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食事の風景、そして……
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「ごめんなさいね、こんなに夕食遅くしちゃって。一人でたいへんだったでしょ?」
「いいえ、しかたないわ」
吹雪はテーブルに着きながら、料理を出す緑に向かって申し訳なさそうに言葉を発する。
広いリビングの長いダイニングテーブルにそれぞれが椅子に着こうとしていた。チンゲン菜とエビ団子のスープ、きのこを炒め添えした豆腐ステーキ、ほうれん草のおひたしが人数分白い皿に乗せられ、置かれている。
「相変らずおいしそう」
「ありがとう。でも、こんな時どういう料理を出せばいいのかわからなくて、いつも通りにしちゃったわ」
「いいのよ、そんなに気をつかわなくて」
緑は炊飯器から炊き立てのご飯を茶碗によそい、吹雪に手渡した。
「いいな、私も食べたいな。緑さんの料理」
雫は夕食の様子をじっと見つめていた。
「緑さんは2ヶ月くらい前から雇っている人で、作る料理がどれも美味しいからみんなの胃袋すぐにつかんだんだ。私も含めて」
皿に乗っている品から食欲をそそるように湯気が立ち昇っている。ただ見ているしかできない雫は羨むような視線を料理に向ける。
「本当に美味しかったのにもう食べられないなんて残念。なんだかお腹が空いてきたような気がする」
「幽霊なのでお腹も空きませんし、食事だって必要ありません。だからそれは気のせいです」
「……だろうね」
雫は軽口の通じない玖月に苦笑いを浮かべる。
「ほら、もう泣かないの、霞」
涙目になりながら鼻水をすする霞に砂霧は持っていたハンカチを差し出した。
「ぐずっ、おね、ちゃ………ぐふ、う」
霞はそれを受け取り、涙をぬぐった後音がなるほど思いっきりかんだ。角度を変え何度もかんだのでかなりの量の鼻水が絡んだとわかる。
「ありがとう」
霞はすっきりした様子でそのハンカチを砂霧に押し付けるようにして返した。
「………」
砂霧は鼻水が絡んでしまったハンカチを流されるまま受け取った。そして目にも止まらぬ速さで隣に座っている吹雪のズボンに突っ込んだ後、素早く椅子から立ち上がりキッチンの流しで手を洗い、何事もなかったかのように椅子に座った。吹雪は緑と話し込んでいるため気づいていない。
「たぶんあとで日記に付け足すな。あの様子じゃ」
もちろん、その一部始終を二人はばっちり見ていた。
「穂積くん、これ出雲くんに渡して」
緑は手慣れた手つきでご飯をよそった茶碗を穂積に渡した。穂積は頬杖をついたまま虚空を見つめる出雲の前にそっと置いた。出雲の前に置かれている料理の品は皆と少し変わっていた。例えば、調理されている豆腐ステーキに対し、出雲のは何の料理もましてや調味料もかけていないただの豆腐だった。しかも、豆腐やご飯以外の品は圧倒的に量が少ない。
出雲はゆっくりと視線を下げた。突然、出雲は頬杖をつきながら無言でフォークをカンカンカンと割れそうなほど打ちはじめた。
「何か気に食わなかったの?」
緑は出雲のそんな態度に動揺することはなく、慣れた態度で声をかける。そして穂積に茶碗を持ってこさせ、不機嫌の原因を探るようにじっと見入った。
「もしかして、この模様が気に入らなかった?」
緑が持っている茶碗は白にうっすらと一本の黒い線の模様が入ったものだった。出雲は頬杖をついたまま何も答えず、ただ不機嫌そうに眉根を寄せているだけだった。緑はすぐさま、何も模様の入っていない白の茶碗に取り換え、ご飯をよそった。
「はい、今度は何も模様は入ってないわよ」
緑は再び穂積に手渡し、持っていかせた。
「ちっ」
しかし、出雲は同じ体勢のまま再度フォークで茶碗を打った。カンカンカンとさきほどよりも速く、音もうるさい。
「今度はどうしたの?」
穂積はすぐさま茶碗を回収し、緑に手渡した。緑はじっと茶碗を凝視した。しかし、どんなに見ても出雲が不機嫌の原因が見つからない。ご飯が黒ずんでいるわけでも茶碗に汚れや目立つ模様も見当たらなかった。
「盛り方が気に食わなかったんじゃない?」
横目で見ていた吹雪が口を挟んだ。
「盛り方?」
「少し歪んでるでしょ?均等にしてみて」
「ああ」
緑は納得したようで、しゃもじで米をつぶさないように整える。そして、前後左右どこを見ても歪みが見当たらないほどに仕上げると再び穂積に出雲のところに持っていかせた。
「ふん」
