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緑を見下ろす五月雨家の兄弟
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「もう、やるならもう早くやりなさいよ。いつ、やるのかとイライラしちゃった」
「いたた、倒れるときは膝からにすればよかった」
「!!??」
緑は驚愕した。息絶えたと思っていた吹雪と砂霧が起き上がったからだ。
吹雪はむっと不満げな表情を向けており、砂霧は強く床に打ってしまった肩をさすっていた。
「でもよかった。穂積さんが床をきれいにしてくれているから、服や顔にほこりがぜんぜんついていない」
砂霧はペタペタと体を確認するように自分の体を触る。
「穂積さん、私の言った通りちゃんとハンカチに包んだんですね。その毒針は強い即効性のある針なので扱うのが少し難しく慎重にならないといけないから」
よく見ると穂積は黒い針を白いハンカチに包みながら握っている。その白は穂積が着てるシャツとほぼ同化している白だった。この色のハンカチで毒針を包んだから、わずかな視界に入っただけでは気付かれないだろう。しかも、そのハンカチはさきほどまで出していた砂霧のハンカチだった。
「でも、なんでよりにもよってそのハンカチを出しておくのよ。霞が鼻をかんだものでしょ?」
「霞が鼻をかむなんて思わなかったわ。しかたないでしょ」
「だから、そのあとに別のハンカチを出しておけばよかったじゃない。どうせ、予備のものがあるんでしょ?ていうか、私のポケットに突っ込んだ時点で予備のものを出すのかと思っていたわ」
「……」
「押し黙るということはその考えに至っていなかったということね。あいかわらず、要領が悪いわよ」
「………ちっ」
「聞こえてるわよ」
どんどんどんどん。
次の瞬間、テーブルががくがくと揺れだした。緑は霞む目でゆっくりとテーブルに向ける。
「なっ!?」
またもや、緑は困惑する。テーブルが揺れていた理由が出雲が座ったままで膝を苛立たしく揺らしていたからだった。
「……不快だ。まったく不快だ」
「それにしても、兄さんよく我慢したわね。兄さんのことだから待つなんてことしないで、穂積さんのかわりに事を成しちゃうと思ったわ」
「あと10秒ほど待たせるならそうしていた。穂積もろとも」
「ああ、そう」
吹雪がそう言うと、出雲はふくれっ面のままそっぽを向いた。
「って、いい加減起きなさい」
吹雪はいまだに床に倒れている無反応の霞の頭を軽くはたいた。
「んあ?終わった?」
霞はむくっと起き上がり、軽くあくびをする。
「この状況で普通寝る?」
「寝てないよ。ちょっとまどろんでただけだって」
「同じじゃない」
「だってしょうがないよ。話が長すぎて眠くなってきたんだから。なんとか“あれ”を考えることで必死で眠気を吹き飛ばそうとしたんだけど、逆に眠気が増しちゃって」
「あれ?」
「ほら、言ったじゃん。料理で使うぐるぐるってするやつ。名前を一生懸命思い出そうとしたんだけど、思い出せなくて」
吹雪は目を半開きにしながら人差し指を立て、くるくる回した。
「吹雪、あなたそもそもその料理器具の名前知らないんじゃないの?」
「あ」
「おばか。もともと知らないのに思い出すも何もないでしょう」
吹雪は明後日のほうに視線をやる霞に対し、さらに捲し立てる。
「というか霞、倒れる瞬間ちょっと言葉がおかしかったの気づいてる?」
「え」
「毒を盛られたのに“体が痛い”は変でしょう。眩暈がするとか体が動かないとかだったらわかるけど。一瞬、バレちゃうんじゃないかって思ったわ」
「あはっ。あ、穂積くん上手くいったみたいだね。よかったよかった」
霞はごまかすように膝で傍まで歩み寄り、両手で穂積の手を握り締める。
「もう」
吹雪は呆れながらゆっくりと立ち上がった。
ガタンガタンガタン。
出雲は苛立たし気にさきほどよりも大げさに膝でテーブルを揺らしている。出雲は苛立っている原因を示すかのように視線を下方にやっていた。それはさきほど床に落とした銀のフォーク。
「拾え」
有無を言わせない命令口調。それなのに、当然のように動く人間がいた。この出雲の傲慢な物言いに文句も言わず、従う人間は一人しかいない。
穂積は落ちたフォークを拾い上げ布でキュッと素早く拭き、出雲の目の前に置く。その動きには何の不満もためらいも感じられなかった。まるで、出雲の要望を聞くことが自分の役割だというように。
「な、な……に。どういう……こと?」
