201 / 259
もふもふいっぱい?
182.報告に来たよ
しおりを挟む
まずは報告、ってことで第三の街の冒険者ギルドに来たよ。
でも、ちょうど依頼を終えて帰ってきた冒険者が多いみたいで、カウンターが混んでる。僕の番が来るまで時間がかかりそうだなー。
「視線を感じる……」
ジロジロ、というよりチラッチラッ、って感じで見られてる。
街でプレイヤーから見守られることは多いけど、こんなに異世界の住人から関心を向けられるのはあまりないから、ちょっと気になる。
やっぱり、天兎だからなのかな? この街の人には特別視されてる種族らしいし。
そんなことをぼんやりと考えながら列に並んでたら、冒険者の対応を中断した様子のマリアさんと目が合った。
手招きされたので、首を傾げながら前に進む。列に割り込みするわけじゃないから許してねー。
「どうしたの?」
「お願いしていた件のご報告でしたら、二階のギルド長執務室に行ってください。階段を上がって突き当たりですから」
「あ、りょうかーい」
マリアさんが連絡してくれてたみたい。ラッキー。
お礼を伝えて、二階に向かう。
その途中、「ギルド長に呼び出されてる、だと!? あの天兎、とんでもない凄腕冒険者なのかっ?」という声が聞こえて、冒険者たちが騒然となってた。
誤解です。僕はまだGランクのひよっこ冒険者だよ。見た目が可愛いだけの化け物じゃないし、怖がらないで大丈夫!
――と説明して回りたかったけど、それより先にマリアさんがフォローして静めてくれてたみたいだから問題なさそう。
やっぱりマリアさんって気が利くー!
ふよふよと飛んで、二階へ。
廊下の突き当たりに、ギルド長執務室と書かれた扉があった。わかりやすい。
「トントントン~。冒険者のモモだよ~」
扉をノックしても音がならなかったので、声で主張する。いることに気づかれてると思うけど、礼儀です。
「入れ」
「こんにちは」
執務室はシンプルに執務机と棚があって、手前には応接セットのローテーブルとソファが並んでた。執務机の上には紙の山ができてる。おつかれさまですー。
難しい顔で書類を読んでたギルド長が顔を上げて、ソファを指す。
「座ってくれ」
「はーい。ちょっと休憩しよ」
書類を読みながら近づいてくるギルド長を待ちながら、サンドウィッチとフィッシュアンドチップス、カフェモカをローテーブルに並べる。
なんとも言えない表情でローテーブルの上を見つめたギルド長に「飲み物はなにが好き?」と聞いたら「……コーヒー」と呟かれた。イメージ通りだね。
ということで、ギルド長にブラックコーヒーを渡す。うーん、良い香り! 僕はブラックじゃ飲めないけど、香りは好きだよ。
「ギルド長も食べていいよー」
最初に手に取ったのは卵サンド。絹小麦で作ったパンはしっとり、卵フィリングは滑らかで美味しい。からしマヨネーズが良いアクセントになってて、いくらでも食べられちゃいそう。
コーヒーとココアを混ぜたカフェモカも、甘くて気分が安らぐ。やっぱり僕は甘いコーヒーが好き。ブラックコーヒーは大人な感じがして、いつか美味しく飲めるようになれたら嬉しいけど。
「……美味いな」
「でしょー。おかわりあるから、遠慮なくどうぞ」
感心した様子のギルド長に勧めたら、「ありがとう」とお礼を言われた。なんとなくギルド長の表情も和らいでる気がする。休憩は大切だよね。
「それで、他のモンスターはどうだった?」
暫くゆっくり寛いでから本題へ。
口いっぱいに入れてたハムサンドを飲み込んで、カフェモカで喉を潤してから頷く。
「狂岩獣と狂雪獣も狂化状態だったみたいで、浄化スキルを使ったら、岩砕熊と銀雪狐に変わったよ」
「ほう、やはりそうだったか」
眉を寄せて考え込む様子のギルド長を眺める。
この人、ギルド長になる前は凄腕の冒険者だったのかな? 鍛えてるっぽいし、強そう。
「――報告ご苦労。助かった。報酬はこれだ。ランクは自動変更される」
僅かに微笑んだギルド長が十万リョウを差し出してきたので受け取る。
〈ミッション『第三の街キーリに忍び寄る影を探る』をクリアしました。報酬により冒険者ギルドランクがGからEに変わります〉
「ありがとー。それにしても、なんで狂化状態になってるんだろうね?」
「俺の手の者に探らせてるが、まだ分からん。ただ、狂化モンスターがいる影響なのか、各エリアのモンスター分布が狂っているという報告は上がってる」
「え、どういうこと?」
首を傾げてギルド長を見上げる。一度顔を緩ませてたけど、今はもう厳しい表情に戻ってた。
「本来、たくさん生息しているはずのモンスターが見当たらないことがあるらしい。あまり強くないモンスターや人間に友好的なモンスターほど数を減らしているようだと、テイマーのモンハから報告が上がってる」
モンちゃん! ここでその名前を聞くとは思わなかったけど、テイマーの能力で街を守ってるらしいし、冒険者ギルドとも協力してるのかも。
「そっかぁ。僕、星栗鼠と白翠獅子を探して歩いたんだけど、全然見つけられなかったんだよね。これもその影響かな?」
「その可能性は高い。どちらも人間に友好的な種だからな」
あんなに苦労したのにー! 首謀者がいるなら、その人もしくはモンスターのこと恨むぞぉ。
探して歩いた結果、交換用ドロップアイテムをたくさん入手できたのはありがたいけど、それはそれだよ。
密かにプンプンして、八つ当たり気味にフライドポテトをパクパクと食べてたら、ギルド長に「新たな依頼をしてもいいか?」と言われた。
「なぁに?」
「最近、狂化モンスターの出現頻度が高くなっていると報告があったんだ。それで、モモもできる限り、狂化モンスターを倒してほしい。モモの実力を見込んで、既に出ている依頼報酬に特別報酬を上乗せする」
「おお? 別にいいけど」
討伐依頼はもう受けてるからねー、と頷いたら、アナウンスが聞こえてくる。
〈ミッション『狂化モンスターを倒す』が開始しました。十体倒して報告する毎に、【強化石】一個が贈られます〉
強化石が特別報酬なんだね。アイテムの性能強化に使えるらしいから嬉しい。
「なにか分かったことがあったら、また依頼をするかもしれん。その際は連絡する」
そう言うと、ギルド長がフレンドカードを差し出してきた。
〈【フレンドカード・第三の街冒険者ギルド長リガード】を入手しました。フレンド欄が更新されます〉
ギルド長――リガードさんとお友だちになれた? 喜んでいいのかな。都合よく使われるようになったら嫌だけど……まぁ、大丈夫でしょ。
「はーい、了解だよ。依頼を毎回受けられるとは限らないけどね」
「ああ、それは分かってる」
話がまとまったので、これで解散。
気になることはいっぱいあるけど、まだ知る時じゃないんだろうな。その時が来るまでのんびり楽しむぞ~。
……とりあえず、気分転換に、テイムしたモンスターたちと戯れてみようかな?
でも、ちょうど依頼を終えて帰ってきた冒険者が多いみたいで、カウンターが混んでる。僕の番が来るまで時間がかかりそうだなー。
「視線を感じる……」
ジロジロ、というよりチラッチラッ、って感じで見られてる。
街でプレイヤーから見守られることは多いけど、こんなに異世界の住人から関心を向けられるのはあまりないから、ちょっと気になる。
やっぱり、天兎だからなのかな? この街の人には特別視されてる種族らしいし。
そんなことをぼんやりと考えながら列に並んでたら、冒険者の対応を中断した様子のマリアさんと目が合った。
手招きされたので、首を傾げながら前に進む。列に割り込みするわけじゃないから許してねー。
「どうしたの?」
「お願いしていた件のご報告でしたら、二階のギルド長執務室に行ってください。階段を上がって突き当たりですから」
「あ、りょうかーい」
マリアさんが連絡してくれてたみたい。ラッキー。
お礼を伝えて、二階に向かう。
その途中、「ギルド長に呼び出されてる、だと!? あの天兎、とんでもない凄腕冒険者なのかっ?」という声が聞こえて、冒険者たちが騒然となってた。
誤解です。僕はまだGランクのひよっこ冒険者だよ。見た目が可愛いだけの化け物じゃないし、怖がらないで大丈夫!
――と説明して回りたかったけど、それより先にマリアさんがフォローして静めてくれてたみたいだから問題なさそう。
やっぱりマリアさんって気が利くー!
ふよふよと飛んで、二階へ。
廊下の突き当たりに、ギルド長執務室と書かれた扉があった。わかりやすい。
「トントントン~。冒険者のモモだよ~」
扉をノックしても音がならなかったので、声で主張する。いることに気づかれてると思うけど、礼儀です。
「入れ」
「こんにちは」
執務室はシンプルに執務机と棚があって、手前には応接セットのローテーブルとソファが並んでた。執務机の上には紙の山ができてる。おつかれさまですー。
難しい顔で書類を読んでたギルド長が顔を上げて、ソファを指す。
「座ってくれ」
「はーい。ちょっと休憩しよ」
書類を読みながら近づいてくるギルド長を待ちながら、サンドウィッチとフィッシュアンドチップス、カフェモカをローテーブルに並べる。
なんとも言えない表情でローテーブルの上を見つめたギルド長に「飲み物はなにが好き?」と聞いたら「……コーヒー」と呟かれた。イメージ通りだね。
ということで、ギルド長にブラックコーヒーを渡す。うーん、良い香り! 僕はブラックじゃ飲めないけど、香りは好きだよ。
「ギルド長も食べていいよー」
最初に手に取ったのは卵サンド。絹小麦で作ったパンはしっとり、卵フィリングは滑らかで美味しい。からしマヨネーズが良いアクセントになってて、いくらでも食べられちゃいそう。
コーヒーとココアを混ぜたカフェモカも、甘くて気分が安らぐ。やっぱり僕は甘いコーヒーが好き。ブラックコーヒーは大人な感じがして、いつか美味しく飲めるようになれたら嬉しいけど。
「……美味いな」
「でしょー。おかわりあるから、遠慮なくどうぞ」
感心した様子のギルド長に勧めたら、「ありがとう」とお礼を言われた。なんとなくギルド長の表情も和らいでる気がする。休憩は大切だよね。
「それで、他のモンスターはどうだった?」
暫くゆっくり寛いでから本題へ。
口いっぱいに入れてたハムサンドを飲み込んで、カフェモカで喉を潤してから頷く。
「狂岩獣と狂雪獣も狂化状態だったみたいで、浄化スキルを使ったら、岩砕熊と銀雪狐に変わったよ」
「ほう、やはりそうだったか」
眉を寄せて考え込む様子のギルド長を眺める。
この人、ギルド長になる前は凄腕の冒険者だったのかな? 鍛えてるっぽいし、強そう。
「――報告ご苦労。助かった。報酬はこれだ。ランクは自動変更される」
僅かに微笑んだギルド長が十万リョウを差し出してきたので受け取る。
〈ミッション『第三の街キーリに忍び寄る影を探る』をクリアしました。報酬により冒険者ギルドランクがGからEに変わります〉
「ありがとー。それにしても、なんで狂化状態になってるんだろうね?」
「俺の手の者に探らせてるが、まだ分からん。ただ、狂化モンスターがいる影響なのか、各エリアのモンスター分布が狂っているという報告は上がってる」
「え、どういうこと?」
首を傾げてギルド長を見上げる。一度顔を緩ませてたけど、今はもう厳しい表情に戻ってた。
「本来、たくさん生息しているはずのモンスターが見当たらないことがあるらしい。あまり強くないモンスターや人間に友好的なモンスターほど数を減らしているようだと、テイマーのモンハから報告が上がってる」
モンちゃん! ここでその名前を聞くとは思わなかったけど、テイマーの能力で街を守ってるらしいし、冒険者ギルドとも協力してるのかも。
「そっかぁ。僕、星栗鼠と白翠獅子を探して歩いたんだけど、全然見つけられなかったんだよね。これもその影響かな?」
「その可能性は高い。どちらも人間に友好的な種だからな」
あんなに苦労したのにー! 首謀者がいるなら、その人もしくはモンスターのこと恨むぞぉ。
探して歩いた結果、交換用ドロップアイテムをたくさん入手できたのはありがたいけど、それはそれだよ。
密かにプンプンして、八つ当たり気味にフライドポテトをパクパクと食べてたら、ギルド長に「新たな依頼をしてもいいか?」と言われた。
「なぁに?」
「最近、狂化モンスターの出現頻度が高くなっていると報告があったんだ。それで、モモもできる限り、狂化モンスターを倒してほしい。モモの実力を見込んで、既に出ている依頼報酬に特別報酬を上乗せする」
「おお? 別にいいけど」
討伐依頼はもう受けてるからねー、と頷いたら、アナウンスが聞こえてくる。
〈ミッション『狂化モンスターを倒す』が開始しました。十体倒して報告する毎に、【強化石】一個が贈られます〉
強化石が特別報酬なんだね。アイテムの性能強化に使えるらしいから嬉しい。
「なにか分かったことがあったら、また依頼をするかもしれん。その際は連絡する」
そう言うと、ギルド長がフレンドカードを差し出してきた。
〈【フレンドカード・第三の街冒険者ギルド長リガード】を入手しました。フレンド欄が更新されます〉
ギルド長――リガードさんとお友だちになれた? 喜んでいいのかな。都合よく使われるようになったら嫌だけど……まぁ、大丈夫でしょ。
「はーい、了解だよ。依頼を毎回受けられるとは限らないけどね」
「ああ、それは分かってる」
話がまとまったので、これで解散。
気になることはいっぱいあるけど、まだ知る時じゃないんだろうな。その時が来るまでのんびり楽しむぞ~。
……とりあえず、気分転換に、テイムしたモンスターたちと戯れてみようかな?
1,095
お気に入りに追加
3,053
あなたにおすすめの小説
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。
最後に、お願いがあります
狂乱の傀儡師
恋愛
三年間、王妃になるためだけに尽くしてきた馬鹿王子から、即位の日の直前に婚約破棄されたエマ。
彼女の最後のお願いには、国を揺るがすほどの罠が仕掛けられていた。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる