もふもふで始めるのんびり寄り道生活 ~便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
上 下
118 / 340
商人への道?

110.ついに開幕だよ

しおりを挟む
 いつの間にかストーリーをクリアしちゃって、ルトに「スレが阿鼻叫喚」と報告されたけど、気にしなーい。
 今日もほのぼのゲームライフを満喫します。なんといっても、ようやくパフォーマンスを披露できるからね! ……あれ? ほのぼのではない?

「――まぁ、いっか。写真撮影会、楽しむぞ~」

 ナンバーワン・スイーツフルの店内で、用意されたステージを確認する。タマモが作ってくれたんだけど、キラキラとした装飾でいい感じ。

「ほぼ、お前のコンサートだよな」

 お手伝いとして早めに来てくれたルトが、呆れた表情で呟く。その横に立つライアンさんは準備段階から見ていたのか、驚きを越えて悟った感じの表情だ。

「コラボスイーツは準備できてますよ。コンサートの後にお出しすればいいんですよね?」
「うん。最初にみんなと交流して、その後コラボスイーツの試食会にするよ」

 ステージ前にはたくさんのテーブルが並んでる。そこにはプチケーキとか軽食が並んでて、ステージを見ながらつまめるようにしてるんだ。ディナーショーに似てるかな。

「あ、そうだ。リリから衣装預かってるぞ」
「おー! 楽しみにしてたんだよ」

 ルトから渡された衣装を確認する。
 ステージに合わせたのか、キラキラした石が縫い付けられた衣装が一着。ライトで映えそうだけど、普段着にはできないなぁ。
 他にも、バレエ服のようなチュールがついたものやゴシック服、騎士のコスプレなどさまざま。……みんな、遊び過ぎじゃない?

「……たぶん似合うぞ」
「笑いながら言われても信じられないよ!」

 顔を背けて肩を震わせてるルトにジャンピングキック。効果は全然ないっぽい。というか、足掴まれて逆さ吊りにされたんだけど、ルトひどくないっ!?

〈スキル【足蹴】を習得しました〉

 まさかのタイミングでスキルを入手した。喜びたいのに、なんだか微妙な気分。

「ほら、リハーサルするんだろ。着替えるタイミングとか考えるとも言ってたよな」
「するよ! するから、離してー!」

 バタバタする前にあっさりと解放されたので、空中で身を翻す。そして、見事に着地。――モモ選手、百点満点!
 最近アクロバットを練習してたから、このくらいお茶の子さいさいだよ。

「決めポーズ、体操選手かよ」
「夢はオリンピックです」
「お前、リアルじゃ運動音痴って言ってなかったか?」
「そこまで言ってないよ! 苦手なだけ! それに夢は誰が持っててもいいんだよ!」

 必死に言ってみるけど、ルトは「あっそ」って答えるだけで冷めてる。
 ひーどーいー! プンプンしながらリハーサルを始めることになっちゃったじゃん。

「シェルさーん、準備いいですかー?」
「は、い……! このような素晴らしいステージで演奏するなんて、夢のようです……」

 涙で濡れた顔で振り向かれて、ちょっと後ずさりする。
 さっきから泣いてるのはわかってたんだけど、対応するのが面倒くさくてスルーしてたんだよね。ルトに助けを求めても、気づかないフリをされた。

「……そうだねー、僕もそう思うよー。良いパフォーマンスになるように、リハーサルがんばろっかー」

 適当に宥めてみる。これで泣き止まなかったらどうしよう。
 不安になったけど、シェルさんは袖で涙を拭って満面の笑みを浮かべてくれた。

「もちろんですっ。演奏始めますよ!」
「いつでもどうぞ! もうパフォーマンスの構成は頭の中でできてるからね。ルト、打ち合わせ通り演出のお手伝いよろしく」
「へーへー」

 やる気のない返事だけど、ルトは意外と真面目くんだから完璧にこなしてくれるってわかってるよ!
 というわけで、リハーサル開始だー。


◇◆◇ 


 ナンバーワン・スイーツフルの店内を人が埋め尽くす。最近はこんな状態になることがなかったからか、自ら給仕スタッフにまじって動き回ってるライアンさんの表情に歓喜が溢れてる。

 ざわざわとしながら、今か今かと始まりを待っているみんなを舞台袖から眺め、「ワクワクする~」と声が漏れた。
 みんな、どれくらい喜んで楽しんでくれるかな?