緑の困惑はますます強くなる。全員が毒を盛られたとは思えないほど平然と、普段と同じようなやりとりをしている。緑は全部の料理に確実に毒を仕込んでいた。その毒は一滴垂らしただけでも致死量になる遅効性の毒。体を徹底的に鍛え抜いた暗殺者でも耐えることができないものだった。その毒を穂積以外全員が一口どころ何口も口に含んでいた。本来なら今頃、話すことも体を動かすことだってできない。
即ち、全員息絶えている頃だ。
緑はすでに自由に動かせない手足をなんとか動かし、両手を床に置いてバランスを取りながら見上げる形で全員の顔を窺う。誰も毒でのたうち回ることもなく、苦渋に満ちた表情もしていない。むしろ、そうなっているのは自分一人だけ。
この状況は一体何なんだ。
「ごめんね」
今、考えていることを汲み取ったかのようなタイミングで上から声がかかる。
優しさが含まれたような労りの言葉。
しかし、緑は怯えた目で声の方角を見上げる。その穏やかな口調が余計に恐怖を煽った。
「全部演技だったんだ」
零時は普段と変わらぬ笑みを浮かべ、見下ろしていた。零時が緑に声をかけると全員が一斉に緑を見据える。
「演技?そんな……どこ、から?」
「最初からだよ」
「だって確かにみんな、料理を口に……」
「うん、君の料理は本当においしいね」
零時は微笑む。どこまでも優しく穏やかに。
「……じゃあ、どう……して?」
「簡単な話よ。単に私たちには効かないってだけ」
吹雪が前に出た。
「効かない?」
「僕たち兄弟は皆、体に慣らすため物心つく前から毒を少しずつ摂取させられてたのよ。最初は料理に一滴、次は数滴、次は毒そのものを。7歳くらいの頃はもう、トリカブトやベニテングダケが大量に併合したキャンディーを舐めていたくらいなんだから」
「僕あのアメあんまり好きじゃない。だってあんまり甘くないんだもん」
「霞、ちょっと黙ってて。つまり、大概の毒はもう耐性がついちゃってるんだ、ここにいる全員ね」
「そん……な。でも、だ、だって……その毒は本当に、強力で五月雨家の人間でも耐性が付いてない、数少ないものだから十分な効き目があるって……」
緑はハッとした。
「まさ、か」
首を動かし、弟を見た。感情のない目で穂積は緑を見下ろし、互いに視線が交差する。
「嘘だったの?」
穂積は何の反応も示さない。しかし、示さなくてもそれが真実だと察することができる。
「さっきあなたは私たちが隙をなかなか見せようとしないって言っていたけど、そんなの当り前よ。明確な殺意を持った人間がそばにいるんだから」
吹雪は一瞬だけ穂積に移動した後、また元に戻した。
「……それって」
「あなたは知らないだろうから教えてあげる。父さんはね、ハウスヘルパーを雇うとき一つの決め事があるらしいの。それは私たちの“命を狙っている人間”。」
「………え?」
「父さんの情報網は裏社会でも随一なのよ。いついかなる時でも対処でき、精神的にも鍛えられるからって父さんは言っているんだけど、正直家の中ぐらいはまったくりしていたいわ。ほんと、酷いわよね」
「吹雪、父さんの悪口は言っちゃだめよ」
吹雪がため息をこぼすと砂霧が後ろからたしなめてくる。
「こんなの悪口じゃないでしょう」
「そっ、それ……じゃあ、私たちのこ……と前から?」
緑の舌がもつれる。吹雪の口ぶりではまるで緑の目的や正体を事前に知っていたみたいだった。しかも、そのことについて全員が何も知らない風を装い、命を狙っている人間の料理を食し、一つ屋根の下で一緒にも暮らしていた。
「いいや、その時点では恨んでるということしかわからないの。父さんは絶対に教えてくれないから」
「……その時点では、って」
もうすでにすべてを把握しているような言い方ではないか。
「穂積に聞いた」
テーブルに頬杖をつきながら、足を不遜に組んでいる出雲が淡々と告げる。
「な、なんで?なんで知らないふりを」
もう首から下の体の自由はほとんど効かなくなっている。緑はまだ自由にできる舌を使って必死に言葉をつむぐ。
自分は目の前の怪物たちに手の上で踊らされていた。全員が緑たちの目的を知っていたにも関わらず、それをずっと黙認していた。おそらく、緑が行動を起こさなかったらずっと見て見ぬふりされていただろう。
いや、もう『緑たち』ではなく『緑ただ一人』になってしまった。
「それはもうわかっているはずだよ」
零時が答えた。その笑顔に緑はゾクリと背筋が凍る。
零時の言う通り、わざわざ問わなくても理解ができる。緑の殺意や殺しの腕なんて取るに足らないと判断されたのだろう。実際、緑の殺しの知識や技術は付け焼刃程度のもの。死線を何度もくぐってきた連中にとってそんなものは歯牙にもかけなかったのだろう。いつでも殺せると。
