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ゆるり

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錬金術士だよ?

115.バラバラくん?

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 ランドさんとアリスちゃんと別れてから、はじまりの街を歩く。せっかくここまで来たし、サウス街道でバトルしてみようかなって思って向かってるんだ。

 第二陣プレイヤーの参加にあわせて、一週間経験値倍増キャンペーンが開催されてる。最近レベリングをさぼってるし、今がんばった方がいいでしょ。

 同じことをほとんどのプレイヤーが考えてるみたいで、第二の街周辺のバトルフィールドは混雑してるんだとルトが教えてくれた。

 だからこそ、穴場ははじまりの街のノース・サウス街道なんだよ。第二陣プレイヤーはまだ東の草原以外でバトルする許可が出てないはずだし。
 許可をもらうために必要な草原狼プレアリーウルフの牙を入手するのって、けっこう大変なんだよねぇ。

「――ありゃ?」

 サウス街道でついでに状態異常の耐性スキルも入手したいなぁ、と考えつつ到着したら、思ってたより人の姿が多かった。

 もう草原狼プレアリーウルフを倒した人いっぱいいるのかな? それとも僕と同じことを考えた第一陣プレイヤーかな?

「まぁ、いっか。来たからにはちゃんとがんばろうっと」

 多少プレイヤーがいた方が安全だし、と頷いてふらふらと進む。現れるモンスターは木属性ばかりだから、火魔術が大活躍だ。

 ゲームを始めた頃より随分と魔力攻撃力が上がってるし、ほぼ一撃で倒せちゃう。でも、そうすると状態異常への耐性が入手できないから、ちょっと手加減しながらバトルしてみる。

「うわぁ……毒状態ってこんな感じかぁ……」

 目がグルグル回るよぉ。
 わざと食らった毒粉によって毒状態になると、五秒毎にダメージがくる。それは体力自動回復スキルと天からの祝福アンジュブレススキルですぐ回復する程度。
 でも、行動阻害効果もあるみたいで、上手く戦えない。

「――あっ」

 視界がはっきりとしない中で、瀕死状態のモンスターを倒そうと火の玉ファイアーボールを放ったら、全然関係ないところへ向かっちゃった。

「どわっ!?」
「ごっめーん!」

 聞こえた悲鳴に謝る。だって、火の玉ファイアーボールが人っぽい姿に当たったように見えたんだもん。絶対プレイヤーだよね?
 このゲームはPvPシステムがないから、ダメージは負ってないだろうけど、衝撃はあったはず。誠心誠意謝罪しなくちゃ。

 毒状態の効果時間が終わって回復したから、はっきりした視界になった。すぐさまモンスターにとどめを刺して、報酬の確認もそこそこに火の玉ファイアーボールが向かった方へ走る。

「ウサギ!? って……モンスターじゃなくてプレイヤーか」
「CMに出てた子だー!」
「うわっ、マジか! 俺の姉貴がメロメロになってたんだよなぁ」

 三人のプレイヤーにまじまじと見つめられた。僕のことを知ってるみたい。

「僕が放った火の玉ファイアーボールが当たっちゃった?」
「いや、俺らには当たってないぞ」
「そうなんだ。それなら良かった――じゃないや。え、他の誰に当たったの?」

 きょろきょろと周囲を見渡しても、僕の攻撃が届きそうな範囲に三人以外の人影はない。

「あー……なんっつーか……あんたの足元にいるやつだな」
「足元?」

 気まずそうに言われて視線を下げる。
 僕は身長が低いから、人と話す時は見上げるのがくせになってたんだよね。

「――骸骨? ひえっ、僕、ホラーは苦手だよ!」

 思わず飛び退いちゃった。
 草むらに隠れるように、白い骨が見える。それがじわじわと動いてるような……?

「ホラーじゃないぜ。普通に希少種のプレイヤーだ」
「希少種のプレイヤー」

 思わず反復して言ってから「えっ!?」と驚く。
 骸骨の見た目のモンスターも、プレイヤーがなり得る希少種なんだ?

「あんたの放った火の玉ファイアーボールの衝撃で、骨がバラバラになってるけどな」
「それは大変申し訳ないです!」

 すぐさま骸骨に近づいて頭を下げる。怖いなんて言ってられないよ。

「えっと……うん……気にしないでください……。俺、衝撃に弱いだけなんで」

 眼窩に青い火が灯る髑髏が、カタカタと顎を動かして話す。めっちゃホラー! だけど、良い人そう。

「これ、どうやったら戻るの? ダメージは食らってないよね?」

 念の為にと体力バーを確認しても、ほぼ満タン。骨は少しずつ動いて修復されようとしてるっぽい。

「えっと、骨を近づけてもらえると助かります」
「こんな感じ?」

 散らばってる骨をずりずりと引きずって髑髏に近づけたら、自然と人の形になっていった。なんかパズルを組み立ててるみたい。
 プレイヤー三人も手伝ってくれて、なんとか修復が終わった。

「どうもありがとうございます」
「いや、僕のせいだから。ほんとごめんね」

 頭を下げあう。骸骨くんはルトと同じくらいの身長かな。想像してたより高い。

「おっと……俺らそろそろログアウトする時間だから、先帰るぜ」
「そっか。手伝ってくれてありがとー! ばいばい」
「お世話になりました」

 三人のプレイヤーを見送り、改めて骸骨くんを見つめる。

「僕はモモだよ」
「存じ上げてます。CM出てましたよね? 可愛いなぁ、って思ってたんですよ。あ、俺はヤナです。今日からゲーム始めました!」
「そうなんだー。ここ来るの早いね?」
「チュートリアルで草原狼プレアリーウルフ討伐まですれば良いって、事前情報があったので、楽できたんです」

 そういうことか! 僕ら第一陣から情報が流れてたんなら、そりゃあ早くサウス街道まで来れるよね。

 ヤナが正座する。おかげであんまり見上げなくて良くなった。気遣い上手だなぁ。でも、バトルフィールドで油断しすぎてない?

火の矢ファイアーアロー

 近づいてこようとしてたモンスター数体を攻撃。今は話に集中したいから、一撃で倒したよ。

「おお! 強いですね!」

 ヤナが拍手してくれた。表情は見えないけど、なんだかキラキラした眼差しを感じる。
 骸骨はちょっと不気味だと思ったけど、なんか愛嬌がある気がしてきた。

「一応ゲームリリース当初から遊んでたから、それなりに戦えるよ。それより、ヤナはここのバトルフィールドで大丈夫なの? まだあんまり強くないんじゃない?」

 まだ第二陣が参加して初日だ。ソロでサウス街道を攻略するのは厳しい気がする。最初はてっきりあのプレイヤー三人とパーティーなのかと思ったのに、あっさり別れたから内心驚いたんだよ。

「そうなんですけど……。俺の種族スケルトンなんで、だいぶ特殊な性質があって、急いでサウス街道を探索しなくちゃいけないんです。幸い、攻撃でダメージを負うことは少ないですし」
「うん? よくわかんない」

 説明してもらったけど、僕は首を傾げちゃった。
 ヤナがスケルトンっていう種族なことはわかったけど、特殊な性質ってなんだろう? 気になる。でも、無遠慮に尋ねて良いことじゃないだろうしなぁ。

「スケルトンって基本夜行性で、日光の下ではステータスが下がっちゃうんですよ」

 質問をするか迷ってたら、ヤナの方から詳しい話をしてくれた。
 夜行性かー。それはそうだろうな。アンデッド系ってことだよね。

「でも、今は昼だよ? 攻撃力とか落ちてるってこと?」

 まだ太陽は高いところにある。レベルが低くて、さらにステータス低下してるなら、なおさらサウス街道は無理じゃない?

「いえ。夜行性種族のプレイヤーは最初の四日間――リアルだと一日の間、日中でのステータス低下が起きない特典が付いてるんです。だから、俺は今万全で、でもだからこそ、サウス街道を早く探索しなくちゃいけなくて」

 夜行性種族って大変なんだね。でも、確かに、はじまりの街に着いてすぐステータス低下しちゃったらゲームで遊ぶどころじゃなくなっちゃうもんね。

「どうしてサウス街道にこだわるの?」
「ここに【闇マント】の素材があるらしいんです。それを装備すれば、日光の影響を受けなくなるんだって、装備屋のおじさんに言われて、素材を探しに来ました」
「おー、そういうことか」

 装備屋さんには闇マントは置かれてなくて、自分で素材を集めなきゃいけないんだね。それに、特典の期間が過ぎちゃったら、ほとんど夜しか活動できなくなるわけだし、ヤナが急いでるのも理解できる。

「――それじゃあ、攻撃しちゃったお詫びに、素材探し手伝うよ!」
「ええ!? いいんですかっ?」

 大げさに驚くスケルトンの姿がなんだか面白くて笑ってしまった。慣れたら愛嬌があって可愛いじゃん。

「うん! 先輩におまかせなさい」

 胸を張って言うと、「ありがとうございますー!」と感激される。
 ちょっびり『先輩』って言葉へのツッコミを待ってたんだけど、さすがにルトみたいにはいかないね。

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