってほぼ徹夜!お風呂に入ってせっかく回復したんで、もう今日は寝ます!)
翌朝、とても爽やかに目覚めた。
部屋には白いブラウスと淡いラベンダー色のスカートが用意してあり、メイドからジークヴァルトからの贈り物だと聞かされた。
エマはどうしようかと思ったが、質素な平民服のままだと一緒にいる彼らの恥になるだろうというエマらしい考えで素直に着替えることにした。
ブラウスは極上の絹地でサイズもぴったりだった。滑らかな手触りにうっとりとし、スカートのウエストの程よい締め付け感にきりっと気持ちまで引き締まった。
朝食の部屋へは若くて綺麗なメイドに案内された。彼女はエマに愛想の欠片もない。せっかく爽やかに目覚めたのにと、感じの悪さにため息をつく。
たった一泊するだけのホテルのメイドでさえこの態度だ。この先、ジークヴァルトたちの側にいれば貴族女性たちの態度も推して量れるというもの。
問題が解決すればさっさとこの国を去ろうとあらためて思った。
案内された部屋では、ジークヴァルトとルイス王子が優雅にソファに腰掛けてエマを待っていた。
「エマ、おはよう。疲れはとれたか?」
昨日とはちがう濃紺の騎士服を着たジークヴァルトが晴れやかな笑顔で颯爽と歩み寄ってくる。
髪も顔もツヤツヤと輝き男前ぶりが増している。
(うわー、ピカピカのキラキラ~。死角がない。どの角度からも素敵男子。
この人を素敵だと思うのはもう生理現象だな。止めようと思っても止まらないやつだ。
もう、そういう人種だと思うしかないな。)
部屋には数人のメイドが控えている。全員が美しく粒ぞろいだ。ここにいるのは彼らの専属メイドとして勝ち残った女性たち。
(ひょっとすると、このツヤツヤの原因は彼女たちにたっぷり癒やされ……)
と、朝から下世話な想像をしかけて慌てて脳内から消した。
「おはようございます。ゆっくり休ませて頂きました。
昨日は夕食をご一緒せず申し訳ありませんでした。
それに、こんな素敵なお洋服をご用意いただいてありがとうございました」
「ああ、昨日のことは疲れていたのだから気にすることはない。
その服、とてもよく似合っている。
既製品なのだが、汚れた服のかわりになればと。気に入ってくれて、良かった」
ジークヴァルトが安心するように微笑む。
エマは、「汚い平民服よりましだから着ておけ」を貴族的に言い換えるとこうなるのかと、ジークヴァルトが知れば泣きたくなるようなことを考えていた。
朝食後、ジークヴァルトはエマを別の部屋に案内した。
ルイス王子が後ろからにやにやとにやけ顔でついてくるのは無視をする。
「さあ、エマ。気に入るといいのだが」
案内した部屋にはエマへのプレゼントを用意しておいた。女性が喜びそうな可愛らしい服やバッグに宝飾品など。
ホテルにはルイス王子の身分を隠してジークヴァルト、つまりホランヴェルス公爵家関係者として滞在している。
フロアごと貸し切る大貴族が来たという噂は瞬く間に町中に広まり、早朝から主だった店が同行の女性つまりエマに如何ですか?と売り込みに来たのだ。
ハンスのせいで汚れた胸糞悪い服のかわりに何か贈りたいと思っていたジークヴァルトはそれらを全て買い上げた。
だが、エマは喜ぶどころか戸惑い「…頂けません」と小さく首を振った。
喜んでもらえると思っていたジークヴァルトは、なぜエマが断るのかが分からなかった。
彼女が部屋に現れた時、世の男たちが女性へ贈り物をしたがる気持ちが初めて分かった。
自分が贈った服や宝石で愛する女性がその身を飾る。こんな独占欲丸出しの優越感があるだろうか。
ジークヴァルトがエマのために選んだスカートのラベンダー色は、謁見の時に着ていたドレス姿がとても美しかったことを思い出したからだ。思った通りとても似合っている。
そして、エマが素直に受け取ってくれたことが純粋に嬉しかった。
なのに、なぜ他の物は駄目なのか。
「遠慮することはない。女性はこういう物が好きなのだろ?」
と、すすめてみるが彼女は首を横にふる。
見かねたルイス王子が「エマの部屋のものは盗られて何もない。
