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死んでやる!!
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「たしか、ぶつけた箇所って本の角だったよね?」
本の角!?なんてこと言いやがる!!
「マジでやる気!?あんた気はたしかか!?」
「……レイ、俺だって本当はこんなことしたくないんだよ。こんなひどいこと。でも、しかたないんだ。こうするしか……こうするしか……」
「おい……やめろ……マジやめろ」
声が震えてきた。この世界に来てこれほどまでに声が震えたことなんてない。
「こうするしかないんだ」
「……っふっざけんな!このピンク頭!普通に怖いわ!!」
私は恐怖で思わず、声を張り上げた。
「この人殺し!」
アーサーは私の大声に驚いたのか、一瞬目を見開く。
しばらく沈黙した後、アーサーは震えだした。
「レイはそんな……そんな言葉遣いはしない。やっぱりこうするしかないんだね。こうするしか、元のレイには戻せないんだ」
アーサーは悲しそうに眉を寄せ、涙をポロポロと落とし始めた。
次々と涙が瞳から流れ、私の頬に落ちる。
また泣くのかよ!
おいおいおい、なんでそっちが泣くんだ!泣きたいのはこっちなんだよ!
ていうか、私の頬に涙なんか落とすな!
無害そうな笑みを浮かべたかと思うと突然ポロポロと泣くなんて、こいつの精神状態どうなってるの?オマエが自分で自分の頭をぶつけたほうがいいんじゃないのか。
「ちょっと!……どけよ!泣くなよ!本を今すぐ手放せ!」
「俺がなんとかしてあげるから。安心して」
アーサーは軽く手の甲で涙を拭き、ふわりと優しく微笑んだ。
「ひいっ!」
気持ち悪すぎる!
涙を溜めながらの笑顔がめちゃくちゃ怖い!顔がいいだけに余計に怖い!
なんで、平凡に過ごそうと決めた途端、こんな目に遭うんだよ。新キャラのヤンデレ要素なんてまったく求めてないんだ。
なんで、よりにもよって今日うさぎがいないんだよ。
うさぎ!いますぐここに来いよ!
戻ってきてこいつを追っ払え!
頭の中でいくら念じてもやっぱりうさぎは表れない。
わかってはいても腹が立つ。腹が立ってしょうがない。
まったくほんとに役に立たないうさぎだ!
普段役に立たないんだからせめてこういう時くらいちょっとは役に立つうさぎになれよ!
私のために身代わりになれ!マジで!
アーサーは持っていた本という名の凶器を振りかざしてきた。
「やだやだやだやだ!どけ~~~~!!」
体中の毛が逆立ち、尋常ではないほどの鳥肌が立つ。まるで金縛りにあったかのように身動きが取れない。体中の毛穴という毛穴から汗が噴き出し、シーツを濡らしていく。
私の恐怖という波が限界まで高くなっていった。
私の人生ここで終了!? 現実の世界じゃなくてこんなふざけた乙女ゲームの世界で!?
サブキャラのよく知りもしない男に殺される!?このまま死亡エンド!?
死亡!?ここで死ぬ!?あとほんの数秒で!?
死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!
いやだ!!こんなことでなんて死にたくない!!
その瞬間、私の体の奥がびくんと震えた。
「――っ!!」
震えたと思うと次の押し寄せてきたのはこの場に不釣り合いな、だけど身に覚えの脱力感と解放感。金縛りにあっていたかのような筋肉が自分でも不思議なほど弛緩していくのがわかる。
(あぁ……なんだろう、この感覚…………ふわふわしているような……変な気分だ…………でも悪いものでもないような……?)
死を目前にしたせいなのだろうか。
コンマ数秒間の時間の流れがまるで数十秒間のように思える。
ふと、腰辺りに違和感を感じた。
数秒前には確かになかったものが今でははっきりある。
それはぐっしょりと水浸しになっていた不快で気持ちの悪い感覚だった。
…………これは汗なんかじゃない。
(なんだろう……お尻当たりがびちゃびちゃして気持ち悪いし…………汗じゃない……じゃあこれは?……え…………まさか……これって…………もしかしなくても…………嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘)
「レイ、一瞬で終わらせるから――」
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
それに気づいた瞬間、私は喉が裂けるほどの声で喚き叫んだ。
「っ!」
私の反応をずっと意に介する様子を見せなかったアーサーが私の張り裂けるような叫びに大層驚いたようで、体を大きく後ろへ仰け反った。
「#$&%&$+*」<>が$&%$#!%Z<QW#%$!AG?>< #$&%&$+*」<>が$&%$#!%Z<QW#%$!AG?><!%$S*+$、どげ~~~~~~~!!!!」
とんでもない醜態ぶりに私は錯乱に近い状態になった。自分をコントロールできない。
興奮しすぎて舌が回らず、自分でも何を言っているのかわからなかった。
最後に言った二文字だけなんとか言葉として言えたことだけはわかった。
さきほどまで死にたくないと思っていたのが嘘のようだ!
今はガチで、本気で、死にたい!いいや!死ぬ!死んでやる!!
こんな生き恥を味わうくらいなら死んだ方がマジだ!!
18年生きてきた中でこんな屈辱生まれて初めてだ!!
私ってこんなクソみたいなヘタレだったか!?自分の情けなさに吐き気がする!!
ボケたババアじゃあるまいし!人間として、女として、女子高生として、絶対にこれはやっちゃいけないことだ!!
感情がこれまでにないほど爆発し、体のいたるところが熱くなっていく。そして、
ぶちん!!
私の中で何かが激しい大きな音を立てながら切れた。
本の角!?なんてこと言いやがる!!
「マジでやる気!?あんた気はたしかか!?」
「……レイ、俺だって本当はこんなことしたくないんだよ。こんなひどいこと。でも、しかたないんだ。こうするしか……こうするしか……」
「おい……やめろ……マジやめろ」
声が震えてきた。この世界に来てこれほどまでに声が震えたことなんてない。
「こうするしかないんだ」
「……っふっざけんな!このピンク頭!普通に怖いわ!!」
私は恐怖で思わず、声を張り上げた。
「この人殺し!」
アーサーは私の大声に驚いたのか、一瞬目を見開く。
しばらく沈黙した後、アーサーは震えだした。
「レイはそんな……そんな言葉遣いはしない。やっぱりこうするしかないんだね。こうするしか、元のレイには戻せないんだ」
アーサーは悲しそうに眉を寄せ、涙をポロポロと落とし始めた。
次々と涙が瞳から流れ、私の頬に落ちる。
また泣くのかよ!
おいおいおい、なんでそっちが泣くんだ!泣きたいのはこっちなんだよ!
ていうか、私の頬に涙なんか落とすな!
無害そうな笑みを浮かべたかと思うと突然ポロポロと泣くなんて、こいつの精神状態どうなってるの?オマエが自分で自分の頭をぶつけたほうがいいんじゃないのか。
「ちょっと!……どけよ!泣くなよ!本を今すぐ手放せ!」
「俺がなんとかしてあげるから。安心して」
アーサーは軽く手の甲で涙を拭き、ふわりと優しく微笑んだ。
「ひいっ!」
気持ち悪すぎる!
涙を溜めながらの笑顔がめちゃくちゃ怖い!顔がいいだけに余計に怖い!
なんで、平凡に過ごそうと決めた途端、こんな目に遭うんだよ。新キャラのヤンデレ要素なんてまったく求めてないんだ。
なんで、よりにもよって今日うさぎがいないんだよ。
うさぎ!いますぐここに来いよ!
戻ってきてこいつを追っ払え!
頭の中でいくら念じてもやっぱりうさぎは表れない。
わかってはいても腹が立つ。腹が立ってしょうがない。
まったくほんとに役に立たないうさぎだ!
普段役に立たないんだからせめてこういう時くらいちょっとは役に立つうさぎになれよ!
私のために身代わりになれ!マジで!
アーサーは持っていた本という名の凶器を振りかざしてきた。
「やだやだやだやだ!どけ~~~~!!」
体中の毛が逆立ち、尋常ではないほどの鳥肌が立つ。まるで金縛りにあったかのように身動きが取れない。体中の毛穴という毛穴から汗が噴き出し、シーツを濡らしていく。
私の恐怖という波が限界まで高くなっていった。
私の人生ここで終了!? 現実の世界じゃなくてこんなふざけた乙女ゲームの世界で!?
サブキャラのよく知りもしない男に殺される!?このまま死亡エンド!?
死亡!?ここで死ぬ!?あとほんの数秒で!?
死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!死!
いやだ!!こんなことでなんて死にたくない!!
その瞬間、私の体の奥がびくんと震えた。
「――っ!!」
震えたと思うと次の押し寄せてきたのはこの場に不釣り合いな、だけど身に覚えの脱力感と解放感。金縛りにあっていたかのような筋肉が自分でも不思議なほど弛緩していくのがわかる。
(あぁ……なんだろう、この感覚…………ふわふわしているような……変な気分だ…………でも悪いものでもないような……?)
死を目前にしたせいなのだろうか。
コンマ数秒間の時間の流れがまるで数十秒間のように思える。
ふと、腰辺りに違和感を感じた。
数秒前には確かになかったものが今でははっきりある。
それはぐっしょりと水浸しになっていた不快で気持ちの悪い感覚だった。
…………これは汗なんかじゃない。
(なんだろう……お尻当たりがびちゃびちゃして気持ち悪いし…………汗じゃない……じゃあこれは?……え…………まさか……これって…………もしかしなくても…………嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘)
「レイ、一瞬で終わらせるから――」
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
それに気づいた瞬間、私は喉が裂けるほどの声で喚き叫んだ。
「っ!」
私の反応をずっと意に介する様子を見せなかったアーサーが私の張り裂けるような叫びに大層驚いたようで、体を大きく後ろへ仰け反った。
「#$&%&$+*」<>が$&%$#!%Z<QW#%$!AG?>< #$&%&$+*」<>が$&%$#!%Z<QW#%$!AG?><!%$S*+$、どげ~~~~~~~!!!!」
とんでもない醜態ぶりに私は錯乱に近い状態になった。自分をコントロールできない。
興奮しすぎて舌が回らず、自分でも何を言っているのかわからなかった。
最後に言った二文字だけなんとか言葉として言えたことだけはわかった。
さきほどまで死にたくないと思っていたのが嘘のようだ!
今はガチで、本気で、死にたい!いいや!死ぬ!死んでやる!!
こんな生き恥を味わうくらいなら死んだ方がマジだ!!
18年生きてきた中でこんな屈辱生まれて初めてだ!!
私ってこんなクソみたいなヘタレだったか!?自分の情けなさに吐き気がする!!
ボケたババアじゃあるまいし!人間として、女として、女子高生として、絶対にこれはやっちゃいけないことだ!!
感情がこれまでにないほど爆発し、体のいたるところが熱くなっていく。そして、
ぶちん!!
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