89 / 115
私は今、これ以上ないほどぶち切れていたのだ
しおりを挟む
私たちは広場に来ていた。暖かい日差しが差し、地面も乾きかけているが雨が上がったばかりのため広場には人がいない。賑やかな話し声も笑い声も聞こえず、あるのは静けさだけだった。人がいないため、いつもより見通しが良い。
しかし、ケバフ屋の屋台は通常通り営業していた。私たちはお腹を満たすためケバフを買い、黙々と食べているところだった。ベンチはまだ雨粒が残っていたため座ることができず、立ったまま食べている。
このケバフの味も通常通り落ちていない。やっぱり、まだまだ飽きない味。
しかし、今日はいくら食べても食べても心の中は満たすことができなかった。
むしろ、どんどん冷えていった。
「ここのケバフ屋さん、評判なんだよね。レイも知ってたんだね?」
「………」
「やっぱり、雨が上がったばかりだから広場に人いないね」
「………」
「………お、おいしいね。ケバフ」
リーゼロッテは私を気遣ってずっと話しかけてくる。しかし、私は何も答えなかった。決してリーゼロッテに怒っているわけではなく、ただ何も話したくなかっただけだった。
私は今、これ以上ないほどぶち切れていたのだ。
うさぎも今回ばかりは何も言わず、ただ私の様子をちらちら見てるだけだった。この私の不機嫌オーラに負けず、話しかけてくるリーゼロッテはなんて怖いもの知らずなんだろう。
私たちがここにいる理由はケバフを買うためじゃなかった。「奴」を待っているところだ。ライはすべての元凶である「奴」の元に聴取を取りに行っている。すべての聴取が終わった後、私たちがここで待っていることを伝えているだろう。
直接、私が行かなかった理由は一目見てしまったら場所も弁えず、殴りかかってしまうからだ。
苛立ちが最高潮に達すると逆に頭の中が急激に冷えていくことを初めて知った。それほど腸が煮えくり返っていた。
「レイ、来たみたいだよ」
「………」
広場の向こう側から息を切らした人影がこちらに駆けてくる。
「はぁ、はぁ」
息を切らし、私たちの正面に立つ人物の顔を私はあからさまに背ける。顔は見えないが荒い呼吸でかなり焦って私たちの元に向かってきたんだろう。一体、どんな顔をしているのか。顔を背けている私にはこいつの顔は見えない。
私は何も言わずにただ虚空を見つめたままケバフを口に運んでいる。私たちの前に立つ人物も何を言ったらいいのかわからないのかずっと黙ったままだ。
「………めん」
先に発したのは向こうだった。
「ごめ………っん、レイ。俺のせいでっ」
まだ、息が整っていないのか呼吸が荒い。濁りが混ざったような声に不快感を感じ、視線を上に上げる。
私が危険な目にあった元凶の攻略キャラクターの一人、シオンに。
実はあの女の正体はシオンの元カノ。実は一度、会ったことがある女だった。いや、会ったことがあるは少し語弊があるかもしれない。「会ったこと」ではなく「見たことがある」だ。
シオンが裏路地で最悪な別れ方をした女だった。確かその時の会話はかなり下品で生々しい会話をしていた。そしてシオンに縋るような発言を繰り返し、走り去っていった。
見覚えがないのも当たり前だ。何せ、私は女の顔なんて見ていなかったのだから。
問題はなぜ女が私の顔を認識し、付け狙っていたのかだ。女はその時、シオンが追いかけてくるのを期待してたらしい。しかし、まったく追いかけてこないので気になって戻ってみるとちょうど私に話しかけている現場を見てしまったんだ。そう、自分を振ったすぐ後に別の女と話していたのだ。
そしてその後、一緒に食堂に行き相席までしていた(好きで相席になったんじゃない)
女はこう思ったそうだ。
『シオンの次の彼女はあの女だ。あの女のせいで私を捨てたんだ』と。
食堂でシオンと別れた後私が何者なのか、どこに住んでいるのか突き止めるため私の後ろを付けていたそうだ。あの時、エヴァンスのおかげで事なきを得たけどあのまま一人で家路に付いていたらどうなっていたことか。
そして、昨日の出来事で私への憎悪が一層募ったらしい。昨日、男に殴りかかられそうになったとき、一応シオンに助けられた形になった(ありがた迷惑)
その現場を眺めていた野次馬の中にその女もいた。
颯爽と私を助ける姿は紳士的で見た事がなかった一面だったらしく私がシオンの特別な女に見えてしまったのだ。そう、特別な女で特別な関係に見えたのだ。つまり、あの時感じた刺さるような視線はあの女だったということだ。
シオンに異常な執着心を抱いていた女は何を思ったのか私を襲撃することを思い至ったらしい。私がいなくなったらシオンは自分の下に戻ってくるとトチ狂った思い込みをしてしまった。そして私の懐中時計を隙を見て盗み、裏路地に誘い込んで襲撃という強行に及んだ。
そして、今に至る。
開いた口が塞がらないとはこのことだろう。しばらくの間驚きすぎて感情が「無」になってしまった。
私がシオンと付き合うなんてありえない。シオンが私に対して好意を持つなんてありえない。私がシオンに惚れるなんて絶対にありえない。ライから話を聞けば聞くほど色々とありえなかった。
つまり、私はシオンと女の痴情のもつれに巻き込まれたということだ。
くそっ、思い出したらまたイライラしてきた。
私は冷めた視線を一瞬だけシオンに向けた。シオンは表情が見えないほど深々と頭を下げている。仕事中だったのか燕尾服は着用したままだ。きっちり着こなしている燕尾服やセットされていた髪型は走ってきたせいで乱れ、よれよれになっている。目の前にいるのは燕尾服を着ているのに執事とはまったく程遠い、汗だくになっている男。バロンの女性客がいたら幻滅されるかもしれないほど、申し訳なさそうに頭を下げている。
「ライって言う兵の人に全部聞いたよ」
常に頭上にあるキャラメル色の髪の毛が今は私の目下にある。私はそれを何も言わず、ただ見ていた。シオンをただ眺めながらケバフを口に運ぶ動作をやめなかった。
「まさか、あの子がそんなことをしでかすなんて、思ってもみなかった」
思ってもみなかったんだ。あんな最低な女の振り方しておいて思ってもみなかったんだ。
「シオンさんのこと好きだったんですね」
リーゼロッテがシオンに向けて放った。その声音は決して責めているわけでも咎めているようなものでもなく、ただ無意識に零れたような声音だった。
「彼女とは割り切った関係のつもりだった。彼女も最初はわかってたはずだったんだ。そもそも彼女、彼氏がいるからね。だからお互い都合の良い遊び仲間の一人として認識していた」
いまだに深く頭を下げているシオンから半歩下がり身体の向きを変え、黙々とケバフを食べた。
「決め事があったんだ、女性と付き合うとき常に俺が心掛けていること。彼女にも言っておいたんだ。『本気にはならない・深入りしない・一方がもう会えない事情があったらすっぱり忘れる』って。彼女も最初は俺の決め事に合わせてくれていたから楽だった。彼女も遊びのつもりだったろうし。でも、最近の彼女、あからさまにしつこかったんだ。彼氏よりも僕と会う回数をあからさまに増やしてくるし、私生活にも介入してこようとするし」
生々しい。耳を塞ぎたくなる。まぁ、変に言い訳っぽく自分を正当化するよりはマシか。
「だから俺、彼女が本気になる前に切ったんだ。最低な言葉を投げつけたら俺なんかよりも本命の彼氏の下に戻るだろうと思ってね」
「はっ」
気づくかどうかわからないほど鼻で笑ってやった。
完全にその思惑ははずれ、やり場のない女の思いは私に向かっていったんだから。
「俺を襲えばいいものを。俺、本当に最低だったんだなって」
シオンはそう言ってゆっくり顔を上げた。顔を上げたとき、シオンのほうをちらりと見た。今日初めて見たシオンの顔はとても苦しそうに歪ませていた。乙女ゲームの攻略キャラクターなだけあって醜くは崩れていなかった。私は再び、顔をそらした。
いつのまにか手元にあるケバフが小さくなっており、もう少しで食べ終わりそうだった。
「シオンさんはクズではないと思います」
重く気まずい空気をリーゼロッテはゆっくりと吹き消すように呟いた。
おい、やめろ。私の苛立ちを増長させないでほしい。
「私がここで口を挟むのはおかしいかもしれません。でも、これだけは言いたいです。たしかにシオンは女性に対して不誠実だと思います。私も正直、女性としてあなたを軽蔑に近い感情を抱いています。でも、本当にシオンさんがただの最低な人間だったら自分のしたことに対して反省なんてしないと思います。それに汗だくになってここまで走ってだってこなかった」
