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第24話 本部からの連絡
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ナチュランの村は長い長い夜が明け朝日が登っていた。
アスカは目を覚ますとすぐに顔を洗い、寝癖だらけでボサボサの髪を簡単に整える。これがアスカの1日の始まりとも言える行動だ。初めは慣れなかったが日に日に癖づいて行き、今では無意識にできる程になっていた。
「……死にそう」
いつもは切り替えていくのだが、昨日晩ご飯を食べていないので空腹で今にでも倒れてしまいそうであった。何でもいいから何か食べて腹を満たさなければ外に出る前に力尽きてしまいそうだ。
まだ随分と朝早い時間帯なのであの男はまだ起きていないかもしれない。だがその場合は非常時ということで摘み食いをしようとアスカは考える。
「おはようございまーす……」
そーっと静かに扉を開けて家のリビングに出る。中をキョロキョロと見渡すが、やはり男は起きていなかった。
「摘み食い失礼しまーす……」
いつ起きるかわからないという緊張感の中、抜き足差し足忍び足のリズムで最近この村に販売され始めた冷蔵庫と同じ役割をしている魔具に近づいて行く。その途中、アスカはいつも食事をしている机の上に1枚の置き手紙があることに気がついた。
『どうせ摘み食いすると思ってたから日持ちする簡単な料理を作っといた。そこの魔具の中にあるから勝手に食べてくれ。追伸、俺の名前はベルトロスだ。多分まだ言ってなかったはずだからこの際ここに記しておく』
置き手紙の内容はこんなものであった。どうやらアスカの行動はだいたい予想できていたらしい。それに今までわからないかった名前がようやく判明して呼び方に困らなくなった。
しかし、アスカには1つだけ言いたいことがあった。
「名前、結構カッコイイな……」
はっきり言って、ラドとかルイスとかジョルダンよりもカッコイイとアスカは感じた。
***
男改めベルトロスが作ってくれていた料理を食べたアスカは冒険者ギルドの前に来ていた。
いつもならば普通に入るのだが、今日は珍しく早起きしてしまったため入ってもいいのかが不安だ。
「おはようございまーす……」
少しばかり緊張しながらギルド内に入る。
しかしそこには、昨日やけに飲んでいたのであろうラドとその他の冒険者達が椅子や机にうつ伏せになっていびきを立てながら眠っていた。
「うわぁ」
そんな光景に若干引いているところに、ニコニコと笑顔の受付の人がメガホンを2つ手に持ちながらアスカの方に向かって歩いてくる。そしてアスカの目の前まで来るとメガホンを1つ手渡してくる。
受付の人はアスカがメガホンを手に持つと、メガホンを口の前に置いて何かを叫ぶようなジェスチャーをする。
それを見て何をするつもりなのかと一緒にやらないかと誘ってきているのをアスカは理解した。
「……せーの」
受付の人の合図で2人は口の前にメガホンを置き、手元についているボタンを押して──
「「おっきろぉーー!!」」
「「「「ぅわあああああーーー!!!」」」」
特大の「おっきろー」がギルド内に響き渡り、その振動は現在進行形で眠っていた冒険者達の鼓膜に伝わり、全員が一斉に目を覚ます。そして起きた冒険者の9割が体勢をくずしそのまま倒れる。
「はい、おはようございます皆さん!」
「「「「殺す気か!!」」」」
「生きてるじゃないですか~。結果良ければ全て良しってことで」
「「「「ふざけんな!」」」」
確かに、下手すれば鼓膜が破れるか驚き過ぎて心肺停止なんてことが起きてもおかしくはなかった。しかし、奇跡的に全員が転部などの軽い怪我なので全く問題は無い。
「まあそれはともかく、皆さんの中にいる特定の方々にご連絡があります」
「連絡?」
「昨日に緊急クエストにご参加いただきましたルイスさん、ラドさん、ジョルダンさん、レンさん、アスカさんは至急こちらまでお願いします」
偶然にも5人が全員この場に揃っており、その誰もが昨日の変異種についての話なのだと言う予想はできていた。
