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錬金術士だよ?
138.不審者じゃないよ!
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リリとルトに渡す木属性耐性装備は、それぞれに希望を聞いてから作ることにした。普段からおしゃれな装備だし、こだわりがありそうだし。特に裁縫士のリリが。
レナードさんにおすすめの装備をいくつかピックアップしてもらったから、後でルトたちにプレゼンするんだー。
他にも便利そうなアイテムとか、素材とか教えてもらったし、明日は錬金術デーかな。
「るんるんるん」
良いアクセサリーができて良い気分のまま、はじまりの街を歩く。夜までもうちょっとだけ時間あるし、久しぶりにはじまりの街を探索しようと思う。
困ってそうなプレイヤーがいたら手助けしてあげようかな、と視線を巡らせたら、道端で本を凝視して固まってるプレイヤーの女性をみつけた。なにしてるんだろう。
トテトテと歩み寄る。――女性は僕に気づかない。
近くで手を振ってみる。――「ん?」と顔を上げた。
にこっと笑って「こんにちはー」と声をかける。
「きゃあっ!」
「えー!? 驚かせてごめん! 悲鳴はやめて。僕、不審者じゃないよ!」
女性に叫ばれて、通りすがりの人たちから視線が集まるのを感じて、慌てて身の潔白を主張する。
僕の見た目がモンスターだからか、すぐに『あ、野生と勘違いされたんだね』って感じで納得された。女性がすぐに叫ぶのをやめてくれたっていうのも、誤解を解けた理由だと思う。
「……すみません。急だったので、驚いちゃって」
「ううん。僕も遠慮なしに近づいちゃったから。ほんとごめんね。なんか困ってることあるなら手助けしようと思っただけなんだよ」
謝ってくる女性に、僕も頭を下げる。
「そうだったんですね。ごめんなさい。さっきまでバトルでウサギさんに追い回されてたので、まさか街まで追ってきたのかと」
「跳兎に?」
困り顔で言う女性をまじまじと見つめる。
はじまりの街近くにいるウサギ系モンスターといえば跳兎だ。初心者はほぼ必ずバトルする相手だろうけど、追い回されるってどういうことだろう?
「仲良くなろうと思って、りんごのドライフルーツをあげてみたら、すごく気に入られたみたいで。仲間を呼んで押し寄せてきたんです……」
「野生のモンスターに餌付けしようとしたんだ?」
なんか聞いたことのある話だ。
モンスターの贈り物システムが解放された後に、そういう人がいたって掲示板で話題になってたはず。ルトが教えてくれた気がするもん。
「はい。私、テイマーになりたくて」
「あー、テイムスキルはモンスターと仲良くなることで習得できるっぽいもんね」
僕は希少種っていうモンスターの一種だし、称号の効果で初めからスライムからの好感度が高くて、あっさりとテイムスキルを入手できた。でも、この女性は人間みたいだし、スキル入手は時間と工夫が必要そうだ。
「事前情報でそうらしいって聞いてはいたので、冒険者ギルドの図書室で各モンスターの好物を調べて、料理を作ってみたんですよ。あ、これ、借りたモンスター図鑑なんですけど」
さっきまで凝視してた本を示して、女性が微笑む。
なるほど。モンスターには好物があるんだ? それを使うと、野生のモンスターとも仲良くなりやすいってことかな。
「へぇ、便利な本があるんだね」
「ですよね。あんまり図書室の利用者が多くないって、司書さんは嘆いてましたけど。――あ、紹介が遅れました。私レイっていいます」
「僕はモモだよ。よろしくねー」
遅ればせながら挨拶しあって、レイが困ってる状況について聞いてみる。
「――それで、図鑑で調べた結果、跳兎の好物はりんごのドライフルーツだったから、作ってあげてみたんだよね?」
「ええ。それで集られて逃げてきたわけですが……」
レイが苦笑した。僕は首を傾げちゃう。だって、そのままモンスターとお話して、テイムモンスターになってもらったら良かったんじゃないかなって思うんだもん。
「どうして友だちにしなかったの?」
「え? 私、テイムスキルを持ってませんし」
顔を見合わせる。なんか認識にすれ違いがあるような?
「……テイムスキルを入手する最初って、『お友だちになってよ!』って勧誘することじゃないの? その後にテイムスキルをもらえたら、次のモンスターからテイムしやすくなるってだけで」
「えっ、そうなんですか!?」
レイが目を丸くして前のめりで聞いてくる。テイムスキルを持ってないとテイムができないって誤解してたんだね?