私は視線だけリーゼロッテに向ける。リーゼロッテはまっすぐにシオンに琥珀色の瞳を向けていた。
「勘違いはしてほしくありません。私はあなたを庇うわけではありません。あなたが本当に最低な人間になるかどうかはこれからのあなたの行動次第だと思います」
庇っていないって口では言っているが、どう見ても庇っているようにしか見えない。
「こんなことがないと俺って自分を改めることができないんだな」
シオンは小さく自嘲気味に呟いた。私は最後の一口のケバフは口に運び、ゆっくりかみ締めるようにしてごくりと飲み込んだ。
「今回は二人に本当に迷惑をかけたよ。お詫びも兼ねて週末、俺の店で二人を特別に招待したい」
「えっ?」
リーゼロッテはシオンの思いがけない申し出に声を上げた。
「わ、私はいいですよ」
「お金はもちろんいらない。俺の名前を出せば通れるようにするから」
「土下座しろ」
私は凄むような口調でシオンに初めて言葉を発した。
しんとした沈黙がゆっくり流れた。
何だ、その顔は。
しかし、ケバフ屋の屋台は通常通り営業していた。私たちはお腹を満たすためケバフを買い、黙々と食べているところだった。ベンチはまだ雨粒が残っていたため座ることができず、立ったまま食べている。
このケバフの味も通常通り落ちていない。やっぱり、まだまだ飽きない味。
しかし、今日はいくら食べても食べても心の中は満たすことができなかった。
むしろ、どんどん冷えていった。
「ここのケバフ屋さん、評判なんだよね。レイも知ってたんだね?」
「………」
「やっぱり、雨が上がったばかりだから広場に人いないね」
「………」
「………お、おいしいね。ケバフ」
リーゼロッテは私を気遣ってずっと話しかけてくる。しかし、私は何も答えなかった。決してリーゼロッテに怒っているわけではなく、ただ何も話したくなかっただけだった。
私は今、これ以上ないほどぶち切れていたのだ。
うさぎも今回ばかりは何も言わず、ただ私の様子をちらちら見てるだけだった。この私の不機嫌オーラに負けず、話しかけてくるリーゼロッテはなんて怖いもの知らずなんだろう。
私たちがここにいる理由はケバフを買うためじゃなかった。「奴」を待っているところだ。ライはすべての元凶である「奴」の元に聴取を取りに行っている。すべての聴取が終わった後、私たちがここで待っていることを伝えているだろう。
直接、私が行かなかった理由は一目見てしまったら場所も弁えず、殴りかかってしまうからだ。
苛立ちが最高潮に達すると逆に頭の中が急激に冷えていくことを初めて知った。それほど腸が煮えくり返っていた。
「レイ、来たみたいだよ」
「………」
広場の向こう側から息を切らした人影がこちらに駆けてくる。
「はぁ、はぁ」
息を切らし、私たちの正面に立つ人物の顔を私はあからさまに背ける。顔は見えないが荒い呼吸でかなり焦って私たちの元に向かってきたんだろう。一体、どんな顔をしているのか。顔を背けている私にはこいつの顔は見えない。
私は何も言わずにただ虚空を見つめたままケバフを口に運んでいる。私たちの前に立つ人物も何を言ったらいいのかわからないのかずっと黙ったままだ。
「………めん」
先に発したのは向こうだった。
「ごめ………っん、レイ。俺のせいでっ」
まだ、息が整っていないのか呼吸が荒い。濁りが混ざったような声に不快感を感じ、視線を上に上げる。
私が危険な目にあった元凶の攻略キャラクターの一人、シオンに。
実はあの女の正体はシオンの元カノ。実は一度、会ったことがある女だった。いや、会ったことがあるは少し語弊があるかもしれない。「会ったこと」ではなく「見たことがある」だ。
シオンが裏路地で最悪な別れ方をした女だった。確かその時の会話はかなり下品で生々しい会話をしていた。そしてシオンに縋るような発言を繰り返し、走り去っていった。
見覚えがないのも当たり前だ。何せ、私は女の顔なんて見ていなかったのだから。
問題はなぜ女が私の顔を認識し、付け狙っていたのかだ。女はその時、シオンが追いかけてくるのを期待してたらしい。しかし、まったく追いかけてこないので気になって戻ってみるとちょうど私に話しかけている現場を見てしまったんだ。そう、自分を振ったすぐ後に別の女と話していたのだ。
