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6薬草屋
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スーラのパン屋でエマが働き出して、ひと月ほど経つと王都の生活にもすっかり慣れてきた。パン屋の店番や陳列、掃除などがエマの主な仕事だ。
ある日の午後、休憩が終わり店番を変わるために店に戻るとスーラがお客と話しこんでいた。
「この歳になるといろいろ調子が悪くなるよ」
「ほんとにね、気持ちはいつまでも若い時のまんまなんだけどね」
お客は近所の八百屋の老婆だ。店は息子夫婦に任せていていまはお客の少ない時間帯に店番をしたり、近所の茶飲み友達と世間話をするのが日課になっているらしい。
スーラのパン屋には世間話をするために来る常連客が何人かいて、老婆もその一人だ。
店内にはそういう客のために小さなテーブルと三脚の椅子が壁際に用意されてある。
エマは二人に軽く挨拶しエプロンをつけてそっとカウンターにもどると、二人の話を聞くとはなしにパンの陳列を直したりと仕事をし始めた。
「何言ってるんだい。わたしらからみたらスーラなんてまたまだ娘だよ」
「娘だなんて言い過ぎだよ。それにしても膝が辛いのかい?」
老婆の冗談に笑いながらスーラが応じていたが、老婆が膝をさするのをみて心配げに尋ねる。
「そうなんだよ。いろいろ薬やら湿布やらためしてるんだけど、一向によくならなくてね。もう歳だからしかたないのかね」
エマは老婆が寂しそうにそう言うのを聞いて、気持ちがムズムズとなった。
エマが魔女であることは、様々な人が集まる王都では余計なトラブルに巻き込まれないために、知られないようにしようと思っている。
でも、いま目の前で辛そうに足をさする老婆を見て気持ちは揺れる。
(私にはこのおばあちゃんの痛みを取ってあらげることが出来るのに、知らないふりしてていいのかな…)
そう思うとエマは「あの、」ともう老婆へと声をかけていた。突然カウンターから声をかけたエマに老婆とスーラが顔をむける。
「あ、あの、私の田舎に伝わる膝の痛みによく効く薬があるんです。村の中でもよく使われていたんですが、一度試してみませんか?」
この世界では医者にかかるのは貴族だけだ。
医者自身が相続権のない貴族の次男や三男だからだ。
なかには市井に下りてくる奇特な医者もいるが、そういう者は自身の修行のようにより厳しい環境を求めて、辺境へと向かう。
つまり、辺境の民のほうが医師の医療行為を受けられるという現象が稀におこる。
庶民も代金を払えば診てはもらえるのだが、医者にかかるのはよほどの重病の時くらいという習慣が根付いている。
では、ふつう庶民が体調を崩した場合はどうするのか。
薬草を売る薬草屋へ行き、そこで症状を相談して薬を調合してもらったり、欲しい薬草を買って帰り自分で煎じて飲んだりして治す。外傷をおったときも薬草屋が出向き治療にあたる。
つまり、民間の医療は薬草屋の知識と経験のみが頼りのため、口コミで腕の良い薬草屋の噂が広まることになる。
「エマちゃんは作ったことがあるのかい?」
「はい、『お婆ちゃん』に教えてもらって何度か作ったことがあります」
「それはいいねぇ!エマちゃん、是非作ってくれるかい?村秘伝の薬なら効くかもしれない」
老婆の顔がぱっと明るくなったのを見てエマは「もちろんです」と大きく頷いた。
老婆が帰ったその日の夜、ロイも役所仕事の後スーラの家で夕食を一緒にとった。
エマの歓迎会をしてもらったときからもうひと月もたったのだ。
このひと月、スーラの裏表ない人柄、スーラの夫ロジの無口で実直な人情味ある優しさ、ロイの誠実で飾らない真面目さに触れた。
エマはこの人たちに自分が魔女であると告白したかった。
自分のことを教えてあげるのではない、この人たちに『魔女のエマ』でもいいよと受け入れてほしかった。
