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デート
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「双樹くんこれ着けよ!」
「男二人で来といてこんな浮ついたもの着けられるか!」
「良いじゃんここに来てる人はみんな浮ついてるんだから!」
明日見の要望により、俺たちは今遊園地に来ている。何が悲しくて男二人でこんなデートスポットに来てるんだろうか。しかもお揃いでファンシーな耳を着けさせられてしまった。めちゃくちゃ楽しんでる人に見えてしまうから非常に嫌なんだが。
「お前今までここに来たこと無かったのか?定番中の定番だろ」
「だってよく知らない人と遊園地って気まずいでしょ?沈黙が長いと雰囲気悪くなるし」
「そういうものなのか……?」
「あは、双樹くんってずっと喋るもんね。沈黙とは無縁なんだろうね」
「声色がバカにしてる!」
俺は特に行きたい所も無かったので明日見に連れていかれるまま歩いていた。わざわざ恋人つなぎで手を繋いできたのですぐに振り払おうとしたが、どれだけ腕を振り回しても離す気配が無いので諦めてそのまま手を繋いだ。それにしても遊園地は俺も久しぶりだな……昔は家族で来たこともあったが、あの頃はすぐに遊び疲れて寝てしまっていた。ここは国内でも最大級の遊園地で、大人でも十分楽しめる場所だ。その分周りには家族連れだけでなくカップルも多い。まさに定番のデートスポットな訳だ。
「あれ!乗ってみたい!」
「ジェットコースター?凄い並んでるじゃないか」
「双樹くんと一緒なら待ち時間も平気だって!」
「へっ?」
明日見はニンマリと笑っている。無邪気にはしゃぐ姿はまるで子供のようだ。……まあ、今日くらいはこいつのわがままに付き合ってやっても良いか。俺たちは列に並ぶことにした。列は結構伸びており結構な時間がかかりそうだ。
「並んでる時間が多いと沈黙が長くて雰囲気悪くなっちゃうんだって。それが原因で別れるカップルも多いとか何とか。俺は食事するだけでも話すこと無くなるから遊園地とか絶対無理だなって思ってた」
「本当か?お前さっきからずっと喋ってるぞ」
「え、そう?……何だろ、双樹くんと一緒だと話したいことがどんどん出てくるんだよ。ふふ」
「……あっそ」
そういえば明日見鋼太郎がこいつはお見合いの時は他人行儀なのだと言っていた。パーティーの時にも思っていたが、明日見は他人に対して興味が無いのではないか。名前は覚えているようだがあくまで家の都合での付き合いといった感じだった。じゃあ、どうして女にだらしないと噂が立つほどお見合いをしまくっていたのだろうか?俺の事が好きだとか言っておいて、誰彼構わず抱いていたのはどういう事だ。いやいや、別に良いだろこいつが誰を抱いていようが。俺は何を浮気された奴みたいな感覚になっているんだ!
「ふん!思い上がるなよ」
「急に何!?」
待ち時間は50分ほどあったはずだが、気付けば乗り場まで着いており体感はあっという間だった。嘘だろ、50分ずっと明日見と話していたのか?別に楽しんでいる訳では無い、断じて!思考を振り払うようにジェットコースターに乗った。
「おい明日見、早くしろ!もう一回乗るぞ!」
「双樹くんめっちゃ楽しんでない!?流石にもう一回は時間無くなるから、また今度ね」
「は?別に楽しんでないが?全く、仕方無いな……」
ジェットコースターの列はさっきよりも伸びており、流石に諦めるしか無いようだ。周りを見渡すとどのアトラクションも混み合っている。とりあえずあまり並んでなさそうな所は……。
「よし、次はあっちに行くぞ」
「え、う、うん。すっかりやる気になってる……」
マップを見ながら明日見の手を引いて歩き出した。人が多くて油断するとはぐれてしまいそうだな。
「双樹くんから手を……!これは、悪くないな……」
「ん、何か言ったか?」
「いやぁ、何も?」
「今日は暑いし一旦ここでクールダウンを挟もう」
「え……ここ?」
遊園地の少し奥まった所にあるお化け屋敷の前に来た。小さい遊園地のお化け屋敷は大抵チープな作りだが、この遊園地のお化け屋敷はボリュームがあってクオリティも高いと聞いたことがある。それなら俺たちでも楽しめるだろう。中に入ろうとすると、明日見が立ち止まって動かなくなった。さっきまでノリノリだった明日見のテンションがダダ下がりだ。急にどうした?
「おい明日見、行くぞ」
「あ、あのさー……涼しい所ならここじゃなくてもフードコートとか行かない?」
「え?」
よく見ると明日見の膝が小刻みに震えている。しかもさっきからずっとお化け屋敷から目を逸らしている。こいつもしかして……
「……お前まさか、怖いの苦手なのか?」
「え、別に、そんなんじゃない、けど……」
「……へえ~」
「ちょっと双樹くん、何ニヤニヤしてんの」
まさか明日見がお化け屋敷が苦手とはな。これはいつもしてやられている仕返しになりそうじゃないか。問答無用で明日見を引きずりお化け屋敷に入っていった。
「苦手じゃないなら別に良いよなぁ?ほら行くぞ」
「えっ、ちょ、引っ張んないで!やだーー!!」
明日見の断末魔は建物の中へと消えた。
再び外に出てきたのは約一時間後のことである。お化け屋敷での明日見の姿は一言で言うと愉快だった。
何度も途中リタイアの出口に行こうとするし、俺を盾にして進もうとする。お化けがおどかしてくる度に「グァッッ」と銃で撃たれたような声を出し、俺が横から話しかけると死にそうな顔で驚いていた。もう出る頃にはひどく疲れ切っていた。
「アハハハ!情けないな明日見!お前の信者どもがこの姿を見たらどう思うだろうな!!」
「うう……双樹くん今日一楽しそうなんだけど……」
そりゃあ楽しいに決まってるだろ!いつも俺をバカにしてくる明日見を俺が笑い飛ばせるんだからな!
「はー面白い、もう一回行くか?」
「もう良いって!あ~こんな姿見せたくなかったのに……」
お化け屋敷に行った後は明日見が動きたくないと駄々をこねたので結局休憩する事になった。わがままな奴め、お見合いでここを選ばなかったのはある意味正解だな。仕方ないので動かない明日見に飲み物を買ってくると、明日見は目をぱちくりさせていた。
「……双樹くん、面倒見良いよね。お兄ちゃんだから?」
「お前の面倒を見る気は無い」
「ええ~?これからずっと一緒に暮らすのに」
面倒を見る気は毛頭無かったのだが、普段から双葉の為にやっている行動が染み付いてしまっている。明日見は嬉しそうにニコニコしていた。
「男二人で来といてこんな浮ついたもの着けられるか!」
「良いじゃんここに来てる人はみんな浮ついてるんだから!」
明日見の要望により、俺たちは今遊園地に来ている。何が悲しくて男二人でこんなデートスポットに来てるんだろうか。しかもお揃いでファンシーな耳を着けさせられてしまった。めちゃくちゃ楽しんでる人に見えてしまうから非常に嫌なんだが。
「お前今までここに来たこと無かったのか?定番中の定番だろ」
「だってよく知らない人と遊園地って気まずいでしょ?沈黙が長いと雰囲気悪くなるし」
「そういうものなのか……?」
「あは、双樹くんってずっと喋るもんね。沈黙とは無縁なんだろうね」
「声色がバカにしてる!」
俺は特に行きたい所も無かったので明日見に連れていかれるまま歩いていた。わざわざ恋人つなぎで手を繋いできたのですぐに振り払おうとしたが、どれだけ腕を振り回しても離す気配が無いので諦めてそのまま手を繋いだ。それにしても遊園地は俺も久しぶりだな……昔は家族で来たこともあったが、あの頃はすぐに遊び疲れて寝てしまっていた。ここは国内でも最大級の遊園地で、大人でも十分楽しめる場所だ。その分周りには家族連れだけでなくカップルも多い。まさに定番のデートスポットな訳だ。
「あれ!乗ってみたい!」
「ジェットコースター?凄い並んでるじゃないか」
「双樹くんと一緒なら待ち時間も平気だって!」
「へっ?」
明日見はニンマリと笑っている。無邪気にはしゃぐ姿はまるで子供のようだ。……まあ、今日くらいはこいつのわがままに付き合ってやっても良いか。俺たちは列に並ぶことにした。列は結構伸びており結構な時間がかかりそうだ。
「並んでる時間が多いと沈黙が長くて雰囲気悪くなっちゃうんだって。それが原因で別れるカップルも多いとか何とか。俺は食事するだけでも話すこと無くなるから遊園地とか絶対無理だなって思ってた」
「本当か?お前さっきからずっと喋ってるぞ」
「え、そう?……何だろ、双樹くんと一緒だと話したいことがどんどん出てくるんだよ。ふふ」
「……あっそ」
そういえば明日見鋼太郎がこいつはお見合いの時は他人行儀なのだと言っていた。パーティーの時にも思っていたが、明日見は他人に対して興味が無いのではないか。名前は覚えているようだがあくまで家の都合での付き合いといった感じだった。じゃあ、どうして女にだらしないと噂が立つほどお見合いをしまくっていたのだろうか?俺の事が好きだとか言っておいて、誰彼構わず抱いていたのはどういう事だ。いやいや、別に良いだろこいつが誰を抱いていようが。俺は何を浮気された奴みたいな感覚になっているんだ!
「ふん!思い上がるなよ」
「急に何!?」
待ち時間は50分ほどあったはずだが、気付けば乗り場まで着いており体感はあっという間だった。嘘だろ、50分ずっと明日見と話していたのか?別に楽しんでいる訳では無い、断じて!思考を振り払うようにジェットコースターに乗った。
「おい明日見、早くしろ!もう一回乗るぞ!」
「双樹くんめっちゃ楽しんでない!?流石にもう一回は時間無くなるから、また今度ね」
「は?別に楽しんでないが?全く、仕方無いな……」
ジェットコースターの列はさっきよりも伸びており、流石に諦めるしか無いようだ。周りを見渡すとどのアトラクションも混み合っている。とりあえずあまり並んでなさそうな所は……。
「よし、次はあっちに行くぞ」
「え、う、うん。すっかりやる気になってる……」
マップを見ながら明日見の手を引いて歩き出した。人が多くて油断するとはぐれてしまいそうだな。
「双樹くんから手を……!これは、悪くないな……」
「ん、何か言ったか?」
「いやぁ、何も?」
「今日は暑いし一旦ここでクールダウンを挟もう」
「え……ここ?」
遊園地の少し奥まった所にあるお化け屋敷の前に来た。小さい遊園地のお化け屋敷は大抵チープな作りだが、この遊園地のお化け屋敷はボリュームがあってクオリティも高いと聞いたことがある。それなら俺たちでも楽しめるだろう。中に入ろうとすると、明日見が立ち止まって動かなくなった。さっきまでノリノリだった明日見のテンションがダダ下がりだ。急にどうした?
「おい明日見、行くぞ」
「あ、あのさー……涼しい所ならここじゃなくてもフードコートとか行かない?」
「え?」
よく見ると明日見の膝が小刻みに震えている。しかもさっきからずっとお化け屋敷から目を逸らしている。こいつもしかして……
「……お前まさか、怖いの苦手なのか?」
「え、別に、そんなんじゃない、けど……」
「……へえ~」
「ちょっと双樹くん、何ニヤニヤしてんの」
まさか明日見がお化け屋敷が苦手とはな。これはいつもしてやられている仕返しになりそうじゃないか。問答無用で明日見を引きずりお化け屋敷に入っていった。
「苦手じゃないなら別に良いよなぁ?ほら行くぞ」
「えっ、ちょ、引っ張んないで!やだーー!!」
明日見の断末魔は建物の中へと消えた。
再び外に出てきたのは約一時間後のことである。お化け屋敷での明日見の姿は一言で言うと愉快だった。
何度も途中リタイアの出口に行こうとするし、俺を盾にして進もうとする。お化けがおどかしてくる度に「グァッッ」と銃で撃たれたような声を出し、俺が横から話しかけると死にそうな顔で驚いていた。もう出る頃にはひどく疲れ切っていた。
「アハハハ!情けないな明日見!お前の信者どもがこの姿を見たらどう思うだろうな!!」
「うう……双樹くん今日一楽しそうなんだけど……」
そりゃあ楽しいに決まってるだろ!いつも俺をバカにしてくる明日見を俺が笑い飛ばせるんだからな!
「はー面白い、もう一回行くか?」
「もう良いって!あ~こんな姿見せたくなかったのに……」
お化け屋敷に行った後は明日見が動きたくないと駄々をこねたので結局休憩する事になった。わがままな奴め、お見合いでここを選ばなかったのはある意味正解だな。仕方ないので動かない明日見に飲み物を買ってくると、明日見は目をぱちくりさせていた。
「……双樹くん、面倒見良いよね。お兄ちゃんだから?」
「お前の面倒を見る気は無い」
「ええ~?これからずっと一緒に暮らすのに」
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