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1 思い出
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私の住む町には古くから伝わる祭りがある。
十年に一度の周期で開催されるその祭りはとても賑わう。この地域に伝わる昔話の竜に感謝を捧げる為に行っているという。
何といってもこの祭りの目玉は巫女が竜に捧げる舞いだ。
私はこの巫女役に選ばれる為に今日まで生きてきたといってもいい。舞台で死ねるなら本望だ。
十年前の事、当時五つだった私は母にせがんで祭りに来た。
慣れない人ごみではぐれてしまった私はいつの間にか人の少ない静かな場所にいた。無意識に人ごみを避けたのかもしれないが今となっては覚えていない。
そこに一人、ぽつんと綺麗な恰好をした女性がいた。
私はその人といくつか話をした気がする。その中で彼女が今年の巫女役だと知った。
「巫女役は舞台に立つと次の巫女役が分かるらしいの」
「次もお姉ちゃんがやるんじゃないの?」
「私は今年だけなのよ」
そんな会話をやけに覚えている。
「このお祭りの話は知ってる?」
「知ってるよ。悪い魔法使いがいて近くの森に住んでた竜がこの町を守ってくれて」
「――違う」
「だってお母さんがそう言ったのに……」
彼女は怖い調子で私の目を覗いた。
「良い竜が邪魔だった魔法使いと町の人が協力して、竜をこの町の下に封じてたの。その封印が破られないように祭りでカモフラージュさせてるのよ」
「なんで良い竜なのに……?」
「その方が人に都合が良いからよ」
十年に一度の周期で開催されるその祭りはとても賑わう。この地域に伝わる昔話の竜に感謝を捧げる為に行っているという。
何といってもこの祭りの目玉は巫女が竜に捧げる舞いだ。
私はこの巫女役に選ばれる為に今日まで生きてきたといってもいい。舞台で死ねるなら本望だ。
十年前の事、当時五つだった私は母にせがんで祭りに来た。
慣れない人ごみではぐれてしまった私はいつの間にか人の少ない静かな場所にいた。無意識に人ごみを避けたのかもしれないが今となっては覚えていない。
そこに一人、ぽつんと綺麗な恰好をした女性がいた。
私はその人といくつか話をした気がする。その中で彼女が今年の巫女役だと知った。
「巫女役は舞台に立つと次の巫女役が分かるらしいの」
「次もお姉ちゃんがやるんじゃないの?」
「私は今年だけなのよ」
そんな会話をやけに覚えている。
「このお祭りの話は知ってる?」
「知ってるよ。悪い魔法使いがいて近くの森に住んでた竜がこの町を守ってくれて」
「――違う」
「だってお母さんがそう言ったのに……」
彼女は怖い調子で私の目を覗いた。
「良い竜が邪魔だった魔法使いと町の人が協力して、竜をこの町の下に封じてたの。その封印が破られないように祭りでカモフラージュさせてるのよ」
「なんで良い竜なのに……?」
「その方が人に都合が良いからよ」
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