せっかくジークヴァルトが用意したのだからもらってあげれば?」と言っても、「いいえ、頂くわけには…」と首をふる。
エマの笑顔を期待していた分、ジークヴァルトの動揺と落胆は大きかった。
(無理強いしては意味がない。喜んでもらいたいのだ。)
なんと声をかければいいかと思っていると、少し考えるふうにしたエマが「部屋に何も…?」と呟いたかと思うと、慌てて振り返った。
「図鑑っ!宰相補…、ジークヴァルト様からお借りした図鑑が!」
エマが「ジークヴァルト」と、初めて呼んでくれた。
一瞬息が詰まり、すぐに返事が出来なかった。
「申し訳ありません。もっと早くお返ししていれば盗まれずにすんだのに」
額に手を置き、「どうしよう」と落ち込むエマ。
「心配しなくて大丈夫だ。たいした物ではない。図鑑は他にもある。また好きなものを読めばいい」
不意打ちに名を呼ばれて、真剣な彼女には悪いが胸が高鳴り頬が緩んで仕方がない。
何笑ってるんですか!と言わんばかりに、「あんな超高級図鑑を盗られたんですよ?!」と言い募る様子も可愛くて仕方がない。
「ジークヴァルトから借りた図鑑?何のことだい?」
「先日たまたま本屋さんでお会いしまして。高価な植物図鑑を貸して頂けるとお屋敷にお招きいただいて、お借りしたんです」
「ほう、植物図鑑をわざわざ公爵邸まで?
ジークヴァルト、僕は初耳だな」
割り込んできたルイス王子にせっかくの気分が削がれ憮然とする。
「俺のプライベートをいちいちお前に報告する義務はない。俺が彼女とどう過ごそうとお前には関係ない」
「ここのところ執務を張り切ってやっていた理由がやっと分かったよ。
なるほど、人間、ご褒美って大切だよね?」
「それの何が悪い。執務効率が上がったのだから問題ない」
「是非持続を期待するよ。そうだエマ、今度宮殿の図書館をジークヴァルトに案内してもらえばいいよ」
「ええっ!」
「ああ、そうだな、そうしよう。宮殿の図書館はかなり大きい。見応えがあるぞ」
「では…もしも機会が有りましたら…」
遠慮がちに頷くエマに、ジークヴァルトは早速機会を作ろうと思った。
そして、この勢いでもう一度プレゼントをすすめるが、やはりエマは頷かなかった。
だが、ジークヴァルトは諦めきれない。
こんな気持ちは初めてだった。
どうしても何か贈りたい。自分が贈った物でエマのその身を飾って欲しい。
何かないかと焦るような気持ちでいると、ある宝飾品に目が止まった。
それは、澄んだ水色の小さな宝石がいくつも散りばめられ、緻密で繊細な彫金が施された小ぶりの金のペンダントだった。中に小さな絵姿などが入れられるようになったロケットという形だ。
宝石の色がアイスブルーの自分の瞳の色と同じだと気づくと迷うことなくそれを取った。
「このペンダントはどうだろうか?君にとても良く似合うと思うのだが……」
どうか断らないで欲しいと、自分でも信じられないくらいに自信なさげな声がでた。
エマはペンダントとジークヴァルトを見比べ戸惑っていたが、「きれい…ですね」と小さく微笑んだ。
その微笑みをみて、ジークヴァルトの行動は早かった。もうこのペンダントはエマを飾る以外ないと思った。
「髪を上へ」
そういうとエマの背後にまわる。
慌てたエマが反射的に髪を束ね上げると、ジークヴァルトの目の前に彼女の白い頸が露わになった。
震えそうな指で小さな留め金をはずし、落とさないよう首にかけてやる。
エマの細い首に金の鎖が輝く。すると、鎖の内側に榛色の後れ毛が取り残されていた。
少しうねりながら頸に添うそれを外に出そうと指ですくった。
指先がエマの頸をすうっと滑ったと同時に彼女の肩が小さく跳ねた。
慌てて手を引くが、目の前で白い頸がみるみる色づいていく。
そして、エマが震えた声で
「もう、いいですか?」
と、言った。
(可愛い、可愛い、可愛い、抱きしめたいっ)
衝動が突き上がり、腕を広げ包み込もうとーーー
「僕も何か買って帰ろうかな」
ルイス王子の声に我に返った。
慌てて手を下ろすと、エマも振り向き慌ててジークヴァルトから一歩距離をとった。
はずみで彼女の胸元でペンダントが跳ね水色の宝石がきらきらと輝く。
