上 下
18 / 67

第17話 ギルドの受付の人が何故か強い

しおりを挟む
 襲撃者達を無事に戦闘不能にまでボコボコにしたアスカ達は縄で縛った襲撃者達を全員で引きづりながら村に帰ってきていた。なお、襲撃者5人のうち4人が気を失っており1人だけ意識があった。

「それで、何かわかりましたか?」

「何故俺達に絞って襲ったのかだけは聞いといた。正直それ以外聞くことないしな」

「盗賊か冒険者かは聞いたの?」

「聞いたところでこの場合はどっちも変わりませんよ。先に襲ってきたのはそいつらなんですから」

 こんな光景を誰も見ていないということは決してなく、村にいる住民や冒険者達がはっきりと見ている。
 中にはコソコソと話す者もいれば慣れた表情をしてその場を立ち去っていく者もいる。

「すみませーん」

「はーいって何ですかこの状況は!?」

 冒険者ギルドに入った瞬間の受付の人の反応がこれだ。こんな言い方をしているが別に何もおかしくはない。むしろこういう反応をするのが当たり前だ。

「……って、この5人組は冒険者内で色んな意味で結構有名な人達じゃないですか」

「んー、有名の割にはあまり名声は高くないのね。長年冒険者やってきたけど見たことないわ」

「1人だけ意識あるので。後はよろしくお願いします」

「まっかせてくださ~い!」

 冒険者ギルドでの用事も済ませたところでアスカ達は冒険者ギルドから出ようと出入口に向かう。

「そういえば、ここの罰って何なんですか?」

「あー、うん。後ろ見てたらわかるわ」

「──?」

 言われた通りにアスカは襲撃者達を引渡した受付の人の方を見る。するとそこには笑顔で指をポキポキと鳴らしている受付の人がいた。

 ──あの人ホントに女性だよな?

「別の街にいる先輩から、貴方達にはしっかりした罰(物理)を与えてくださいと言われたので」

「ここで殴るのはキャラ崩壊に繋がるのでやめといた方がいいぜ?」

「そうですか。それならば特別に──」

 受付の人は襲撃者達を縛っている縄を掴み、自分の方へとぐっと引っ張り引き寄せる。

「このギルドの奥でお説教の時間です」

「ま、待て、もうアレは懲り懲りだ!」

「何怖気ずいているんですか? 貴方達がこんなことをしなければ私は何もしないんですけどね。それに、1回目と同じわけないじゃないですか」

「嫌だ! 俺は意地でも逃げてやる!」

 意識があった襲撃者の1人はいつから持っていたのか1本の短剣で縄を切り、縄が解けたところで走り出す。てっきり逃げるのかと思いきや逃げようとはせずに近くにいた違う受付の人を人質に取る。

「はっ、これで手を出せねぇーな!」

「アイツ、人質をとりやがった!」

 アスカが即座にスナイパーライフルを構え救出しようとすると、その行為をソニアが静止した。

「何で止めるんですか!」

「変なことはやめときなさい。それに、あの男がギルドの受付さんを人質に取ったところでもうあの男に勝算はないわ」

「それってどういう──」

「ぐあっ!」

 その瞬間、襲撃者の男の苦しみの声が聞こえた。一体何が起きたのかとアスカは確認すると、そこには受付の人が襲撃者の男に見事な背負投げをしていた。

 ──何者なんだここのギルドの受付の人は……。

「覚えておきなさい。これがギルドの受付さんよ」

「強すぎじゃないですか」

 しかしこれだけ強いからこそ、こういう事態に対応できるのだろう。因みにこの光景を見て元々犯罪的行為をするつもりがないアスカは改めてこういう行為はしないでおこうと思ったのであった。

「一体何が……」

「ナイス背負い投げ!」

「ルナさん、このカスどうしますか?」

「そのまま抑えておいて」

「わかりました」

 そのまま受付の人は先程の笑顔に加え、ドドドドドという擬音語が出てきそうなどす黒いオーラを発しながら近づいていく。もうこの時点で並の人間ではない。

「外で他の人を襲った挙句、まだ人質を取るなんてことをするのね」

「お、お、俺に近づくんじゃあねぇ!」

「少し話を聞こうかなーなんて思ってたけど、もうそんな気分じゃないわ」

 受付としての丁寧さを残しながらも敬語でなくなるくらいに怒りを感じている。そしていつの間にか完全にぶちのめす様のグローブみたいなのを付けている。

「くそっ、まだ抵抗してや「ぼっしゅー」ちょ、この女ァ!」

 最後の抵抗と言わんばかりに足に仕込んでいたであろう短剣の刃を自身を抑えている受付の人に突き刺そうとする。しかし、その短剣の刃が刺さる前に靴自体を捕み、スポッと脱がされる。
 これで仕込み過ぎだろと言うほど仕込んでいた襲撃者の男の抵抗手段はなくなった。

「さてと、私の攻撃範囲に入ったわよ」

「や、やめろ!」

「もう1度、しっかりと……」

 受付の人の拳が吸い込まれるように襲撃者の男の顔面に向かっていく。あまりの恐怖に襲撃者の男は両目をつぶり痛みを覚悟する。
 そして──

「反省というもの知りなさい!!」

「グオアバァ!!」

 襲撃者の男に全力で拳を顔面の頬にぶつける。すると襲撃者の男は完全に意識を失っていた。

アリーヴェデルチさよならだ

 そう決めゼリフを言う受付の人だが、ここだけの話完全にブチャ〇ティだ。そのことを知っていたアスカは1人こう思った。

「あの受付の人絶体転移者だろ」

 このセリフを知っているということやこの異世界で決めゼリフをわざわざイタリア語で言う時点でもう確定と言っても過言ではないだろう。

「それじゃあこの5人組を奥に連れていくから。カナちゃんこの場はよろしくねー」

「了解です」

 気絶している5人組のうち4人は縄を引っ張って、先程ぶちのめした1人は襟元を掴んでギルドの奥へと連れて行った。アスカは転移者ではないかと話を聞こうと思ったがこちらとしても疲れているのでまた今度ということにする。

「お騒がせして申し訳ございませんでした。それでは、用がある方はこちらへどうぞ」

 こんな事態があろうとも本来の営業に戻る。なんという切り替え速度なのだろうか。いや、こういうことに慣れているからこそ切り替えが早いのかもしれない。

「あれ、そういえばレン君は?」

「え、レンならそこに……あれ、どこいった?」

 ずっとレンがいるかと思っていたが、ここ数分声が聞こえないということに異変を感じたソニアが目で探して見るがそこにレンの姿はなかった。一体どこに行ったのか。

「まあいいや。心配はないですよ、俺達よりも早く帰っただけですよ多分」

「そうね。態々心配する必要はないわね」

「少しは心配してくれてもいいじゃないですか!?」

「あ、おかえり。どこにいたんだ?」

「ずっといなくなってることに気づかずに1人で外歩いてましたよ! 急に止まるならせめて一言行ってくれませんか!?」

「いや、てっきり気づいてるのかなーって思ってさ」

「2人より前にいるのにどうやって気づけって言うんですか!」

「それが自身の不運だと思え」

「なにこれ僕が悪いんですか?」

 そんなことを話しながら1度外に出てまた戻ってきたレンとレンが外に出ていたことに全く気づかなかったアスカとソニアは結局外に出ることにした。
 先程も言ったがもう夕方。ここで解散しておかないとそれぞれに迷惑がかかってしまう。

「まあとりあえず、今日は解散ってことで」

「そうね。もう遅いし」

 そしてギルドを出たアスカ達は各自解散した。

「そういえば、あいつから聞き出したこと話すの忘れてたなー。別に明日でもいっか」

 話をするということを完全に忘れていたアスカであったが、別に明日にこういう話をしても問題ないだろうと考え、それについての思考をやめた。
 しかし、明日には今回のダンジョンよりも更に大きく、同時に危険なイベントが待っているなんて、この時、この世界にいる誰もが予想することは出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

中身はクズモブなのに『ピュア』だけでゴリ押す第六王子のハーレムは完成する〜非戦闘スキルなのにバトルも無双〜

ahootaa
ファンタジー
完全なるモブキャラだった最高高志【サイコウタカシ】が、便所で1人メシ中に転生する。謎スキル「ピュア」に翻弄されながらも、自らの半生を振り返り、もっとも足りなかった物は純粋さだった。 それに気づいても行動を起こさないのが人間というモノ。転生してもうだつの上がらない生活を繰り返してしまう。 そんな中に現れた美女達にによって「ピュア」を使ってチヤホヤされるうちに気付かされる。 気づいたこととは? 初めはゆるーい日常をのんびり描くつもりでしたが、きっとそうはなりません。色恋あり、バトルありの展開を想定しています。 検索タグ:ハーレム、モブ、無能、クズ、王子、メイド、魔法少女、お嬢様、魔女、男主人公最強、コメディ、ギャグ、自虐、ネタ、成長、ダンジョン、勇者、魔王、領主、賢者、貴族、成り上がり、追放、異世界転生、チーレム、内政、冒険、生産、結婚、イチャイチャ、戦記 イラストはいつも通りbing社のAI先生に頼んでいます。転載は禁止されてますので、お願いします。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

処理中です...