「うん。僕はスライムと仲良くなって、モンスターカードをもらってから、テイムスキルをゲットしたし。モンスターカードをもらった時点で、スライムはテイム扱いになってたよ」
これまで誰かに詳しく説明したことがなかったかも、と思いながら話す。
レイは呆然とした感じで「知らなかった……」と呟いた。ちょっと脱力した感じなのは、あと一歩で跳兎をテイムできてたかも、って気づいたからかな。
「……でも、モンスターに言葉で勧誘して、通じるんですか?」
「う~ん? 僕は見ての通りモンスタータイプだから、なんとなく意思疎通できたけど、人間だとどうなんだろう?」
聞かれたけど、確実と言える答えは返せない。僕は特殊だってわかってるし。
レイと顔を見合わせて首を傾げちゃう。
「また跳兎に囲まれるのは、きついです……。いつ攻撃されるかってドキドキしちゃいますし……」
しょんぼりと肩を落とすレイをじっと見つめた。
初心者さんは跳兎の相手でも緊張するものだもんね。僕は結構最初から蹂躙してた気がするけど。
「――もふもふを倒すのは心苦しいですし!」
「あ、気にしてるの、そっち?」
グッと拳を握って主張するレイに、ちょっと気が抜けた。
レイはタマモと似てるのかな。まだ選べないテイマー職を希望してるんだから、もふもふ好きなのは確実かも。
「でも、もふもふなモンスターは今後たくさん出てくるんだし、割り切って倒さないとやっていけないよ?」
「それはわかってます。けど、テイムしない内から倒しちゃったら、その後ずっと仲良くなれない気がするので」
つまり、レイはまだ跳兎を一体も倒してないってことか。追い回されて、倒さずに逃げ切るって、倒す以上に高難度技術な気がする。よく街に帰ってこれたね。
「そっかー。……それなら、もう一回跳兎に会いに行くの、僕が付き合おうか? どうしてもモンスターカードをもらえなくて追い回されるようだったら、僕が倒してあげるし」
「えっ、いいんですか?」
控えめながらも嬉しそうな表情をするレイに「うん」と頷き返す。
「意思疎通のお手伝いも、できそうだったらしてみるよ! たぶん、テイムできたら問題なく意思疎通できるだろうし」
「ほんとにありがたいです! よろしくお願いします」
深々と頭を下げるレイの頭をポンポンと撫でる。
僕にお任せなさい。モンスターと友だちになる第一人者としてしっかりサポートしてあげるからね!
レナードさんにおすすめの装備をいくつかピックアップしてもらったから、後でルトたちにプレゼンするんだー。
他にも便利そうなアイテムとか、素材とか教えてもらったし、明日は錬金術デーかな。
「るんるんるん」
良いアクセサリーができて良い気分のまま、はじまりの街を歩く。夜までもうちょっとだけ時間あるし、久しぶりにはじまりの街を探索しようと思う。
困ってそうなプレイヤーがいたら手助けしてあげようかな、と視線を巡らせたら、道端で本を凝視して固まってるプレイヤーの女性をみつけた。なにしてるんだろう。
トテトテと歩み寄る。――女性は僕に気づかない。
近くで手を振ってみる。――「ん?」と顔を上げた。
にこっと笑って「こんにちはー」と声をかける。
「きゃあっ!」
「えー!? 驚かせてごめん! 悲鳴はやめて。僕、不審者じゃないよ!」
女性に叫ばれて、通りすがりの人たちから視線が集まるのを感じて、慌てて身の潔白を主張する。
僕の見た目がモンスターだからか、すぐに『あ、野生と勘違いされたんだね』って感じで納得された。女性がすぐに叫ぶのをやめてくれたっていうのも、誤解を解けた理由だと思う。
「……すみません。急だったので、驚いちゃって」
「ううん。僕も遠慮なしに近づいちゃったから。ほんとごめんね。なんか困ってることあるなら手助けしようと思っただけなんだよ」
謝ってくる女性に、僕も頭を下げる。
「そうだったんですね。ごめんなさい。さっきまでバトルでウサギさんに追い回されてたので、まさか街まで追ってきたのかと」
「跳兎に?」
困り顔で言う女性をまじまじと見つめる。
はじまりの街近くにいるウサギ系モンスターといえば跳兎だ。初心者はほぼ必ずバトルする相手だろうけど、追い回されるってどういうことだろう?
「仲良くなろうと思って、りんごのドライフルーツをあげてみたら、すごく気に入られたみたいで。仲間を呼んで押し寄せてきたんです……」
「野生のモンスターに餌付けしようとしたんだ?」
なんか聞いたことのある話だ。
モンスターの贈り物システムが解放された後に、そういう人がいたって掲示板で話題になってたはず。ルトが教えてくれた気がするもん。
「はい。私、テイマーになりたくて」
「あー、テイムスキルはモンスターと仲良くなることで習得できるっぽいもんね」
僕は希少種っていうモンスターの一種だし、称号の効果で初めからスライムからの好感度が高くて、あっさりとテイムスキルを入手できた。でも、この女性は人間みたいだし、スキル入手は時間と工夫が必要そうだ。
「事前情報でそうらしいって聞いてはいたので、冒険者ギルドの図書室で各モンスターの好物を調べて、料理を作ってみたんですよ。あ、これ、借りたモンスター図鑑なんですけど」
さっきまで凝視してた本を示して、女性が微笑む。
なるほど。モンスターには好物があるんだ? それを使うと、野生のモンスターとも仲良くなりやすいってことかな。
「へぇ、便利な本があるんだね」
「ですよね。あんまり図書室の利用者が多くないって、司書さんは嘆いてましたけど。――あ、紹介が遅れました。私レイっていいます」
「僕はモモだよ。よろしくねー」
遅ればせながら挨拶しあって、レイが困ってる状況について聞いてみる。
「――それで、図鑑で調べた結果、跳兎の好物はりんごのドライフルーツだったから、作ってあげてみたんだよね?」
「ええ。それで集られて逃げてきたわけですが……」
レイが苦笑した。僕は首を傾げちゃう。だって、そのままモンスターとお話して、テイムモンスターになってもらったら良かったんじゃないかなって思うんだもん。
「どうして友だちにしなかったの?」
「え? 私、テイムスキルを持ってませんし」
顔を見合わせる。なんか認識にすれ違いがあるような?
「……テイムスキルを入手する最初って、『お友だちになってよ!』って勧誘することじゃないの? その後にテイムスキルをもらえたら、次のモンスターからテイムしやすくなるってだけで」
「えっ、そうなんですか!?」
レイが目を丸くして前のめりで聞いてくる。テイムスキルを持ってないとテイムができないって誤解してたんだね?
「うん。僕はスライムと仲良くなって、モンスターカードをもらってから、テイムスキルをゲットしたし。モンスターカードをもらった時点で、スライムはテイム扱いになってたよ」
これまで誰かに詳しく説明したことがなかったかも、と思いながら話す。
レイは呆然とした感じで「知らなかった……」と呟いた。ちょっと脱力した感じなのは、あと一歩で跳兎をテイムできてたかも、って気づいたからかな。
「……でも、モンスターに言葉で勧誘して、通じるんですか?」
「う~ん? 僕は見ての通りモンスタータイプだから、なんとなく意思疎通できたけど、人間だとどうなんだろう?」
聞かれたけど、確実と言える答えは返せない。僕は特殊だってわかってるし。
レイと顔を見合わせて首を傾げちゃう。
「また跳兎に囲まれるのは、きついです……。いつ攻撃されるかってドキドキしちゃいますし……」
しょんぼりと肩を落とすレイをじっと見つめた。
初心者さんは跳兎の相手でも緊張するものだもんね。僕は結構最初から蹂躙してた気がするけど。
「――もふもふを倒すのは心苦しいですし!」
「あ、気にしてるの、そっち?」
グッと拳を握って主張するレイに、ちょっと気が抜けた。
レイはタマモと似てるのかな。まだ選べないテイマー職を希望してるんだから、もふもふ好きなのは確実かも。
「でも、もふもふなモンスターは今後たくさん出てくるんだし、割り切って倒さないとやっていけないよ?」
「それはわかってます。けど、テイムしない内から倒しちゃったら、その後ずっと仲良くなれない気がするので」
つまり、レイはまだ跳兎を一体も倒してないってことか。追い回されて、倒さずに逃げ切るって、倒す以上に高難度技術な気がする。よく街に帰ってこれたね。
「そっかー。……それなら、もう一回跳兎に会いに行くの、僕が付き合おうか? どうしてもモンスターカードをもらえなくて追い回されるようだったら、僕が倒してあげるし」
「えっ、いいんですか?」
控えめながらも嬉しそうな表情をするレイに「うん」と頷き返す。
「意思疎通のお手伝いも、できそうだったらしてみるよ! たぶん、テイムできたら問題なく意思疎通できるだろうし」
「ほんとにありがたいです! よろしくお願いします」
深々と頭を下げるレイの頭をポンポンと撫でる。
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