澄まし顔のままだが、一応は正解だったらしくフォークで茶碗を打つことはしなかった。
出雲は普段、二つのフォークを所持している。切れ味が鋭いフォークと身近なものを引き寄せるフォーク。出雲が今、手にしているフォークは一回り小さく、先も鋭くない後者のフォークだ。このフォークも銀色で新品のように綺麗に磨かれている。
「正解でよかった。もうここに来て2ヶ月なのにまだ完璧にはこなせないわね」
緑は出雲をちらりと見て苦笑した。
「いいのよ、それが普通なんだから。こういう面倒ごとは慣れなくてもいいと思うわ。私だってまだまだこの家での慣れない面倒ごとだってあるんだから。例えば―」
吹雪は気さくに緑に話しかけながら自身のポケットをまさぐる。
「私にとっての一番の面倒ごとはあんたよっ!気づいていないと思ったの!?」
吹雪は思いっきり、砂霧の顔面めがけてハンカチを投げつけた。
「痛いじゃない」
「痛いじゃないわよ。平手じゃなくてハンカチにしてあげたんだからありがたく思いなさいよ」
砂霧はギロリと吹雪を睨みつけながらふるふると小刻みに震える。しかし、激高すると思ったがしなかった。おそらく爆発しそうな時、零時がテーブルについたからだろう。
「かわいそうな吹雪」
「は?」
砂霧は口元を押さえ、哀れむような声音を出す。
「雫が死んで悲しいのはあなただけじゃないのよ。それなのに食事の席でハンカチをいきなり投げつけて八つ当たりをするなんて、雫も悲しんでるわ」
「ああ?」
砂霧はわざとらしく哀れむ声を出せば出すほどほど吹雪の声が低くなっていく。
一触即発の空気が二人の間に漂った時だった。
「もうすぐ9時回るね」
零時ののんびりとした声がその空気を切り裂くように入ってきた。
「遅い時間の食事は睡眠にも体にも影響がでるから今後は少し気をつけないと」
落ち着いた声だがどこか威圧的だった。その声に二人大人しくなる。
「いただきます」
まるで合図のような零時の言葉を発したのと同時に皆一斉に食事を始めた。
その様子を雫と玖月は眺める。出雲は出された食事はほとんど手をつけようとはしなかった。口に運ぶものといえば、ご飯と豆腐だけだ。しかも、美味しそうには食べていない。ただお腹を満たすためだけに機械的に黙々と食べている。まるで、食そのものに関心がないように見える。
「出雲さん、食べること自体好きじゃないんだよね」
「はぁ」
雫は隣の玖月に説明する。
まだ涙ぐんでいるが、たいぶ落ち着きを取り戻している霞はもぐもぐと頬張りながら食べていた。ごっくんとおかずを飲み込んだ後、手元の半分しかご飯が入っていない茶碗を見つめた。
「僕もやってみようかな、料理」
「料理?霞が?」
吹雪は視線だけを霞に動かす。
「うん、前々から思ってたんだ。テレビの占いで「何か新しいことをはじめてみましょう」とも言ってたし。それにあれ使ってみたいんだよね」
「あれ?」
「ほらほら、緑さんがよく使うぐるぐるってするあれだよあれ」
答えを出そうにも名前が出てこないようで霞は難しい顔をしながら、それを表現しようと箸を持ったまま右手を動かす。
「あれじゃわかんないわよ」
吹雪は困り顔で息を吐きだす。
「ごめんね、二人とも。できるだけ早く済まそうと思うけどやっぱり遅くなると思う」
零時は少し申し訳なさそうに立っている二人を交互に見た。二人は五月雨家のハウスキーパーとして雇われている。その二人が夕食を取る時間は基本すべての片づけを終えてからだった。五月雨家の一人が仕事のため、どうしても遅くなり一斉の夕食が間に合わない場合は作り置きをするが、全員がそろって夕食を取るとき二人の食事は最後の最後が常だった。
「いいえ、そんなこと言わないでください。それに私たちもあまり食事がのどに通らないと思います」
そういって翠は目を伏せる。穂積は緑に同調するかのようにこくんとゆっくり頷いた。
緑は目だけではなく顔も伏せていった。
「まだ信じられないな、あの子が死んだなんて。私が作ったどの料理も気に入ってくれてた。特にドーナッツを作ったときは本当に毎回、美味しそうに食べてくれた。私、その反応が嬉しくてついつい作り過ぎたこともあったわ。でも、こんなことになるなんてもっとあの子と話をすべてだった。きっと今以上の関係を築けてたわ」
緑は声音だけではなく体も震わせている。一向に顔を上げようとしない。
「私、今日ずっと考えていた。せめて死んだあの子のためにできることをしようって。だから私、私――」
緑はゆっくりと顔を上げた。
「ここにいるみんなをあの子が堕ちたであろう地獄に送ってあげようと思って」
