上 下
216 / 268
もふもふいっぱい?

(番外編)スラリンと仲間たち

しおりを挟む
 ぽよんと跳ねる。草原は居心地がいい。
 ここは不思議な空間だ。大好きなモモと出会ってから、ここに連れてきてもらったけど、あまり時間の長さを感じず、のんびりと穏やかな気分で過ごせる。

 もちろん、大好きなモモと一緒に過ごすのが一番楽しいけどね!
 早く喚んでくれないかな~。僕はモモとお魚とったり、モンスターを倒すのが好き。喜んでもらえると嬉しいもん。

 だから、僕はこの場所でもせっせと漁やバトルのイメージトレーニングをしてるんだ。
 前回の魚取りで、スキル【漁】を習得したから、次はもっとたくさん取れるはず!

『スラリン、何してるの?』
『魚をとる練習! ユキマルもする?』
『うん!』

 近づいてきたユキマルに漁のコツを教える。まだ初心者だから上手くないだろうけど、一緒にがんばろうね。

 最初は僕一匹だったこの空間も、今は三匹で過ごす場所になった。

 僕の次に来たのはピア。ビンクの丸いふわふわに丸っこい耳がついた感じのモンスターだよ。モモは「テディベアの頭みたいー」と喜んでた。
 召喚されてなくても、モモが感じてることはなんとなく伝わってくるんだ。

 ピアの次に来たのは、ホワイトスライムのユキマル。僕よりできることが多くて、ちょっぴり羨ましい。僕だって、もっとモモの役に立ちたい。
 でも、僕は先輩だから、ちゃんといろんなことをユキマルに教えてあげてるんだ。

 ……ピアはどうしたって?
 うん、あの子、すごくマイペースなんだよね。教えてあげようと思っても、『昼寝する~』ってどこかに行っちゃうの。もう、そんなんじゃ、モモに喚んでもらえないよ。

 ――そんなことを、モモにテイムされた仲間のオギンに愚痴ってる。

 オギンはこの場所にいないんだ。性質がこの空間に合わないんだって。
 良い話し相手だから残念だけど、モモにテイムされた絆を通じて、言葉を交わすことができるからまぁいいっか。

 あ、オギンは一番最近テイムされたモンスターだよ。大きな白銀の狐なんだ。カッコよくて羨ましい。

『またピアが逃げたんだよー。漁のやり方教えようと思ったのに』
『モンスターそれぞれ性質が違うのだから仕方ないんじゃない?』

 ふふ、と微笑ましそうに言うオギンに、ついプクッと膨れて拗ねちゃう。
 まるで丸河豚バルーンフグみたいだなって思うけど、モモも頬を膨らませることがあるから、お揃いだよ。

『そうかなぁ。……ペタは漁に興味あるかな?』
『あの子は湖で暮らすタイプだけれど、海でも泳げるらしいから、モモの釣りのお手伝いをできると思うわよ。一人で潜って、魚や貝をとってこれるかもしれないわね』
『そっか! じゃあ、いろいろ教えてあげよう!』

 海っていろんなモンスターがいるんだ。ちょっと危ないのもいるし、注意が必要。だから、僕が知ってる限りのことを教えてあげなきゃ。

 早速テイムの絆を通してペタに声を掛けてみる。

『ペター、今時間ある?』
『寝てる』
『……寝てたら返事できなくない?』

 一瞬、それなら今度にしようかな、って思っちゃったじゃん!
 オギンがくすくす笑ってるのが聞こえてくる。これ、どっちに笑ってるんだろう?

『ぼく、頭の半分で寝て、半分は起きてるんだ』
『え、そうなんだ!?』

 衝撃の事実だ。
 思わずぴょんと跳ねて驚いたら、横にいたユキマルも跳ねた。なんだか楽しくなって、ぴょんぴょんと跳ねちゃう。

 リズムはモモの歌【もふもふプリティ】だ。一緒にたくさん練習したから、ずっとリズムが記憶されてるんだ。楽しい~。

『――ハッ、違う、そんなことより、ペタ!』
『なに? ちなみに、さっきのは嘘だよ』
『え、本当だと思ってたよ!?』

 オギンが『あはは! スラリンってば、可愛いんだから』と笑ってる。
 可愛いと言われるのは嬉しい。だって、それは最高の褒め言葉なんでしょ? 言われる度に、モモがすっごく喜んでるもん。

