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ライバル
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明日見家に着き、俺と双葉は他の人に見られないようにこっそり中に入った。相変わらずデカい屋敷だし人多いし、うんざりするな。
「麟太郎様~~!」
「お待ちしてましたわ!私たちと一緒にお話ししてくださいません?」
「どうも皆さん、お久しぶりですね」
明日見は営業スマイルで群がる人たちと接している。毎回良くやるものだ、あいつは内心かなりめんどくさがってるだろう。
「あ……双樹くん、どこ行くの?」
「俺は用事があるって言っただろ、帰る時には声を掛ける」
「俺せっかく双樹くんが来るから参加したのに……」
「お前はちゃんと明日見家としての振る舞いをしろ!俺は向こうに行ってる」
「はあ……分かったよ、後でね」
普段なら明日見に話しかけられても無視するのだが、今日は少し言葉を交わした。機嫌が良いからではなく、すでに計画を実行しているのだ。明日見と親密な様子を見せることで不快な表情をする奴が居るだろう。その中に犯人が紛れ込んでいるかもしれない。周りを見渡してみると、遠くから俺を見ている奴が数人居たが、どいつもこいつも凄い睨んでくるじゃないか。うわ、分かりやすくハンカチをくわえて睨みつけてくる負け組を全身で表してる奴まで居る。別に明日見と仲良しアピールはしたくないが、これは少し優越感があるな。
「よし、俺は人が少ない方に行く。近づいて来る奴を見張っててくれ」
『了解!』
片耳につけたイヤホンマイクで双葉と連絡を取る。お見合いの際に明日見に通信機を握り潰されたので新調する羽目になったが、今度こそは大丈夫だろう。
まずは周りを見回しながらとりあえず中を一回りした。やはり目立つ服装にしておいて良かった。側から見れば平凡な男は人混みの中に居ても全く気付かれず溶け込んでしまうので、服装だけでも目に留まるようにしなければならない。周りに俺の存在を見せつけた後に人の居ないバルコニーに向かった。俺を狙う者は俺が一人になる絶好のチャンスを決して見逃さないだろう。双葉には俺に近づく奴を見張ってもらい、何かしてきた時の証拠を撮影を頼んだ。これで証拠が掴めれば警察に突き出せるだろう。
『あっお兄ちゃん!誰かそっちに向かってるよ』
「よし、注意して見ておいてくれ」
早速来たようだな。姿勢を正し奴を待つ。足音のした方を見ると、そこには他の家の者ではなく給仕が居た。
「お前は明日見家の給仕か?」
「あ……はい。あの、こちらをどうぞ」
給仕はトレイに乗せていたシャンパンを差し出してきた。俺は今年になってやっと酒が飲める年になったのだが、明日見家の給仕はそこまで把握しているのだろうか。
「お気遣いどうも、礼を言う」
「……」
給仕は少しだけ微笑み、軽いお辞儀をして出て行った。何だか拍子抜けしてしまったな。酒は飲み慣れないがシャンパンを一口飲んだ。あれ、シャンパンって少し甘いんだな……。
『お兄ちゃん大丈夫だった?』
「ああ、ただの給仕だった。もう少しここに居よう」
『分かった!……あっまた来た!今度は他の家の人かも!』
「よし、準備しておいてくれ」
今度はより大きい足音が近づいて来た。見てみると、入ってきたのはそれなりに顔の整った男だった。あれ、てかこいつさっきハンカチをくわえて睨みつけてきた奴じゃないか!
「こんばんは、椿双樹くん。僕は平塚家の次男、平塚律綺だよ」
「平塚……」
平塚家の会社といえば、椿家の会社と同じくらいの業績だったのに近年急激に業績を伸ばしているのが印象的だ。昔から何かと椿家に因縁をつけてくる、ライバルと言っても良い家である。
「俺に何か用か?」
「用って、よく分かってるんじゃない?」
「……明日見の事か?」
殺害予告の話はまだ出さずに尻尾を出すのを待つ。まだこいつが犯人と決まった訳ではないからな。
「まあまあ、とりあえず一緒にお酒を頂こうじゃないか。ほら乾杯」
平塚は勝手にグラスを俺が持っていたものと乾杯させた。不信感を抱きつつも俺もシャンパンを飲み進めることにした。こいつとはほぼ話した事が無いが少し言葉を交わしただけで分かる、正直苦手なタイプだ。
「君、麟太郎様と結婚するんだって?今までそんな話音沙汰もなかったのに、急に結婚だなんておかしいと思ったんだ」
「明日見と結婚するのは仕方なくだよ」
「君は麟太郎様の事好きでも何でもないんだろ?家のために結婚したの?」
「それは……」
明日見を好きではないのは事実だ。家のために、も嘘ではない。この結婚は明日見が俺を好きだから決まった事なんだが、こいつには言ってもめんどくさい事になりそうだ。
「あのね、僕も前に麟太郎様とお見合いしたんだよ、妹の代わりにね」
「えっ?」
「妹は乗り気じゃなかったから、僕が代わりに行ったんだ」
「お前も?」
まさか同じように明日見とお見合いをした奴が居たとは。もしかしてこいつとは話が合うのでは!?
