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3眠りと目覚め
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「また新しい国があるな。この辺りは元々森だったりしてな」
船長は工機からの知らせをデバイスに受け取った。私が彼に渡した船の調子が分かる通信デバイスだった。
「これだけのものが作れるんだったら、これも直せたりするんじゃないか?」
これは何度も彼が言う冗談だ。その通信デバイスを数時間で作成した私に対する嫌味である。それだけできるのに、どうして修理しないのか、という。
「異世界の技術を私にどうしろっていうんですか? それ間違って壊したらもう戻れませんよね」
私がピシャリと言ってやると船長は押し黙る。
「次の国では受け入れてもらえるといいな」
デバイスから船車の速度を落としていく。そして今度の国はとても大きく、向こうから小型の空二輪車が出迎えられた。
技術力の発展した大きな国ではよく見られるもので、タイヤがなく、空気を噴射して空中を進むエアバイク。元々はバイクから進化していった乗り物で、船長はそれを見て目を輝かせていた。
兵士と思われる男は銃を携帯していた。
船の乗組員は私と船長だけだったので、彼らはすぐさま身体検査を進める。武器の類を携帯しての入国は断っていたようだ。
幸いなことにベルトなど衣服についている金属は持ち込んでも良いらしい。
問題は私だった。
身に着けていた金属類をはずしても、探知機がどこかに反応して警戒音を発声する。
最終的には全ての衣服を脱いでまでも探知機は鳴りやまなかった。
「……入国できるのは貴方だけになりますが、どうなされますか?」
船長はそう聞かれて、私に目を向ける彼に私は頷いた。行ってください。アイコンタクトで伝えると、船長は兵士と向かい合った。
「俺だけでも滞在させてくれ。探し物があるんだ」
「承知しました。船は入口の横に止めておいてください」
兵士に案内され、船を言われた所に止める。
久々に砂を踏みしめる感触と歩きづらさを感じながら、私は国の入り口で船長と別れた。
「これから船のセキュリティを最大限に上げます。戻られる際はデバイスから船に一度通信してください」そして私は兵士にも伝達した。「私は船で待機していますが、間違っても許可なく侵入することはやめてください」
兵士は軽く頷いた。
それから私は自分の部屋に戻り、眠りについた。
船のセキュリティレベルを最大限に上げる。今、船を動き回っているのは、人工知能が操る駆動機械ばかりだ、工機と呼んでいるものではあるが、普段と違い人間を殺めることができる。
私の体はピクリとも動かない。
機械仕掛けの人形たちが守る船の中、外部からの侵入もしくは王の帰還を待ち続ける。この船は今だけは深海にいるようだった。
本の中でしかしらない。自分たちの音しかない世界。人目に触れることなく静かに眠る。でも動くものを探して闇の中で誰かが蠢いているそんな世界。
船長がやってくるまではこうして砂漠を彷徨っていた。
だから辛くはない。
今度の眠りはきっと短い。
いつだろうか。私の眠りは警報で妨げられることになる。エンジンまで静かに冷たくなるほど長く眠っていたようだ。
けたたましい不快な警戒音と共に私は目を覚ました。
船長は工機からの知らせをデバイスに受け取った。私が彼に渡した船の調子が分かる通信デバイスだった。
「これだけのものが作れるんだったら、これも直せたりするんじゃないか?」
これは何度も彼が言う冗談だ。その通信デバイスを数時間で作成した私に対する嫌味である。それだけできるのに、どうして修理しないのか、という。
「異世界の技術を私にどうしろっていうんですか? それ間違って壊したらもう戻れませんよね」
私がピシャリと言ってやると船長は押し黙る。
「次の国では受け入れてもらえるといいな」
デバイスから船車の速度を落としていく。そして今度の国はとても大きく、向こうから小型の空二輪車が出迎えられた。
技術力の発展した大きな国ではよく見られるもので、タイヤがなく、空気を噴射して空中を進むエアバイク。元々はバイクから進化していった乗り物で、船長はそれを見て目を輝かせていた。
兵士と思われる男は銃を携帯していた。
船の乗組員は私と船長だけだったので、彼らはすぐさま身体検査を進める。武器の類を携帯しての入国は断っていたようだ。
幸いなことにベルトなど衣服についている金属は持ち込んでも良いらしい。
問題は私だった。
身に着けていた金属類をはずしても、探知機がどこかに反応して警戒音を発声する。
最終的には全ての衣服を脱いでまでも探知機は鳴りやまなかった。
「……入国できるのは貴方だけになりますが、どうなされますか?」
船長はそう聞かれて、私に目を向ける彼に私は頷いた。行ってください。アイコンタクトで伝えると、船長は兵士と向かい合った。
「俺だけでも滞在させてくれ。探し物があるんだ」
「承知しました。船は入口の横に止めておいてください」
兵士に案内され、船を言われた所に止める。
久々に砂を踏みしめる感触と歩きづらさを感じながら、私は国の入り口で船長と別れた。
「これから船のセキュリティを最大限に上げます。戻られる際はデバイスから船に一度通信してください」そして私は兵士にも伝達した。「私は船で待機していますが、間違っても許可なく侵入することはやめてください」
兵士は軽く頷いた。
それから私は自分の部屋に戻り、眠りについた。
船のセキュリティレベルを最大限に上げる。今、船を動き回っているのは、人工知能が操る駆動機械ばかりだ、工機と呼んでいるものではあるが、普段と違い人間を殺めることができる。
私の体はピクリとも動かない。
機械仕掛けの人形たちが守る船の中、外部からの侵入もしくは王の帰還を待ち続ける。この船は今だけは深海にいるようだった。
本の中でしかしらない。自分たちの音しかない世界。人目に触れることなく静かに眠る。でも動くものを探して闇の中で誰かが蠢いているそんな世界。
船長がやってくるまではこうして砂漠を彷徨っていた。
だから辛くはない。
今度の眠りはきっと短い。
いつだろうか。私の眠りは警報で妨げられることになる。エンジンまで静かに冷たくなるほど長く眠っていたようだ。
けたたましい不快な警戒音と共に私は目を覚ました。
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