発明の天敵はムチムチ幼馴染

深海10メートル

文字の大きさ
上 下
4 / 9

下校

しおりを挟む
「ススムちゃん、一緒に帰ろぉ?」
 下駄箱で靴を履き替えていると、背後から声をかけられた。振り返ると、左右に小さく手を振っている夕鶴トマリの姿があった。ほのかに上がっている口角が、俺との下校を心待ちにしていることを伝えてくる。
 ムチムチとした肉付きのよい体格とは裏腹に、トマリの仕草は控えめで愛らしいものが多い。彼女の一挙手一投足は、どれも心の機微をこと細かに教えてくれた。
 特にトマリの持つ鞄からはみ出た荒縄は、必ずお前を拘束するという意思が見て取れる。
 俺は返事もせず、下駄箱から駆け出した。
 次の瞬間、腕を振って走る俺の脇下を茶色い線がすり抜ける。先端に錘をつけたそれは、俺の脇腹を支点にその身を折り、投擲された勢いそのままに俺の胴へと巻き付いた。
 上半身が後から引っ張られ、走り続ける下半身に置いて行かれる。俺は仰向けにすっころび、背中を地面に強打した。
 背中に広がる鈍い痛みに悶絶していると、自分の視界に影がかかる。縄を持ったトマリが、心配そうに俺を見下ろしていた。
「急に走ると危ないよ? ススムちゃん」
「危ないのはお前だ!」
 俺の抗議を「んふふ」と笑って受け流し、トマリは俺を引き起こした。
「じゃあ、一緒に帰ろっかぁ」
「この状態で一緒に帰ると思うのか?」
「嫌かなぁ? そっかぁ……」
 残念そうにつぶやき、トマリは眉を下げた。先ほどとは一転、彼女の落胆が伝わってくる。
 だが騙されてはいけない。トマリは俺を縄で拘束するという、クレイジーな行動をとっている。このまま突っぱねなければ、いつものごとく禁欲に失敗するはめになるだろう。
「一緒にいっぱぁい、寄り道したかったのになぁ」
 言葉とともに、トマリはカッターシャツの第一ボタンを外した。襟が広がり、彼女の首元があらわになる。
 自然とトマリの首元に注目する。彼女の白い肌には汗がにじみ、鎖骨のくぼみが湿っていた。
「買い食いしたり、ゲームセンターに行ったり、あとはぁ……」
 トマリが第二ボタンを外す。彼女の豊満な胸が作る、深い谷間の始まりが見えた。胸の付け根には薄らと血管が通っており、透明感のある白い肌をより強調していた。
 気づけば、トマリは俺のすぐそばまで密着していた。きっと彼女の艶めかしい誘いは、俺以外に視認できないだろう。
 同時にトマリから甘い香りが漂ってくることに気づいた。汗とシャンプーの混じった、ミルクに似た甘い香りだ。彼女の胸の谷間からはきっと、より濃い匂いがするのだろうと予測できた。
「ここから先は、帰り道で、ね?」
 いたずらっぽく言葉を切ると、トマリは襟をさっと閉めた。ボタンをとめ、俺の返事を待つように目を細める。
「ま、まあ、幼馴染だし、一緒に帰るか」
 射精しなければいいだけだ。
 そう言い訳しながら、俺はトマリの誘いにのった。
「そうそう、幼馴染だからねぇ」
 トマリは満足そうに「んふふ」と笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...