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番外編・酔ったあの子の顔が見たい話
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酒に酔って誘惑されてそのまま……的な話を聞いた事がある。俺もそれやってみたい!という浅はかな考えで彼を誘った。
「一緒にワインを飲もうなんて、突然どういう風の吹き回しだ?」
「まあまあ、警戒しないでよ双樹くん。ただ一緒にお酒を飲みたかっただけだよ?せっかく成人したんだし良いじゃん」
「その笑顔のお前に良い思い出が無いのだが……」
早速めちゃくちゃ警戒されてるようだけど、まあ良いだろう。双樹くんのことだしどうせすぐ酔っ払いそう。それにしても、二人っきりでお酒を飲むなんて……なんだか仲良し夫婦っぽくないか?目的は酔ったらどうなるか見たいというものだけど、たまには二人でゆっくり話すのも悪くない。いっつも何かに巻き込まれてばっかりだしね。机を挟んで向かい合うように座らせると、双樹くんは疑っているような顔で睨んできた。
「さあさあ、飲んで。このワインそこそこ良いやつだから」
「…………お前、もしかして俺のこと酔わせようとしてるか?」
「えー?そんなことないよ」
双樹くんにしては珍しく察知が早いじゃないか、いつもは手遅れになってからやっと気付くのに。笑顔でごまかしてみたけど、双樹くんの眉間の皺は一段と深くなった。
「やっぱり変なこと企んでたな!お前はいつもそうやって……」
「別に良いじゃん。ちょーっと酔ってる顔が見たいなあと思っただけだよ」
「俺を酔わせてどうする気だ」
「何にもしないって」
「何かする奴は大抵そう言うんだ!」
あーもう、またいつもの顔に戻っちゃった。正直、双樹くんがどれ程酒に強いかは分からないけど、どうせめちゃくちゃ弱いだろうと思ってこの機会を設けた。でも最初から分かっていたのならそもそもこの話には乗ってこないはずだ。もしかしたら意外と強かったりして。
「おい明日見、お前は知ってるか?酔った時の態度っていうのはその人間の本性を表すんだ。いつも胡散臭い顔でニコニコしてるお前はともかく、俺は裏表が無い人間だからな、酔ったところで変化は無い。残念だったな!」
「あー……そういうこと」
俺は大丈夫っていう自信があった訳だ。全く、相変わらず変なところで自信満々なの可愛いなぁ。
「でもさあ、実際に酔ったところを確かめるまでは分からないなあ。とりあえず飲もうよ」
「ふん、まあ良い。逆にお前の情けない姿が見れるかもしれないしな」
ニヤリと笑った双樹くんはそう言うとグラスに口を付けた。酒を飲むとやりたくもない人付き合いのことを思い出してしまって嫌になるけど、好きな人とゆっくり飲むお酒はいつもより美味しく感じる気がする。
「どう?」
「……ワインは飲み慣れないが、まあ悪くはないな」
「でしょ~?」
双樹くんはワインの味を気に入ったようで少しずつ飲み進めている。よし、このまま本人が気付かないペースで自然に酔わせていこう。
「酒のつまみもちょっと持ってきたから。ほら、これは兄貴のオススメのチーズ」
「ふーん……まあせっかく持ってきたものを無駄にする訳にもいかないしな。仕方なく貰ってやる」
「うん、食べて食べて」
それから俺たちは何気無い話をしながら過ごした。放っておくと双樹くんは妹の話ばっかりするから、とりあえず俺から話題を投げかける。一つ聞くと十個返ってくるから沈黙が無くて楽だ。
「双樹くんって甘いもの好きなの?ケーキとかパフェとか?」
「まあそういうのも好きではあるが、よく食べるのはどら焼きとか……あと羊羹だな」
「え、ジジくさ……もっと可愛いものが好きだと思ってた」
「はあ!?ジジ臭いとはなんだ、和菓子だって甘いものだろうが!」
「ふふ、ごめんって」