ドリスが村長夫妻に受け入れられたように。
『魔女』は余計なことに巻き込まれないよう、それと分からないように暮らす。
つまり世間の人々にとって『魔女』は実際にいるかいないか分からないような都市伝説のような存在なのだ。
もし、告白して「得体が知れない」と怖がられたらどうしようと躊躇いがあったが、いまがまさにそのタイミングだと思った。
放り出されたら楽しかったことを思い出にしてまた村で暮らせばいいと腹をくくった。
夕食が終わり、飲み物を飲みながら寛ぐ時間。
ロジは今日はほろ酔いになる程度のアルコールを楽しみ、チーズを肴にちびりちびりとやっている。ロイも月末に迫った春の大祭の手伝いのことをスーラと話している。
するとスーラが思い出したように「そういえば今日、八百屋の…」と昼間の話を持ち出した。エマはギクリと肩が揺れたが、手にしたマグカップを両手で握り、顔を上げた。
「あの!そのことなんですが!」
思いのほか力の入った声に、何事かと三人がエマを見た。
「あの、聞いてもらいたいことがあって。村での私のことですが、まだ話してないことがあって」
エマが、そういって言い淀むと、「じつは薬の作り方を忘れちまったのかい?」とスーラが冗談めかす。
「いえ、薬草を扱ったことがあるのは本当です。それは亡くなった『お婆ちゃん』ドリスに教えられました。
何故なら…私の『お婆ちゃん』は…魔女だったからです」
そう話を切り出すと、エマは魔女のことを三人に話して聞かせた。
もちろん、『力』と『異世界』は秘密だ。
「魔女とは、驚いた。そうかい、魔女なのかい、そうかい、そうかい」
スーラは何度もそう言いながら、自分を納得させようとしているようだった。
「僕は納得したよ。エマが魔女なら」
「納得?」
「ああ、初めて会った時から田舎から出てきましたという雰囲気を全く受けなかった。話し方立ち振る舞い、それに何より読み書きや計算が出来ることだ。普通ならエマの生活環境からは考えられない」
(私ってそんなに違和感たっぷりだったんだ…)
「ひょっとして村長もそのことを知ってるんじゃ?」
「はい…」
「なら、あの村長からの丁寧な紹介状も納得だ」
「あの、大丈夫なの?」
スラスラと話すロイを不思議に思った。
「どういうこと?」
「だから、魔女って…得体が知れなくないですか?」
もっとびっくりされたり、怖がられたりといろいろ想像と違ったのでエマの方が戸惑った。
「それはないさ。実際にいるんだなって驚いただけ。叔母さんも叔父さんもそうだろ?」
「エマ、そんな大切なこと教えてくれてありがとうね」
スーラの言葉にロジも、うんうんと頷いている。
「みなさん、ありがとうございます」
エマが三人の顔を見回しほっと肩の力を抜いたところに、スーラが子供のように興味津々に身をのりだす。
「ところで、魔女が作る薬って他とどうちがうんだい?」
「え、えーと、ですねぇ。すみません、魔女の『力』に関わることは何も話せないんです。ただ、八百屋のお婆ちゃんの足の痛みを治してみせます。それが私が魔女だという証拠です」
三人はいつにないエマの真剣な眼差しに目を見張った。
翌日、いい薬草を揃えているという評判の薬草屋へスーラが案内してくれた。
「商店が立ち並ぶとこからは少し離れるんだけど、評判のいい薬草屋なんだよ。
店自体は私が子供のときからあるんだけどね、商っている爺さんより、二年前に雇った店員のほうが腕がいいんだよ」
「へえ、そうなんですか」
「でもその店員、エマがみたらびっくりするかもしれないね」
スーラは楽しい隠し事のようにエマにそう言った。
「びっくりですか?」
「見てのお楽しみだよ。ほらあの青い屋根の家さ」
スーラが指した方向には、煙突のある青い三角屋根の民家があった。賑わった場所から少し離れているため、程よく静かで木の柵で囲まれた庭もあった。
「なんか、理想の庭付き一戸建てって感じ…」
