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思い出
【34】名前(2)
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「沙稀も駄目だと思う?」
「正直驚いた。ただ、悪い意図がないなら、黎が物心ついてからも……傷つくことはないだろう」
「そっか。……今後は気をつけます」
悲しみが繋がっていくことを瑠既は望んだわけではない。その不満が口からこぼれて、内面を口に出してしまったと、瑠既は気づく。
パッと表情を変え、
「じゃあ、またね」
と、切り替えて飄々と振る舞い、手を振って帰っていく。
取り残された大臣と沙稀は、瑠既の背を見ながら呆然と呟く。
「何だろうね、あの自由さは」
「育ち……ですかね」
「そうか、育ちか。それなら、俺は鴻嫗城に残れただけ……よかったんだろうな」
「沙稀様は、自由ですか? 不自由ではないですか?」
『自由だ』と言おうとしたが、瑠既の姿が離れず、沙稀は言葉を選ぶ。
「俺にはある程度の自由くらいが、ちょうどいい」
沙稀の言葉に、大臣は安心したようだった。そんな大臣を、沙稀はやさしく見つめる。
「大臣は?」
沙稀には、深い意味はない。
けれど、大臣にとっては過去を呼び起こした。大臣が鴻嫗城から解放される日が来ないのは、本人がよくわかっている。囚われた状態になることも、自由を捨てたのも、本人の意思だ。
「昔……沙稀様の髪を、無理に染めたことがありましたね」
「ああ、そんなことも……あったね」
途中からリラに変わった髪を、瞳を、大臣はどう見ていたのか。沙稀には興味のある話だ。
「あれでも、私も悩んだのですよ? 染めるのと、切るのではどちらの方がいいのかと」
沙稀は耳を疑う。まさか、と。
どちらがいいのかと問われたとき、選択肢を問答無用で一択にするためだけに『切る』と言われたとずっと思っていたから。
長髪を短く切る――その行動は貴族にとっては血筋との決別を意味する。だから、沙稀は幼いころ、従わなければ切られると判断して、染めるという一択を呑んだのだ。
「私自身も切れませんでした。染める方が、気が楽でした。貴男も同じかと……染める方を選びました」
「いつの話?」
大臣の出生を、沙稀は考えたことがない。誰にでも知られたくない過去はある。身をもって体験をしたことも、沙稀にはある。
これまで大臣が、沙稀に出生を話すなど一切なかった。同じように大臣も『貴族』として生まれ育ったのだと、初めて知る。
城を出た者が出生を隠すため、象徴となる髪の色を変えることは少なくない。
「貴男たちが産まれる前の話です」
沙稀たちが幼いころ、大臣は二十代後半から三十代前半だった。淡く桃色がかっている紫は長く、肩より十センチほど下だっただろうか。髪の毛の長さはあまり変わっていないが、ひとつに纏まった髪は、瞳よりも薄い色をしていた。
瞳は今でも変わらない。ライラックだ。
沙稀が七歳で深い眠りにつき、再び意識を取り戻したとき、大臣は三十五歳前後だったはず。若くして、その髪は白髪に変わっていたが。
そういえば、沙稀が剣士になってから、大臣の髪は年々、少しずつ短くなった気がする。それでも、既定の範囲は、きちんと守られている。
沙稀はおそるおそる聞く。
「今は……もう染めては、ない?」
「はい」
「瞳は?」
「カラーコンタクトです」
大臣は沙稀の問いに淡々と答える。
沙稀は迷う。どこまで聞いていいのかと。
大臣は以前、『肩の荷が降りた』と言っていた。今だからこそ、吐き出せることもあるのかもしれない──沙稀はできる限り、大臣の話を聞きたかった。辛かった過去を解放するのが、今かも知れないと感じて。
「名前」
幼いころから知りたかった、大臣を示す唯一無二のもの。沙稀にとっては、大臣の出生を知るよりも知りたいことだ。