正直、この時間めちゃくちゃ楽しいな……。俺が双樹くんの時間を独占してるっていうのも優越感あるし、だんだんリラックスしてきたのか話す時の笑顔が柔らかくなってきた。あー可愛い……でもこのままキスしたら怒るよな。もう少し、じっくりゆっくり酔わせよう。
「一緒にワインを飲もうなんて、突然どういう風の吹き回しだ?」
「まあまあ、警戒しないでよ双樹くん。ただ一緒にお酒を飲みたかっただけだよ?せっかく成人したんだし良いじゃん」
「その笑顔のお前に良い思い出が無いのだが……」
早速めちゃくちゃ警戒されてるようだけど、まあ良いだろう。双樹くんのことだしどうせすぐ酔っ払いそう。それにしても、二人っきりでお酒を飲むなんて……なんだか仲良し夫婦っぽくないか?目的は酔ったらどうなるか見たいというものだけど、たまには二人でゆっくり話すのも悪くない。いっつも何かに巻き込まれてばっかりだしね。机を挟んで向かい合うように座らせると、双樹くんは疑っているような顔で睨んできた。
「さあさあ、飲んで。このワインそこそこ良いやつだから」
「…………お前、もしかして俺のこと酔わせようとしてるか?」
「えー?そんなことないよ」
双樹くんにしては珍しく察知が早いじゃないか、いつもは手遅れになってからやっと気付くのに。笑顔でごまかしてみたけど、双樹くんの眉間の皺は一段と深くなった。
「やっぱり変なこと企んでたな!お前はいつもそうやって……」
「別に良いじゃん。ちょーっと酔ってる顔が見たいなあと思っただけだよ」
「俺を酔わせてどうする気だ」
「何にもしないって」
「何かする奴は大抵そう言うんだ!」
あーもう、またいつもの顔に戻っちゃった。正直、双樹くんがどれ程酒に強いかは分からないけど、どうせめちゃくちゃ弱いだろうと思ってこの機会を設けた。でも最初から分かっていたのならそもそもこの話には乗ってこないはずだ。もしかしたら意外と強かったりして。
「おい明日見、お前は知ってるか?酔った時の態度っていうのはその人間の本性を表すんだ。いつも胡散臭い顔でニコニコしてるお前はともかく、俺は裏表が無い人間だからな、酔ったところで変化は無い。残念だったな!」
「あー……そういうこと」
俺は大丈夫っていう自信があった訳だ。全く、相変わらず変なところで自信満々なの可愛いなぁ。
「でもさあ、実際に酔ったところを確かめるまでは分からないなあ。とりあえず飲もうよ」
「ふん、まあ良い。逆にお前の情けない姿が見れるかもしれないしな」
ニヤリと笑った双樹くんはそう言うとグラスに口を付けた。酒を飲むとやりたくもない人付き合いのことを思い出してしまって嫌になるけど、好きな人とゆっくり飲むお酒はいつもより美味しく感じる気がする。
「どう?」
「……ワインは飲み慣れないが、まあ悪くはないな」
「でしょ~?」
双樹くんはワインの味を気に入ったようで少しずつ飲み進めている。よし、このまま本人が気付かないペースで自然に酔わせていこう。
「酒のつまみもちょっと持ってきたから。ほら、これは兄貴のオススメのチーズ」
「ふーん……まあせっかく持ってきたものを無駄にする訳にもいかないしな。仕方なく貰ってやる」
「うん、食べて食べて」
それから俺たちは何気無い話をしながら過ごした。放っておくと双樹くんは妹の話ばっかりするから、とりあえず俺から話題を投げかける。一つ聞くと十個返ってくるから沈黙が無くて楽だ。
「双樹くんって甘いもの好きなの?ケーキとかパフェとか?」
「まあそういうのも好きではあるが、よく食べるのはどら焼きとか……あと羊羹だな」
「え、ジジくさ……もっと可愛いものが好きだと思ってた」
「はあ!?ジジ臭いとはなんだ、和菓子だって甘いものだろうが!」
「ふふ、ごめんって」
正直、この時間めちゃくちゃ楽しいな……。俺が双樹くんの時間を独占してるっていうのも優越感あるし、だんだんリラックスしてきたのか話す時の笑顔が柔らかくなってきた。あー可愛い……でもこのままキスしたら怒るよな。もう少し、じっくりゆっくり酔わせよう。
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