そしてその後、一緒に食堂に行き相席までしていた(好きで相席になったんじゃない)
女はこう思ったそうだ。
『シオンの次の彼女はあの女だ。あの女のせいで私を捨てたんだ』と。
食堂でシオンと別れた後私が何者なのか、どこに住んでいるのか突き止めるため私の後ろを付けていたそうだ。あの時、エヴァンスのおかげで事なきを得たけどあのまま一人で家路に付いていたらどうなっていたことか。
そして、昨日の出来事で私への憎悪が一層募ったらしい。昨日、男に殴りかかられそうになったとき、一応シオンに助けられた形になった(ありがた迷惑)
その現場を眺めていた野次馬の中にその女もいた。
颯爽と私を助ける姿は紳士的で見た事がなかった一面だったらしく私がシオンの特別な女に見えてしまったのだ。そう、特別な女で特別な関係に見えたのだ。つまり、あの時感じた刺さるような視線はあの女だったということだ。
シオンに異常な執着心を抱いていた女は何を思ったのか私を襲撃することを思い至ったらしい。私がいなくなったらシオンは自分の下に戻ってくるとトチ狂った思い込みをしてしまった。そして私の懐中時計を隙を見て盗み、裏路地に誘い込んで襲撃という強行に及んだ。
そして、今に至る。
開いた口が塞がらないとはこのことだろう。しばらくの間驚きすぎて感情が「無」になってしまった。
私がシオンと付き合うなんてありえない。シオンが私に対して好意を持つなんてありえない。私がシオンに惚れるなんて絶対にありえない。ライから話を聞けば聞くほど色々とありえなかった。
つまり、私はシオンと女の痴情のもつれに巻き込まれたということだ。
くそっ、思い出したらまたイライラしてきた。
私は冷めた視線を一瞬だけシオンに向けた。シオンは表情が見えないほど深々と頭を下げている。仕事中だったのか燕尾服は着用したままだ。きっちり着こなしている燕尾服やセットされていた髪型は走ってきたせいで乱れ、よれよれになっている。目の前にいるのは燕尾服を着ているのに執事とはまったく程遠い、汗だくになっている男。バロンの女性客がいたら幻滅されるかもしれないほど、申し訳なさそうに頭を下げている。
「ライって言う兵の人に全部聞いたよ」
常に頭上にあるキャラメル色の髪の毛が今は私の目下にある。私はそれを何も言わず、ただ見ていた。シオンをただ眺めながらケバフを口に運ぶ動作をやめなかった。
「まさか、あの子がそんなことをしでかすなんて、思ってもみなかった」
思ってもみなかったんだ。あんな最低な女の振り方しておいて思ってもみなかったんだ。
「シオンさんのこと好きだったんですね」
リーゼロッテがシオンに向けて放った。その声音は決して責めているわけでも咎めているようなものでもなく、ただ無意識に零れたような声音だった。
「彼女とは割り切った関係のつもりだった。彼女も最初はわかってたはずだったんだ。そもそも彼女、彼氏がいるからね。だからお互い都合の良い遊び仲間の一人として認識していた」
いまだに深く頭を下げているシオンから半歩下がり身体の向きを変え、黙々とケバフを食べた。
「決め事があったんだ、女性と付き合うとき常に俺が心掛けていること。彼女にも言っておいたんだ。『本気にはならない・深入りしない・一方がもう会えない事情があったらすっぱり忘れる』って。彼女も最初は俺の決め事に合わせてくれていたから楽だった。彼女も遊びのつもりだったろうし。でも、最近の彼女、あからさまにしつこかったんだ。彼氏よりも僕と会う回数をあからさまに増やしてくるし、私生活にも介入してこようとするし」
生々しい。耳を塞ぎたくなる。まぁ、変に言い訳っぽく自分を正当化するよりはマシか。
「だから俺、彼女が本気になる前に切ったんだ。最低な言葉を投げつけたら俺なんかよりも本命の彼氏の下に戻るだろうと思ってね」
「はっ」
気づくかどうかわからないほど鼻で笑ってやった。
完全にその思惑ははずれ、やり場のない女の思いは私に向かっていったんだから。
「俺を襲えばいいものを。俺、本当に最低だったんだなって」