スーラは扉のノッカーをコンコンコンと鳴らすと、「ルー、いるかい?お邪魔するよ」と慣れたふうに声をかけ、扉を開けるとエマも続いて中に入った。
エマを薬草の様々な薫りがふわっと包み込む。
天井からたくさんの乾燥させた薬草の束が吊るされ、正面のカウンター以外の左右の壁には梯子を使うほど高い棚がびっしりと並べられ、薬草のビンや薬箱に引き出しがずらりと並んでいた。
太陽光が直接当たらないように窓はごく小さいので部屋は薄暗い。
だが風通しはよいように高い天井の空気窓から外気を取り入れて上手く循環させているのだろう、室内は爽やかな薬草の香りに満たされとても居心地がよかった。
エマが思わず手近な乾燥樹皮にすっと指を滑らすように触れ挨拶をささやくと、今まで安んじていたそれがふと目を覚ましたかのように感じられた。
するとそこを起点にさざ波のように伝わってゆき、部屋中の薬草たちが一斉にエマの来訪を喜ぶようにざわめいているように感じた。
生薬はただの植物であった時よりもその薬効を最大限に引き出せるように手が加えられてあるために、自分たちを扱う主人のような存在である魔女に敏感に反応する。
部屋の薬草の芳香がくんと立ち上る。
「いつきてもここの薫りを吸うと体が良くなる気になるよ。今日は一段と」とスーラは大きく息を吸っている。
すると店員が奥の扉から姿を現した。
「スーラさん、いらっしゃい」
高くも低くもなく、とてもおちついた中性的な若い声に店内を見回していたエマは店員へと視線を向けた。
スーラがびっくりするよと言った意味がわかった。
(この店員さん、なんて神秘的な人だろう!
なんて綺麗な銀髪っ!
こんな色の髪初めて見たっ。
長い髪、まるで絹糸みたい。
長い前髪が右目の上にかかっているのがなんとも妖艶で、でも瞳は濃い藍色だから意志が強そうで儚い雰囲気ないし。
それに肌がきれい!陶器のようなつるつるすべすべっ!
それに背もとっても高い。
うわ、髪を耳にかける仕草なんて色気だだ漏れだぁ~
ところで、この人は…
男の人?!女の人?!)
ある日の午後、休憩が終わり店番を変わるために店に戻るとスーラがお客と話しこんでいた。
「この歳になるといろいろ調子が悪くなるよ」
「ほんとにね、気持ちはいつまでも若い時のまんまなんだけどね」
お客は近所の八百屋の老婆だ。店は息子夫婦に任せていていまはお客の少ない時間帯に店番をしたり、近所の茶飲み友達と世間話をするのが日課になっているらしい。
スーラのパン屋には世間話をするために来る常連客が何人かいて、老婆もその一人だ。
店内にはそういう客のために小さなテーブルと三脚の椅子が壁際に用意されてある。
エマは二人に軽く挨拶しエプロンをつけてそっとカウンターにもどると、二人の話を聞くとはなしにパンの陳列を直したりと仕事をし始めた。
「何言ってるんだい。わたしらからみたらスーラなんてまたまだ娘だよ」
「娘だなんて言い過ぎだよ。それにしても膝が辛いのかい?」
老婆の冗談に笑いながらスーラが応じていたが、老婆が膝をさするのをみて心配げに尋ねる。
「そうなんだよ。いろいろ薬やら湿布やらためしてるんだけど、一向によくならなくてね。もう歳だからしかたないのかね」
エマは老婆が寂しそうにそう言うのを聞いて、気持ちがムズムズとなった。
エマが魔女であることは、様々な人が集まる王都では余計なトラブルに巻き込まれないために、知られないようにしようと思っている。
でも、いま目の前で辛そうに足をさする老婆を見て気持ちは揺れる。
(私にはこのおばあちゃんの痛みを取ってあらげることが出来るのに、知らないふりしてていいのかな…)
そう思うとエマは「あの、」ともう老婆へと声をかけていた。突然カウンターから声をかけたエマに老婆とスーラが顔をむける。
「あ、あの、私の田舎に伝わる膝の痛みによく効く薬があるんです。村の中でもよく使われていたんですが、一度試してみませんか?」
