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1 人手不足…?
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元遊び人が領主をしています。一緒に楽しい領地運営♪
「どうだろうか?」
俺がーー自分の考えた官僚求人募集のためのキャッチコピーを前に頭をひねっていると、使用人たちがクスクスと微笑みながら通り過ぎて行く。
質の悪い紙に、かけばムラが出るインクには様々なボツ案が生まれては消えて行く。もはや何が正しいのか分からない。
……これは詩ではないのか?
そんな思考の迷路に入り込んだ時、紙の端にわざわざかぶせるようにして木製のトレイが置かれた。
「領主さま、そういうものはそもそも使用人用の食堂で考えることではありません」
俺とキャッチコピーの正面に座った男はそんなことを言う。
この釣れない男は、この領主の屋敷を管理している侍従長だ。
前領主の度重なる不正増税横暴、果ての暗殺。
どこの貴族も、こんな厄にまみれた領地の領主に立候補するものはいなかった。
それでもいつもなら嫌われ者だったり、厄介者が派遣されてくるものだ。
だが!!! しばらく前から政治にも口を出すようになったわがまま王女さまの気まぐれで、今回は領民の中から立候補者を募り、選挙を行うことになった。
当選した暁には、相応の金額は必要ではあるが平民でも爵位を買うことができる。これに飛びつくやつは飛びついた。
そして選挙期間中は最終的に血で血を洗う立候補者の生き残り合戦に――。
ただの一冒険者であり小さな商店を運営している『トリックスター』……『大道芸人』……いや『遊び人』である俺、ユージーン・レルフが当選してしまった。
消すべきでもない小物として最後まで認識されていて立候補者がどんどん死んでく選挙中は、超怖かった!!
――なので不肖の息子だが、全然連絡を取っていなかった実家に頼ることにした。死にたくないもんね。
スキルのことでふてくされて旅に出て、それから全然連絡をとってなかった。だが、両親含めて家族はすぐに協力してくれた。
連絡をくれて嬉しいって……人間が出来すぎだろ……。
スキルは、人の適正だ。だからこそ貴族は統率系のスキルや称号、貴族として箔のつくものが優遇される。
そんな世界で神が俺に定めた運命は『トリックスター』。
は……? みんな意味が分からないだろう。俺も分からなかった。
結局、『遊び』系スキルもしくは称号なのではないか、という憶測から生まれた噂のせいで、社交界では腫物扱いになった。
ただ両親や兄弟姉妹、使用人たちはとても可愛がってくれた。
手品が出来ればすごい、魔法の規模は小さいものの魔法制御は上手かった。スキルや称号だなんてただの適正だ、そう前向きにとらえていた。
幼馴染であった婚約者とも仲がよかった。が、このスキルのせいで努力が評価されることはなく、学校に通えなくなって領地に引きこもっている間に、婚約は解消されていた……。
そりゃあそうだ。
何もかもが嫌になって、俺は国を飛びだした。自分のことを誰も知らない隣国の辺境で『遊び人』として冒険者になった。
町の人に受け入れられた時に、この選挙騒ぎだ。
酒に酔った仲間が、『貴族っぽいから立候補してみろよ』と口にしたのをきっかけにして、立候補。完全な身内ノリで、大した理想もなかった。
だが立て続けの暗殺騒ぎで、残ったのは悪徳商人、賄賂大好き官僚、そして『楽しく暮らそう!』と選挙活動と称して大道芸人をしていた俺。
まさかの消去法で当選、という流れになるかと思った。
選挙の裏で実家のおかげか、候補者二人が殺し合ったのか、候補者が俺を残して全滅してしまった。こうして血にまみれた選挙は終わり、荒廃した領地の責任だけがのしかかってきた。
冒険者として貯めていたお金で爵位を買おう!
と思ったら、この騒ぎのせいで実家が表立って領地を支援してくれることになり、新たな貴族籍は必要がなくなった。
領民は、ふざけた領主で不安そうだったが、どうやらマシになりそうだと思ってるやつらもいるらしい。期待は嬉しいが、この領地にそんな金はない。
爵位を買うための金は領地運営に回すことになった。
俺はこの選挙で身に染みたんだ。みんな平気で暗殺とか襲撃を依頼する。こえーよ。
「もう文字にするのやめたらいいんじゃないですか?」
優秀な人材を集めないと領地がやばい。
ちゃんと領地を経営できないと、暗殺される! そんな恐怖でいっぱいだったのに、目の前にいる侍従長はそんなことを言う。
「貼り紙はいるだろう?」
「それはもう新聞社に記事を書かせればいいですよ。演説でもすればいいんじゃないですか?」
統率のスキルでもあれば違うんだろうが……、と口にしかけて昔を思い出す。嫌がらせのためにこんなレアスキルを調べてくれた同級生がいた。
どうやらこのスキルは『詐欺師』になりうるものでもあるらしい。
人のステータスを見る魔道具をわざわざ使って……。その道具を使ってみたのだからある程度は確かなものだろう。
彼は今、幼馴染と結婚して立派に働いているらしい。嫌なことを思い出した。
詐欺師になりうるのならば、演説は良い手段じゃないのか?
「いい案だ!」
「どうだろうか?」
俺がーー自分の考えた官僚求人募集のためのキャッチコピーを前に頭をひねっていると、使用人たちがクスクスと微笑みながら通り過ぎて行く。
質の悪い紙に、かけばムラが出るインクには様々なボツ案が生まれては消えて行く。もはや何が正しいのか分からない。
……これは詩ではないのか?
そんな思考の迷路に入り込んだ時、紙の端にわざわざかぶせるようにして木製のトレイが置かれた。
「領主さま、そういうものはそもそも使用人用の食堂で考えることではありません」
俺とキャッチコピーの正面に座った男はそんなことを言う。
この釣れない男は、この領主の屋敷を管理している侍従長だ。
前領主の度重なる不正増税横暴、果ての暗殺。
どこの貴族も、こんな厄にまみれた領地の領主に立候補するものはいなかった。
それでもいつもなら嫌われ者だったり、厄介者が派遣されてくるものだ。
だが!!! しばらく前から政治にも口を出すようになったわがまま王女さまの気まぐれで、今回は領民の中から立候補者を募り、選挙を行うことになった。
当選した暁には、相応の金額は必要ではあるが平民でも爵位を買うことができる。これに飛びつくやつは飛びついた。
そして選挙期間中は最終的に血で血を洗う立候補者の生き残り合戦に――。
ただの一冒険者であり小さな商店を運営している『トリックスター』……『大道芸人』……いや『遊び人』である俺、ユージーン・レルフが当選してしまった。
消すべきでもない小物として最後まで認識されていて立候補者がどんどん死んでく選挙中は、超怖かった!!
――なので不肖の息子だが、全然連絡を取っていなかった実家に頼ることにした。死にたくないもんね。
スキルのことでふてくされて旅に出て、それから全然連絡をとってなかった。だが、両親含めて家族はすぐに協力してくれた。
連絡をくれて嬉しいって……人間が出来すぎだろ……。
スキルは、人の適正だ。だからこそ貴族は統率系のスキルや称号、貴族として箔のつくものが優遇される。
そんな世界で神が俺に定めた運命は『トリックスター』。
は……? みんな意味が分からないだろう。俺も分からなかった。
結局、『遊び』系スキルもしくは称号なのではないか、という憶測から生まれた噂のせいで、社交界では腫物扱いになった。
ただ両親や兄弟姉妹、使用人たちはとても可愛がってくれた。
手品が出来ればすごい、魔法の規模は小さいものの魔法制御は上手かった。スキルや称号だなんてただの適正だ、そう前向きにとらえていた。
幼馴染であった婚約者とも仲がよかった。が、このスキルのせいで努力が評価されることはなく、学校に通えなくなって領地に引きこもっている間に、婚約は解消されていた……。
そりゃあそうだ。
何もかもが嫌になって、俺は国を飛びだした。自分のことを誰も知らない隣国の辺境で『遊び人』として冒険者になった。
町の人に受け入れられた時に、この選挙騒ぎだ。
酒に酔った仲間が、『貴族っぽいから立候補してみろよ』と口にしたのをきっかけにして、立候補。完全な身内ノリで、大した理想もなかった。
だが立て続けの暗殺騒ぎで、残ったのは悪徳商人、賄賂大好き官僚、そして『楽しく暮らそう!』と選挙活動と称して大道芸人をしていた俺。
まさかの消去法で当選、という流れになるかと思った。
選挙の裏で実家のおかげか、候補者二人が殺し合ったのか、候補者が俺を残して全滅してしまった。こうして血にまみれた選挙は終わり、荒廃した領地の責任だけがのしかかってきた。
冒険者として貯めていたお金で爵位を買おう!
と思ったら、この騒ぎのせいで実家が表立って領地を支援してくれることになり、新たな貴族籍は必要がなくなった。
領民は、ふざけた領主で不安そうだったが、どうやらマシになりそうだと思ってるやつらもいるらしい。期待は嬉しいが、この領地にそんな金はない。
爵位を買うための金は領地運営に回すことになった。
俺はこの選挙で身に染みたんだ。みんな平気で暗殺とか襲撃を依頼する。こえーよ。
「もう文字にするのやめたらいいんじゃないですか?」
優秀な人材を集めないと領地がやばい。
ちゃんと領地を経営できないと、暗殺される! そんな恐怖でいっぱいだったのに、目の前にいる侍従長はそんなことを言う。
「貼り紙はいるだろう?」
「それはもう新聞社に記事を書かせればいいですよ。演説でもすればいいんじゃないですか?」
統率のスキルでもあれば違うんだろうが……、と口にしかけて昔を思い出す。嫌がらせのためにこんなレアスキルを調べてくれた同級生がいた。
どうやらこのスキルは『詐欺師』になりうるものでもあるらしい。
人のステータスを見る魔道具をわざわざ使って……。その道具を使ってみたのだからある程度は確かなものだろう。
彼は今、幼馴染と結婚して立派に働いているらしい。嫌なことを思い出した。
詐欺師になりうるのならば、演説は良い手段じゃないのか?
「いい案だ!」
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