49 / 54
次善の策
しおりを挟む
ドアが開かれ、雨音とともに足を踏み入れる乱雑な音が玄関から近い脱衣所からも聞こえてくる。玄関脇にドサッとした荷物が置かれる音が二つ聞こえた後、足音は急ぎ足で廊下に入り、脱衣所前を素通りしていく。穂積はリビングを通って、ベランダに干している洗濯物を取り込もうと急いでいる様子。
「あっ、バケ」
ハッとした藍は声を少し漏らした。庭には3つのバケツが倒されている。もし、そのバケツを穂積が見つけでもしたら確実に不審に思うだろう。
「大丈夫だよ、藍。あのバケツはベランダと反対方向にあるからすぐには気づかれないはず」
雫は藍の不安を取り除くように、落ち着いた口調で声をかけた。
「そ、そっか」
雫の言葉に藍はほっと胸をなでおろす。
「でもそんなの、いつ気づかれるかわからないしね」
雫は小さく呟くと扉を通り抜け、穂積の様子を窺う。穂積はベランダで洗濯物を取り込むのに夢中で一切廊下側を気にしていない。
「藍、今だよ今。早く立って、扉開けて」
雫は首だけにょきっとドアからすり抜けさせながら、捲し立てる。
「え、今って」
「穂積さん、今大きなシーツを取り込むのにちょっともたついてるから、早く」
「あ………う、うん」
藍は雫の言葉に頷き、ドアノブに手をかけようとする。
「だめです。今出るのは」
玖月は言葉で藍を制した。穂積の様子を窺っていた雫に対し、玖月はずっと階段方向に目をやっていた。
「え、どうし………っもしかして」
雫は急いで玖月と同じ方向に目を向ける。
「うわ、最悪のタイミング」
雫は辟易としながら頭に手をやった。
「ふあぁ、眠い」
二人が目をやった先にはあくびをしながら2階からダンダンダンとゆっくり且つはっきりとした足音を鳴らす霞の姿があった。
「ど、どうしよう」
容赦のない霞の足音に藍は声を震わせながら雫を見る。
「落ち着いて。たぶんトイレのために起きてきたんだと思う。こっちには来ないはずだよ」
雫は震える雫の傍によるため、一歩後ろに下がった。
遠慮のない足音が近づいてくる。
それは脱衣所に侵入者がいるとは露ほども思っていない足音だった。
藍は息を殺し続けた。ドアから離れ、隅で縮こまり両手で口を塞ぎ、霞が脱衣所を通り過ぎるのを待つ。足音が近づくたびに心臓の鼓動が早くなるのを藍は感じた。この心臓のドクンドクンとした音も届いているのではないかと心配になるほどはっきりとうるさく耳に響いている。
寝起きの霞は意識をぼんやりとさせながらも、目線はしっかりとさせていた。霞の目線の先にあるのは脱衣所ではなく、脱衣所の先にあるトイレだった。
霞は脱衣所を通り過ぎようと足を進ませていたが、なぜか脱衣所の前でピタリと足を止めた。
(ひっ)
霞が脱衣所のドアの前で止まったことを藍は感じ取り、びくりと肩を震わした。小さな悲鳴を口の中に含み、漏らさないように手で懸命に抑える。
「あれ?穂積くん、帰ってたんだ」
霞は脱衣所ではなくベランダのほうに意識を向けていた。
(私じゃなかったんだ)
藍は心の底から安堵した。
「おかえり、穂積くん」
霞はベランダにいる穂積に気づかせるため、声を張って呼びかけた。シーツを洗濯かごに取り込んでいた穂積は霞の声に反応し、顔を上げる。
霞は穂積に笑顔で手を振った。
「ごめんね、穂積くん。昨日は久方ぶりのせいか、じっくりと時間をかけちゃったからさ。ちょっと片付け手こずるかも」
霞は声を張り上げなくてもいい距離まで穂積に近づき、申し訳なさそうに苦笑する。そんな霞に穂積は相槌するように頷く。
「僕もあとで手伝うから」
許して、と軽く片手を立てるとリビングを出て、廊下に出た。
「藍、霞がトイレのドアを閉めたのと同時にここを出て。私が合図するから」
しゃがみ込んでいる藍に雫はドアに目を向けながら話しかける。
(同時?)