その言葉に皆、一斉に緑に視線を向けると緑は心底嬉しそうに恍惚の笑みを浮かべていた。
それは誰もが見たことのないような笑みだった。
「いいえ、しかたないわ」
吹雪はテーブルに着きながら、料理を出す緑に向かって申し訳なさそうに言葉を発する。
広いリビングの長いダイニングテーブルにそれぞれが椅子に着こうとしていた。チンゲン菜とエビ団子のスープ、きのこを炒め添えした豆腐ステーキ、ほうれん草のおひたしが人数分白い皿に乗せられ、置かれている。
「相変らずおいしそう」
「ありがとう。でも、こんな時どういう料理を出せばいいのかわからなくて、いつも通りにしちゃったわ」
「いいのよ、そんなに気をつかわなくて」
緑は炊飯器から炊き立てのご飯を茶碗によそい、吹雪に手渡した。
「いいな、私も食べたいな。緑さんの料理」
雫は夕食の様子をじっと見つめていた。
「緑さんは2ヶ月くらい前から雇っている人で、作る料理がどれも美味しいからみんなの胃袋すぐにつかんだんだ。私も含めて」
皿に乗っている品から食欲をそそるように湯気が立ち昇っている。ただ見ているしかできない雫は羨むような視線を料理に向ける。
「本当に美味しかったのにもう食べられないなんて残念。なんだかお腹が空いてきたような気がする」
「幽霊なのでお腹も空きませんし、食事だって必要ありません。だからそれは気のせいです」
「……だろうね」
雫は軽口の通じない玖月に苦笑いを浮かべる。
「ほら、もう泣かないの、霞」
涙目になりながら鼻水をすする霞に砂霧は持っていたハンカチを差し出した。
「ぐずっ、おね、ちゃ………ぐふ、う」
霞はそれを受け取り、涙をぬぐった後音がなるほど思いっきりかんだ。角度を変え何度もかんだのでかなりの量の鼻水が絡んだとわかる。
「ありがとう」
霞はすっきりした様子でそのハンカチを砂霧に押し付けるようにして返した。
「………」
砂霧は鼻水が絡んでしまったハンカチを流されるまま受け取った。そして目にも止まらぬ速さで隣に座っている吹雪のズボンに突っ込んだ後、素早く椅子から立ち上がりキッチンの流しで手を洗い、何事もなかったかのように椅子に座った。吹雪は緑と話し込んでいるため気づいていない。
「たぶんあとで日記に付け足すな。あの様子じゃ」
もちろん、その一部始終を二人はばっちり見ていた。
「穂積くん、これ出雲くんに渡して」
緑は手慣れた手つきでご飯をよそった茶碗を穂積に渡した。穂積は頬杖をついたまま虚空を見つめる出雲の前にそっと置いた。出雲の前に置かれている料理の品は皆と少し変わっていた。例えば、調理されている豆腐ステーキに対し、出雲のは何の料理もましてや調味料もかけていないただの豆腐だった。しかも、豆腐やご飯以外の品は圧倒的に量が少ない。
出雲はゆっくりと視線を下げた。突然、出雲は頬杖をつきながら無言でフォークをカンカンカンと割れそうなほど打ちはじめた。
「何か気に食わなかったの?」
緑は出雲のそんな態度に動揺することはなく、慣れた態度で声をかける。そして穂積に茶碗を持ってこさせ、不機嫌の原因を探るようにじっと見入った。
「もしかして、この模様が気に入らなかった?」
緑が持っている茶碗は白にうっすらと一本の黒い線の模様が入ったものだった。出雲は頬杖をついたまま何も答えず、ただ不機嫌そうに眉根を寄せているだけだった。緑はすぐさま、何も模様の入っていない白の茶碗に取り換え、ご飯をよそった。
「はい、今度は何も模様は入ってないわよ」
緑は再び穂積に手渡し、持っていかせた。
「ちっ」
しかし、出雲は同じ体勢のまま再度フォークで茶碗を打った。カンカンカンとさきほどよりも速く、音もうるさい。
「今度はどうしたの?」
穂積はすぐさま茶碗を回収し、緑に手渡した。緑はじっと茶碗を凝視した。しかし、どんなに見ても出雲が不機嫌の原因が見つからない。ご飯が黒ずんでいるわけでも茶碗に汚れや目立つ模様も見当たらなかった。
「盛り方が気に食わなかったんじゃない?」
横目で見ていた吹雪が口を挟んだ。
「盛り方?」
「少し歪んでるでしょ?均等にしてみて」
「ああ」
緑は納得したようで、しゃもじで米をつぶさないように整える。そして、前後左右どこを見ても歪みが見当たらないほどに仕上げると再び穂積に出雲のところに持っていかせた。
「ふん」
澄まし顔のままだが、一応は正解だったらしくフォークで茶碗を打つことはしなかった。
出雲は普段、二つのフォークを所持している。切れ味が鋭いフォークと身近なものを引き寄せるフォーク。出雲が今、手にしているフォークは一回り小さく、先も鋭くない後者のフォークだ。このフォークも銀色で新品のように綺麗に磨かれている。