「綺麗だ…」
「ありがとう、ございます」
彼女の細い指がアイスブルーのそれをそっと撫ぜた。
(エマ…)
「僕も何か買おうかな」
「はあ~、いたな」
「いるよっ!」
「エマさん、遠慮なさらないで。こんなこともあろうかと、昨夜のうちに領地に使いを出しました。
もうすぐ迎えが来ますので」
「でも…」
(そんな大げさにしなくても…)
「エマ、乗るんだ。また賊が襲ってくるかも知れない。
カトリーヌ嬢、先ほどルイス王子が話した通り小隊の護衛はここまでだ。
王都までエマを護衛させる」
と言うジークヴァルトにカトリーヌは「もちろんですわ」と応じる。
一般市民に紛れればエマ一人くらい乗り合い馬車で帰れるのに…と思ったが口を挟む余地などなかった。
ついでに昨日の服の汚れがカトリーヌも気になっていたらしく、帰り支度をするエマの部屋まで手持ちの服を持ち込み幾つか勧めてくれた。
カトリーヌとはすっかり打ち解けて名残惜しいひと時を過ごした。
「エマさんとこうしてお話が出来るとは思ってなかったから嬉しいわ」
「私こそ、この度は本当にありがとうございました。
私もお話ができて嬉しかったです」
「でも、エマさんと宰相補佐様を見ていたらもう少し王都にいたかったかも。
あの方のあんな姿っ。ふふふ」
「抱きしめたり手を握ったり撫ぜたり、貴族女性なら男性からのああいった労りを当たり前に受けられるでしょうけど、私は慣れなくて」
いきなり距離感がおかしくなった扱いはエマには恥ずかしいものでしかなかった。
「あの方もやっぱり女性の扱いに慣れてらっしゃるのですね。
あんなに労り上手だと、確かに女性方に人気があるのが分かります」
「ごほぉっ!」
(いまご令嬢らしからぬ音が聞こえたような?)
服を畳んでいた顔を上げるとカトリーヌが咳き込んでいた。
「カトリーヌ様?大丈夫ですか?」
「し、失礼。なんでもないの。(エマさんって、鈍感!?)
そうね、(いままで失恋した多くの女性のために宰相補佐様のフォローはいたしませんわよっ!)あの方に憧れている女性は多いわね」
「やっぱり~、あははは」
「うふふふふ」
結局、勧めてもらったドレスは胸とか腰のサイズを見てエマが痛々しい愛想笑いを返すと、カトリーヌも何も言わずそっと引っ込めた。
カトリーヌには「また来シーズンに王都で会いましょう。織物の新作を持っていくわ」と言って見送ってもらい、ジークヴァルトには背を押されるように急かされて馬車に乗せられ、村長たちへの挨拶もそこそこにたった二泊の目まぐるしいエマの里帰りは終わったのだった。
✳︎
貴族の旅行用馬車は素晴らしい速さと乗り心地だった。スプリングもよくてガタガタしない。
そして、その車内をエマが独り占めしている。
馬車の左右を騎馬で並走しているのが、この国の世継ぎの王子にして次期国王のルイス王子と公爵家嫡男にして次期宰相のジークヴァルト。
十人の護衛小隊と数人の従者たちは、三分の二が馬車の前後を走り、残りが先触れとして出ている。
どれほどの特別扱いを受けているか否が応でも分かる。
誰も見ていない車内だけど恐縮で隅っこにこじんまりと小さくなっているエマ。
薄いカーテンを通して飛ぶように過ぎ去っていく景色の中に、沿道に避けていた人たちが馬車を覗くように首を伸ばして見送るのが見える。
「どんなすごい人が乗ってるんだろう、とか思ってるんだろうなあ。
こんなことならやっぱり一人で帰ればよかった」
帰りは二泊の予定らしい。
夕暮れ時、一泊目のホテル前に到着し馬車の扉が開かれた。
(ものすごく疲れた…体力よりも気疲れが…)
「エマ、手を」
「よっこらしょ」と、腰を浮かせたところに扉の外からジークヴァルトが手を差しだした。
黒一色の軍服は、ジークヴァルトの美しい蒼銀の髪がことのほか映えて見える。
覗き込みたい衝動に駆られるほどに美しいアイスブルーの瞳がエマをじっと見上げている。
「あ、ありがとう、ございます」
差し出された手に右手を重ねると、ぐっと握り返された。
(大きくて力強い手……、てっ、なんで指絡めるんですか!?)
「エマ、疲れてないか?」
手に気を取られていたので、慌ててジークヴァルトを見ると心配げにエマを覗き込こんできた。
(っ?!顔!近っかー!!)
「だぃっ、大丈夫、です!」
(びっくりしたっ!こういうのホント慣れないからやめてー!)
ジークヴァルトの想いからは明後日の方向に勘違いして焦ったり驚いたりするエマに、どうした?とジークヴァルトが小首を傾げた。
すると肩から流れた銀の髪が引き締まった顔の輪郭を縁取る。
そして、ころころ変わるエマの様子がおかしかったのか、怜悧な目元が、僅かに下げられた眉尻とともにふわっと緩んだ。
(ホントにどうしちゃったんですかー!?)
激しく混乱するうちに馬車を降ろされたエマ。
赤い絨毯から視線を上げると、メイド姿のホテル従業員たちがずらっと並び全員がこちらを見ていた。
護衛を引き連れた貴族がやって来たのだから、ホテルとしてはこれくらいの出迎えは当然なのだろう。
さらに到着したのは二人の美丈夫な貴族青年と凛々しい護衛たち。
彼女たちの期待が最高潮に高まったところに馬車からおりてきたのがカトリーヌならみんな納得したはずだ。
だが、丁寧に降ろされたのは見るからに平民の娘。
エマにはみんなの顔が「なんだ?コイツ」って言っているようにしか見えなかった。
長身な美形貴族青年に親しげに手を繋がれ、周りを護衛で固められたエマは降り注ぐ容赦ない視線の矢にグサグサと射抜かれながら彼女達の間を歩かされるという拷問にあったのだった。
✳︎
湯浴み用の湯をたっぷり用意してもらい、只今ゆっくり入浴中。
「はあ~気持ちいい。こーゆー特別扱いは大歓迎~」
このホテルはもちろん貴族用だ。
五階建ての一番上の階をフロアごと貸し切ってあるらしい。先触れに出ていた人たちが手配したのだろう。有能だ。
一室をもらったエマには、専属のメイドとして年配の女性とエマより年下の女の子がついた。
あんなにたくさん出迎えたメイドたちは多分ほぼあっちに流れているんだろうなぁ、と想像する。
とにかく、エマとしてはたっぷりの湯のお風呂に浸かれたので何も不満はない。
気疲れに追い打ちをかけられた先程の拷問で気力が風前の灯火となったが、お陰でなんとか消えずにすんだ。
入浴後、ジークヴァルトから夕食のお誘いがあったが、疲れを理由に丁重に断り軽食を取って早々に寝た。
(収穫の手伝いから始まっていろいろあってほぼ徹夜!お風呂に入ってせっかく回復したんで、もう今日は寝ます!)
