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化石の少年(琥珀の少年)

羽化、ただし羽はしらない

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その透き通るように白い化石はE国の本島から200キロメートル程離れた小さな島で発見された。
四年前の大規模な海底の隆起の際に生じたその島は、人類誕生の遥か前の記憶をその地層に宿していることが判明し、考古学者達を歓喜させた。
島の南西にある崖の断層で行われていたボーリング調査の最中、機器が硬いものに触れた。
位置特定と掘削作業ののち、それは断層の中腹から掘り起こされた。

本島の国立研究機関に運ばれたそれは地球上に存在するどの物質よりも高い硬度と靱性じんせいを持っていた。
だがそのような前代未聞の性質さえ霞むほどの大きな謎が1つあった。



「ごく微小な、拍動と、体液の緩やかな循環が観測できます」

ガラスの向こうの無菌室からモニターへと視線を移した女性研究員が言った。

「決定的です。この化石は、いえ、化石の中のは生きています。それ以外の見方はできますか、エインズ先生」

彼女の後方で椅子に座っていた白髪の男が唸った。

「…生きている、の定義は研究者により異なる。最も一般的な定義…恒常性の維持、設計図としてのDNA、細胞で構成されていること、自身と似た子孫を残す機能をもつこと…これらを––––もっともこの呼び方が正しいのかがそもそも不明であるが––––が持つか、あるいは持ちうるかは現在得られている情報では判断しきれない。しかしながら、私が考える生命と非生命の緩やかな境をあえて適用するのなら…秩序の濃厚さの尺度で、或いはもっと感覚的な見方で彼を見るならば…彼は現在地球上のいかなる非生命よりも秩序を有している。…つまり思うに…彼は生命と言いうる…」

男は目に入る全ての情報を逃すまいとするように目を見開き、徐々に前のめりになる自身の体にも気づかない風で、彼の中の本能に近い部分と対話するが如く一気にまくし立てた。

「この発見は…発表されるのでしょうか」

女性研究員は、ガラスの向こうを見つめつつ呟いた。その目に映る未知の向こうに、彼女は多くの公表されない事実、静かに押し潰された事実を想起していた。
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