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第6話 アスカ以外の転移者
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「グォオオオオーー!!」
目の前にいる大型魔獣は声を上げながら突っ込んでくる。アスカはそれをモンスターの突進に当たらない程度に横に移動し、突進を回避する。
どうやらこの魔獣の攻撃に小回りは利かないようだ。
「…………」
もしもアスカが最強のスキルを持っていたり主人公補正が働いているのならばこの魔獣を倒し、一気に名声が上がってハーレムの道に進むのだろう。
しかし、実際のアスカのスキルはスナイパーライフルを扱うためのものしかない。それに、今の性別が女なためハーレムというのは作れないこともないが作りづらい。
そもそも、アスカはコミュ障なためハーレムの印象は人が沢山自分の周りに囲うようにいる、というものだ。ただでさえ、人との関わりが発作を起こすほどに苦手なアスカにとって、ハーレムとはまさに地獄なのだ。
──そんな地獄に自ら行くと思うか?
まあ何が言いたいかと言うと、アスカはそこらの異世界転生物の主人公のように存在がチートではなく、ハーレムも作れない。もしもここにチートを持ちハーレムが完成した慢心しまくりの異世界転生物の主人公がいたのならば、その主人公はアスカのことをこう呼ぶだろう。
人とのコミュニケーションをまともに取れないモブだと。
「……今すべきこと……それは」
「グルァアアーー!!」
「──全力で逃げる!」
だからといってそう安安死ぬ訳にはいかないアスカは、その場を回れ右をしてすぐに逃げはじめた。
戦ったところで遠距離戦に特化したアスカの装備では分が悪すぎる。今ある近接武器のコンバットナイフ1本でとても戦えるとは思えない。戦っても魔力消費が弾丸の装填によるものだったから、アスカの持つコンバットナイフは魔力による強化をすることができない。もししてしまったら、確証はないがタクトの言う通りに死に至ってしまう。
──だったら逃げるしかない。
それがアスカが出した結論だった。
逃げるアスカを追いかける大型モンスター。追ってくるところからして、遠距離攻撃がないのだろう。その特徴もまるでティラノサウルスだ。
「ハァ、ハァ──」
最近ろくに運動もしていないアスカの体は別の体になったとしても影響しているらしい。走り始めてから1分も経たずに息を切らしている。それに大型魔獣の方が走る速さは上。追いつかれそうになれば横に曲がって避ける。小回りが利かない大型魔獣は方向転換の際に1度止まることを利用して何度か追いつかれるのを回避してきた。
しかし、アスカ自身の体力がなくなれば回避するどころか走ることすらできなくなる。体力がなくなる前になんとかしなければ間違いなくアスカはこの魔獣に食われる。
「ん、あれは……?」
森の木の隙間から差し込む光が目の前にある糸のようなものを輝かせる。一瞬蜘蛛の巣かと思ったが、木と木を結ぶように繋がった1本の糸を蜘蛛の巣と呼ぶには無理がある。
こういう糸を映画やゲームで見た事がある。これは所謂『罠』というやつだ。仕掛け──ここでなら糸に引っかかれば作動するというものだ。
何故こんなものがあるのかはアスカ自身にもよくわからなかったが、ある以上は利用させてもらうことにする。
「よっと……!」
糸に引っかからないように飛び越え、大型魔獣が糸が張っている木と木の間に来るように誘導する。ゆっくり大型魔獣の口が当たらない程度まで距離をとるアスカ。
そして無事に誘導は成功し、大型魔獣の足が木の間を張っている糸をプチンと切る。
その瞬間、突然大型魔獣の横から吊るされた丸太が結構な勢いでゴツンと大型魔獣の体を叩いた。その衝撃に耐えきれなかった大型魔獣は転倒する。
「グルル!?」
転倒した大型魔獣は急いで起き上がろうとするが中々上手くいかない。ずっともがいてばかりだ。
だがそれがいい。動きが止まったこの瞬間が1番いい。
「動くなよぉ……」
M24を取り出し即座に構える。狙うは大型魔獣の頭部。どんな生き物でも生命の核である脳を破壊されれば生命活動は終了する。一撃で仕留めるのならこれがベストだ。
「……ここだ!」
ぐわんぐわん揺らす頭部が次にどういう向きに動くのかを予測し引き金を引く。射出された銃弾はアスカが大体予測した通りに命中し、大型魔獣の頭部にめり込み脳に到達する。
「…………」
「ナイスショット俺」
──即死だ。
どんな生き物だろうと、その核を破壊されれば死に至る。それはどこの世界だろうと絶対に変わることのない事だ。
「にしても、どうしてこんな罠がここに……」
「その罠は僕がしかけたものです」
「っ!?」
発動した罠を見ていると突然背後から声が聞こえた。声の高さと口調からすると大体高校1年生前後くらいの青年であろう。
「……スゥ……ハァ……」
深呼吸をすることで緊張で鼓動が早くなった心臓を落ち着かせる。
昔のアスカは深呼吸をしても一向に落ち着かないくらい緊張しやすく、それ故に緊張状態に陥ると毎回過呼吸を起こし病院へ送られていた。そんなアスカが深呼吸1回で落ち着くことができるところを見れば大層な成長っぷりだ。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから。それより、お前は誰だ?」
「僕ですか? 僕はですね……」
目の前の青年はチラチラとアスカの方を見る。何か顔についているのだろうかと不思議がるアスカだったが、そう時間がかからない内に日本の礼儀に名乗るのは自分からというのを思い出す。
「ん、ああごめん。こっちから名乗るのが礼儀だよな。俺はアスカだ」
「はい、既に存じています」
「は?」
初対面であるはずの青年から突然アスカのことを知っているという。もしかしたらどこかで会ったのかもしれないが、少なくともアスカはこの青年に1度も会ったことはない。
「アスカ。『ジ・エンドオブサバイバル』にて都市伝説にまでなったプレイヤー。得意武器はスナイパーライフルでその冷静さと正確さ故に撃った銃弾は百発百中かつ全てヘッドショット──」
「待て。何故そんなに詳しい?」
「合ってますか?」
「……合っている。しかしだ、質問を質問で返すな」
姿と名前ならば冒険者登録の時に偶然見かけたなんてこともあるのでそこまで警戒はしない。しかし、この青年はアスカのこの世界以外での情報をも知っている。
それはつまり──
「お前も転移者か」
「そうです」
青年は手元に二丁のハンドガンを出現させ、見事なガンプレイを見せた後にアスカに銃口を向けて構える。
「僕の名前はレン。『ダブルトリガー』というFPSゲームのランキング1位。ゲーム内でのあだ名はゴリ押しのレン」
「それって馬鹿にされてないか?」
「ゴリ押しこそ正義なのです」
「お、おう」
キメ顔でアスカに言うが、冷静に対処されてしまうレンであった。
目の前にいる大型魔獣は声を上げながら突っ込んでくる。アスカはそれをモンスターの突進に当たらない程度に横に移動し、突進を回避する。
どうやらこの魔獣の攻撃に小回りは利かないようだ。
「…………」
もしもアスカが最強のスキルを持っていたり主人公補正が働いているのならばこの魔獣を倒し、一気に名声が上がってハーレムの道に進むのだろう。
しかし、実際のアスカのスキルはスナイパーライフルを扱うためのものしかない。それに、今の性別が女なためハーレムというのは作れないこともないが作りづらい。
そもそも、アスカはコミュ障なためハーレムの印象は人が沢山自分の周りに囲うようにいる、というものだ。ただでさえ、人との関わりが発作を起こすほどに苦手なアスカにとって、ハーレムとはまさに地獄なのだ。
──そんな地獄に自ら行くと思うか?
