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錬金術士だよ?
124.ツンデレくん可愛いなー
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にぎやかな食事会も終わったし、そろそろログアウトするかーって考えてたところで、ルトに首元をがっしりと掴まれた。
「え、なに?」
急にびっくりするじゃん、と思いながら見上げたら、半眼と視線がぶつかる。
「モモ、そろそろしっかりレベリングするぞ。せっかく経験値二倍キャンペーン中なんだから」
「うん?」
レベリングしてるつもりだけど?
サウス街道でバトルして種族レベルが19になったんだよ。魔術士レベルも10だし。バトルより錬金術士としてのレベルを上げようかなーって考えてるくらいだ。
「いいか? お前が足踏みしてる間に、第一陣でこのゲームに参加してる大体のプレイヤーはレベル30近くなってるんだぞ。このままじゃ、第二陣にも追い越されるぞ?」
「えっ……」
衝撃が走るような感覚。
僕、結構弱い……? みんな、そんなに強くなってるの?
「お前は初期ステータスとか、種族のわけわからんスキルとかで恵まれてる。だけど、それにあぐらをかいてちゃダメだろ」
「……うん。そうだね」
確かに天兎のステータスやスキルのすごさに甘えてたかも。最近は自分より弱いモンスターしか相手にしてこなかったから、僕は強いって勘違いしてた?
しょんぼりと項垂れてたら、パシッと音が聞こえてきた。
「痛ぇ」
「ルトってば、どうしてそう威圧的に言うの? 素直に、エリアボス討伐できないから手伝って、て言えばいいじゃない。ゲームの楽しみ方は人それぞれなんだから、モモに強くなれって強制するのはおかしいでしょ」
リリが腰に手を当て、ルトを叱ってた。ルトはちょっとバツが悪そうな表情をしてる。これ、どういうことかな?
「つまり?」
僕が首を傾げたら、リリが申し訳なさそうに微笑んだ。
「私たち、エリアボスに挑んでるんだけど、どうしても勝てないんだよね。それでモモに協力してもらえたらクリアできるんじゃないかと思って。でも、そのためにはモモにしっかりとレベリングしてもらわないといけないし」
「それで、ルトが僕に発破をかけて、バトルに連れ出そうとしてたってこと?」
ちらっと見上げたら、ルトが小さく頷いた。「悪い……」って小声で謝ってくれたし、ルトが言ったことはそんなに間違ったことでもないから別にいいよー。
「――そっかぁ。エリアボスねぇ……」
僕は考えたことなかったけど、エリアボス討伐は大抵のプレイヤーの目標の一つなんだろうなぁ。第二の街が開放されてから結構時間が経ってるし、そろそろ第三の街に行きたいって人も多いだろうしね。
「何度か二人で挑戦してるんだけど、なかなか倒せないんだよね。即死攻撃は、青乳牛のお守りとかのアイテムでなんとかなるんだけど、それ以外の攻撃も強いし、防御力高いし……」
リリの説明にうんうんと頷きながら聞き入る。
エリアボスってそんなに強いんだ? てっきり即死攻撃を無効化すれば、簡単にどうにかなるものだと思ってた。即死攻撃無効化アイテム自体、手に入れるのが難しいけど。
「他のパーティーメンバーは募集してないの?」
リリとルトが普段二人でパーティーを組んでることは知ってるけど、他の友だちもいるんだし、エリアボスに挑戦する時は協力してもいいんじゃない? タマモとか強いらしいし。
「……してねぇよ」
「ルトが、一緒にバトルするならモモがいいって言うからねー」
「ばっ、おいこら、リリ! 余計なこと言うな!」
「……ふーん?」
急に慌て始めたルトの顔を覗き込もうとして、背けられた。それを追おうとしたら、さらに背けられる。それを繰り返してたら、僕とルトで鬼ごっこしてるみたいになって、笑っちゃいそう。
「――ふはっ、ルトってば、僕のこと大好きだねー?」
「ふざけんな、そういうんじゃねぇよ!」
怒鳴るように言われても、全然怖くないよ。照れた顔して、可愛いやつだよね。
「ルトがそーんなに僕がいいって言うんなら、がんばっちゃおうかなー?」
「はあ? 別に、そんなこと言ってねぇ――」
「え、じゃあ、スローライフに専念しててもいい?」
「ぐっ……」
ルトの言葉を遮って、首を傾げながら問いかけたら、なんとも言えない表情で黙り込まれちゃった。リリが爆笑してる。
「ふふっ、もう、ルトの負けでしょ。素直に頼もうよー」
「……うるせ」
プイッと顔を背けるルトを追い詰めるのはここまでにしよう。友だちをからかうにも、限度があるからね。お互いに楽しい範疇でおさめるのが、良いコミュニケーションのコツ。
「僕も第三の街に行きたいし、レベリングちゃんとしようと思ってたところなんだ。リリとルト、付き合ってくれる?」
「もちろん! エリアボス討伐までがんばろうねー」
僕を見て、リリが『モモってば、ルトに甘いんだから』なんて言いたげな表情をしてる気がする。
甘いんじゃなくて、程よい距離感は大事だよ、ってことなんだけど。僕はリリと違って、ルトの幼馴染みじゃないから。
「……モモが頼むんなら、一緒にレベリングしてやるよ」
ルトが顔を背けながら呟いた。強気な言葉だけど、ホッと安堵した感じが声に滲んでる気がする。
リリと顔を見合わせて、思わず吹き出すように笑っちゃった。ルトってば、ほんと素直じゃないね。そういうところも、ルトの良いところではあるんだけど。
「――なんだよ」
不貞腐れたような、気恥ずかしそうな、複雑な表情で睨まれて、笑いながら首を振る。これ以上からかわないから、そんなに警戒しないで。
「なんでもなーい。ルトたちとバトルするの楽しみだなーって思っただけ!」
これは本心。ヤナとか希少種会とかとバトルするのも楽しかったけど、やっぱりルトたちとのバトルが一番慣れてるし、安心するから。
それにしても、エリアボス討伐を目指すなら、錬金術士としてアイテム開発もがんばってみようかな。きっとなにか役に立つアイテムがあるはずだもん。
「え、なに?」
急にびっくりするじゃん、と思いながら見上げたら、半眼と視線がぶつかる。
「モモ、そろそろしっかりレベリングするぞ。せっかく経験値二倍キャンペーン中なんだから」
「うん?」
レベリングしてるつもりだけど?
サウス街道でバトルして種族レベルが19になったんだよ。魔術士レベルも10だし。バトルより錬金術士としてのレベルを上げようかなーって考えてるくらいだ。
「いいか? お前が足踏みしてる間に、第一陣でこのゲームに参加してる大体のプレイヤーはレベル30近くなってるんだぞ。このままじゃ、第二陣にも追い越されるぞ?」
「えっ……」
衝撃が走るような感覚。
僕、結構弱い……? みんな、そんなに強くなってるの?
「お前は初期ステータスとか、種族のわけわからんスキルとかで恵まれてる。だけど、それにあぐらをかいてちゃダメだろ」
「……うん。そうだね」
確かに天兎のステータスやスキルのすごさに甘えてたかも。最近は自分より弱いモンスターしか相手にしてこなかったから、僕は強いって勘違いしてた?
しょんぼりと項垂れてたら、パシッと音が聞こえてきた。
「痛ぇ」
「ルトってば、どうしてそう威圧的に言うの? 素直に、エリアボス討伐できないから手伝って、て言えばいいじゃない。ゲームの楽しみ方は人それぞれなんだから、モモに強くなれって強制するのはおかしいでしょ」
リリが腰に手を当て、ルトを叱ってた。ルトはちょっとバツが悪そうな表情をしてる。これ、どういうことかな?
「つまり?」
僕が首を傾げたら、リリが申し訳なさそうに微笑んだ。
「私たち、エリアボスに挑んでるんだけど、どうしても勝てないんだよね。それでモモに協力してもらえたらクリアできるんじゃないかと思って。でも、そのためにはモモにしっかりとレベリングしてもらわないといけないし」
「それで、ルトが僕に発破をかけて、バトルに連れ出そうとしてたってこと?」
ちらっと見上げたら、ルトが小さく頷いた。「悪い……」って小声で謝ってくれたし、ルトが言ったことはそんなに間違ったことでもないから別にいいよー。
「――そっかぁ。エリアボスねぇ……」
僕は考えたことなかったけど、エリアボス討伐は大抵のプレイヤーの目標の一つなんだろうなぁ。第二の街が開放されてから結構時間が経ってるし、そろそろ第三の街に行きたいって人も多いだろうしね。
「何度か二人で挑戦してるんだけど、なかなか倒せないんだよね。即死攻撃は、青乳牛のお守りとかのアイテムでなんとかなるんだけど、それ以外の攻撃も強いし、防御力高いし……」
リリの説明にうんうんと頷きながら聞き入る。
エリアボスってそんなに強いんだ? てっきり即死攻撃を無効化すれば、簡単にどうにかなるものだと思ってた。即死攻撃無効化アイテム自体、手に入れるのが難しいけど。
「他のパーティーメンバーは募集してないの?」
リリとルトが普段二人でパーティーを組んでることは知ってるけど、他の友だちもいるんだし、エリアボスに挑戦する時は協力してもいいんじゃない? タマモとか強いらしいし。
「……してねぇよ」
「ルトが、一緒にバトルするならモモがいいって言うからねー」
「ばっ、おいこら、リリ! 余計なこと言うな!」
「……ふーん?」
急に慌て始めたルトの顔を覗き込もうとして、背けられた。それを追おうとしたら、さらに背けられる。それを繰り返してたら、僕とルトで鬼ごっこしてるみたいになって、笑っちゃいそう。
「――ふはっ、ルトってば、僕のこと大好きだねー?」
「ふざけんな、そういうんじゃねぇよ!」
怒鳴るように言われても、全然怖くないよ。照れた顔して、可愛いやつだよね。
「ルトがそーんなに僕がいいって言うんなら、がんばっちゃおうかなー?」
「はあ? 別に、そんなこと言ってねぇ――」
「え、じゃあ、スローライフに専念しててもいい?」
「ぐっ……」
ルトの言葉を遮って、首を傾げながら問いかけたら、なんとも言えない表情で黙り込まれちゃった。リリが爆笑してる。
「ふふっ、もう、ルトの負けでしょ。素直に頼もうよー」
「……うるせ」
プイッと顔を背けるルトを追い詰めるのはここまでにしよう。友だちをからかうにも、限度があるからね。お互いに楽しい範疇でおさめるのが、良いコミュニケーションのコツ。
「僕も第三の街に行きたいし、レベリングちゃんとしようと思ってたところなんだ。リリとルト、付き合ってくれる?」
「もちろん! エリアボス討伐までがんばろうねー」
僕を見て、リリが『モモってば、ルトに甘いんだから』なんて言いたげな表情をしてる気がする。
甘いんじゃなくて、程よい距離感は大事だよ、ってことなんだけど。僕はリリと違って、ルトの幼馴染みじゃないから。
「……モモが頼むんなら、一緒にレベリングしてやるよ」
ルトが顔を背けながら呟いた。強気な言葉だけど、ホッと安堵した感じが声に滲んでる気がする。
リリと顔を見合わせて、思わず吹き出すように笑っちゃった。ルトってば、ほんと素直じゃないね。そういうところも、ルトの良いところではあるんだけど。
「――なんだよ」
不貞腐れたような、気恥ずかしそうな、複雑な表情で睨まれて、笑いながら首を振る。これ以上からかわないから、そんなに警戒しないで。
「なんでもなーい。ルトたちとバトルするの楽しみだなーって思っただけ!」
これは本心。ヤナとか希少種会とかとバトルするのも楽しかったけど、やっぱりルトたちとのバトルが一番慣れてるし、安心するから。
それにしても、エリアボス討伐を目指すなら、錬金術士としてアイテム開発もがんばってみようかな。きっとなにか役に立つアイテムがあるはずだもん。
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