知っている大臣の名が仮名だと、母にさえ名を偽っていたと知ったとき、沙稀は大きなショックを受けた。あれは、いつだったか。物心がついて、まもなくだったかもしれない。
沙稀が幼いころは、大臣が頼りだった。憧れを、追いかける道標を、教えてくれる人物だった。
大きなショックを振り払うように、沙稀も瑠既も、それから大臣を名で呼ばなくなった。『大臣』としか、双子が呼ばなくなったのを、大臣も気づいているだろう。
「名前は、本当に仮名なのか?」
偽りの王が来たとき、その名を知り、幼い双子はまた大きなショックを受けた。母と結婚すると紹介された男もまた、『世良』と言った。尚且つ、こちらは本名だった。
『世良』は双子にとって、大臣を示す名。だから、沙稀も、瑠既も忌々しく思いながらも、偽りの王だとしても、あの男を『王』と言い表し、『呼名』と割り切ったのだ。
それだけ『世良』という名が双子にとっては大切な名であり、憎らしい人物の名に置き換えたくない名だった。
そんな沙稀の気持ちを知らずか、
「はい」
と、大臣は迷わずに答える。それが、沙稀には辛い。大事に思ってきた『世良』という名は、忌々しい名で正となる。
「もう、大臣の過去を知る者はいないだろう? だから、本名を名乗っても……」
「嫌です」
「どうして!」
沙稀はもどかしい気持ちをぶつける。瞬時、いけないことをしたと、後悔した。辛い過去と向き合おうとする苦しさは知っている。それなのに、大臣に追い打ちをかける真似をしてしまった。
咄嗟に口を閉じた沙稀の後悔を大臣は感じたのか、呟くように言葉がこぼれる。
「名が嫌いだから変えただけです。他に理由はありません」
沙稀の心配をよそに、大臣は清々しい顔をしている。それを見て沙稀は、なぜか胸がザワザワとした。
「何か……俺たちに隠してないよな?」
「貴男方に何かを隠して、私に何のメリットがあるのですか」
素早い回答、それが沙稀の救いになる。そうだと、沙稀は納得する。
ずっと、鴻嫗城を、沙稀を、恭良を大臣は守ってきてくれた。『肩の荷が降りた』と言ったほど、すべてをひとりで抱え込んできた。
沙稀は大臣を信頼している。ここまで、大臣と二人三脚で来たようなものだ。絶対に裏切らないと言える。大切な存在だ。
「私は他に行く当てはありませんから、鴻嫗城にいれるようにと、職務に励むのみです」
「鴻嫗城にいなよ」
一瞬でも疑ったことを、沙稀は悔いる。
何があっても、大臣にはずっと信頼を置いて過ごしてきた。沙稀にとって、鴻嫗城に大臣がいるのは当たり前のことだ。──また、一時でも鴻嫗城からいなくなってしまうなど、考えたくないほどの存在だ。
ただ、それはあまりに幼いころの感情に戻ったもので、言葉にした沙稀は今になって気恥ずかしそうにしている。
「沙稀様がそんなことを仰って、照れるなんて……かわいらしいですね」
「は?」
大臣の言葉に、沙稀はからかわれている気がして、すぐに目元を引き締める。しかし、その反応がまた、大臣にはかわいいと思えたのか。大臣はクスクス笑うと、沙稀の頭を幼子のようになでる。
「はい、わかりました、わかりました」
「なでるな!」
沙稀は反射的に大臣の手を振り払う。そうして、ふと、ここ数ヶ月で何度か大臣から、幼子のように扱われたことがあったと思い出す。
「大臣って……子どもが好きだったのか?」
「はい?」
大臣は独り身だ。幼少期から面倒を見てきた者たちが各々身を固め、物悲しさを感じているのか。
ここ一年で、大臣は過去を稀に口にする。だが、それは沙稀の知りたいと切望する内容からすれば、果てしなく遠い切れ端。
やさしい笑顔を浮かべて微笑む大臣を前に、闇で覆われた大臣の過去を想像することは、沙稀には困難だった。
「いや、何でもない」
「そうですか?」