まあ何が言いたいかと言うと、アスカはそこらの異世界転生物の主人公のように存在がチートではなく、ハーレムも作れない。もしもここにチートを持ちハーレムが完成した慢心しまくりの異世界転生物の主人公がいたのならば、その主人公はアスカのことをこう呼ぶだろう。
人とのコミュニケーションをまともに取れないモブだと。
「……今すべきこと……それは」
「グルァアアーー!!」
「──全力で逃げる!」
だからといってそう安安死ぬ訳にはいかないアスカは、その場を回れ右をしてすぐに逃げはじめた。
戦ったところで遠距離戦に特化したアスカの装備では分が悪すぎる。今ある近接武器のコンバットナイフ1本でとても戦えるとは思えない。戦っても魔力消費が弾丸の装填によるものだったから、アスカの持つコンバットナイフは魔力による強化をすることができない。もししてしまったら、確証はないがタクトの言う通りに死に至ってしまう。
──だったら逃げるしかない。
それがアスカが出した結論だった。
逃げるアスカを追いかける大型モンスター。追ってくるところからして、遠距離攻撃がないのだろう。その特徴もまるでティラノサウルスだ。
「ハァ、ハァ──」
最近ろくに運動もしていないアスカの体は別の体になったとしても影響しているらしい。走り始めてから1分も経たずに息を切らしている。それに大型魔獣の方が走る速さは上。追いつかれそうになれば横に曲がって避ける。小回りが利かない大型魔獣は方向転換の際に1度止まることを利用して何度か追いつかれるのを回避してきた。
しかし、アスカ自身の体力がなくなれば回避するどころか走ることすらできなくなる。体力がなくなる前になんとかしなければ間違いなくアスカはこの魔獣に食われる。
「ん、あれは……?」
森の木の隙間から差し込む光が目の前にある糸のようなものを輝かせる。一瞬蜘蛛の巣かと思ったが、木と木を結ぶように繋がった1本の糸を蜘蛛の巣と呼ぶには無理がある。
こういう糸を映画やゲームで見た事がある。これは所謂『罠』というやつだ。仕掛け──ここでなら糸に引っかかれば作動するというものだ。
何故こんなものがあるのかはアスカ自身にもよくわからなかったが、ある以上は利用させてもらうことにする。
「よっと……!」
糸に引っかからないように飛び越え、大型魔獣が糸が張っている木と木の間に来るように誘導する。ゆっくり大型魔獣の口が当たらない程度まで距離をとるアスカ。
そして無事に誘導は成功し、大型魔獣の足が木の間を張っている糸をプチンと切る。
その瞬間、突然大型魔獣の横から吊るされた丸太が結構な勢いでゴツンと大型魔獣の体を叩いた。その衝撃に耐えきれなかった大型魔獣は転倒する。
「グルル!?」
転倒した大型魔獣は急いで起き上がろうとするが中々上手くいかない。ずっともがいてばかりだ。
だがそれがいい。動きが止まったこの瞬間が1番いい。
「動くなよぉ……」
M24を取り出し即座に構える。狙うは大型魔獣の頭部。どんな生き物でも生命の核である脳を破壊されれば生命活動は終了する。一撃で仕留めるのならこれがベストだ。
「……ここだ!」
ぐわんぐわん揺らす頭部が次にどういう向きに動くのかを予測し引き金を引く。射出された銃弾はアスカが大体予測した通りに命中し、大型魔獣の頭部にめり込み脳に到達する。
「…………」
「ナイスショット俺」
──即死だ。
どんな生き物だろうと、その核を破壊されれば死に至る。それはどこの世界だろうと絶対に変わることのない事だ。
「にしても、どうしてこんな罠がここに……」
「その罠は僕がしかけたものです」
「っ!?」
発動した罠を見ていると突然背後から声が聞こえた。声の高さと口調からすると大体高校1年生前後くらいの青年であろう。
「……スゥ……ハァ……」
深呼吸をすることで緊張で鼓動が早くなった心臓を落ち着かせる。
昔のアスカは深呼吸をしても一向に落ち着かないくらい緊張しやすく、それ故に緊張状態に陥ると毎回過呼吸を起こし病院へ送られていた。そんなアスカが深呼吸1回で落ち着くことができるところを見れば大層な成長っぷりだ。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから。それより、お前は誰だ?」
「僕ですか? 僕はですね……」
目の前の青年はチラチラとアスカの方を見る。何か顔についているのだろうかと不思議がるアスカだったが、そう時間がかからない内に日本の礼儀に名乗るのは自分からというのを思い出す。
「ん、ああごめん。こっちから名乗るのが礼儀だよな。俺はアスカだ」
「はい、既に存じています」
「は?」
初対面であるはずの青年から突然アスカのことを知っているという。もしかしたらどこかで会ったのかもしれないが、少なくともアスカはこの青年に1度も会ったことはない。
「アスカ。『ジ・エンドオブサバイバル』にて都市伝説にまでなったプレイヤー。得意武器はスナイパーライフルでその冷静さと正確さ故に撃った銃弾は百発百中かつ全てヘッドショット──」
「待て。何故そんなに詳しい?」
「合ってますか?」
「……合っている。しかしだ、質問を質問で返すな」
姿と名前ならば冒険者登録の時に偶然見かけたなんてこともあるのでそこまで警戒はしない。しかし、この青年はアスカのこの世界以外での情報をも知っている。
それはつまり──
「お前も転移者か」
「そうです」
青年は手元に二丁のハンドガンを出現させ、見事なガンプレイを見せた後にアスカに銃口を向けて構える。
「僕の名前はレン。『ダブルトリガー』というFPSゲームのランキング1位。ゲーム内でのあだ名はゴリ押しのレン」
「それって馬鹿にされてないか?」
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