「正解でよかった。もうここに来て2ヶ月なのにまだ完璧にはこなせないわね」
緑は出雲をちらりと見て苦笑した。
「いいのよ、それが普通なんだから。こういう面倒ごとは慣れなくてもいいと思うわ。私だってまだまだこの家での慣れない面倒ごとだってあるんだから。例えば―」
吹雪は気さくに緑に話しかけながら自身のポケットをまさぐる。
「私にとっての一番の面倒ごとはあんたよっ!気づいていないと思ったの!?」
吹雪は思いっきり、砂霧の顔面めがけてハンカチを投げつけた。
「痛いじゃない」
「痛いじゃないわよ。平手じゃなくてハンカチにしてあげたんだからありがたく思いなさいよ」
砂霧はギロリと吹雪を睨みつけながらふるふると小刻みに震える。しかし、激高すると思ったがしなかった。おそらく爆発しそうな時、零時がテーブルについたからだろう。
「かわいそうな吹雪」
「は?」
砂霧は口元を押さえ、哀れむような声音を出す。
「雫が死んで悲しいのはあなただけじゃないのよ。それなのに食事の席でハンカチをいきなり投げつけて八つ当たりをするなんて、雫も悲しんでるわ」
「ああ?」
砂霧はわざとらしく哀れむ声を出せば出すほどほど吹雪の声が低くなっていく。
一触即発の空気が二人の間に漂った時だった。
「もうすぐ9時回るね」
零時ののんびりとした声がその空気を切り裂くように入ってきた。
「遅い時間の食事は睡眠にも体にも影響がでるから今後は少し気をつけないと」
落ち着いた声だがどこか威圧的だった。その声に二人大人しくなる。
「いただきます」
まるで合図のような零時の言葉を発したのと同時に皆一斉に食事を始めた。
その様子を雫と玖月は眺める。出雲は出された食事はほとんど手をつけようとはしなかった。口に運ぶものといえば、ご飯と豆腐だけだ。しかも、美味しそうには食べていない。ただお腹を満たすためだけに機械的に黙々と食べている。まるで、食そのものに関心がないように見える。
「出雲さん、食べること自体好きじゃないんだよね」
「はぁ」
雫は隣の玖月に説明する。
まだ涙ぐんでいるが、たいぶ落ち着きを取り戻している霞はもぐもぐと頬張りながら食べていた。ごっくんとおかずを飲み込んだ後、手元の半分しかご飯が入っていない茶碗を見つめた。
「僕もやってみようかな、料理」
「料理?霞が?」
吹雪は視線だけを霞に動かす。
「うん、前々から思ってたんだ。テレビの占いで「何か新しいことをはじめてみましょう」とも言ってたし。それにあれ使ってみたいんだよね」
「あれ?」
「ほらほら、緑さんがよく使うぐるぐるってするあれだよあれ」
答えを出そうにも名前が出てこないようで霞は難しい顔をしながら、それを表現しようと箸を持ったまま右手を動かす。
「あれじゃわかんないわよ」
吹雪は困り顔で息を吐きだす。
「ごめんね、二人とも。できるだけ早く済まそうと思うけどやっぱり遅くなると思う」
零時は少し申し訳なさそうに立っている二人を交互に見た。二人は五月雨家のハウスキーパーとして雇われている。その二人が夕食を取る時間は基本すべての片づけを終えてからだった。五月雨家の一人が仕事のため、どうしても遅くなり一斉の夕食が間に合わない場合は作り置きをするが、全員がそろって夕食を取るとき二人の食事は最後の最後が常だった。
「いいえ、そんなこと言わないでください。それに私たちもあまり食事がのどに通らないと思います」
そういって翠は目を伏せる。穂積は緑に同調するかのようにこくんとゆっくり頷いた。
緑は目だけではなく顔も伏せていった。
「まだ信じられないな、あの子が死んだなんて。私が作ったどの料理も気に入ってくれてた。特にドーナッツを作ったときは本当に毎回、美味しそうに食べてくれた。私、その反応が嬉しくてついつい作り過ぎたこともあったわ。でも、こんなことになるなんてもっとあの子と話をすべてだった。きっと今以上の関係を築けてたわ」
緑は声音だけではなく体も震わせている。一向に顔を上げようとしない。
「私、今日ずっと考えていた。せめて死んだあの子のためにできることをしようって。だから私、私――」
緑はゆっくりと顔を上げた。
「ここにいるみんなをあの子が堕ちたであろう地獄に送ってあげようと思って」
その言葉に皆、一斉に緑に視線を向けると緑は心底嬉しそうに恍惚の笑みを浮かべていた。
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