[完結]星世界

夏伐

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6 星々

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 彼は少し寂しそうに、それでも楽しそうに研究資料の紙をめくる。一枚、一枚。

「テラ、これ直せるの?」
「これは多分壊れてない。この資料には最低限だけだ。並行世界を渡る理論は書いてない。でも『これ』の設計図が乗ってる。直せるよ」
「本当に? ――あ!」

 私は鞄から工具類を取り出した。
 テラが笑顔になる。

「やっぱり渡さんは別の世界から来たんじゃないか」
「そ、かな……」

 彼は工具類を使いながら機体を修理し始めた。私は手伝うこともないので外に出て移り行く空を見ていた。一番星が天上に輝いて、二番、三番と続いていく。
 空は燃えるように赤い色だったのが、不気味な紫色へと変化していった。

「渡さん!」
「直った?」
「壊れてないからね。設定をこの資料通りにしただけ」

 テラは一人でポッドを起こしたらしい。それくらいなら私も手伝えたのに。

「それで、どうする?」
「どうするって?」
「これ、動かしてみる?」
「……――うん」

 どうせここにいても先はない。それならば、と思った。

「テラも一緒ならどこでも大丈夫」
「……一人用だよ」
「詰めれば二人乗れるよ」

 並行世界なんてなくても、試すだけ試せば良い。何もせずに後々心残りになる方が嫌だった。

「昔、親子が一人用ポッドに乗って漂流したドキュメンタリーを見た事があるの。だから大丈夫」

 私はポッドに乗り込んだ。

「ほら、テラ隣に乗って!」
「え! えぇー……」

 しぶしぶと言う風に、それでもポッドに乗るのはワクワクしている様子のテラが私の横に乗りこむ。二人とも小柄な方だとは言え、かなり狭い。ぎゅっとポットに押し付けられる。

「テラ、操作できる?」
「なんとか」

 やはり一人用に二人は厳しかっただろうか。
 動きずらそうに、それでもテラは液晶パネルを何とか操作した。私は横目で外の景色を見る。壊れた扉の向こう、地上に降り注ぐような星の群れが目に入った。
 私の意識はそのまま途切れてしまった。
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