 反対の舞台袖にいるルトに視線を向け、合図をする。途端に店内の明かりが落ちた。この演出のために夜の時間に開催することにしたんだ。
 ……窓の外から覗いてる人がいるのは、周囲の迷惑になってないなら良いことにしよう。

 固唾をのんで静まり返る店内に、笛の音色が響いた。同時にシャラシャラと音がしてるのは、僕が錬金術で作った自動演奏機の音色。

 音楽が最高潮を迎える直前に、飛翔フライを使ってステージ中央へ移動。僕とシェルさんを照らすようにライトがついた。ルト、いい感じだよ!

「ルールルン♪」

 ハミングのように歌う。歌詞を作るセンスも時間もなかったんだよー。
 曲に合わせてダンス開始! 自動演奏機で奏でる曲もにぎやかな感じで、シェルさんの笛の音色も楽しそう。

 ステップ、ターン、ジャンプ――振り付けの合間にみんなを指さしたり、ウインクしたり、ファンサービスをする度に歓声が上がる。気持ちいい!
 キラキラの衣装が光を反射して、今の僕すっごく輝いてるよ。

 ひと通りステージでダンスを披露したら、一旦停止。ここからは衣装チェンジをしてアクロバット飛行の時間だよ。シェルさんも瞬時に曲を切り替えてくれる。

 みんなの頭上を飛んで、天井に設置してた輪っかをくるりと回りながらくぐったり、【雪花スノーフラワー】を降らせたり。
 雪花スノーフラワーは小さな氷の結晶でできた花びらなんだ。レナードさんに教えてもらって作ったよ。空中で自然と消えるから、店を濡らす心配がないっていう素晴らしいもの。

「きゃー! モモさん、素敵!」

 誰かが我慢しきれない感じで叫ぶと、我先にというように声が重なった。
 曲がかき消されちゃう! って心配したけど、ルトが瞬時に笛と自動演奏機に設置したマイクの音量を上げてくれたから問題なかった。

 マイクも錬金術で作ったんだ。本来は歌系スキルの効果を戦場で広範囲に拡散させるためのアイテムなんだけど、こういう場面でも便利だよね。

 まぁ、それはともかく、僕のパフォーマンスは続く。
 みんなにファンサービスをして笑顔を振りまきながら、たくさんの衣装にチェンジしつつ、終盤へ。

 ステージに戻って、またダンス。
 ファンのみんながうちわやペンライトを振って盛り上げてくれる。ペンライトは光苔っていうアイテムで作ってあるらしい。生産職の人が全員分用意したんだって。良い仕事してるね!

「――みんな~、今日は集まってくれてありがとう! たくさんおしゃべりして、美味しいもの食べようね!」

 曲の終わりと同時に挨拶。
 みんなが歓声で応えてくれるから、嬉しくてたまらない。たくさん考えただけあって、良いパフォーマンスができたんじゃないかな♪

しおりを挟む
感想 1,383

あなたにおすすめの小説

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

勇者の帰りを待つだけだった私は居ても居なくても同じですか? ~負けヒロインの筈なのに歪んだ執着をされています~

砂礫レキ
ファンタジー
勇者ライルが魔王を倒してから3年。 彼の幼馴染である村娘アデリーンは28歳にして5歳年下の彼に粗雑に扱われながら依存されていた。 まるで母親代わりのようだと自己嫌悪に陥りながらも昔した結婚の約束を忘れられなかったアデリーン。 しかしライルは彼女の心を嘲笑うかのようにアデリーンよりも若く美しい村娘リンナと密会するのだった。 そのことで現実を受け入れ村を出ようとしたアデリーン。 そんな彼女に病んだ勇者の依存と悪女の屈折した執着、勇者の命を狙う魔物の策略が次々と襲い掛かってきて……?

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。 老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。 そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。

処理中です...