藍は視線だけで疑問を投げかける。
同時ではなく、霞が扉の中に入ってしばらくしてから出たほうがいいのではないか。
雫は藍の視線の意味をすぐに察し、答えた。
「ドアの開け閉めって思いのほか響く。それに霞ってけっこう耳が良いほうなんだ。だから、同時のほうがいいの」
雫は藍にゆっくり立つように手招きする。扉の開け閉めを同時なんて簡単そうに思えて、難易度が高い。音が少しでもずれたら脱衣所に人がいると気づかれるし、扉を開けるタイミングが少しでも早くなったら、姿を見られてしまう可能性が大いにある。
幸いなのはこの家のトイレのドアは外開きでしかもドアノブは右側にあることだった。開けたとき左側の脱衣所は完全に死角になる。
練習なしの1回勝負。自信はないがやるしかない。
藍は静かに歩き、ドアノブに手をかけ雫の合図を待つ。
しかし、藍が待っていた言葉は合図ではなかった。
「やばいやばい」
廊下に出ていた雫が焦りながら急いで脱衣所に入った。
(な、何?)
「穂積さんがこっちに来る。洗濯かごを持って」
(え?嘘だろ!?)
藍は体を強張らせた。ドアノブにかけていた手が小刻みに震え、止まらない。青ざめる時間も許さないように脱衣所に向かってくる穂積の足音が容赦なくやってくる。
その足音から逃れようと藍は後ずさる。
藍は逃げ道を探そうと首を動かす。この脱衣所は浴室と隣接している。窓が一つもない脱衣所ではどうすることもできないため、浴室に目を向けるしかなかった。
浴室には窓が一つあった。しかし、その窓は横幅が40センチ、縦幅が30センチ程度の小さい窓だった。小柄な藍でも肩が引っかかって通れないだろう。唯一の窓が逃げ道になれないという事実は藍を絶望に打ちのめさせるのに十分だった。
(どうしようどうしようどうしよう)
地下のあの光景が藍の脳裏によぎる。
血まみれの作業台、バラバラに切断された女の身体、床に転げ落ちていた首。
この扉を開けられたら私は――。
「玖月くん、あれやろうあれ」
気持ちが深いところまで沈もうとしていた時、雫の力のある声が藍を現実に引き戻した。その声にずっと下を向いていた藍は促されるように顔を上に向ける。
「玖月くん、あれやるしかないよ」
雫は真剣味を帯びた表情で玖月の腕を引っ張る。
「あれって」
「あれだよ。送り人の能力の」
玖月は言葉の意味を察し、目を少し見開く。
「ほら、はやく」
玖月は一瞬だけ考え込んだが、それはほんの一瞬のことでしかなかった。
「仕方がないですね。ですが、大丈夫なんですか?本当に任せていいんですね」
「任せて」
「な、何?」
藍は訳が分からず、二人を交互に見る。
雫は一呼吸を置くと、藍に向き合った。
「藍、立って。背を向けて」
「え?」
「早く、穂積さんが来る」
「う、うん」
急かす雫に促されるように藍はすっと立ち上がり、雫に背を向ける。
「一体何を………」
藍は不安と緊張が混じった声で雫をちらりと見た。後ろを振り向くとなぜか隣にいた玖月が雫の背中に回っていた。
「藍、ちょっとの間借りるよっ」
雫がそう言葉を発すると玖月は雫の背中をぐっと押した。しかし、ただ押したのではなかった。玖月は藍の体に重なるように押していた。霊体である雫の身体はまるで藍の体に引き寄せられるように重なっていく。
「………っ!」
声を上げる間もなかった。
雫の身体がすっぽりと藍の体に重なると藍の意識はぷつっとそこで切れた。
「あっ、バケ」
ハッとした藍は声を少し漏らした。庭には3つのバケツが倒されている。もし、そのバケツを穂積が見つけでもしたら確実に不審に思うだろう。
「大丈夫だよ、藍。あのバケツはベランダと反対方向にあるからすぐには気づかれないはず」
雫は藍の不安を取り除くように、落ち着いた口調で声をかけた。
「そ、そっか」
雫の言葉に藍はほっと胸をなでおろす。
「でもそんなの、いつ気づかれるかわからないしね」
雫は小さく呟くと扉を通り抜け、穂積の様子を窺う。穂積はベランダで洗濯物を取り込むのに夢中で一切廊下側を気にしていない。
「藍、今だよ今。早く立って、扉開けて」
雫は首だけにょきっとドアからすり抜けさせながら、捲し立てる。
「え、今って」
「穂積さん、今大きなシーツを取り込むのにちょっともたついてるから、早く」
「あ………う、うん」
藍は雫の言葉に頷き、ドアノブに手をかけようとする。
「だめです。今出るのは」
玖月は言葉で藍を制した。穂積の様子を窺っていた雫に対し、玖月はずっと階段方向に目をやっていた。
「え、どうし………っもしかして」
雫は急いで玖月と同じ方向に目を向ける。
「うわ、最悪のタイミング」
雫は辟易としながら頭に手をやった。
「ふあぁ、眠い」
二人が目をやった先にはあくびをしながら2階からダンダンダンとゆっくり且つはっきりとした足音を鳴らす霞の姿があった。
「ど、どうしよう」
容赦のない霞の足音に藍は声を震わせながら雫を見る。
「落ち着いて。たぶんトイレのために起きてきたんだと思う。こっちには来ないはずだよ」
雫は震える雫の傍によるため、一歩後ろに下がった。
遠慮のない足音が近づいてくる。
それは脱衣所に侵入者がいるとは露ほども思っていない足音だった。
藍は息を殺し続けた。ドアから離れ、隅で縮こまり両手で口を塞ぎ、霞が脱衣所を通り過ぎるのを待つ。足音が近づくたびに心臓の鼓動が早くなるのを藍は感じた。この心臓のドクンドクンとした音も届いているのではないかと心配になるほどはっきりとうるさく耳に響いている。
寝起きの霞は意識をぼんやりとさせながらも、目線はしっかりとさせていた。霞の目線の先にあるのは脱衣所ではなく、脱衣所の先にあるトイレだった。
霞は脱衣所を通り過ぎようと足を進ませていたが、なぜか脱衣所の前でピタリと足を止めた。
(ひっ)
霞が脱衣所のドアの前で止まったことを藍は感じ取り、びくりと肩を震わした。小さな悲鳴を口の中に含み、漏らさないように手で懸命に抑える。
「あれ?穂積くん、帰ってたんだ」
霞は脱衣所ではなくベランダのほうに意識を向けていた。
(私じゃなかったんだ)
藍は心の底から安堵した。
「おかえり、穂積くん」
霞はベランダにいる穂積に気づかせるため、声を張って呼びかけた。シーツを洗濯かごに取り込んでいた穂積は霞の声に反応し、顔を上げる。
霞は穂積に笑顔で手を振った。
「ごめんね、穂積くん。昨日は久方ぶりのせいか、じっくりと時間をかけちゃったからさ。ちょっと片付け手こずるかも」
霞は声を張り上げなくてもいい距離まで穂積に近づき、申し訳なさそうに苦笑する。そんな霞に穂積は相槌するように頷く。
「僕もあとで手伝うから」
許して、と軽く片手を立てるとリビングを出て、廊下に出た。
「藍、霞がトイレのドアを閉めたのと同時にここを出て。私が合図するから」
しゃがみ込んでいる藍に雫はドアに目を向けながら話しかける。
(同時?)
藍は視線だけで疑問を投げかける。
同時ではなく、霞が扉の中に入ってしばらくしてから出たほうがいいのではないか。
雫は藍の視線の意味をすぐに察し、答えた。
「ドアの開け閉めって思いのほか響く。それに霞ってけっこう耳が良いほうなんだ。だから、同時のほうがいいの」
雫は藍にゆっくり立つように手招きする。扉の開け閉めを同時なんて簡単そうに思えて、難易度が高い。音が少しでもずれたら脱衣所に人がいると気づかれるし、扉を開けるタイミングが少しでも早くなったら、姿を見られてしまう可能性が大いにある。
幸いなのはこの家のトイレのドアは外開きでしかもドアノブは右側にあることだった。開けたとき左側の脱衣所は完全に死角になる。
練習なしの1回勝負。自信はないがやるしかない。
藍は静かに歩き、ドアノブに手をかけ雫の合図を待つ。
しかし、藍が待っていた言葉は合図ではなかった。
「やばいやばい」
廊下に出ていた雫が焦りながら急いで脱衣所に入った。
(な、何?)
「穂積さんがこっちに来る。洗濯かごを持って」
(え?嘘だろ!?)
藍は体を強張らせた。ドアノブにかけていた手が小刻みに震え、止まらない。青ざめる時間も許さないように脱衣所に向かってくる穂積の足音が容赦なくやってくる。
その足音から逃れようと藍は後ずさる。
藍は逃げ道を探そうと首を動かす。この脱衣所は浴室と隣接している。窓が一つもない脱衣所ではどうすることもできないため、浴室に目を向けるしかなかった。
浴室には窓が一つあった。しかし、その窓は横幅が40センチ、縦幅が30センチ程度の小さい窓だった。小柄な藍でも肩が引っかかって通れないだろう。唯一の窓が逃げ道になれないという事実は藍を絶望に打ちのめさせるのに十分だった。
(どうしようどうしようどうしよう)
地下のあの光景が藍の脳裏によぎる。
血まみれの作業台、バラバラに切断された女の身体、床に転げ落ちていた首。
この扉を開けられたら私は――。
「玖月くん、あれやろうあれ」
気持ちが深いところまで沈もうとしていた時、雫の力のある声が藍を現実に引き戻した。その声にずっと下を向いていた藍は促されるように顔を上に向ける。
「玖月くん、あれやるしかないよ」
雫は真剣味を帯びた表情で玖月の腕を引っ張る。
「あれって」
「あれだよ。送り人の能力の」
玖月は言葉の意味を察し、目を少し見開く。
「ほら、はやく」
玖月は一瞬だけ考え込んだが、それはほんの一瞬のことでしかなかった。
「仕方がないですね。ですが、大丈夫なんですか?本当に任せていいんですね」
「任せて」
「な、何?」
藍は訳が分からず、二人を交互に見る。
雫は一呼吸を置くと、藍に向き合った。
「藍、立って。背を向けて」
「え?」
「早く、穂積さんが来る」
「う、うん」
急かす雫に促されるように藍はすっと立ち上がり、雫に背を向ける。
「一体何を………」
藍は不安と緊張が混じった声で雫をちらりと見た。後ろを振り向くとなぜか隣にいた玖月が雫の背中に回っていた。
「藍、ちょっとの間借りるよっ」
雫がそう言葉を発すると玖月は雫の背中をぐっと押した。しかし、ただ押したのではなかった。玖月は藍の体に重なるように押していた。霊体である雫の身体はまるで藍の体に引き寄せられるように重なっていく。
「………っ!」
声を上げる間もなかった。
雫の身体がすっぽりと藍の体に重なると藍の意識はぷつっとそこで切れた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どぶさらいのロジック
ちみあくた
ミステリー
13年前の大地震で放射能に汚染されてしまった或る原子力発電所の第三建屋。
生物には致命的なその場所へ、犬型の多機能ロボットが迫っていく。
公的な大規模調査が行われる数日前、何故か、若きロボット工学の天才・三矢公平が招かれ、深夜の先行調査が行われたのだ。
現場に不慣れな三矢の為、原発古参の従業員・常田充が付き添う事となる。
世代も性格も大きく異なり、いがみ合いながら続く作業の果て、常田は公平が胸に秘める闇とロボットに託された計画を垣間見るのだが……
エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+、にも投稿しております。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
若月骨董店若旦那の事件簿~水晶盤の宵~
七瀬京
ミステリー
秋。若月骨董店に、骨董鑑定の仕事が舞い込んできた。持ち込まれた品を見て、骨董屋の息子である春宵(しゅんゆう)は驚愕する。
依頼人はその依頼の品を『鬼の剥製』だという。
依頼人は高浜祥子。そして持ち主は、高浜祥子の遠縁に当たるという橿原京香(かしはらみやこ)という女だった。
橿原家は、水産業を営みそれなりの財産もあるという家だった。しかし、水産業で繁盛していると言うだけではなく、橿原京香が嫁いできてから、ろくな事がおきた事が無いという事でも、有名な家だった。
そして、春宵は、『鬼の剥製』を一目見たときから、ある事実に気が付いていた。この『鬼の剥製』が、本物の人間を使っているという事実だった………。
秋を舞台にした『鬼の剥製』と一人の女の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる