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婚姻
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挨拶をするだけなのにどっと疲れて家に帰ってきた。なぜか明日見も着いてきたんだが。今日はもう胃薬を飲んで大人しくしていようか。だらしないのは分かっているがソファーに横になった。
「てか何でお前も来たんだよ。早く帰れ」
「俺これからこっちに住む予定だし?引っ越し準備も進めないと」
こいつ、俺の知らないところでどんどん話を進めてやがる。
「ねえ、披露宴はいつにしようか?大々的にやりたいよね!」
「話が早い!俺は仕方なく結婚を決めたって事を忘れるなよ」
思い返せば、あの日お見合いに行った時から明日見に振り回されっぱなしだ。散々俺の事をバカにしたかと思えば俺と結婚しようとするし、無理やりセックスしといて俺からキスしただけで顔を真っ赤にするし、未だにこいつのことがよく分からない。もう結婚を決めてしまったのだから、こうなったら明日見を利用しまくってやる。これからは俺がこいつを掌の上で転がし……て……や…………。瞼がどんどん下がってきて、視界が真っ暗になった。
「……あれ、双樹くん?……寝ちゃった」
今日は大変な事をさせてしまったな。本来はこんなに急いで結婚の話を進める必要は無いけど、椿家だって縁談を受け入れまくってる話は聞いていたから早くしないと誰かに取られるかもって焦ってしまった。双樹くんの寝顔を見ながら今日の事を思い出していた。
「キスしてくれたのもだけど、名前を呼んでくれたのも嬉しかったなあ」
「麟太郎さん?」
声のした方を振り返ると双葉ちゃんが来ていた。
「あれ、お兄ちゃん寝てる!どうしたの?」
「あーちょっと疲れさせちゃったから……」
双葉ちゃんも双樹くんに似て結構声がデカいんだけど、双樹くんは起きる気配が無い。
「ねえ麟太郎さん、お兄ちゃんと結婚するんでしょ。お兄ちゃんはどう思ってるの?」
「……そうだね、双樹くんには申し訳ないと思ってるよ。結婚するのだって俺のわがままだから。双樹くんは俺の事なんて好きじゃないけど、俺は……」
本当は家族には怒られても仕方ないくらい勝手な事をしてる自覚がある。しかも自分の立場を利用して。でも双葉ちゃんは笑顔を向けてきた。
「あのね、お兄ちゃんはいつも自分の事は考えないでみんなの事しか考えないの。だから麟太郎さんがお兄ちゃんを幸せにしてあげてね」
「うん……もちろん」
きっと双樹くんはずっと我慢してきたのだろう。その分みんなが幸せで居られるように。俺だけには、少しでもわがままを言ってくれるようになったら嬉しいな。
……ん?今何時だ……?ああ、あまりに疲れてつい眠ってしまっていたんだ。しかもソファーで寝落ちとか、椿家の長男ともあろう俺にあるまじき状態だ。そうだ、これから色々準備しなければ。ゆっくりと起き上がると、体にジャケットが掛けられているのに気づいた。
「あれ……明日見」
これは明日見が着ていたジャケットだ。しかも、明日見がソファーに寄りかかって寝てるじゃないか。……寝てるくせになんか手を握られているし。とりあえず明日見を起こさないようにソファーから抜け出し、掛けられていたジャケットを明日見の背中に掛けた。
ふと明日見の寝顔を見る。クソ、相変わらず腹が立つくらい整った顔をしてるな。こんな奴と結婚するという実感がまだ無い。そうだ、これからは明日見家との付き合いも深くなるし、こいつ自身椿家の人間になるんだ。明日見と呼び続けるのも無理が出てくるよな……。
「……麟太郎」
ぼそっと口に出した。……うん、なんか名前で呼ぶのはまだ恥ずかしいな。しばらくは明日見のままでいいだろ。
「…………双樹くん?」
「えっ」
眠っているはずの明日見と目が合った。は?いつの間に起きた?
「今俺の事名前で呼んだ?」
「よ、呼んでない!」
「え、呼んだよね!?もう一回言って!」
完全に目を覚ました明日見がニヤニヤした顔で迫ってきた。またこいつのペースに乗せられるのはごめんだ!!