翌朝、とても爽やかに目覚めた。
部屋には白いブラウスと淡いラベンダー色のスカートが用意してあり、メイドからジークヴァルトからの贈り物だと聞かされた。
エマはどうしようかと思ったが、質素な平民服のままだと一緒にいる彼らの恥になるだろうというエマらしい考えで素直に着替えることにした。
ブラウスは極上の絹地でサイズもぴったりだった。滑らかな手触りにうっとりとし、スカートのウエストの程よい締め付け感にきりっと気持ちまで引き締まった。
朝食の部屋へは若くて綺麗なメイドに案内された。彼女はエマに愛想の欠片もない。せっかく爽やかに目覚めたのにと、感じの悪さにため息をつく。
たった一泊するだけのホテルのメイドでさえこの態度だ。この先、ジークヴァルトたちの側にいれば貴族女性たちの態度も推して量れるというもの。
問題が解決すればさっさとこの国を去ろうとあらためて思った。
案内された部屋では、ジークヴァルトとルイス王子が優雅にソファに腰掛けてエマを待っていた。
「エマ、おはよう。疲れはとれたか?」
昨日とはちがう濃紺の騎士服を着たジークヴァルトが晴れやかな笑顔で颯爽と歩み寄ってくる。
髪も顔もツヤツヤと輝き男前ぶりが増している。
(うわー、ピカピカのキラキラ~。死角がない。どの角度からも素敵男子。
この人を素敵だと思うのはもう生理現象だな。止めようと思っても止まらないやつだ。
もう、そういう人種だと思うしかないな。)
部屋には数人のメイドが控えている。全員が美しく粒ぞろいだ。ここにいるのは彼らの専属メイドとして勝ち残った女性たち。
(ひょっとすると、このツヤツヤの原因は彼女たちにたっぷり癒やされ……)
と、朝から下世話な想像をしかけて慌てて脳内から消した。
「おはようございます。ゆっくり休ませて頂きました。
昨日は夕食をご一緒せず申し訳ありませんでした。
それに、こんな素敵なお洋服をご用意いただいてありがとうございました」
「ああ、昨日のことは疲れていたのだから気にすることはない。
その服、とてもよく似合っている。
既製品なのだが、汚れた服のかわりになればと。気に入ってくれて、良かった」
ジークヴァルトが安心するように微笑む。
エマは、「汚い平民服よりましだから着ておけ」を貴族的に言い換えるとこうなるのかと、ジークヴァルトが知れば泣きたくなるようなことを考えていた。
朝食後、ジークヴァルトはエマを別の部屋に案内した。
ルイス王子が後ろからにやにやとにやけ顔でついてくるのは無視をする。
「さあ、エマ。気に入るといいのだが」
案内した部屋にはエマへのプレゼントを用意しておいた。女性が喜びそうな可愛らしい服やバッグに宝飾品など。
ホテルにはルイス王子の身分を隠してジークヴァルト、つまりホランヴェルス公爵家関係者として滞在している。
フロアごと貸し切る大貴族が来たという噂は瞬く間に町中に広まり、早朝から主だった店が同行の女性つまりエマに如何ですか?と売り込みに来たのだ。
ハンスのせいで汚れた胸糞悪い服のかわりに何か贈りたいと思っていたジークヴァルトはそれらを全て買い上げた。
だが、エマは喜ぶどころか戸惑い「…頂けません」と小さく首を振った。
喜んでもらえると思っていたジークヴァルトは、なぜエマが断るのかが分からなかった。
彼女が部屋に現れた時、世の男たちが女性へ贈り物をしたがる気持ちが初めて分かった。
自分が贈った服や宝石で愛する女性がその身を飾る。こんな独占欲丸出しの優越感があるだろうか。
ジークヴァルトがエマのために選んだスカートのラベンダー色は、謁見の時に着ていたドレス姿がとても美しかったことを思い出したからだ。思った通りとても似合っている。
そして、エマが素直に受け取ってくれたことが純粋に嬉しかった。
なのに、なぜ他の物は駄目なのか。
「遠慮することはない。女性はこういう物が好きなのだろ?」
と、すすめてみるが彼女は首を横にふる。
見かねたルイス王子が「エマの部屋のものは盗られて何もない。
せっかくジークヴァルトが用意したのだからもらってあげれば?」と言っても、「いいえ、頂くわけには…」と首をふる。
エマの笑顔を期待していた分、ジークヴァルトの動揺と落胆は大きかった。
(無理強いしては意味がない。喜んでもらいたいのだ。)
なんと声をかければいいかと思っていると、少し考えるふうにしたエマが「部屋に何も…?」と呟いたかと思うと、慌てて振り返った。
「図鑑っ!宰相補…、ジークヴァルト様からお借りした図鑑が!」
エマが「ジークヴァルト」と、初めて呼んでくれた。
一瞬息が詰まり、すぐに返事が出来なかった。
「申し訳ありません。もっと早くお返ししていれば盗まれずにすんだのに」
額に手を置き、「どうしよう」と落ち込むエマ。
「心配しなくて大丈夫だ。たいした物ではない。図鑑は他にもある。また好きなものを読めばいい」
不意打ちに名を呼ばれて、真剣な彼女には悪いが胸が高鳴り頬が緩んで仕方がない。
何笑ってるんですか!と言わんばかりに、「あんな超高級図鑑を盗られたんですよ?!」と言い募る様子も可愛くて仕方がない。
「ジークヴァルトから借りた図鑑?何のことだい?」
「先日たまたま本屋さんでお会いしまして。高価な植物図鑑を貸して頂けるとお屋敷にお招きいただいて、お借りしたんです」
「ほう、植物図鑑をわざわざ公爵邸まで?
