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心霊エアドロップ
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白を基調とした会場には、ところ狭しと色彩ゆたかな花が飾られている。招待客も白を基調にした服を来て、新郎新婦だけが黒いスーツとピンクのドレスを身に着けている。
新郎は十代後半、新婦は二十代後半だろう。俗にいう姉さん女房というやつだろうか?
会場の雰囲気からどこかの結婚式場だということが分かる。
私はここが夢の中だということが分かった。自分が夢を見ていることを理解して夢の中を自由に歩くことができる――明晰夢を見ていた。
「みなさま、ご来場ありがとうございます。お色直しの間、新郎新婦の馴れ初めをスライドショーでご覧ください」
司会の声に白い壁を見る、まるでハロウィンのようなスプラッタな画像が映し出された。
「いよっ新郎は男前だねぇ!」
酔っぱらいの野次が飛びながらも微笑ましいウェディングムービーだった。――写真の全てが心霊写真である以外は。
全てにオーブと呼ばれる白いほこりのようなものが飛び散って映っている。その色も白だけではない、赤や黄色、青色なんかもある。
新婦がビーチバレーをしている写真では相手のコートには砂浜から手が生えていた。
せっかくの記念写真が全て心霊写真となっている。
このウエディングムービーで二人が同い年だということを知った。
「いや~姉さん女房というのは、新郎もやりますなぁ」
「新郎の家系は呪われてるからねぇ」
「そんなんでも初恋の人と結婚できてよかったねぇ」
新郎の家系は呪われている? だからあんなに心霊写真が? 新婦の写真も心霊写真になっていたが幽霊が侵食でもしたのか?
二人は同い年で、新婦は姉さん女房?
夢だからかおかしなところが矛盾しているようだ。
おかしな夢を見るものだ、と私は会場を歩き回る。
彼らから私は見えてはいないようだった。
新婦の親族席にはいくつかの遺影が置いてあった。どことなく見覚えがある顔が並ぶ。新郎の親族席もそうだ。その中に私の写真もあった。
新郎新婦が戻ってきて、親への感謝の手紙を読む。
新婦が「父にもこの晴れ姿を見せたかった」と泣いていた。
よく見れば招待客の着ているものは死に装束の白い着物である。オシャレなのか三角の布を斜めにつけてみたりアレンジしている者もいた。
呪われている、そう言われてみれば確かに新郎の親族席は男ばかりがみんな若々しい。
私は死人が結婚式をあげる夢でも見ているのだろうか?
そうして結婚式も進んでいくと、高砂で親族集まっての記念写真を撮ろうという流れになった。
こうして集まれば、新郎新婦も招待客と同じように顔色が悪い。新婦に至っては血まで流れている。
うつる全員が幽霊なのであれば、全ての写真が心霊写真になるのも納得だ。
みんな緊張しつつも笑顔の、良い記念写真がとれたようだ。
そうして会場は少しずつ人が減っていく。彼らの後ろ姿を見ながら、不思議なこともあるものだと私は夢から覚める方法を考え始めた。
「――夢枕サービスのご利用、まことにありがとうございました」
背後からかけられた声に、はっと振り向くとそこには私を見つめる結婚式場スタッフが、そこにいた。
「ゆめまくら、サービス?」
「当式場の目玉オプションで御座います。夢枕に立つように、結婚式会場の雰囲気を一夜の夢としてご存命の遺族や友人の方にご提供させていただいております」
じゃあ新郎か新婦のどちらかが、私の知り合いということか。
そこで気づいてはっとする。
夢の中だからだろうか、私は新郎が若くして死んだ弟であることを忘れていた。新婦は少し前に事故に遭い亡くなってしまった幼馴染の女の子だ。
「どうして……」
「式を楽しんでいただくためで御座います。」
二人は間違いなく同い年だ、けれど新婦が姉さん女房と言われていたということは享年のことだろう。
「ご参列いただきありがとうございました。後ほど、先ほど撮られました記念写真をお送りいたします」
女性がペコリと頭を下げた。
その瞬間に目が覚めてしまい、私はボロボロと泣いてしまっていた。
なんていう夢を見たんだろう。身近な人がどんどん亡くなっていく。そのストレスで、あの世では幸せになっていてほしいという願望が反映でもされたのだろうか?
スマホに通知が入った。
エアドロップの共有だ。誰もいない自宅であることも忘れて、『受け入れる』を選択した。
そこには新郎新婦そして親戚一同がうつった記念写真があった。もちろん、オーブが飛び散りうっすらとガイコツが浮かぶ心霊写真だった。
後日、新婦の父には失礼かもしれないが、この不思議な夢の話を切り出した。『父にも見せたかった』と泣いていた花嫁の夢を見ていたらしい。
心霊写真ではあるがスマホの写真も見せたところ、andr〇idスマホだったため送られていないという。
私は今、お盆に向けて新婦の父にiPh〇neの操作を教えている。
まさか夢枕サービスの写真共有がエアドロップ限定だったとは。霊界スマホはアッフ〇ルが支配しているらしい。
新郎は十代後半、新婦は二十代後半だろう。俗にいう姉さん女房というやつだろうか?
