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狼になりたい羊と羊になりたい狼

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 その羊は強くなりたいと願っていました。
 いつもいつもいじめられてしまう羊です。
 いつしか羊は狼になりたいと願いました。

 羊は狼の皮を被ります。
「僕をいじめないで。僕は狼みたいに強くなるんだ」
 そんな願いを握り締めて。


 あるところに羊と仲良くなりたい狼がいました。
 その狼はいつもひとりでした。
「どうして羊なんかと仲良くなりたいんだ」
 ある狼が声をかけます。
「そんなだから、お前はいつもひとりなんだよ」
 他の狼も声をかけます。
「私はかわいい羊さんが好きなの。だから、仲良くなりたいだけ」
 鋭い牙がキラリと光りました。声をかけた狼たちは顔を見合わせます。
「お前はやっぱり変わり者だ」
 声をかけてきた狼たちは、あははと笑いました。
 変わり者と言われた狼はそっぽを向き駆け出します。仲良くなりたい羊の群れに、今日もまた。


「きゃ~、狼がきた!」
 羊たちは一目散に逃げていきます。

 変わり者と言われた狼は、いつしか羊の皮を被りました。
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