『ねー、次にチョコ食べられるのはいつかなー?』
『ショコラ、相変わらずチョコが好きだね』

 急に話しかけてきたショコラにちょっぴり呆れちゃう。
 モモとご飯食べる度に、ショコラはチョコを使ったお菓子ばっかり食べてるんだよ。こうして、ここで過ごしている時にも頻繁に『チョコ食べたいなー』って言ってる。

『モモが作ったチョコのお菓子は大好物だよー。幸せの味がするからねー』
『……それは僕も分かってるよ』

 初めてモモが料理を作った頃から、僕はモモと一緒にいるんだもん。最初に食べたお刺身、美味しかったな~。
 もちろん、他の料理も美味しいよ。モモはどんどん料理が上手くなる。きっとこの世界で一番になれるよ!

『モンスター倒したら、くれるかなー?』
『うーん……くれると思うけど、バトルが今後増えるといいね』

 モモはあんまりバトルに喚んでくれない。
 それはこれまで、モモがテイマーじゃなかったから、指示を出しにくかったせいらしい。だから、これからはたくさん喚んでもらえるかも?

 ……でも、僕、他のみんなと違ってレベルが高くないから、どうだろう。
 漁で役に立つのは嬉しいけど、バトルでも活躍して、モモにカッコいいって思ってもらいたいな!

『――よし、僕もがんばる!』
『うんー?』

 急に僕が気合いを入れたから、ショコラは不思議そう。

『ふふ、応援するわ。私が一緒の時は、フォローしてあげるわよ』
『ほんとに? ありがとう!』

 オギンは一番戦闘能力が高いから、頼りになる。
 一番ステータスが高いピアは応用がきかないから、バトルで召喚される機会は少なそう。即死攻撃を使って一瞬で勝負をつけるの、モモはあんまりしたくないみたいだ。

『一緒にがんばるよー』
『うん、ユキマルもありがとう』

 むぎゅっと抱きついてくるユキマルに抱きつき返す。
 明日は僕たちを喚んでくれるかなー。

 ……あれ? 何かを忘れてるような?
しおりを挟む
感想 1,067

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

え?わたくしは通りすがりの元病弱令嬢ですので修羅場に巻き込まないでくたさい。

ネコフク
恋愛
わたくしリィナ=ユグノアは小さな頃から病弱でしたが今は健康になり学園に通えるほどになりました。しかし殆ど屋敷で過ごしていたわたくしには学園は迷路のような場所。入学して半年、未だに迷子になってしまいます。今日も侍従のハルにニヤニヤされながら遠回り(迷子)して出た場所では何やら不穏な集団が・・・ 強制的に修羅場に巻き込まれたリィナがちょっとだけざまぁするお話です。そして修羅場とは関係ないトコで婚約者に溺愛されています。

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

貴方の願いが叶うよう、私は祈っただけ

ひづき
恋愛
舞踏会に行ったら、私の婚約者を取り合って3人の令嬢が言い争いをしていた。 よし、逃げよう。 婚約者様、貴方の願い、叶って良かったですね?

今度生まれ変わることがあれば・・・全て忘れて幸せになりたい。・・・なんて思うか!!

れもんぴーる
ファンタジー
冤罪をかけられ、家族にも婚約者にも裏切られたリュカ。 父に送り込まれた刺客に殺されてしまうが、なんと自分を陥れた兄と裏切った婚約者の一人息子として生まれ変わってしまう。5歳になり、前世の記憶を取り戻し自暴自棄になるノエルだったが、一人一人に復讐していくことを決めた。 メイドしてはまだまだなメイドちゃんがそんな悲しみを背負ったノエルの心を支えてくれます。 復讐物を書きたかったのですが、生ぬるかったかもしれません。色々突っ込みどころはありますが、おおらかな気持ちで読んでくださると嬉しいです(*´▽`*) *なろうにも投稿しています

リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します

青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。 キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。 結界が消えた王国はいかに?

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...