シオンはそう言ってゆっくり顔を上げた。顔を上げたとき、シオンのほうをちらりと見た。今日初めて見たシオンの顔はとても苦しそうに歪ませていた。乙女ゲームの攻略キャラクターなだけあって醜くは崩れていなかった。私は再び、顔をそらした。
いつのまにか手元にあるケバフが小さくなっており、もう少しで食べ終わりそうだった。
「シオンさんはクズではないと思います」
重く気まずい空気をリーゼロッテはゆっくりと吹き消すように呟いた。
おい、やめろ。私の苛立ちを増長させないでほしい。
「私がここで口を挟むのはおかしいかもしれません。でも、これだけは言いたいです。たしかにシオンは女性に対して不誠実だと思います。私も正直、女性としてあなたを軽蔑に近い感情を抱いています。でも、本当にシオンさんがただの最低な人間だったら自分のしたことに対して反省なんてしないと思います。それに汗だくになってここまで走ってだってこなかった」
私は視線だけリーゼロッテに向ける。リーゼロッテはまっすぐにシオンに琥珀色の瞳を向けていた。
「勘違いはしてほしくありません。私はあなたを庇うわけではありません。あなたが本当に最低な人間になるかどうかはこれからのあなたの行動次第だと思います」
庇っていないって口では言っているが、どう見ても庇っているようにしか見えない。
「こんなことがないと俺って自分を改めることができないんだな」
シオンは小さく自嘲気味に呟いた。私は最後の一口のケバフは口に運び、ゆっくりかみ締めるようにしてごくりと飲み込んだ。
「今回は二人に本当に迷惑をかけたよ。お詫びも兼ねて週末、俺の店で二人を特別に招待したい」
「えっ?」
リーゼロッテはシオンの思いがけない申し出に声を上げた。
「わ、私はいいですよ」
「お金はもちろんいらない。俺の名前を出せば通れるようにするから」
「土下座しろ」
私は凄むような口調でシオンに初めて言葉を発した。
しんとした沈黙がゆっくり流れた。
何だ、その顔は。
0
お気に入りに追加
985
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
もう二度とあなたの妃にはならない
葉菜子
恋愛
8歳の時に出会った婚約者である第一王子に一目惚れしたミーア。それからミーアの中心は常に彼だった。
しかし、王子は学園で男爵令嬢を好きになり、相思相愛に。
男爵令嬢を正妃に置けないため、ミーアを正妃にし、男爵令嬢を側妃とした。
ミーアの元を王子が訪れることもなく、妃として仕事をこなすミーアの横で、王子と側妃は愛を育み、妊娠した。その側妃が襲われ、犯人はミーアだと疑われてしまい、自害する。
ふと目が覚めるとなんとミーアは8歳に戻っていた。
なぜか分からないけど、せっかくのチャンス。次は幸せになってやると意気込むミーアは気づく。
あれ……、彼女と立場が入れ替わってる!?
公爵令嬢が男爵令嬢になり、人生をやり直します。
ざまぁは無いとは言い切れないですが、無いと思って頂ければと思います。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。
学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。
「好都合だわ。これでお役御免だわ」
――…はずもなかった。
婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。
大切なのは兄と伯爵家だった。
何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
婚約者にフラれたので、復讐しようと思います
紗夏
恋愛
御園咲良28才
同期の彼氏と結婚まであと3か月――
幸せだと思っていたのに、ある日突然、私の幸せは音を立てて崩れた
婚約者の宮本透にフラれたのだ、それも完膚なきまでに
同じオフィスの後輩に寝取られた挙句、デキ婚なんて絶対許さない
これから、彼とあの女に復讐してやろうと思います
けれど…復讐ってどうやればいいんだろう
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる