もふもふで始めるのんびり寄り道生活 ~便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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錬金術士だよ?

133.役立つアイテムが欲しいな~

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 仮想施設でスキルを鍛えたり、バトルフィールドで種族・職業のレベリングをしたり、着々とエリアボス迷彩小竜カモフラミニドラゴン戦への準備を整えていく。

 でも、一つどうにかしなければならない問題が出てきた。問題と言うより課題かもしれないけど。

「むむぅ……アイテム開発が行き詰まっちゃった……」

 たくさんの素材を眺めながら呻いちゃう。
 お店に来てくれるお客さんたちのおかげで、錬金術に使う素材はたくさん集まってる。これをどう使うかが問題なんだ。

 麻痺薬を使ったアイテムはお店で売り出して好評だ。でも、それ以外に費用対効果が良いアイテムがなかなかみつからない。

 迷彩小竜カモフラミニドラゴンと戦う時は、利益度外視でレアアイテムをバンバン使っちゃってもいいと思ってるんだけど、ルトたちに反対されてるんだよなぁ。

 ルトには「もし使うなら、アイテム作りにかかった費用は割り勘な」って言われてるから、ちょっと気が引けてる。二人は、所持金にあんまり余裕がないみたいだし。

「安い素材で効果絶大なアイテム、ないかなぁ……」

 錬金術士として工夫してがんばりたいんだけど、レシピを検索してもピンとこない。

 ここで一人で悩んでてもアイディアが浮かびそうにないし、相談しに行ってみるかな。今日はルトたちはログインできないらしいし。

「――よし、じゃあ、はじまりの街にレッツゴー」

 錬金術について相談するとなればレナードさんだ。僕の師匠だから。
 というわけで、転移しようとしたところで気づく。レナードさんの工房前に設定した転移ピン、前に解除しちゃったんだった!

「目的地変更、アリスちゃんのお家だー」

 気を取り直して転移。すぐに見慣れた街並みが現れる。
 薬店を覗いてランドさんに挨拶したら、「アリスは出掛けてるぞ」と教えられた。残念、会いたかったなぁ。

 ちょっとしょんぼりしながらレナードさんの工房に向かう。街中はまだプレイヤーの姿が多い。第二陣は生産職重視で、バトルが得意じゃない人が多いらしい。前にソウタが言ってた。

 そんなソウタたちは無事にエリアボスを突破して、第二の街に進んでる。でも、初挑戦で転移スキルを入手できなかったそうで、その後に何度も挑んでるらしい。
 僕は毛と交換で便利アイテムを渡して応援してる。早く転移スキルを入手できるといいねぇ。

「あ、ウサギちゃん」
「ん?」

 呼びかけられて振り返る。街中でウサギと呼ばれるのは、十中八九僕だもん。
 屋台の傍では女の人がハッと口元を手で押さえて立っていた。僕を見て咄嗟に声を出しちゃったみたい。

「――こんにちはー。初心者さんかな?」

 装備をざっと観察して、首を傾げる。佇まいはゲームを始めたばかりって感じなんだけど、着てるのは初期装備じゃなくて巫女っぽい感じの格好だ。なぜか大きなハンマーみたいなものを背負ってるけど。

「そうです。今日、初めてログインして……」

 照れた感じで呟く女性に、思わず「おー」と声が漏れちゃった。マジの初心者さんだった。第二陣が参入開始してから一週間くらい経ってるのに。

「しばらくゲームできない環境だったの?」
「仕事が忙しかったんですよ。――あ、塩焼き二本で」

 注文の順番が来た女性が屋台主と話しているのをなんとなく眺める。そしたら、ずいっと魚の塩焼き串を一本差し出された。

「え。僕にくれるの?」
「お近づきの印にどうぞ」

 真剣な顔の女性と魚の塩焼きを交互に眺めてから受け取る。初心者に奢られちゃったー。
 パリッと焼かれた魚は、ちょうどいい塩加減とジューシーほくほくな身ですごく美味しい。

 女性と並んで焼き魚を食べながら、会話を続けた。お近づきの印って言われたから、これでバイバイするつもりじゃないんだろうし。

「初心者なのに、装備が良い感じだね?」
「マネー、イズ、パワーです」
「……つまり、課金?」

 真面目な顔のまま言われて、一瞬言葉を受け取り損ねたけど、つまりはそういうことでしょ。
 女性は「そうです」と頷いてから説明をしてくれた。

「巫女装備と武器に課金しました。魔術とデバフへの防御力が高くて便利です。武器はハンマーなんですよ」
「ハンマーって、職業なんなの?」

 見せてくれた武器は、僕が叩かれたら一回でぺちゃんこになっちゃいそうな、大きくて重い感じのハンマーだ。
 現時点での戦闘職は剣士、魔術士、体術士、治癒士の四種類のはずで、ハンマーを使う職種はない。

「治癒士です」
「……ハンマーだよね?」
「ハンマーを使う治癒士です」

 独特なキャラメイクしてるなぁ。
 そういえば、一緒に幻桃ラールペシェを探してくれたメアリも、杖を打撲武器として使ってたかも。似たタイプなのかな。

「そっかぁ……」

 それしか返す言葉がない。ゲームなんだし、好きに遊んだらいいと思う。

「――あ、僕はモモだよ。天兎アンジュラパっていう種族なんだ」
「CMで存じ上げてます。私はホクトです」

 握手する。よろしく。それと、焼き魚ごちそうさまでした。

「――モモさんはどうしてはじまりの街に? 第二の街が活動拠点だと、ファン会報に載ってましたが」
「ファン会報……」

 思わずきょとんとしちゃう。
 ホクトも首を傾げながら「これです」と画面を呼び出して見せてくれた。

 掲示板と同じ感じの画面に、『天兎アンジュラパモモさんファンクラブ会報』というタイトルが載ってる。その下にはツラツラと僕に関する情報が。
 書いたのは『タマモ』。……うん、わかってたよ。許可出した気がするし。

「ログインしてすぐにファンクラブに入りました」
「顔に出てないけど、僕のファンだったんだね」
「出てないですか?」

 ホクトがぐにぐにと頬を捏ねる。表情筋をほぐそうとしてるらしい。ちょっと愉快な人だ。
 僕も真似して頬をもにもにとマッサージしたら、ホクトの口元が緩んだ。「かわいい……」という呟きが聞こえてくる。

「うーん、僕のファンだっていうのは伝わってきたよ! ありがとう」

 ゲーム開始初日にファンクラブに入るって、なかなかの熱意だと思う。ありがたくその気持ちを受け取るよ。
 また握手したら、ホクトが嬉しそうに微笑んだ。

「――あ、そうだ。僕がこの街にいる理由だったね。実は錬金術のアイテムを作ろうと思ったんだけど、アイディアが行き詰まっちゃって。錬金術の師匠に相談してみようかなって思って、来たんだよ」

 なんとなくホクトに話してみる。エリアボス迷彩小竜カモフラミニドラゴンの情報と共に、どんなアイテムを使ったらいいか悩んでることを。

 ホクトは「へぇ……」と相づちを打ちながら聞いてくれて、パチリと目を瞬かせた。

「ステルス……カモフラージュ……そうなると、目印をつけるアイテムを使うのが定番な気がしますけど」
「目印?」
「ペンキとか、シールとか。ほら、防犯用のカラーボールみたいな」
「ああ! そういうことか」

 説明されて納得。防犯用のカラーボールは、投げて当たったら蛍光塗料が飛散するやつだ。確かにモンスターの姿が目で見えなくなっても、実体があるなら印を付ければ効果的かもしれない。
 作れるのか、レシピを検索してみないと。レナードさんに聞くのが早いかな。

「――良いアイディアありがとう!」
「いえいえ、お役に立てたなら嬉しいです」

 ニコッと笑ってくれたホクトに「すっごく役立ったよ!」と返して微笑む。
 あとはレナードさんの意見も取り入れて、アイテム製作しようっと。

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