「お前もって……一緒にしないでくれる?僕は麟太郎様を愛しているんだよ」
ん?
「麟太郎様~~!」
「お待ちしてましたわ!私たちと一緒にお話ししてくださいません?」
「どうも皆さん、お久しぶりですね」
明日見は営業スマイルで群がる人たちと接している。毎回良くやるものだ、あいつは内心かなりめんどくさがってるだろう。
「あ……双樹くん、どこ行くの?」
「俺は用事があるって言っただろ、帰る時には声を掛ける」
「俺せっかく双樹くんが来るから参加したのに……」
「お前はちゃんと明日見家としての振る舞いをしろ!俺は向こうに行ってる」
「はあ……分かったよ、後でね」
普段なら明日見に話しかけられても無視するのだが、今日は少し言葉を交わした。機嫌が良いからではなく、すでに計画を実行しているのだ。明日見と親密な様子を見せることで不快な表情をする奴が居るだろう。その中に犯人が紛れ込んでいるかもしれない。周りを見渡してみると、遠くから俺を見ている奴が数人居たが、どいつもこいつも凄い睨んでくるじゃないか。うわ、分かりやすくハンカチをくわえて睨みつけてくる負け組を全身で表してる奴まで居る。別に明日見と仲良しアピールはしたくないが、これは少し優越感があるな。
「よし、俺は人が少ない方に行く。近づいて来る奴を見張っててくれ」
『了解!』
片耳につけたイヤホンマイクで双葉と連絡を取る。お見合いの際に明日見に通信機を握り潰されたので新調する羽目になったが、今度こそは大丈夫だろう。
まずは周りを見回しながらとりあえず中を一回りした。やはり目立つ服装にしておいて良かった。側から見れば平凡な男は人混みの中に居ても全く気付かれず溶け込んでしまうので、服装だけでも目に留まるようにしなければならない。周りに俺の存在を見せつけた後に人の居ないバルコニーに向かった。俺を狙う者は俺が一人になる絶好のチャンスを決して見逃さないだろう。双葉には俺に近づく奴を見張ってもらい、何かしてきた時の証拠を撮影を頼んだ。これで証拠が掴めれば警察に突き出せるだろう。
『あっお兄ちゃん!誰かそっちに向かってるよ』
「よし、注意して見ておいてくれ」
早速来たようだな。姿勢を正し奴を待つ。足音のした方を見ると、そこには他の家の者ではなく給仕が居た。
「お前は明日見家の給仕か?」
「あ……はい。あの、こちらをどうぞ」
給仕はトレイに乗せていたシャンパンを差し出してきた。俺は今年になってやっと酒が飲める年になったのだが、明日見家の給仕はそこまで把握しているのだろうか。
「お気遣いどうも、礼を言う」
「……」
給仕は少しだけ微笑み、軽いお辞儀をして出て行った。何だか拍子抜けしてしまったな。酒は飲み慣れないがシャンパンを一口飲んだ。あれ、シャンパンって少し甘いんだな……。
『お兄ちゃん大丈夫だった?』
「ああ、ただの給仕だった。もう少しここに居よう」
『分かった!……あっまた来た!今度は他の家の人かも!』
「よし、準備しておいてくれ」
今度はより大きい足音が近づいて来た。見てみると、入ってきたのはそれなりに顔の整った男だった。あれ、てかこいつさっきハンカチをくわえて睨みつけてきた奴じゃないか!
「こんばんは、椿双樹くん。僕は平塚家の次男、平塚律綺だよ」
「平塚……」
平塚家の会社といえば、椿家の会社と同じくらいの業績だったのに近年急激に業績を伸ばしているのが印象的だ。昔から何かと椿家に因縁をつけてくる、ライバルと言っても良い家である。
「俺に何か用か?」
「用って、よく分かってるんじゃない?」
「……明日見の事か?」
殺害予告の話はまだ出さずに尻尾を出すのを待つ。まだこいつが犯人と決まった訳ではないからな。
「まあまあ、とりあえず一緒にお酒を頂こうじゃないか。ほら乾杯」
平塚は勝手にグラスを俺が持っていたものと乾杯させた。不信感を抱きつつも俺もシャンパンを飲み進めることにした。こいつとはほぼ話した事が無いが少し言葉を交わしただけで分かる、正直苦手なタイプだ。
「君、麟太郎様と結婚するんだって?今までそんな話音沙汰もなかったのに、急に結婚だなんておかしいと思ったんだ」
「明日見と結婚するのは仕方なくだよ」
「君は麟太郎様の事好きでも何でもないんだろ?家のために結婚したの?」
「それは……」
明日見を好きではないのは事実だ。家のために、も嘘ではない。この結婚は明日見が俺を好きだから決まった事なんだが、こいつには言ってもめんどくさい事になりそうだ。
「あのね、僕も前に麟太郎様とお見合いしたんだよ、妹の代わりにね」
「えっ?」
「妹は乗り気じゃなかったから、僕が代わりに行ったんだ」
「お前も?」
まさか同じように明日見とお見合いをした奴が居たとは。もしかしてこいつとは話が合うのでは!?
「お前もって……一緒にしないでくれる?僕は麟太郎様を愛しているんだよ」
ん?
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