大臣はおだやかに微笑み、幸せそうだ。
沙稀は昔、こんな大臣をずっと見ていたと回想する。
沙稀が物心ついたころの大臣は、毎日こんな風に沙稀と瑠既に接していた。
あの時期が、大臣の幸せそうな時期だったのではないか。
大臣にとって、今があのころのように幸せならば、重ねていく時間を大切にしていきたいと沙稀は強く願った。
「正直驚いた。ただ、悪い意図がないなら、黎が物心ついてからも……傷つくことはないだろう」
「そっか。……今後は気をつけます」
悲しみが繋がっていくことを瑠既は望んだわけではない。その不満が口からこぼれて、内面を口に出してしまったと、瑠既は気づく。
パッと表情を変え、
「じゃあ、またね」
と、切り替えて飄々と振る舞い、手を振って帰っていく。
取り残された大臣と沙稀は、瑠既の背を見ながら呆然と呟く。
「何だろうね、あの自由さは」
「育ち……ですかね」
「そうか、育ちか。それなら、俺は鴻嫗城に残れただけ……よかったんだろうな」
「沙稀様は、自由ですか? 不自由ではないですか?」
『自由だ』と言おうとしたが、瑠既の姿が離れず、沙稀は言葉を選ぶ。
「俺にはある程度の自由くらいが、ちょうどいい」
沙稀の言葉に、大臣は安心したようだった。そんな大臣を、沙稀はやさしく見つめる。
「大臣は?」
沙稀には、深い意味はない。
けれど、大臣にとっては過去を呼び起こした。大臣が鴻嫗城から解放される日が来ないのは、本人がよくわかっている。囚われた状態になることも、自由を捨てたのも、本人の意思だ。
「昔……沙稀様の髪を、無理に染めたことがありましたね」
「ああ、そんなことも……あったね」
途中からリラに変わった髪を、瞳を、大臣はどう見ていたのか。沙稀には興味のある話だ。
「あれでも、私も悩んだのですよ? 染めるのと、切るのではどちらの方がいいのかと」
沙稀は耳を疑う。まさか、と。
どちらがいいのかと問われたとき、選択肢を問答無用で一択にするためだけに『切る』と言われたとずっと思っていたから。
長髪を短く切る――その行動は貴族にとっては血筋との決別を意味する。だから、沙稀は幼いころ、従わなければ切られると判断して、染めるという一択を呑んだのだ。
「私自身も切れませんでした。染める方が、気が楽でした。貴男も同じかと……染める方を選びました」
「いつの話?」
大臣の出生を、沙稀は考えたことがない。誰にでも知られたくない過去はある。身をもって体験をしたことも、沙稀にはある。
これまで大臣が、沙稀に出生を話すなど一切なかった。同じように大臣も『貴族』として生まれ育ったのだと、初めて知る。
城を出た者が出生を隠すため、象徴となる髪の色を変えることは少なくない。
「貴男たちが産まれる前の話です」
沙稀たちが幼いころ、大臣は二十代後半から三十代前半だった。淡く桃色がかっている紫は長く、肩より十センチほど下だっただろうか。髪の毛の長さはあまり変わっていないが、ひとつに纏まった髪は、瞳よりも薄い色をしていた。
瞳は今でも変わらない。ライラックだ。
沙稀が七歳で深い眠りにつき、再び意識を取り戻したとき、大臣は三十五歳前後だったはず。若くして、その髪は白髪に変わっていたが。
そういえば、沙稀が剣士になってから、大臣の髪は年々、少しずつ短くなった気がする。それでも、既定の範囲は、きちんと守られている。
沙稀はおそるおそる聞く。
「今は……もう染めては、ない?」
「はい」
「瞳は?」
「カラーコンタクトです」
大臣は沙稀の問いに淡々と答える。
沙稀は迷う。どこまで聞いていいのかと。
大臣は以前、『肩の荷が降りた』と言っていた。今だからこそ、吐き出せることもあるのかもしれない──沙稀はできる限り、大臣の話を聞きたかった。辛かった過去を解放するのが、今かも知れないと感じて。
「名前」