そして、5人が受付の人がいる場所に集まるとギルドの奥へと案内して行き、1つの部屋の中へと入り5人を椅子に座らせた。
「さて、それでは早速本題言いましょう」
「お願いします」
「はい。昨日の件についてですが、まだ詳しくは解明できてはおりません」
「ま、流石にそんな早くはできねぇーよな」
「しかし、その件について冒険者ギルド本部のギルドマスターから話を聞きたいという連絡がありました」
「本部といえば、セヴィオルナにあるあのですよね?」
「そうです」
セヴィオルナ──この世界の中心とも言える街であり、冒険者ギルドの本部がある街。そんな所にある冒険者ギルドのギルドマスターが直接話したいということは、この事態はただ事ではないということだ。
その事実が、アスカを昨日の話についての迷いが深くなる。
「どうやら変異種はこの村付近だけでなく各地で出現しているらしいのです」
「変異種?」
「変異した魔獣だと長いから略称をつけ、それがこの変異種という呼び方らしいです」
アスカはその変異種という呼び方に関して、あの少女が既にそう呼んでいたので特に思うことはなかった。
そこに、ジョルダンが険しい表情をしながら質問する。
「……犠牲者も……出ているのですか?」
「……はい……残念ながら」
その言葉はとても重いものであり、この場の雰囲気を変えるのには十分な事実であった。
冒険者は危険と常に隣り合わせ。そんなことを理解していても、いざ死んだ者がいるとなると少し暗い雰囲気にはなってしまう。
「……こちらをお受け取りください」
そう言って受付の人が手渡したのは、いつも冒険者が場所移動に使う馬車に乗るための紙であった。それも、いつもとは色が違っていた。
「本来ならば料金がかかりますが、そちらを使えばセヴィオルナまで無料で行けるようになっています」
今更だが、この村に限らず全ての村や街にある馬車はセヴィオルナまで行き、そこである程度の資源や食料、貿易などを行いそれぞれ担当の村や街に戻って来ている。
この馬車は他の村や街と繋がることのできる唯一の乗り物なのだ。
「帰りはどうするんですか?」
「実はそれ、1枚で往復分なのです。ですので、行き帰りに1回ずつ見せていただければ向こうも理解してくださるかと思います。こちらは本部からの支給です」
これが意味するのは、セヴィオルナに行き冒険者ギルド本部のギルドマスターに会いに行けということだ。
ギルドマスター自身が来ればいいなんて思うかもしれないが、ギルドマスターとはクエストの依頼してくる人の対応や今回のような急な緊急事態の対応など、意外と仕事がある。それも毎日。
それに、もしアスカ達以外の冒険者から話を聞くとなるとその各村や街に態々行かなければならない。
そんな来いと言われて「はい行きます」なんて返事は中々することができない。
「明後日までにセヴィオルナに行き、冒険者ギルドまで来てくださいとのことです」
「明後日……」
明後日という言葉にアスカが反応する。
明後日なんて早いな、という考えもあったが1番最初に浮かんだのは少女との契約の話の最終期限だ。この最終期限も明後日、その事がよりアスカに時間という焦りが襲う。
「これで以上です。ちなみにこの村からセヴィオルナまでは片道1日です。もし今日中に出発できれば少し余裕が持てますので」
受付の人が付け足してそう言うと、閉めていた扉を開けて部屋の外に案内する。
5人は部屋の外に出ると受付の人は1度頭を下げ「失礼します」と一言言って元の仕事に戻って行った。
「……ルイス、お前話聞いてなかっただろ」
「仕方ないじゃん。頭がぼーっとするんだから」
「ま、これから俺はセヴィオルナに行く。準備なんてそこまでいらないと思うしな」
そう言ってラドはギルドから出て行った。
そのすぐあとにルイスがジョルダンにどうすればいいのかを聞き、仕方ない感じで教えていた。
「アスカさんはどうします?」
「………明後日」
「アスカさん?」
「……ん、ああ、ごめん。でなんだ?」
「しっかりしてくださいよ~。セヴィオルナにはいつ行きますか?」
「そうだな……俺は今日中には行こうと思ってる。向こうに多分ソニアさんがいると思うから、ダンジョンの話について相談して起きたいからな」