ジークヴァルト、僕は初耳だな」
割り込んできたルイス王子にせっかくの気分が削がれ憮然とする。
「俺のプライベートをいちいちお前に報告する義務はない。俺が彼女とどう過ごそうとお前には関係ない」
「ここのところ執務を張り切ってやっていた理由がやっと分かったよ。
なるほど、人間、ご褒美って大切だよね?」
「それの何が悪い。執務効率が上がったのだから問題ない」
「是非持続を期待するよ。そうだエマ、今度宮殿の図書館をジークヴァルトに案内してもらえばいいよ」
「ええっ!」
「ああ、そうだな、そうしよう。宮殿の図書館はかなり大きい。見応えがあるぞ」
「では…もしも機会が有りましたら…」
遠慮がちに頷くエマに、ジークヴァルトは早速機会を作ろうと思った。
そして、この勢いでもう一度プレゼントをすすめるが、やはりエマは頷かなかった。
だが、ジークヴァルトは諦めきれない。
こんな気持ちは初めてだった。
どうしても何か贈りたい。自分が贈った物でエマのその身を飾って欲しい。
何かないかと焦るような気持ちでいると、ある宝飾品に目が止まった。
それは、澄んだ水色の小さな宝石がいくつも散りばめられ、緻密で繊細な彫金が施された小ぶりの金のペンダントだった。中に小さな絵姿などが入れられるようになったロケットという形だ。
宝石の色がアイスブルーの自分の瞳の色と同じだと気づくと迷うことなくそれを取った。
「このペンダントはどうだろうか?君にとても良く似合うと思うのだが……」
どうか断らないで欲しいと、自分でも信じられないくらいに自信なさげな声がでた。
エマはペンダントとジークヴァルトを見比べ戸惑っていたが、「きれい…ですね」と小さく微笑んだ。
その微笑みをみて、ジークヴァルトの行動は早かった。もうこのペンダントはエマを飾る以外ないと思った。
「髪を上へ」
そういうとエマの背後にまわる。
慌てたエマが反射的に髪を束ね上げると、ジークヴァルトの目の前に彼女の白い頸が露わになった。
震えそうな指で小さな留め金をはずし、落とさないよう首にかけてやる。
エマの細い首に金の鎖が輝く。すると、鎖の内側に榛色の後れ毛が取り残されていた。
少しうねりながら頸に添うそれを外に出そうと指ですくった。
指先がエマの頸をすうっと滑ったと同時に彼女の肩が小さく跳ねた。
慌てて手を引くが、目の前で白い頸がみるみる色づいていく。
そして、エマが震えた声で
「もう、いいですか?」
と、言った。
(可愛い、可愛い、可愛い、抱きしめたいっ)
衝動が突き上がり、腕を広げ包み込もうとーーー
「僕も何か買って帰ろうかな」
ルイス王子の声に我に返った。
慌てて手を下ろすと、エマも振り向き慌ててジークヴァルトから一歩距離をとった。
はずみで彼女の胸元でペンダントが跳ね水色の宝石がきらきらと輝く。
「綺麗だ…」
「ありがとう、ございます」
彼女の細い指がアイスブルーのそれをそっと撫ぜた。
(エマ…)
「僕も何か買おうかな」
「はあ~、いたな」
「いるよっ!」
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