[完結]星世界

夏伐

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「未来」

 私が目を覚ますと、白い無機質な天井と周囲を取り囲む白いカーテンが視界に飛び込んだ。
 ベッドに横たわっていた。
 体から幾本もの管が伸びている。
 横を見ると、並行世界での私と同じ年ごろまで成長した姿のテラがいた。

「テラ」

 私とテラは並行世界を研究していた研究員だった。彼と私の理論は食い違う事が多くよく言い争いになっていた。それでも気が合ったのだろう、私たちは歪な夫婦だった。
 高価で研究所に一台しかない精密機械を巡ってお互いの研究成果をぶつけあった。
 ギリギリで私が負けた。そしてテラは臨床実験に失敗して消失してしまった。
 これを上はある意味での成功と捉えた。
 私は彼の研究を引き継いだ。そして、彼の痕跡を探して、あの世界へと足を踏み入れたのだった。
 記憶が無くなるだなんてことは想定外だった。

「ちゃんと成長してるわね。いなくなった時の姿だったから心配だったの」
「ああ、君のおかげで何とか、この通りだよ」
「記憶がなくなっても、テラはテラだったわね。つまらないジョーク」
「未来は未来だったね。君はいつでも君だった」

 文明の光が地球を包み込む。星はどんどんと光を失っている。
 だが、私やテラにはその慎ましやかな光が心に染み込む。ただ、あの世界の星々が無性に恋しくなった。
 外を見た。小さくとても遠くに星の瞬きがある。

「一緒に星を見に行こう」

 どちらともなくそう言った。
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