「それなら僕も行った方がいいですよね?」
「その方がいいな」
流石に早速出発なんてことはできないので、今夜分の食料などを購入しにアスカとレンは共にギルドの外に行った。
アスカは目を覚ますとすぐに顔を洗い、寝癖だらけでボサボサの髪を簡単に整える。これがアスカの1日の始まりとも言える行動だ。初めは慣れなかったが日に日に癖づいて行き、今では無意識にできる程になっていた。
「……死にそう」
いつもは切り替えていくのだが、昨日晩ご飯を食べていないので空腹で今にでも倒れてしまいそうであった。何でもいいから何か食べて腹を満たさなければ外に出る前に力尽きてしまいそうだ。
まだ随分と朝早い時間帯なのであの男はまだ起きていないかもしれない。だがその場合は非常時ということで摘み食いをしようとアスカは考える。
「おはようございまーす……」
そーっと静かに扉を開けて家のリビングに出る。中をキョロキョロと見渡すが、やはり男は起きていなかった。
「摘み食い失礼しまーす……」
いつ起きるかわからないという緊張感の中、抜き足差し足忍び足のリズムで最近この村に販売され始めた冷蔵庫と同じ役割をしている魔具に近づいて行く。その途中、アスカはいつも食事をしている机の上に1枚の置き手紙があることに気がついた。
『どうせ摘み食いすると思ってたから日持ちする簡単な料理を作っといた。そこの魔具の中にあるから勝手に食べてくれ。追伸、俺の名前はベルトロスだ。多分まだ言ってなかったはずだからこの際ここに記しておく』
置き手紙の内容はこんなものであった。どうやらアスカの行動はだいたい予想できていたらしい。それに今までわからないかった名前がようやく判明して呼び方に困らなくなった。
しかし、アスカには1つだけ言いたいことがあった。
「名前、結構カッコイイな……」
はっきり言って、ラドとかルイスとかジョルダンよりもカッコイイとアスカは感じた。
***
男改めベルトロスが作ってくれていた料理を食べたアスカは冒険者ギルドの前に来ていた。
いつもならば普通に入るのだが、今日は珍しく早起きしてしまったため入ってもいいのかが不安だ。
「おはようございまーす……」
少しばかり緊張しながらギルド内に入る。
しかしそこには、昨日やけに飲んでいたのであろうラドとその他の冒険者達が椅子や机にうつ伏せになっていびきを立てながら眠っていた。
「うわぁ」
そんな光景に若干引いているところに、ニコニコと笑顔の受付の人がメガホンを2つ手に持ちながらアスカの方に向かって歩いてくる。そしてアスカの目の前まで来るとメガホンを1つ手渡してくる。
受付の人はアスカがメガホンを手に持つと、メガホンを口の前に置いて何かを叫ぶようなジェスチャーをする。
それを見て何をするつもりなのかと一緒にやらないかと誘ってきているのをアスカは理解した。
「……せーの」
受付の人の合図で2人は口の前にメガホンを置き、手元についているボタンを押して──
「「おっきろぉーー!!」」
「「「「ぅわあああああーーー!!!」」」」
特大の「おっきろー」がギルド内に響き渡り、その振動は現在進行形で眠っていた冒険者達の鼓膜に伝わり、全員が一斉に目を覚ます。そして起きた冒険者の9割が体勢をくずしそのまま倒れる。
「はい、おはようございます皆さん!」
「「「「殺す気か!!」」」」
「生きてるじゃないですか~。結果良ければ全て良しってことで」
「「「「ふざけんな!」」」」
確かに、下手すれば鼓膜が破れるか驚き過ぎて心肺停止なんてことが起きてもおかしくはなかった。しかし、奇跡的に全員が転部などの軽い怪我なので全く問題は無い。
「まあそれはともかく、皆さんの中にいる特定の方々にご連絡があります」
「連絡?」
「昨日に緊急クエストにご参加いただきましたルイスさん、ラドさん、ジョルダンさん、レンさん、アスカさんは至急こちらまでお願いします」
偶然にも5人が全員この場に揃っており、その誰もが昨日の変異種についての話なのだと言う予想はできていた。
そして、5人が受付の人がいる場所に集まるとギルドの奥へと案内して行き、1つの部屋の中へと入り5人を椅子に座らせた。
「さて、それでは早速本題言いましょう」
「お願いします」
