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錬金術士だよ?
117.目標ができたよ
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影花は無事ゲットできた。思いの外近くに生えてたんだよね。でも、初心者が来るにはちょっと難しいかな、ってくらいの距離を歩いた気がする。
やっぱり、アンデッド系の種族だと最初からハードモードじゃない? スライムでも序盤が大変そうだけど。
心底、僕は天兎でよかったー! って思ったよ。
「これで目標達成だね!」
「おかげでお金になりそうなアイテムもたくさんもらえましたし。本当にありがとうございます!」
セーフティーエリアで一休みしながらおしゃべり。僕だけだったら転移スキルで帰れるんだけど、ヤナを一人にするわけにはいかないからねぇ。空腹度が回復したら、レッツ帰還の予定。
「うん、気にしないで。最初に言ったけど、お詫びのつもりなんだし。――あ、そうだ!」
ふと思い出して、錬金玉と錬金布を取り出す。耐衝撃系のアイテムを作れないか調べてみようっと。
「おー錬金術士ってそんな感じなんですね」
「そうだよー。ヤナは生産職はなにを選んだの?」
レシピを流し見ながら聞いてみる。なかなか耐衝撃っていう効果があるアイテムが見つからないなぁ。
「俺は鍛冶士です。闇系の武器とか作れないかなって思って」
なんか呪いについて熱く語り始めた。
確かにこのゲームの中だと、良くも悪くも『思い』がアイテムに影響を及ぼすんだって、僕は知ってる。僕の錬金玉はアリスちゃんの真心が籠もって、すごく良いアイテムになったし。
でも、呪いアイテムって、使い道が難しそうだなぁ。
イザベラちゃんに掛けられていた呪いも、モンスターに使う分には効果的なんだろうけど。
「そっかー……あ、これ良さそう!」
一つの錬金アイテムのレシピに目が止まった。
黒い金属でできた王冠みたいなアクセサリー【闇の冠】。効果は『装備すると衝撃を受けにくくなる。闇魔術の効果が5%上がる。防御力+7』だって。
ヤナにぴったりじゃない?
必要な材料は『鉄』『宝石(種類不問)』『霊魂』らしい。……霊魂?
「――ヤナ、霊魂をアイテム化できる?」
「どういうことです?」
不思議そうに首を傾げるヤナにレシピを説明する。でも、ヤナも霊魂がアイテム化するかはわからないらしい。
霊魂というスキルは、幽霊とかの霊魂というより、闇属性の青い炎での攻撃魔術というのが正しい。
一番アイテム化できそうな霊魂に近いのは、ネクロマンシースキルで召喚できるやつかな、ということで試してみることになった。
「じゃあ、この錬金布の上に霊魂を召喚してみて」
「了解です」
真剣な雰囲気で詠唱すると、闇が傍に現れる。それは錬金布に近づき、不意に青い火の玉のようになった。
「おお、ちゃんと霊魂として認識されてる! アイテム化できたってことだね!」
「すごいですね!」
いぇーい、とハイタッチ。
あとは鉄と宝石が必要ってことだ。あいにくアイテムボックスには入ってないから、ちょっと取ってこよう。
ここに転移ピンを刺して――こうすると、暫くの間この場所に転移スキルで戻ってこられる――そして、ホームまで転移!
「えっ、あれ? モモさん!?」
驚いた声が聞こえた瞬間、説明し忘れたことに気づいたけど、あっという間にホームに到着してた。
「……まぁ、大丈夫でしょ。すぐ戻るし」
ちょっと申し訳ないなぁ、と思いながら工房に急ぎ、ストレージから鉄とルビーを取る。そしてすぐにヤナのところへ転移。
「っ、モモさん、どこに行ったのかと思いましたよ!」
大げさすぎるほどに驚いたヤナが飛び退って、セーフティーエリアから出そうになってた。重ね重ねごめんね?
「錬金に必要な材料を取りに行ってきたんだよー」
「あー、転移スキルってやつですか。俺も早く欲しいなぁ」
「がんばったらいつかもらえるよ」
適当に応援しながら、鉄とルビーを錬金布に置く。
闇の冠のレシピ成功率は80%。――まぁ、なんとかなるでしょ。僕は僕の幸運値を信じてる! ちょっと、ぬいぐるみで強化しとけば良かったな、って思うんだけど。あいにくと、アリスちゃんにあげたもので最後だったんだよね。
「――錬金スタート!」
光が渦巻く演出。
僕はもう慣れたものだけど、初めて見たヤナは「おー、すっげー!」と興奮してた。綺麗だよね。
ふっ、と光が消えた後に錬金布に転がるのは、ルビーがきらめく黒色の冠。ルビーは赤色の宝石なのに、時々青く揺らめいているように見えるのは、霊魂の影響かな?
「成功!」
「かっこいいですね!」
「うん。付けてみて」
「え?」
固まるヤナと見つめ合う。
そういえば、アイテムのレシピについて説明はしたけど、これの効果についてはなにも教えてなかったかも?
「これ、ヤナにプレゼント。耐衝撃効果のあるアイテムだよ」
「……ええ!? マジっすかっ? いいんですかっ?」
勢いよく迫ってきた髑髏に、ひえっとのけぞっちゃう。
慣れてきたけど、あんまり近くは嫌だよ。髑髏はやっぱり怖いんだもん。
「も、もちろん。というか、使い道をわかってなかったのに、よく霊魂をアイテム化してくれたね?」
「モモさんのお役に立てるなら、いくらでもしますよ」
当然のように言われた。ヤナは僕へのお礼のつもりだったらしい。
「影花を一緒に探すのはお詫びだって言ったでしょ。お礼とか考えなくていいんだよ?」
「いやいや、お詫び以上のものをもらってますし。でも、これはマジで欲しいです。遠慮なくもらっていいんですね?」
「当然でしょ。ヤナのために作ったんだもん」
嬉しそうに受け取ったヤナが、付けていたアンクレットを僕に返してから、頭の上に闇の冠を載せる。……なんか闇世界の王って感じで似合ってるよ? 怖さが増した気がするけど。
「……うわー、やばっ、俺、リッチになったみたい!」
「リッチ?」
「アンデッドを従えてる感じの強いモンスターですよ! 俺、いつかリッチになりたいんです!」
「へぇ、そうなんだ」
よくわかんないけど、嬉しそうで良かった。
やっぱり僕がしたことで喜んでる人を見るのって好きだなぁ。だからこそ、お店をしたり、ファンの人たちと交流する場を設けたりしてるようなものだし。
「――僕が錬金術士としてしたいことは、それかも」
ぽつりと呟く。
ランドさんと話してた時は、錬金術士としての方向性が全然見えなかったけど、なんだか今は、自分がしたいことがわかった気がする!
やっぱり、アンデッド系の種族だと最初からハードモードじゃない? スライムでも序盤が大変そうだけど。
心底、僕は天兎でよかったー! って思ったよ。
「これで目標達成だね!」
「おかげでお金になりそうなアイテムもたくさんもらえましたし。本当にありがとうございます!」
セーフティーエリアで一休みしながらおしゃべり。僕だけだったら転移スキルで帰れるんだけど、ヤナを一人にするわけにはいかないからねぇ。空腹度が回復したら、レッツ帰還の予定。
「うん、気にしないで。最初に言ったけど、お詫びのつもりなんだし。――あ、そうだ!」
ふと思い出して、錬金玉と錬金布を取り出す。耐衝撃系のアイテムを作れないか調べてみようっと。
「おー錬金術士ってそんな感じなんですね」
「そうだよー。ヤナは生産職はなにを選んだの?」
レシピを流し見ながら聞いてみる。なかなか耐衝撃っていう効果があるアイテムが見つからないなぁ。
「俺は鍛冶士です。闇系の武器とか作れないかなって思って」
なんか呪いについて熱く語り始めた。
確かにこのゲームの中だと、良くも悪くも『思い』がアイテムに影響を及ぼすんだって、僕は知ってる。僕の錬金玉はアリスちゃんの真心が籠もって、すごく良いアイテムになったし。
でも、呪いアイテムって、使い道が難しそうだなぁ。
イザベラちゃんに掛けられていた呪いも、モンスターに使う分には効果的なんだろうけど。
「そっかー……あ、これ良さそう!」
一つの錬金アイテムのレシピに目が止まった。
黒い金属でできた王冠みたいなアクセサリー【闇の冠】。効果は『装備すると衝撃を受けにくくなる。闇魔術の効果が5%上がる。防御力+7』だって。
ヤナにぴったりじゃない?
必要な材料は『鉄』『宝石(種類不問)』『霊魂』らしい。……霊魂?
「――ヤナ、霊魂をアイテム化できる?」
「どういうことです?」
不思議そうに首を傾げるヤナにレシピを説明する。でも、ヤナも霊魂がアイテム化するかはわからないらしい。
霊魂というスキルは、幽霊とかの霊魂というより、闇属性の青い炎での攻撃魔術というのが正しい。
一番アイテム化できそうな霊魂に近いのは、ネクロマンシースキルで召喚できるやつかな、ということで試してみることになった。
「じゃあ、この錬金布の上に霊魂を召喚してみて」
「了解です」
真剣な雰囲気で詠唱すると、闇が傍に現れる。それは錬金布に近づき、不意に青い火の玉のようになった。
「おお、ちゃんと霊魂として認識されてる! アイテム化できたってことだね!」
「すごいですね!」
いぇーい、とハイタッチ。
あとは鉄と宝石が必要ってことだ。あいにくアイテムボックスには入ってないから、ちょっと取ってこよう。
ここに転移ピンを刺して――こうすると、暫くの間この場所に転移スキルで戻ってこられる――そして、ホームまで転移!
「えっ、あれ? モモさん!?」
驚いた声が聞こえた瞬間、説明し忘れたことに気づいたけど、あっという間にホームに到着してた。
「……まぁ、大丈夫でしょ。すぐ戻るし」
ちょっと申し訳ないなぁ、と思いながら工房に急ぎ、ストレージから鉄とルビーを取る。そしてすぐにヤナのところへ転移。
「っ、モモさん、どこに行ったのかと思いましたよ!」
大げさすぎるほどに驚いたヤナが飛び退って、セーフティーエリアから出そうになってた。重ね重ねごめんね?
「錬金に必要な材料を取りに行ってきたんだよー」
「あー、転移スキルってやつですか。俺も早く欲しいなぁ」
「がんばったらいつかもらえるよ」
適当に応援しながら、鉄とルビーを錬金布に置く。
闇の冠のレシピ成功率は80%。――まぁ、なんとかなるでしょ。僕は僕の幸運値を信じてる! ちょっと、ぬいぐるみで強化しとけば良かったな、って思うんだけど。あいにくと、アリスちゃんにあげたもので最後だったんだよね。
「――錬金スタート!」
光が渦巻く演出。
僕はもう慣れたものだけど、初めて見たヤナは「おー、すっげー!」と興奮してた。綺麗だよね。
ふっ、と光が消えた後に錬金布に転がるのは、ルビーがきらめく黒色の冠。ルビーは赤色の宝石なのに、時々青く揺らめいているように見えるのは、霊魂の影響かな?
「成功!」
「かっこいいですね!」
「うん。付けてみて」
「え?」
固まるヤナと見つめ合う。
そういえば、アイテムのレシピについて説明はしたけど、これの効果についてはなにも教えてなかったかも?
「これ、ヤナにプレゼント。耐衝撃効果のあるアイテムだよ」
「……ええ!? マジっすかっ? いいんですかっ?」
勢いよく迫ってきた髑髏に、ひえっとのけぞっちゃう。
慣れてきたけど、あんまり近くは嫌だよ。髑髏はやっぱり怖いんだもん。
「も、もちろん。というか、使い道をわかってなかったのに、よく霊魂をアイテム化してくれたね?」
「モモさんのお役に立てるなら、いくらでもしますよ」
当然のように言われた。ヤナは僕へのお礼のつもりだったらしい。
「影花を一緒に探すのはお詫びだって言ったでしょ。お礼とか考えなくていいんだよ?」
「いやいや、お詫び以上のものをもらってますし。でも、これはマジで欲しいです。遠慮なくもらっていいんですね?」
「当然でしょ。ヤナのために作ったんだもん」
嬉しそうに受け取ったヤナが、付けていたアンクレットを僕に返してから、頭の上に闇の冠を載せる。……なんか闇世界の王って感じで似合ってるよ? 怖さが増した気がするけど。
「……うわー、やばっ、俺、リッチになったみたい!」
「リッチ?」
「アンデッドを従えてる感じの強いモンスターですよ! 俺、いつかリッチになりたいんです!」
「へぇ、そうなんだ」
よくわかんないけど、嬉しそうで良かった。
やっぱり僕がしたことで喜んでる人を見るのって好きだなぁ。だからこそ、お店をしたり、ファンの人たちと交流する場を設けたりしてるようなものだし。
「――僕が錬金術士としてしたいことは、それかも」
ぽつりと呟く。
ランドさんと話してた時は、錬金術士としての方向性が全然見えなかったけど、なんだか今は、自分がしたいことがわかった気がする!
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