「いたた、倒れるときは膝からにすればよかった」
「!!??」
緑は驚愕した。息絶えたと思っていた吹雪と砂霧が起き上がったからだ。
吹雪はむっと不満げな表情を向けており、砂霧は強く床に打ってしまった肩をさすっていた。
「でもよかった。穂積さんが床をきれいにしてくれているから、服や顔にほこりがぜんぜんついていない」
砂霧はペタペタと体を確認するように自分の体を触る。
「穂積さん、私の言った通りちゃんとハンカチに包んだんですね。その毒針は強い即効性のある針なので扱うのが少し難しく慎重にならないといけないから」
よく見ると穂積は黒い針を白いハンカチに包みながら握っている。その白は穂積が着てるシャツとほぼ同化している白だった。この色のハンカチで毒針を包んだから、わずかな視界に入っただけでは気付かれないだろう。しかも、そのハンカチはさきほどまで出していた砂霧のハンカチだった。
「でも、なんでよりにもよってそのハンカチを出しておくのよ。霞が鼻をかんだものでしょ?」
「霞が鼻をかむなんて思わなかったわ。しかたないでしょ」
「だから、そのあとに別のハンカチを出しておけばよかったじゃない。どうせ、予備のものがあるんでしょ?ていうか、私のポケットに突っ込んだ時点で予備のものを出すのかと思っていたわ」
「……」
「押し黙るということはその考えに至っていなかったということね。あいかわらず、要領が悪いわよ」
「………ちっ」
「聞こえてるわよ」
どんどんどんどん。
次の瞬間、テーブルががくがくと揺れだした。緑は霞む目でゆっくりとテーブルに向ける。
「なっ!?」
またもや、緑は困惑する。テーブルが揺れていた理由が出雲が座ったままで膝を苛立たしく揺らしていたからだった。
「……不快だ。まったく不快だ」
「それにしても、兄さんよく我慢したわね。兄さんのことだから待つなんてことしないで、穂積さんのかわりに事を成しちゃうと思ったわ」
「あと10秒ほど待たせるならそうしていた。穂積もろとも」
「ああ、そう」
吹雪がそう言うと、出雲はふくれっ面のままそっぽを向いた。
「って、いい加減起きなさい」
吹雪はいまだに床に倒れている無反応の霞の頭を軽くはたいた。
「んあ?終わった?」
霞はむくっと起き上がり、軽くあくびをする。
「この状況で普通寝る?」
「寝てないよ。ちょっとまどろんでただけだって」
「同じじゃない」
「だってしょうがないよ。話が長すぎて眠くなってきたんだから。なんとか“あれ”を考えることで必死で眠気を吹き飛ばそうとしたんだけど、逆に眠気が増しちゃって」
「あれ?」
「ほら、言ったじゃん。料理で使うぐるぐるってするやつ。名前を一生懸命思い出そうとしたんだけど、思い出せなくて」
吹雪は目を半開きにしながら人差し指を立て、くるくる回した。
「吹雪、あなたそもそもその料理器具の名前知らないんじゃないの?」
「あ」
「おばか。もともと知らないのに思い出すも何もないでしょう」
吹雪は明後日のほうに視線をやる霞に対し、さらに捲し立てる。
「というか霞、倒れる瞬間ちょっと言葉がおかしかったの気づいてる?」
「え」
「毒を盛られたのに“体が痛い”は変でしょう。眩暈がするとか体が動かないとかだったらわかるけど。一瞬、バレちゃうんじゃないかって思ったわ」
「あはっ。あ、穂積くん上手くいったみたいだね。よかったよかった」
霞はごまかすように膝で傍まで歩み寄り、両手で穂積の手を握り締める。
「もう」
吹雪は呆れながらゆっくりと立ち上がった。
ガタンガタンガタン。
出雲は苛立たし気にさきほどよりも大げさに膝でテーブルを揺らしている。出雲は苛立っている原因を示すかのように視線を下方にやっていた。それはさきほど床に落とした銀のフォーク。
「拾え」
有無を言わせない命令口調。それなのに、当然のように動く人間がいた。この出雲の傲慢な物言いに文句も言わず、従う人間は一人しかいない。
穂積は落ちたフォークを拾い上げ布でキュッと素早く拭き、出雲の目の前に置く。その動きには何の不満もためらいも感じられなかった。まるで、出雲の要望を聞くことが自分の役割だというように。
「な、な……に。どういう……こと?」
緑の困惑はますます強くなる。全員が毒を盛られたとは思えないほど平然と、普段と同じようなやりとりをしている。緑は全部の料理に確実に毒を仕込んでいた。その毒は一滴垂らしただけでも致死量になる遅効性の毒。体を徹底的に鍛え抜いた暗殺者でも耐えることができないものだった。その毒を穂積以外全員が一口どころ何口も口に含んでいた。本来なら今頃、話すことも体を動かすことだってできない。
