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どたばた大騒動?

204.依頼をこなそう

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 お店の新商品を作ったり、農地で作業したり、結構のんびり過ごしたから、そろそろ狂化モンスターとのバトルをしてみようかな。

 というわけで、第三の街・西のキーリ湖に来てみた。
 ちょこちょこ冒険者の姿が見える。狂水獣マッディアクアと戦ってるらしい。プレイヤーもいるみたいだし、討伐数は順調に増えてるんだろうな。僕もがんばろう。

「【召喚】ペタ、オギン!」
「くるる」
「キュオ」

 現れた二体が湖を眺め首を傾げる。

「一緒に狂水獣マッディアクアを倒そうね」

 まだたくさんのモンスターに指示しながら戦える自信がないから、まずは二体だけ喚び出してみた。ペタとオギンは強いし、指示が拙くてもなんとかなる気がするし。

「くるる(がんばるよー)」
「キュオ(凍らせてあげようかしら)」

 二体は好戦的な感じで湖に向かい合った。屋敷でのびのびしてる時とは雰囲気が違う。

「まずは狂水獣マッディアクアを呼び寄せないといけないね」

 方法は事前に調べてある。
 湖に舟が浮かべられると、狂水獣マッディアクアはそれを狙って近づいてくるんだ。舟に誰かが乗っていなくてもいいし、舟の形をしてるだけのハリボテでも問題ない。

「――じゃじゃーん、【舟箱】!」

 スラリンたちの寝床を参考にして木の枝で作った小さい舟型の箱だ。
 舟箱を湖に浮かべ、水流を操作してゆっくりと動かしてもらうようペタに頼む。

「くるる(これくらいお茶の子さいさい)」

 湖岸から離れる舟箱を見ていると、モンスターが近づいてくる気配を察知した。

「来るよ! 攻撃態勢! 【天の祈りアンジュプレ】【天からの祝福アンジュブレス】『♪ど~んど~ん、いって~み~よ~』『♪もふもーふ、プリッティ!』」

 僕の合図にペタとオギンが身構えるのを見ながら、みんなに効くスキルを重ねがけする。これでしばらくの間体力と魔力が自動回復するし、集中力がアップするはず。

 ——舟箱が渦の中に飲み込まれた。

風の槍ウィンドランス!」

 舟箱が沈み込むところを狙って、風魔術を放つ。すると狂水獣マッディアクアにヒットしたのか、凶暴そうな表情をして水面に顔を出した。

「ペタ、水噴射!」
「くるる!」

 凄まじい勢いで水が放たれる。狂水獣マッディアクアと同属性だし、水中にいる相手にはあまり効果がないかもしれないけど、敵意を引き付けるには十分だ。

 狂水獣マッディアクアが近づいてくるのを見ながら、ペタに狂水獣マッディアクアを陸地へと近づけるよう誘導を頼んだ。

「オギン、氷柱攻撃! 近づいてきたら、噛みつく攻撃と爪撃も使って!」
「キュオ!」

 放たれた氷柱が狂水獣マッディアクアを直撃する。ダメージを与えるのと同時に、一部を凍傷状態にしたようだ。やっぱりオギンの攻撃は強い。

 さらに怒り狂った狂水獣マッディアクアが陸に近づきながら、水噴射と水鞭で攻撃してくる。

「はわわっ!」

 避けきれなかった水鞭が掠ったけど、これくらいのダメージはすぐに回復する。
 ペタも攻撃を食らって体力が減ってたけど、じわじわと回復していた。オギンは素早さを活かして、攻撃を避けきってる。

「ペタも水鞭使っていいよ! 敵が近づいてきたら、尾アタックもね。あまり無理して戦わないよう気をつけて」
「くるるっ(りょうかい!)」

 水と氷柱が飛び交う。なかなかすごい光景だ。見てるだけなら綺麗なんだけど、直撃したら大ダメージを負う可能性があると考えるとちょっと怖い。

 陸地に上がった狂水獣マッディアクアにペタとオギンが物理攻撃も加え始めたのを見ながら、僕は風魔術を中心に魔術攻撃を放つ。遠距離攻撃をするのが安心だもん。

「やっぱり体力がすごいなぁ」

 狂水獣マッディアクアの体力の減り方はエリアボス並みの遅々たるスピード。でも、攻撃していればいつかは倒せるはず。

 ペタたちの体力・魔力の減りが自動回復で追いつかなくなったら、薬を投げて回復させる。ついでに敵にボムも投げる。

「たーまやー!」

 花火じゃないけど、なんとなく叫んじゃった。
 狂水獣マッディアクアに当たった風属性ボムが僅かに敵を怯ませる。その隙を逃さず、ペタとオギンが追撃した。

「グラァアアッ!」
「体力が赤表示になったよ! ペタとオギン、全力で水噴射と氷柱攻撃!」

 指示通りに二体が攻撃して、狂水獣マッディアクアの体力がより0に近づいたところで、僕は飛翔フライスキルで飛び上がる。

「最後は僕が決めさせてもらうよ――【嵐蹴り】!」

 空中を蹴って、勢いをつけて狂水獣マッディアクアに攻撃。
 ダンッと衝撃音が聞こえて土埃が舞う。その少し後に、討伐成功のアナウンスがあった。

「倒せたね!」
「くるる(強敵だったね)」
「キュオ(まあ、それなりね)」

 喜びを分かち合い、ふぅと息をつく。長時間のバトルはやっぱり疲れる。

「もっと楽に倒すなら、レベル上げが必要だなぁ。フルパーティで戦えば、さらにいいかも?」

 次はショコラも喚び出そうかな。思ったより、指示は出しやすかったし、ペタたちが柔軟に動いてくれるってわかったから、増えても大丈夫そう。

「でも、スラリンとユキマルはなぁ……」

 即死攻撃スキルを持っていて、ステータスも高いピアはともかく、スライムたちには狂化モンスターの相手は荷が重そう。

 スラリンはレベルがまだ低いし、ユキマルも攻撃力や防御力が高いとは言えない。狂化モンスターを浄化しちゃったら、討伐証明アイテムがドロップしなくなっちゃうかもしれないし。

 どうしようかなぁ、と悩んでたら、オギンから視線を感じた。
 振り向くと、すりすりと顔を擦り寄せてくる。

「キュオ(スラリンとユキマルもバトルで使ってあげて。あの子たちも戦いたいし、強くなりたいのよ)」
「……そうだよね」

 オギンに言われなくても、スラリンたちの気持ちはわかってる。でも、改めて今後のためにレベリングをする必要性を感じた。

「――じゃあ、スラリンたちを連れてレベリングする!」

 提案したら、オギンとペタが優しく笑ってくれた気がした。

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