「はい。昨日の件についてですが、まだ詳しくは解明できてはおりません」
「ま、流石にそんな早くはできねぇーよな」
「しかし、その件について冒険者ギルド本部のギルドマスターから話を聞きたいという連絡がありました」
「本部といえば、セヴィオルナにあるあのですよね?」
「そうです」
セヴィオルナ──この世界の中心とも言える街であり、冒険者ギルドの本部がある街。そんな所にある冒険者ギルドのギルドマスターが直接話したいということは、この事態はただ事ではないということだ。
その事実が、アスカを昨日の話についての迷いが深くなる。
「どうやら変異種はこの村付近だけでなく各地で出現しているらしいのです」
「変異種?」
「変異した魔獣だと長いから略称をつけ、それがこの変異種という呼び方らしいです」
アスカはその変異種という呼び方に関して、あの少女が既にそう呼んでいたので特に思うことはなかった。
そこに、ジョルダンが険しい表情をしながら質問する。
「……犠牲者も……出ているのですか?」
「……はい……残念ながら」
その言葉はとても重いものであり、この場の雰囲気を変えるのには十分な事実であった。
冒険者は危険と常に隣り合わせ。そんなことを理解していても、いざ死んだ者がいるとなると少し暗い雰囲気にはなってしまう。
「……こちらをお受け取りください」
そう言って受付の人が手渡したのは、いつも冒険者が場所移動に使う馬車に乗るための紙であった。それも、いつもとは色が違っていた。
「本来ならば料金がかかりますが、そちらを使えばセヴィオルナまで無料で行けるようになっています」
今更だが、この村に限らず全ての村や街にある馬車はセヴィオルナまで行き、そこである程度の資源や食料、貿易などを行いそれぞれ担当の村や街に戻って来ている。
この馬車は他の村や街と繋がることのできる唯一の乗り物なのだ。
「帰りはどうするんですか?」
「実はそれ、1枚で往復分なのです。ですので、行き帰りに1回ずつ見せていただければ向こうも理解してくださるかと思います。こちらは本部からの支給です」
これが意味するのは、セヴィオルナに行き冒険者ギルド本部のギルドマスターに会いに行けということだ。
ギルドマスター自身が来ればいいなんて思うかもしれないが、ギルドマスターとはクエストの依頼してくる人の対応や今回のような急な緊急事態の対応など、意外と仕事がある。それも毎日。
それに、もしアスカ達以外の冒険者から話を聞くとなるとその各村や街に態々行かなければならない。
そんな来いと言われて「はい行きます」なんて返事は中々することができない。
「明後日までにセヴィオルナに行き、冒険者ギルドまで来てくださいとのことです」
「明後日……」
明後日という言葉にアスカが反応する。
明後日なんて早いな、という考えもあったが1番最初に浮かんだのは少女との契約の話の最終期限だ。この最終期限も明後日、その事がよりアスカに時間という焦りが襲う。
「これで以上です。ちなみにこの村からセヴィオルナまでは片道1日です。もし今日中に出発できれば少し余裕が持てますので」
受付の人が付け足してそう言うと、閉めていた扉を開けて部屋の外に案内する。
5人は部屋の外に出ると受付の人は1度頭を下げ「失礼します」と一言言って元の仕事に戻って行った。
「……ルイス、お前話聞いてなかっただろ」
「仕方ないじゃん。頭がぼーっとするんだから」
「ま、これから俺はセヴィオルナに行く。準備なんてそこまでいらないと思うしな」
そう言ってラドはギルドから出て行った。
そのすぐあとにルイスがジョルダンにどうすればいいのかを聞き、仕方ない感じで教えていた。
「アスカさんはどうします?」
「………明後日」
「アスカさん?」
「……ん、ああ、ごめん。でなんだ?」
「しっかりしてくださいよ~。セヴィオルナにはいつ行きますか?」
「そうだな……俺は今日中には行こうと思ってる。向こうに多分ソニアさんがいると思うから、ダンジョンの話について相談して起きたいからな」
「それなら僕も行った方がいいですよね?」
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