「ねえねえ顔赤くない?」
「もうお前は早く帰れーーー!!」
「てか何でお前も来たんだよ。早く帰れ」
「俺これからこっちに住む予定だし?引っ越し準備も進めないと」
こいつ、俺の知らないところでどんどん話を進めてやがる。
「ねえ、披露宴はいつにしようか?大々的にやりたいよね!」
「話が早い!俺は仕方なく結婚を決めたって事を忘れるなよ」
思い返せば、あの日お見合いに行った時から明日見に振り回されっぱなしだ。散々俺の事をバカにしたかと思えば俺と結婚しようとするし、無理やりセックスしといて俺からキスしただけで顔を真っ赤にするし、未だにこいつのことがよく分からない。もう結婚を決めてしまったのだから、こうなったら明日見を利用しまくってやる。これからは俺がこいつを掌の上で転がし……て……や…………。瞼がどんどん下がってきて、視界が真っ暗になった。
「……あれ、双樹くん?……寝ちゃった」
今日は大変な事をさせてしまったな。本来はこんなに急いで結婚の話を進める必要は無いけど、椿家だって縁談を受け入れまくってる話は聞いていたから早くしないと誰かに取られるかもって焦ってしまった。双樹くんの寝顔を見ながら今日の事を思い出していた。
「キスしてくれたのもだけど、名前を呼んでくれたのも嬉しかったなあ」
「麟太郎さん?」
声のした方を振り返ると双葉ちゃんが来ていた。
「あれ、お兄ちゃん寝てる!どうしたの?」
「あーちょっと疲れさせちゃったから……」
双葉ちゃんも双樹くんに似て結構声がデカいんだけど、双樹くんは起きる気配が無い。
「ねえ麟太郎さん、お兄ちゃんと結婚するんでしょ。お兄ちゃんはどう思ってるの?」
「……そうだね、双樹くんには申し訳ないと思ってるよ。結婚するのだって俺のわがままだから。双樹くんは俺の事なんて好きじゃないけど、俺は……」
本当は家族には怒られても仕方ないくらい勝手な事をしてる自覚がある。しかも自分の立場を利用して。でも双葉ちゃんは笑顔を向けてきた。
「あのね、お兄ちゃんはいつも自分の事は考えないでみんなの事しか考えないの。だから麟太郎さんがお兄ちゃんを幸せにしてあげてね」
「うん……もちろん」
きっと双樹くんはずっと我慢してきたのだろう。その分みんなが幸せで居られるように。俺だけには、少しでもわがままを言ってくれるようになったら嬉しいな。
……ん?今何時だ……?ああ、あまりに疲れてつい眠ってしまっていたんだ。しかもソファーで寝落ちとか、椿家の長男ともあろう俺にあるまじき状態だ。そうだ、これから色々準備しなければ。ゆっくりと起き上がると、体にジャケットが掛けられているのに気づいた。
「あれ……明日見」
これは明日見が着ていたジャケットだ。しかも、明日見がソファーに寄りかかって寝てるじゃないか。……寝てるくせになんか手を握られているし。とりあえず明日見を起こさないようにソファーから抜け出し、掛けられていたジャケットを明日見の背中に掛けた。
ふと明日見の寝顔を見る。クソ、相変わらず腹が立つくらい整った顔をしてるな。こんな奴と結婚するという実感がまだ無い。そうだ、これからは明日見家との付き合いも深くなるし、こいつ自身椿家の人間になるんだ。明日見と呼び続けるのも無理が出てくるよな……。
「……麟太郎」
ぼそっと口に出した。……うん、なんか名前で呼ぶのはまだ恥ずかしいな。しばらくは明日見のままでいいだろ。
「…………双樹くん?」
「えっ」
眠っているはずの明日見と目が合った。は?いつの間に起きた?
「今俺の事名前で呼んだ?」
「よ、呼んでない!」
「え、呼んだよね!?もう一回言って!」
完全に目を覚ました明日見がニヤニヤした顔で迫ってきた。またこいつのペースに乗せられるのはごめんだ!!
「ねえねえ顔赤くない?」
「もうお前は早く帰れーーー!!」
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