会場の雰囲気からどこかの結婚式場だということが分かる。
私はここが夢の中だということが分かった。自分が夢を見ていることを理解して夢の中を自由に歩くことができる――明晰夢を見ていた。
「みなさま、ご来場ありがとうございます。お色直しの間、新郎新婦の馴れ初めをスライドショーでご覧ください」
司会の声に白い壁を見る、まるでハロウィンのようなスプラッタな画像が映し出された。
「いよっ新郎は男前だねぇ!」
酔っぱらいの野次が飛びながらも微笑ましいウェディングムービーだった。――写真の全てが心霊写真である以外は。
全てにオーブと呼ばれる白いほこりのようなものが飛び散って映っている。その色も白だけではない、赤や黄色、青色なんかもある。
新婦がビーチバレーをしている写真では相手のコートには砂浜から手が生えていた。
せっかくの記念写真が全て心霊写真となっている。
このウエディングムービーで二人が同い年だということを知った。
「いや~姉さん女房というのは、新郎もやりますなぁ」
「新郎の家系は呪われてるからねぇ」
「そんなんでも初恋の人と結婚できてよかったねぇ」
新郎の家系は呪われている? だからあんなに心霊写真が? 新婦の写真も心霊写真になっていたが幽霊が侵食でもしたのか?
二人は同い年で、新婦は姉さん女房?
夢だからかおかしなところが矛盾しているようだ。
おかしな夢を見るものだ、と私は会場を歩き回る。
彼らから私は見えてはいないようだった。
新婦の親族席にはいくつかの遺影が置いてあった。どことなく見覚えがある顔が並ぶ。新郎の親族席もそうだ。その中に私の写真もあった。
新郎新婦が戻ってきて、親への感謝の手紙を読む。
新婦が「父にもこの晴れ姿を見せたかった」と泣いていた。
よく見れば招待客の着ているものは死に装束の白い着物である。オシャレなのか三角の布を斜めにつけてみたりアレンジしている者もいた。
呪われている、そう言われてみれば確かに新郎の親族席は男ばかりがみんな若々しい。
私は死人が結婚式をあげる夢でも見ているのだろうか?
そうして結婚式も進んでいくと、高砂で親族集まっての記念写真を撮ろうという流れになった。
こうして集まれば、新郎新婦も招待客と同じように顔色が悪い。新婦に至っては血まで流れている。
うつる全員が幽霊なのであれば、全ての写真が心霊写真になるのも納得だ。
みんな緊張しつつも笑顔の、良い記念写真がとれたようだ。
そうして会場は少しずつ人が減っていく。彼らの後ろ姿を見ながら、不思議なこともあるものだと私は夢から覚める方法を考え始めた。
「――夢枕サービスのご利用、まことにありがとうございました」
背後からかけられた声に、はっと振り向くとそこには私を見つめる結婚式場スタッフが、そこにいた。
「ゆめまくら、サービス?」
「当式場の目玉オプションで御座います。夢枕に立つように、結婚式会場の雰囲気を一夜の夢としてご存命の遺族や友人の方にご提供させていただいております」
じゃあ新郎か新婦のどちらかが、私の知り合いということか。
そこで気づいてはっとする。
夢の中だからだろうか、私は新郎が若くして死んだ弟であることを忘れていた。新婦は少し前に事故に遭い亡くなってしまった幼馴染の女の子だ。
「どうして……」
「式を楽しんでいただくためで御座います。」
二人は間違いなく同い年だ、けれど新婦が姉さん女房と言われていたということは享年のことだろう。
「ご参列いただきありがとうございました。後ほど、先ほど撮られました記念写真をお送りいたします」
女性がペコリと頭を下げた。
その瞬間に目が覚めてしまい、私はボロボロと泣いてしまっていた。
なんていう夢を見たんだろう。身近な人がどんどん亡くなっていく。そのストレスで、あの世では幸せになっていてほしいという願望が反映でもされたのだろうか?
スマホに通知が入った。
エアドロップの共有だ。誰もいない自宅であることも忘れて、『受け入れる』を選択した。
そこには新郎新婦そして親戚一同がうつった記念写真があった。もちろん、オーブが飛び散りうっすらとガイコツが浮かぶ心霊写真だった。
後日、新婦の父には失礼かもしれないが、この不思議な夢の話を切り出した。『父にも見せたかった』と泣いていた花嫁の夢を見ていたらしい。
心霊写真ではあるがスマホの写真も見せたところ、andr〇idスマホだったため送られていないという。
私は今、お盆に向けて新婦の父にiPh〇neの操作を教えている。
まさか夢枕サービスの写真共有がエアドロップ限定だったとは。霊界スマホはアッフ〇ルが支配しているらしい。
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