この世界では医者にかかるのは貴族だけだ。
医者自身が相続権のない貴族の次男や三男だからだ。
なかには市井に下りてくる奇特な医者もいるが、そういう者は自身の修行のようにより厳しい環境を求めて、辺境へと向かう。
つまり、辺境の民のほうが医師の医療行為を受けられるという現象が稀におこる。
庶民も代金を払えば診てはもらえるのだが、医者にかかるのはよほどの重病の時くらいという習慣が根付いている。
では、ふつう庶民が体調を崩した場合はどうするのか。
薬草を売る薬草屋へ行き、そこで症状を相談して薬を調合してもらったり、欲しい薬草を買って帰り自分で煎じて飲んだりして治す。外傷をおったときも薬草屋が出向き治療にあたる。
つまり、民間の医療は薬草屋の知識と経験のみが頼りのため、口コミで腕の良い薬草屋の噂が広まることになる。
「エマちゃんは作ったことがあるのかい?」
「はい、『お婆ちゃん』に教えてもらって何度か作ったことがあります」
「それはいいねぇ!エマちゃん、是非作ってくれるかい?村秘伝の薬なら効くかもしれない」
老婆の顔がぱっと明るくなったのを見てエマは「もちろんです」と大きく頷いた。
老婆が帰ったその日の夜、ロイも役所仕事の後スーラの家で夕食を一緒にとった。
エマの歓迎会をしてもらったときからもうひと月もたったのだ。
このひと月、スーラの裏表ない人柄、スーラの夫ロジの無口で実直な人情味ある優しさ、ロイの誠実で飾らない真面目さに触れた。
エマはこの人たちに自分が魔女であると告白したかった。
自分のことを教えてあげるのではない、この人たちに『魔女のエマ』でもいいよと受け入れてほしかった。
ドリスが村長夫妻に受け入れられたように。
『魔女』は余計なことに巻き込まれないよう、それと分からないように暮らす。
つまり世間の人々にとって『魔女』は実際にいるかいないか分からないような都市伝説のような存在なのだ。
もし、告白して「得体が知れない」と怖がられたらどうしようと躊躇いがあったが、いまがまさにそのタイミングだと思った。
放り出されたら楽しかったことを思い出にしてまた村で暮らせばいいと腹をくくった。
夕食が終わり、飲み物を飲みながら寛ぐ時間。
ロジは今日はほろ酔いになる程度のアルコールを楽しみ、チーズを肴にちびりちびりとやっている。ロイも月末に迫った春の大祭の手伝いのことをスーラと話している。
するとスーラが思い出したように「そういえば今日、八百屋の…」と昼間の話を持ち出した。エマはギクリと肩が揺れたが、手にしたマグカップを両手で握り、顔を上げた。
「あの!そのことなんですが!」
思いのほか力の入った声に、何事かと三人がエマを見た。
「あの、聞いてもらいたいことがあって。村での私のことですが、まだ話してないことがあって」
エマが、そういって言い淀むと、「じつは薬の作り方を忘れちまったのかい?」とスーラが冗談めかす。
「いえ、薬草を扱ったことがあるのは本当です。それは亡くなった『お婆ちゃん』ドリスに教えられました。
何故なら…私の『お婆ちゃん』は…魔女だったからです」
そう話を切り出すと、エマは魔女のことを三人に話して聞かせた。
もちろん、『力』と『異世界』は秘密だ。
「魔女とは、驚いた。そうかい、魔女なのかい、そうかい、そうかい」
スーラは何度もそう言いながら、自分を納得させようとしているようだった。
「僕は納得したよ。エマが魔女なら」
「納得?」
「ああ、初めて会った時から田舎から出てきましたという雰囲気を全く受けなかった。話し方立ち振る舞い、それに何より読み書きや計算が出来ることだ。普通ならエマの生活環境からは考えられない」
(私ってそんなに違和感たっぷりだったんだ…)
「ひょっとして村長もそのことを知ってるんじゃ?」
「はい…」
「なら、あの村長からの丁寧な紹介状も納得だ」
「あの、大丈夫なの?」
スラスラと話すロイを不思議に思った。
「どういうこと?」
「だから、魔女って…得体が知れなくないですか?」
もっとびっくりされたり、怖がられたりといろいろ想像と違ったのでエマの方が戸惑った。
「それはないさ。実際にいるんだなって驚いただけ。叔母さんも叔父さんもそうだろ?」
「エマ、そんな大切なこと教えてくれてありがとうね」
スーラの言葉にロジも、うんうんと頷いている。
「みなさん、ありがとうございます」
エマが三人の顔を見回しほっと肩の力を抜いたところに、スーラが子供のように興味津々に身をのりだす。
「ところで、魔女が作る薬って他とどうちがうんだい?」
「え、えーと、ですねぇ。すみません、魔女の『力』に関わることは何も話せないんです。ただ、八百屋のお婆ちゃんの足の痛みを治してみせます。それが私が魔女だという証拠です」
三人はいつにないエマの真剣な眼差しに目を見張った。
翌日、いい薬草を揃えているという評判の薬草屋へスーラが案内してくれた。
「商店が立ち並ぶとこからは少し離れるんだけど、評判のいい薬草屋なんだよ。
店自体は私が子供のときからあるんだけどね、商っている爺さんより、二年前に雇った店員のほうが腕がいいんだよ」
「へえ、そうなんですか」
「でもその店員、エマがみたらびっくりするかもしれないね」
スーラは楽しい隠し事のようにエマにそう言った。
「びっくりですか?」
「見てのお楽しみだよ。ほらあの青い屋根の家さ」
スーラが指した方向には、煙突のある青い三角屋根の民家があった。賑わった場所から少し離れているため、程よく静かで木の柵で囲まれた庭もあった。
「なんか、理想の庭付き一戸建てって感じ…」
スーラは扉のノッカーをコンコンコンと鳴らすと、「ルー、いるかい?お邪魔するよ」と慣れたふうに声をかけ、扉を開けるとエマも続いて中に入った。
エマを薬草の様々な薫りがふわっと包み込む。
天井からたくさんの乾燥させた薬草の束が吊るされ、正面のカウンター以外の左右の壁には梯子を使うほど高い棚がびっしりと並べられ、薬草のビンや薬箱に引き出しがずらりと並んでいた。
太陽光が直接当たらないように窓はごく小さいので部屋は薄暗い。
だが風通しはよいように高い天井の空気窓から外気を取り入れて上手く循環させているのだろう、室内は爽やかな薬草の香りに満たされとても居心地がよかった。
エマが思わず手近な乾燥樹皮にすっと指を滑らすように触れ挨拶をささやくと、今まで安んじていたそれがふと目を覚ましたかのように感じられた。
するとそこを起点にさざ波のように伝わってゆき、部屋中の薬草たちが一斉にエマの来訪を喜ぶようにざわめいているように感じた。
生薬はただの植物であった時よりもその薬効を最大限に引き出せるように手が加えられてあるために、自分たちを扱う主人のような存在である魔女に敏感に反応する。
部屋の薬草の芳香がくんと立ち上る。
「いつきてもここの薫りを吸うと体が良くなる気になるよ。今日は一段と」とスーラは大きく息を吸っている。
すると店員が奥の扉から姿を現した。
「スーラさん、いらっしゃい」
高くも低くもなく、とてもおちついた中性的な若い声に店内を見回していたエマは店員へと視線を向けた。
スーラがびっくりするよと言った意味がわかった。
(この店員さん、なんて神秘的な人だろう!
なんて綺麗な銀髪っ!
こんな色の髪初めて見たっ。
長い髪、まるで絹糸みたい。
長い前髪が右目の上にかかっているのがなんとも妖艶で、でも瞳は濃い藍色だから意志が強そうで儚い雰囲気ないし。
それに肌がきれい!陶器のようなつるつるすべすべっ!
それに背もとっても高い。
うわ、髪を耳にかける仕草なんて色気だだ漏れだぁ~
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男の人?!女の人?!)
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