即ち、全員息絶えている頃だ。
緑はすでに自由に動かせない手足をなんとか動かし、両手を床に置いてバランスを取りながら見上げる形で全員の顔を窺う。誰も毒でのたうち回ることもなく、苦渋に満ちた表情もしていない。むしろ、そうなっているのは自分一人だけ。
この状況は一体何なんだ。
「ごめんね」
今、考えていることを汲み取ったかのようなタイミングで上から声がかかる。
優しさが含まれたような労りの言葉。
しかし、緑は怯えた目で声の方角を見上げる。その穏やかな口調が余計に恐怖を煽った。
「全部演技だったんだ」
零時は普段と変わらぬ笑みを浮かべ、見下ろしていた。零時が緑に声をかけると全員が一斉に緑を見据える。
「演技?そんな……どこ、から?」
「最初からだよ」
「だって確かにみんな、料理を口に……」
「うん、君の料理は本当においしいね」
零時は微笑む。どこまでも優しく穏やかに。
「……じゃあ、どう……して?」
「簡単な話よ。単に私たちには効かないってだけ」
吹雪が前に出た。
「効かない?」
「僕たち兄弟は皆、体に慣らすため物心つく前から毒を少しずつ摂取させられてたのよ。最初は料理に一滴、次は数滴、次は毒そのものを。7歳くらいの頃はもう、トリカブトやベニテングダケが大量に併合したキャンディーを舐めていたくらいなんだから」
「僕あのアメあんまり好きじゃない。だってあんまり甘くないんだもん」
「霞、ちょっと黙ってて。つまり、大概の毒はもう耐性がついちゃってるんだ、ここにいる全員ね」
「そん……な。でも、だ、だって……その毒は本当に、強力で五月雨家の人間でも耐性が付いてない、数少ないものだから十分な効き目があるって……」
緑はハッとした。
「まさ、か」
首を動かし、弟を見た。感情のない目で穂積は緑を見下ろし、互いに視線が交差する。
「嘘だったの?」
穂積は何の反応も示さない。しかし、示さなくてもそれが真実だと察することができる。
「さっきあなたは私たちが隙をなかなか見せようとしないって言っていたけど、そんなの当り前よ。明確な殺意を持った人間がそばにいるんだから」
吹雪は一瞬だけ穂積に移動した後、また元に戻した。
「……それって」
「あなたは知らないだろうから教えてあげる。父さんはね、ハウスヘルパーを雇うとき一つの決め事があるらしいの。それは私たちの“命を狙っている人間”。」
「………え?」
「父さんの情報網は裏社会でも随一なのよ。いついかなる時でも対処でき、精神的にも鍛えられるからって父さんは言っているんだけど、正直家の中ぐらいはまったくりしていたいわ。ほんと、酷いわよね」
「吹雪、父さんの悪口は言っちゃだめよ」
吹雪がため息をこぼすと砂霧が後ろからたしなめてくる。
「こんなの悪口じゃないでしょう」
「そっ、それ……じゃあ、私たちのこ……と前から?」
緑の舌がもつれる。吹雪の口ぶりではまるで緑の目的や正体を事前に知っていたみたいだった。しかも、そのことについて全員が何も知らない風を装い、命を狙っている人間の料理を食し、一つ屋根の下で一緒にも暮らしていた。
「いいや、その時点では恨んでるということしかわからないの。父さんは絶対に教えてくれないから」
「……その時点では、って」
もうすでにすべてを把握しているような言い方ではないか。
「穂積に聞いた」
テーブルに頬杖をつきながら、足を不遜に組んでいる出雲が淡々と告げる。
「な、なんで?なんで知らないふりを」
もう首から下の体の自由はほとんど効かなくなっている。緑はまだ自由にできる舌を使って必死に言葉をつむぐ。
自分は目の前の怪物たちに手の上で踊らされていた。全員が緑たちの目的を知っていたにも関わらず、それをずっと黙認していた。おそらく、緑が行動を起こさなかったらずっと見て見ぬふりされていただろう。
いや、もう『緑たち』ではなく『緑ただ一人』になってしまった。
「それはもうわかっているはずだよ」
零時が答えた。その笑顔に緑はゾクリと背筋が凍る。
零時の言う通り、わざわざ問わなくても理解ができる。緑の殺意や殺しの腕なんて取るに足らないと判断されたのだろう。実際、緑の殺しの知識や技術は付け焼刃程度のもの。死線を何度もくぐってきた連中にとってそんなものは歯牙にもかけなかったのだろう。いつでも殺せると。
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