197 / 259
もふもふいっぱい?
178.鉱山前で出会ったよ
しおりを挟む
まずは狂岩獣に会いに行こう。狂雪獣に会うのは、防寒対策を用意してからだね。
「るんるんるーん」
特別な依頼が出てるだけあって、東の鉱山エリアは異世界の住人の冒険者が多かった。プレイヤーも少し増え始めたかなー。
狂化と浄化のことがバレて目立つのは嫌だから、人が少なそうなところまで飛んじゃおう。
モンスターを倒しておばけのコアなどのドロップアイテムを集めつつ、バトルフィールドをどんどん進む。
西のキーリ湖より推奨レベルが高いだけあって、モンスターを倒すのに結構時間がかかるなぁ。
近くに冒険者の姿が見えなくなったところで、そろそろ休憩しようかと考えてたら、鉱山にあった洞穴からモンスターが出てくるのを目撃しちゃった。
「あれはもしかして――やっぱり【狂岩獣】だ!」
岩陰に隠れて、全鑑定スキルを使って確かめた。
狂岩獣は見た目が熊みたいな感じだった。本物の熊より、テディベアに近いかも。暗褐色の体毛でちょっと目つきが怖い。全身に鎧のような岩を纏ってるのも厳つい感じ。
……やっぱりテイムするのやめようかな?
「とりあえず浄化してみればいいんだよね。それなら……【召喚】ユキマル!」
「ぴぅ!」
現れたユキマルが狂岩獣を見て『あ、また?』と体を傾けた。
「また、なんだよー。浄化お願いできる?」
「ぴぅ」
ユキマルは頷くように体を揺らしたけど、全然狂岩獣に向かっていかない。ちょっと震えてる気がする。
「もしかして怖い? ペタの時は……あ、そうか。魅了状態にした方が安全だね」
「ぴぅ……ぴっ!」
ユキマルが『おねがいー』と頭を下げる仕草をした後に、驚いた様子で跳ねた。なにを見てるの? ――って、狂岩獣がすごい勢いで近づいてきてる!
「やばばっ……水の槍!」
咄嗟に水魔術を放つ。それを食らった狂岩獣が「グママーッ!?」と唸ってる間に、縮まっていた距離を離すように、ユキマルを抱っこして飛んだ。
「ユキマル、ちょっと、重いっ」
「ぴぅ……」
ごめん、と申し訳なさそうにしてる。どうしようもないことに文句言っちゃって、僕の方こそごめんねー。
近くの岩場に下りて、すぐさま狂岩獣に異花香水を投げた。
「おっと!?」
「ぴっ!?」
いきなり地面から生えた岩の槍をなんとか躱す。ユキマルもちょっとダメージ食らっちゃったみたいだけど、まだ大丈夫そう。
追撃を警戒して狂岩獣を観察する。でも、異花香水は見事にヒットしていたらしい。狂岩獣は首を傾げつつ、攻撃しかけてやめるというペタの時と同じ動きをしてる。
「鑑定しても、ちゃんと魅了状態って表示されてる。というわけで、ユキマル行ってきてー」
「ぴ、ぴぅ」
ユキマルに見つめられた。これは『一緒に来て?』とねだられてるな。万が一攻撃された場合にユキマルを守るためにも、一緒に行こっか!
「では、一緒に前進! ヤー!」
またユキマルを抱っこして飛ぶ。これが一番早い移動方法だし。
それから、光り始めたユキマルを狂岩獣の頭の上に落とした。
「ぴーぅ!」
「グママッ――……くまま?」
バタバタとユキマルを振り落とそうとしてた狂岩獣が、ピタリと動きを止める。そして、首を傾げた。
もう大丈夫そう? 全鑑定スキルいってみよーう。
「おっ、【岩砕熊】かー」
名前が変わってた! やっぱり浄化スキルが効果的なんだねぇ。
岩砕熊の体毛が暗褐色から薄茶色に変わってる。目が垂れ目っぽくなってて、怖い感じがなくなったよ! すごく可愛いテディベアだ! サイズは成人男性より大きいけど。
「くまま」
身に纏っていた岩の鎧が消える。それはどうやらスキルの一部だったみたいで、戦闘状態を解除したんだと思う。
「はじめましてー、気分はどう?」
ユキマルを回収するついでに、岩砕熊傍の地面におりた。すると岩砕熊がわざわざ座り込んで、できる限り目を合わせやすくしてくれる。
魅了効果のおかげなのかもしれないけど、優しい! やっぱりテイムしたい!
