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二匹の羊

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「え?」
 驚く狼に、羊はチラリと狼の耳を見せました。
「ほら」
 それは、まぎれもない狼の耳です。
「こわい?」
 羊の皮を被った狼は聞きます。
 羊だとばれてしまった狼は首を振りました。
「ううん。僕は何日も他の狼たちと一緒にいた。確かに、しゃべり方も声もこわかったけど……僕を見捨てようとはしなかった。やさしかったんだ。だから、こわくない」
 羊の皮を被った狼はふ~んと言うと、狼の耳をしまいました。そして、羊だと見破った狼の皮を剥ぎ始めます。
「な、なにするの?」
「こわくないなら、こんな姿捨てて」
 羊の耳が出ました。羊は狼の手で必死に抵抗します。
「僕を食べるの?」
「食べないよ。だって、私、羊さんが大好きなんだもの」
 片方の手が止まりました。
 それは羊の手です。みるみるうちに、姿は灰色から白くなっていきました。
「私ね、かわいい羊さんが大好きで、羊さんの友だちがほしかった。でもね、狼の姿のままじゃ話もしてもらえなくて、近寄ることもできなくて。それで姿を変えたの。そうしたら、たくさんの友だちができたけど……」
「けど?」
 無抵抗の羊が聞きました。
「辛かった。友だちにこわがられたくなくて、本当は狼だって言えなくて。私は羊さんになれたと思ったけど、偽物。……お腹がすいたら、隠れてご飯を食べた。私は狼で、羊さんには決してなれない。獣たちを追い払うと喜んでもらえたけど、だましているみたいで、どんどん辛くなった。だから、もう一緒にはいられない」
 狼の皮を握り締める手が、かすかに震えています。
「仲間のところに帰るんだ」
 こくりと羊の皮を被った狼はうなづきました。そして、なんどか目元を擦ります。
「そう思ってた。だけど、私とお話してくれる羊さんがここにいてくれた」
 手を離した目元は、キラキラとしていました。
「ねぇ、私と友だちになってくれない?」
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