幼いころから知りたかった、大臣を示す唯一無二のもの。沙稀にとっては、大臣の出生を知るよりも知りたいことだ。
知っている大臣の名が仮名だと、母にさえ名を偽っていたと知ったとき、沙稀は大きなショックを受けた。あれは、いつだったか。物心がついて、まもなくだったかもしれない。
沙稀が幼いころは、大臣が頼りだった。憧れを、追いかける道標を、教えてくれる人物だった。
大きなショックを振り払うように、沙稀も瑠既も、それから大臣を名で呼ばなくなった。『大臣』としか、双子が呼ばなくなったのを、大臣も気づいているだろう。
「名前は、本当に仮名なのか?」
偽りの王が来たとき、その名を知り、幼い双子はまた大きなショックを受けた。母と結婚すると紹介された男もまた、『世良』と言った。尚且つ、こちらは本名だった。
『世良』は双子にとって、大臣を示す名。だから、沙稀も、瑠既も忌々しく思いながらも、偽りの王だとしても、あの男を『王』と言い表し、『呼名』と割り切ったのだ。
それだけ『世良』という名が双子にとっては大切な名であり、憎らしい人物の名に置き換えたくない名だった。
そんな沙稀の気持ちを知らずか、
「はい」
と、大臣は迷わずに答える。それが、沙稀には辛い。大事に思ってきた『世良』という名は、忌々しい名で正となる。
「もう、大臣の過去を知る者はいないだろう? だから、本名を名乗っても……」
「嫌です」
「どうして!」
沙稀はもどかしい気持ちをぶつける。瞬時、いけないことをしたと、後悔した。辛い過去と向き合おうとする苦しさは知っている。それなのに、大臣に追い打ちをかける真似をしてしまった。
咄嗟に口を閉じた沙稀の後悔を大臣は感じたのか、呟くように言葉がこぼれる。
「名が嫌いだから変えただけです。他に理由はありません」
沙稀の心配をよそに、大臣は清々しい顔をしている。それを見て沙稀は、なぜか胸がザワザワとした。
「何か……俺たちに隠してないよな?」
「貴男方に何かを隠して、私に何のメリットがあるのですか」
素早い回答、それが沙稀の救いになる。そうだと、沙稀は納得する。
ずっと、鴻嫗城を、沙稀を、恭良を大臣は守ってきてくれた。『肩の荷が降りた』と言ったほど、すべてをひとりで抱え込んできた。
沙稀は大臣を信頼している。ここまで、大臣と二人三脚で来たようなものだ。絶対に裏切らないと言える。大切な存在だ。
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「鴻嫗城にいなよ」
一瞬でも疑ったことを、沙稀は悔いる。
何があっても、大臣にはずっと信頼を置いて過ごしてきた。沙稀にとって、鴻嫗城に大臣がいるのは当たり前のことだ。──また、一時でも鴻嫗城からいなくなってしまうなど、考えたくないほどの存在だ。
ただ、それはあまりに幼いころの感情に戻ったもので、言葉にした沙稀は今になって気恥ずかしそうにしている。
「沙稀様がそんなことを仰って、照れるなんて……かわいらしいですね」
「は?」
大臣の言葉に、沙稀はからかわれている気がして、すぐに目元を引き締める。しかし、その反応がまた、大臣にはかわいいと思えたのか。大臣はクスクス笑うと、沙稀の頭を幼子のようになでる。
「はい、わかりました、わかりました」
「なでるな!」
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「大臣って……子どもが好きだったのか?」
「はい?」
大臣は独り身だ。幼少期から面倒を見てきた者たちが各々身を固め、物悲しさを感じているのか。
ここ一年で、大臣は過去を稀に口にする。だが、それは沙稀の知りたいと切望する内容からすれば、果てしなく遠い切れ端。
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