「くまま」
言ってることは伝わってこないけど、仲良くなれてる気がするし、やっちゃおう。
というわけで――。
「僕とお友だちになってくれる? 【テイム】!」
岩砕熊が光り始める。でも、それはすぐに消えてしまった。
「――あれ?」
「ぴぅ?」
「くまま」
見つめ合う。テイムされてくれないの悲しぃ。
でも、多分友好度が足りなかったせいだと思うから、ここは食べ物で釣るしかない。
「岩砕熊ってなにが好きなんだろう?」
湖狸と同じく、岩砕熊は本来第三の街近くに生息してないので、僕が調べた資料に詳細が載ってなかった。だから、好物もわからない。
「よし。手当たり次第にいってみよう」
アイテムボックスから次々に食べ物を取り出す。
果物各種、生肉、生魚、野菜、肉料理、魚料理、パン、焼き菓子、ケーキ、アイス――改めて思ったけど、僕って食べ物持ち運びすぎじゃない?
市場を通る度に買い食いしちゃうから、なかなか自分で作った料理が減らないんだよねー。
なんて思いつつ、岩砕熊の様子を窺う。
岩砕熊は次々に出てくる料理に驚いてたけど、不意に手を伸ばした。取ったのは【うさぎ印のブラウニー】だ。
「それ、第三の街の名産になってるチョコレートとナッツをたっぷり使ったやつだよ。見た目はゴロッとしてるけど、美味しいのは間違いないからね!」
もしかして岩っぽい見た目に惹かれたのかな? と思いながらオススメしてみる。
「……くままっ!」
「美味しい? うまうま?」
テンションが上がってるっぽい。喜んでもらえて嬉しいよー。
他にもチョコレートを使ったお菓子を出してみたら、チョコクッキーを食べ始めた。生チョコはあんまり興味なさそう。焼き菓子が好きなのかな。
「そろそろテイムできる? 試してみるよ?」
魅了状態が解けちゃいそうだし、その前にもう一度テイムを試してみよう。
「――【テイム】!」
岩砕熊が光り始める。そして……。
〈野生の岩砕熊をテイムしました〉
テイム成功! やったぁ!
食べ物の力はスゴいんだねぇ。というか、モンスターがチョロい? 僕だって、美味しいご飯につられちゃうもんなぁ。モンスターたちの気持ち、よくわかるよ!
お友だち増えたし、みんなでご飯食べたいなぁ。
「るんるんるーん」
特別な依頼が出てるだけあって、東の鉱山エリアは異世界の住人の冒険者が多かった。プレイヤーも少し増え始めたかなー。
狂化と浄化のことがバレて目立つのは嫌だから、人が少なそうなところまで飛んじゃおう。
モンスターを倒しておばけのコアなどのドロップアイテムを集めつつ、バトルフィールドをどんどん進む。
西のキーリ湖より推奨レベルが高いだけあって、モンスターを倒すのに結構時間がかかるなぁ。
近くに冒険者の姿が見えなくなったところで、そろそろ休憩しようかと考えてたら、鉱山にあった洞穴からモンスターが出てくるのを目撃しちゃった。
「あれはもしかして――やっぱり【狂岩獣】だ!」
岩陰に隠れて、全鑑定スキルを使って確かめた。
狂岩獣は見た目が熊みたいな感じだった。本物の熊より、テディベアに近いかも。暗褐色の体毛でちょっと目つきが怖い。全身に鎧のような岩を纏ってるのも厳つい感じ。
……やっぱりテイムするのやめようかな?
「とりあえず浄化してみればいいんだよね。それなら……【召喚】ユキマル!」
「ぴぅ!」
現れたユキマルが狂岩獣を見て『あ、また?』と体を傾けた。
「また、なんだよー。浄化お願いできる?」
「ぴぅ」
ユキマルは頷くように体を揺らしたけど、全然狂岩獣に向かっていかない。ちょっと震えてる気がする。
「もしかして怖い? ペタの時は……あ、そうか。魅了状態にした方が安全だね」
「ぴぅ……ぴっ!」
ユキマルが『おねがいー』と頭を下げる仕草をした後に、驚いた様子で跳ねた。なにを見てるの? ――って、狂岩獣がすごい勢いで近づいてきてる!
「やばばっ……水の槍!」
咄嗟に水魔術を放つ。それを食らった狂岩獣が「グママーッ!?」と唸ってる間に、縮まっていた距離を離すように、ユキマルを抱っこして飛んだ。
「ユキマル、ちょっと、重いっ」
「ぴぅ……」
ごめん、と申し訳なさそうにしてる。どうしようもないことに文句言っちゃって、僕の方こそごめんねー。
近くの岩場に下りて、すぐさま狂岩獣に異花香水を投げた。
「おっと!?」
「ぴっ!?」
いきなり地面から生えた岩の槍をなんとか躱す。ユキマルもちょっとダメージ食らっちゃったみたいだけど、まだ大丈夫そう。
追撃を警戒して狂岩獣を観察する。でも、異花香水は見事にヒットしていたらしい。狂岩獣は首を傾げつつ、攻撃しかけてやめるというペタの時と同じ動きをしてる。
「鑑定しても、ちゃんと魅了状態って表示されてる。というわけで、ユキマル行ってきてー」
「ぴ、ぴぅ」
ユキマルに見つめられた。これは『一緒に来て?』とねだられてるな。万が一攻撃された場合にユキマルを守るためにも、一緒に行こっか!
「では、一緒に前進! ヤー!」
またユキマルを抱っこして飛ぶ。これが一番早い移動方法だし。
それから、光り始めたユキマルを狂岩獣の頭の上に落とした。
「ぴーぅ!」
「グママッ――……くまま?」
バタバタとユキマルを振り落とそうとしてた狂岩獣が、ピタリと動きを止める。そして、首を傾げた。
もう大丈夫そう? 全鑑定スキルいってみよーう。
「おっ、【岩砕熊】かー」
名前が変わってた! やっぱり浄化スキルが効果的なんだねぇ。
岩砕熊の体毛が暗褐色から薄茶色に変わってる。目が垂れ目っぽくなってて、怖い感じがなくなったよ! すごく可愛いテディベアだ! サイズは成人男性より大きいけど。
「くまま」
身に纏っていた岩の鎧が消える。それはどうやらスキルの一部だったみたいで、戦闘状態を解除したんだと思う。
「はじめましてー、気分はどう?」
ユキマルを回収するついでに、岩砕熊傍の地面におりた。すると岩砕熊がわざわざ座り込んで、できる限り目を合わせやすくしてくれる。
魅了効果のおかげなのかもしれないけど、優しい! やっぱりテイムしたい!
「くまま」
言ってることは伝わってこないけど、仲良くなれてる気がするし、やっちゃおう。
というわけで――。
「僕とお友だちになってくれる? 【テイム】!」
岩砕熊が光り始める。でも、それはすぐに消えてしまった。
「――あれ?」
「ぴぅ?」
「くまま」
見つめ合う。テイムされてくれないの悲しぃ。
でも、多分友好度が足りなかったせいだと思うから、ここは食べ物で釣るしかない。
「岩砕熊ってなにが好きなんだろう?」
湖狸と同じく、岩砕熊は本来第三の街近くに生息してないので、僕が調べた資料に詳細が載ってなかった。だから、好物もわからない。
「よし。手当たり次第にいってみよう」
アイテムボックスから次々に食べ物を取り出す。
果物各種、生肉、生魚、野菜、肉料理、魚料理、パン、焼き菓子、ケーキ、アイス――改めて思ったけど、僕って食べ物持ち運びすぎじゃない?
市場を通る度に買い食いしちゃうから、なかなか自分で作った料理が減らないんだよねー。
なんて思いつつ、岩砕熊の様子を窺う。
岩砕熊は次々に出てくる料理に驚いてたけど、不意に手を伸ばした。取ったのは【うさぎ印のブラウニー】だ。
「それ、第三の街の名産になってるチョコレートとナッツをたっぷり使ったやつだよ。見た目はゴロッとしてるけど、美味しいのは間違いないからね!」
もしかして岩っぽい見た目に惹かれたのかな? と思いながらオススメしてみる。
「……くままっ!」
「美味しい? うまうま?」
テンションが上がってるっぽい。喜んでもらえて嬉しいよー。
他にもチョコレートを使ったお菓子を出してみたら、チョコクッキーを食べ始めた。生チョコはあんまり興味なさそう。焼き菓子が好きなのかな。
「そろそろテイムできる? 試してみるよ?」
魅了状態が解けちゃいそうだし、その前にもう一度テイムを試してみよう。
「――【テイム】!」
岩砕熊が光り始める。そして……。
〈野生の岩砕熊をテイムしました〉
テイム成功! やったぁ!
食べ物の力はスゴいんだねぇ。というか、モンスターがチョロい? 僕だって、美味しいご飯につられちゃうもんなぁ。モンスターたちの気持ち、よくわかるよ!
お友だち増えたし、みんなでご飯食べたいなぁ。
1,092
お気に入りに追加
3,053
あなたにおすすめの小説
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。
最後に、お願いがあります
狂乱の傀儡師
恋愛
三年間、王妃になるためだけに尽くしてきた馬鹿王子から、即位の日の直前に婚約破棄されたエマ。
彼女の最後のお願いには、国を揺るがすほどの罠が仕掛けられていた。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる