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強制モノクロメガネ
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都会ってなんかキラキラしてる。
モテない幼馴染たちと二人と組んで、シェアハウスすることになった。
広い部屋で家賃が高くても、一人あたりにしてみれば少し安いくらいの家賃で収まるだろうと思ったのだ。
二人じゃなく三人だったのは、誰か一人欠けても多少余力があるくらいじゃないと東京でまともに暮らせないだろうと思ったから。
さらにモテない同士で組んだのは、彼女をつれこまれたりすると気まずいからだ。
幼馴染の二人に目をつけたのは、そんな打算。そして既に進路がはっきりしていたからだ。
そして俺たちは三人ともメガネ友達だ。三兄弟なんてバカにされたこともあるが、メガネのフレームがあると勉強に集中できるらしい。
進路が決まってから俺以外の二人はメガネを卒業してしまった。
連休で三人そろって東京まで向かい、いくつもの不動産屋のドアをくぐるもなかなか物件が見つからない。
「このマンションめっちゃ安くね?」
みんなで不動産を巡って、ついに安くて広くて設備も綺麗なマンションを見つけた。シェアハウス自体があまり良い顔をされないのだが、すぐに不動産屋の担当が連絡をとってくれた大家さんはむしろ嬉しいと言ってくれたらしい。
そうして契約もスムーズに終わり、一人一部屋きっちりと引っ越しが終わった。
大家さんに挨拶へ行けば、
「若い子が夢を持って東京にって聞くけど、本当にうちのマンションでいいの?」
と朗らかに応えてくれた。
「むしろこんなに良い部屋がこんな値段で、なんて信じられないっすよ」
「ふふ、私は管理人室に住んでいるから、困ったらいつでも来てね」
優しそうな大家さんの言葉に東京も捨てたものではない、と三人で感動した。
俺たちはとてもラッキーだ。部屋も広くピカピカで、俺たちは憧れの東京ライフに慣れることで精いっぱいだった。
数か月して、大学にも慣れた頃だ。
そろそろバイト探さないとな、そんなことを思いながらリビングでテレビでゲームをしていた時だ。
テレビの上に女の生首が浮いていた。
さらさらと髪が流れ、異様なほどに白い肌、ふわふわと浮かびながら俺をじっと見つめている。
「ぎゃああああ!」
ゲームのコントローラーをソファに投げ出して、部屋を飛び出した。
部屋を飛び出しても、スマホも財布もあの生首がいるリビングに投げ出してあった。
どうしても一人で部屋に戻る気にはなれず、ガタガタと震えながら管理人室へ向かった。
部屋に何かあるんだったら、きっと大家さんが知っているだろう。
もしかして何か騙されたのか? 大家さん良い人そうだったのに……。
そんなことを思いながら、管理人室を訪ねると大家さんは嫌な顔をすることなく部屋へ招き入れてくれた。
「……まだ出るのね」
冷蔵庫から麦茶を出して、コップが四つ用意された。大家さんは俺に麦茶の入ったコップを渡しながらそんなことを言う。
「え、俺なんか連れてきちゃいました?」
大家さんと俺の前にあるコップにだけ麦茶がつがれているとはいえ、残り二つは一体……。
「いやね、出たってことは、みんな見えると思うから」
「あれは。一体なんなんですか?」
「分からないの」
「何か知ってるんですか?」
大家さんが言うには、あの部屋には何の謂れもないという。
だが一様に「女が出る」と口をそろえる。
入居者がどうしても居つくことがないため、お寺や神社に相談したり祝詞をあげてもらったりもしたらしい。
――だが、何も効果がない。
「にぎやかだったら、見えないと思ったんだけど、ねぇ」
だからシェアハウスも許可が出たのか。にぎやかだから幽霊見ないなんて、どういう理論だよ。俺たちで実験すんな。
――ドンドンドン!
「ほら」
大家さんと玄関に向かうと、幼馴染二人が真っ青な顔をしてガタガタ震えていた。
二人とも鍵を部屋に置き忘れたという。
四つのコップに麦茶が注がれて、俺たちは自分が見た女の話をまとめることにした。
害はないらしい。ただいるだけだ、と。
「何もなかったらそもそも化けてないだろ……? 白いワンピースに血だらけの女なんて典型的な……」
「俺あんなの初めてみたよ、血まみれ、あんなん絶対アウトじゃん」
「血?」
どうやら俺と二人が見たものは何か違うらしい。見た場所も位置もあっているのに、見えているものが違う。
「なんで?」
三人で大家さんを見ると「出るのは血まみれの女」だと言う。
よくよく二人に話を聞いてみると、どうやら俺だけ幽霊がモノクロで見えていたらしい。
「今までも縞模様のワンピースを着てるって言ってた人もいたけど、」大家さんの言葉に森も黒尾も一気に麦茶を飲み干した。
「「ずるい!!」」
「ず、ずるい?」
「お前だけ怖くないのはずるいだろ!」
「なんで体が見えてないんだ!」
そんなん俺が聞きたいわ!
「まぁ出るだけだから、ねぇ。色々実験してみたら? 一人だけだったら怖いけど三人いたらなんとやら、じゃない?」
大家さんのその言葉に、ガタガタ震えていたのはどこへ行ったのか、俺たちは大家さんからスペアキーを借りてまた部屋へ戻ることになった。
「なんで戻るんだよ」
「何言ってんだ。俺たちに引っ越す余裕はない!」
「ここより良い条件の物件は絶対にない!」
「それは、まぁそうだけどさ」
こうして、動かぬ霊の前で色々と実験した結果、メガネをかけると一部消えるらしいということが発覚した。
「俺は足が消えた」
「っしゃ! 頭消えたわ」
二人の言葉に、俺はメガネを外す。なんと幽霊には体があった。
「色はあるのか?」
「まああるかな」
「俺はブルーライトカットレンズだから色味ちょっと変わってるみたい」
こうして垢抜けのために、メガネを捨てた二人は家で暮らすためにまたメガ友へ戻って来た。
大家さんは引っ越さない選択肢をした俺たちに、「やっぱりシェアハウスっていいわね~」と言ってくれた。
そして幽霊がいる風景にも少しだけ慣れたある日、ふと転機が訪れる。メガネフィルターで一部霊カットできたということは……サングラスをかけたらどうなるのだろうか、と。
モテない幼馴染たちと二人と組んで、シェアハウスすることになった。
広い部屋で家賃が高くても、一人あたりにしてみれば少し安いくらいの家賃で収まるだろうと思ったのだ。
二人じゃなく三人だったのは、誰か一人欠けても多少余力があるくらいじゃないと東京でまともに暮らせないだろうと思ったから。
さらにモテない同士で組んだのは、彼女をつれこまれたりすると気まずいからだ。
幼馴染の二人に目をつけたのは、そんな打算。そして既に進路がはっきりしていたからだ。
そして俺たちは三人ともメガネ友達だ。三兄弟なんてバカにされたこともあるが、メガネのフレームがあると勉強に集中できるらしい。
進路が決まってから俺以外の二人はメガネを卒業してしまった。
連休で三人そろって東京まで向かい、いくつもの不動産屋のドアをくぐるもなかなか物件が見つからない。
「このマンションめっちゃ安くね?」
みんなで不動産を巡って、ついに安くて広くて設備も綺麗なマンションを見つけた。シェアハウス自体があまり良い顔をされないのだが、すぐに不動産屋の担当が連絡をとってくれた大家さんはむしろ嬉しいと言ってくれたらしい。
そうして契約もスムーズに終わり、一人一部屋きっちりと引っ越しが終わった。
大家さんに挨拶へ行けば、
「若い子が夢を持って東京にって聞くけど、本当にうちのマンションでいいの?」
と朗らかに応えてくれた。
「むしろこんなに良い部屋がこんな値段で、なんて信じられないっすよ」
「ふふ、私は管理人室に住んでいるから、困ったらいつでも来てね」
優しそうな大家さんの言葉に東京も捨てたものではない、と三人で感動した。
俺たちはとてもラッキーだ。部屋も広くピカピカで、俺たちは憧れの東京ライフに慣れることで精いっぱいだった。
数か月して、大学にも慣れた頃だ。
そろそろバイト探さないとな、そんなことを思いながらリビングでテレビでゲームをしていた時だ。
テレビの上に女の生首が浮いていた。
さらさらと髪が流れ、異様なほどに白い肌、ふわふわと浮かびながら俺をじっと見つめている。
「ぎゃああああ!」
ゲームのコントローラーをソファに投げ出して、部屋を飛び出した。
部屋を飛び出しても、スマホも財布もあの生首がいるリビングに投げ出してあった。
どうしても一人で部屋に戻る気にはなれず、ガタガタと震えながら管理人室へ向かった。
部屋に何かあるんだったら、きっと大家さんが知っているだろう。
もしかして何か騙されたのか? 大家さん良い人そうだったのに……。
そんなことを思いながら、管理人室を訪ねると大家さんは嫌な顔をすることなく部屋へ招き入れてくれた。
「……まだ出るのね」
冷蔵庫から麦茶を出して、コップが四つ用意された。大家さんは俺に麦茶の入ったコップを渡しながらそんなことを言う。
「え、俺なんか連れてきちゃいました?」
大家さんと俺の前にあるコップにだけ麦茶がつがれているとはいえ、残り二つは一体……。
「いやね、出たってことは、みんな見えると思うから」
「あれは。一体なんなんですか?」
「分からないの」
「何か知ってるんですか?」
大家さんが言うには、あの部屋には何の謂れもないという。
だが一様に「女が出る」と口をそろえる。
入居者がどうしても居つくことがないため、お寺や神社に相談したり祝詞をあげてもらったりもしたらしい。
――だが、何も効果がない。
「にぎやかだったら、見えないと思ったんだけど、ねぇ」
だからシェアハウスも許可が出たのか。にぎやかだから幽霊見ないなんて、どういう理論だよ。俺たちで実験すんな。
――ドンドンドン!
「ほら」
大家さんと玄関に向かうと、幼馴染二人が真っ青な顔をしてガタガタ震えていた。
二人とも鍵を部屋に置き忘れたという。
四つのコップに麦茶が注がれて、俺たちは自分が見た女の話をまとめることにした。
害はないらしい。ただいるだけだ、と。
「何もなかったらそもそも化けてないだろ……? 白いワンピースに血だらけの女なんて典型的な……」
「俺あんなの初めてみたよ、血まみれ、あんなん絶対アウトじゃん」
「血?」
どうやら俺と二人が見たものは何か違うらしい。見た場所も位置もあっているのに、見えているものが違う。
「なんで?」
三人で大家さんを見ると「出るのは血まみれの女」だと言う。
よくよく二人に話を聞いてみると、どうやら俺だけ幽霊がモノクロで見えていたらしい。
「今までも縞模様のワンピースを着てるって言ってた人もいたけど、」大家さんの言葉に森も黒尾も一気に麦茶を飲み干した。
「「ずるい!!」」
「ず、ずるい?」
「お前だけ怖くないのはずるいだろ!」
「なんで体が見えてないんだ!」
そんなん俺が聞きたいわ!
「まぁ出るだけだから、ねぇ。色々実験してみたら? 一人だけだったら怖いけど三人いたらなんとやら、じゃない?」
大家さんのその言葉に、ガタガタ震えていたのはどこへ行ったのか、俺たちは大家さんからスペアキーを借りてまた部屋へ戻ることになった。
「なんで戻るんだよ」
「何言ってんだ。俺たちに引っ越す余裕はない!」
「ここより良い条件の物件は絶対にない!」
「それは、まぁそうだけどさ」
こうして、動かぬ霊の前で色々と実験した結果、メガネをかけると一部消えるらしいということが発覚した。
「俺は足が消えた」
「っしゃ! 頭消えたわ」
二人の言葉に、俺はメガネを外す。なんと幽霊には体があった。
「色はあるのか?」
「まああるかな」
「俺はブルーライトカットレンズだから色味ちょっと変わってるみたい」
こうして垢抜けのために、メガネを捨てた二人は家で暮らすためにまたメガ友へ戻って来た。
大家さんは引っ越さない選択肢をした俺たちに、「やっぱりシェアハウスっていいわね~」と言ってくれた。
そして幽霊がいる風景にも少しだけ慣れたある日、ふと転機が訪れる。メガネフィルターで一部霊カットできたということは……サングラスをかけたらどうなるのだろうか、と。
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